ついに手にした夢のオープンカー。幾つもの季節を越えて出会ったMR-Sと紡ぐ新たなカーライフ

  • GAZOO愛車取材会の会場である西京極総合運動公園で取材したトヨタ・MR-S Vエディション(ZZW30型)

    トヨタ・MR-S Vエディション(ZZW30型)


クルマが好きで、さらに運転するのも大好きだという方の中には『一度くらいはオープンカーに乗ってみたい』と考えている人も少なくないのではなかろうか。
オープンカーで風を切って走る爽快感や開放感は“屋根付き”のクルマでは決して味わうことができない、特別な体験といえるだろう。

あいにくの雨模様となった取材会場で「今日こそオープンにして走りたかったんですけど、残念ですねぇ」と苦笑いしていたオーナーの『五右衛門』さんもまた、オープンカーに乗ることへ想いを募らせ、2024年にトヨタMR-S(ZZW30型)を手に入れたオーナーさんだ。

五右衛門さんは現在用途の異なる5台のクルマを保有しているが、そんな中でも特別な想い入れがあるのがこのMR-Sだという。

昭和30年代、マイカーがまだ珍しかった時代に、父親が借りてきたスカイラインやセドリックに乗せてもらった幼少期の思い出が、クルマ好きの原点だという五右衛門さん。
「運転免許を取ったは良いのですが、子育てや住宅ローンに追われる日々で、クルマはセレナやステップワゴン、VWのトゥーラン、ハイエースなどのミニバンタイプがメインでした。そんな子育て真っ最中の40歳の頃に発売されたS2000は、僕に『いつかはマニュアルのオープンカーに乗ってみたいな』という憧れを抱かせてくれた一台でしたね」

やがて子育ても落ち着き、家族旅行に行く機会も少なくなったことで、ミニバンからスポーティながらも実用的で好みでもあったトヨタ・アルテッツァに乗り換えたという。
そしてその頃、たまたまトヨタディーラーの中古車サイトで、1台のMR-Sを見つけることになる。

「ミッドシップのオープンカーで、マニュアルミッション車やったし、ボディカラーも好みのモスグリーンで『これが欲しい!』って強く思ったんですよ。しかも遠くない大阪のディーラーさんやったし。ただ、今お世話になっているディーラーさんを裏切ってまで…というのがあって。僕、ちょっと浮気する気になれなかったので、その時は諦めたんです」

ちなみに五右衛門さんは、『中古車であっても、お世話になっているディーラーで取り扱っているクルマ以外は購入しない』というポリシーを持っていて、6ヵ月ごとの定期点検もそのディーラーで実施してもらうことに決めているという。それだけ信頼関係を築いているディーラーとの付き合いを大事にしているのだ。

10年ほど前からは“自分が本当に好きなクルマ”に乗り換えるようになり、通勤車であったアルテッツァはクラウンやレクサスGS、フォルクスワーゲン・アップ、そして現在も乗っているレクサスRCへと変わっていった。
さらに、キャンプ用としてステージアアクシスを増車。また、大人数で出かける時のために2代目アルファードも購入するという無双状態に(笑)。

  • (写真提供:ご本人さま)

それに加えて、昨年から参戦し始めた『TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ』の練習用にと、ヴィッツまで購入。10年間のうちに用途の異なる4台体制となり、それらのクルマに乗ってキャンプやラリー競技を楽しむといった、充実すぎるほどのカーライフを満喫していらっしゃるようすだ。

「クラウンもGSもすべてディーラーの中古車で、入庫してきたのを教えてもらって『なんか面白そうかも』と感じたら、とりあえず買って、そして乗り換えていくといった感じでしたね。いろいろ乗ってきた中でも、7年前に増車したステージアは、自分にとって最後の愛車かな? と思っていたんですけど、昨年、トヨタの中古車を検索していたら、欲しかったモスグリーンのボディカラーで、ワンオーナー車のMR-Sを見つけてしまったんです」

40代の頃に一度は諦めたMR-S。五右衛門さんが色めき立ったのも当然だ。
しかし、このMR-Sを取り扱っていたのは名古屋のディーラーだったため、今回も諦めようと考えたそうだが、今回は時代が味方をしてくれた。以前にはなかった“取り寄せシステム”を利用することで、お世話になっているディーラーに取り寄せをお願いすることができたのである。

「お世話になっているディーラーにお願いして、現物確認もせず注文をしてしまいました(笑)」と、五右衛門さんは嬉しそうに話してくれた。

こうして2024年9月に、5台目の愛車として仲間入りしたのが2005年式のMR-S Vエディション(ZZW30型)。

ただし、製造から20年が経過しているだけあって、修復が必要な箇所はそれなりに多かったとのこと。
「疲れていた塗装は、ボディコーティングをしてなんとか輝きを取り戻しました。そしてソフトトップの幌。これはひび割れてボロボロで、とくに雨が降った翌日には日光を浴びるとものすごい異臭を放つ状態だったので、ディーラーで交換の見積もりをしたところ…部品の納期に1ヵ月以上掛かるし、費用も30万円以上とのこと。そこで、自力で調べてみると倉敷の方で幌を扱っているところがあり、海外製で価格も抑えられるとのことで、そこにお願いして現在の姿になりました」

「ヘッドライトも黄ばんでしまっていたので、ヘッドライトクリーナーで何回も磨いて、なんとか透明なりました。その他にも劣化がひどかったドアやヘッドライト周り、ホロ周りのパッキンも交換しましたね」

10年以上交換されていなかったタイヤや、傷だらけのホイールの交換も必須だったそうだが、MR-Sは標準タイヤが前後異径の設定ということもあって、タイヤとホイール選びもそれなりに苦労したそうだ。
しかし、苦労の甲斐もあって、現在はブリジストン製のポテンザRE-71RSとWORK製のエモーションCR 2Pのアッシュドチタンカラーという大満足の組み合わせに落ち着いたという。
乗り味についても「ポテンザのグリップ力が高く、路面に吸い付くように走るし、MRということもあって、ハンドリングも良くて最高ですよ」と、満足しているご様子だ。

内装はソフトトップと同じタンカラーの本革シートで、ステアリングカバーもこだわりのセレクト。そんなドライビングシートに座る五右衛門さんの姿はまさに“絵になる”という言葉がぴったりだ。

ちなみに今回選んだのは、かつて希望していた5速MTではなく、SMT(シーケンシャル・マニュアル・トランスミッション)仕様。
「以前乗っていたフォルクスワーゲンのアップでMTモードの面白にハマったんですよね。さらにその頃、ラリーのコ・ドライバーとしてお世話になっていた方で、運転のテクニック面でも信頼していた方からも『SMTも結構ええよ』と勧められていたこともあって、『SMTという選択肢もありやな』と思うようになっていたんです。で、調べているうちにMR-Sにも搭載されている事を知り、改めてMR-Sを意識するようになっていたんです」

「クラッチ操作が無いだけでほぼMTと同じSMTは、クリープ現象がないので坂道発進ではサイドブレーキの合わせが必要ですし、当然シフトのアップダウン操作もしなければいけないですが、シフトチェンジ時のフィーリングはMTそのものですね。スポーティカーのフィーリングやエンジンの音を聞くのは何十年ぶりでしょうか…。ATと違う緊張感のあるSMTの操作はとても楽しいです。最後のクルマはマニュアル車がいいなと思っていましたが、SMTでもMTの感覚は十分味わえるし、加速感は普通のAT車では味わえないダイレクト感がとても楽しいです」

子育てを終え、クルマと向き合う時間が増えた今、キャンプだけでなく、昨年からスポット参戦し始めた『ラリーチャレンジ』への挑戦など、とにかくアグレッシブにカーライフを楽しむ五右衛門さん。「いつかこのMR-Sでサーキットも走ってみたいですね」と、新たなチャレンジにも意欲的だ。

ただ、その前にどうしても実現しておきたいことがあるという。
それは『オープンにして乗ること』。実は幌を新調してからは、まだ一度もオープン状態で走っておらず、今日の取材会こそオープンに! と意気込んでいたものの、残念ながら雨でお預けに…これが『今日こそオープンにして走りたかったんですけど、残念ですねぇ』という、冒頭の言葉につながったというわけだ。

このMR-Sにずっと乗り続けたいという五右衛門さんだけに『ここぞ』という日がくればオープンで走るという夢は実現されることであろう。そしてその瞬間こそ、五右衛門さんのMR-Sとの物語が、さらに深みを増す特別な一日となるに違いない。

(文: 西本尚恵 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:西京極総合運動公園 (京都府京都市右京区西京極新明町32)

[GAZOO編集部]