2輪レースから恐竜レースまで!? 3台の100系ハイエースを乗り継いできた夫婦の愛車ライフ

  • GAZOO愛車取材会の会場である霞ヶ浦緑地公園で取材したトヨタ・ハイエース スーパーカスタムG リビングサルーンEX(KZH106W型)

    トヨタ・ハイエース スーパーカスタムG リビングサルーンEX(KZH106W型)


仕事車として絶大なる人気を誇っているのはもちろんのこと、2輪競技やサーフィンのトランスポーターとして、また最近ではアウトドアを楽しむ車中泊仕様など、幅広いフィールドで活躍をみせるトヨタハイエース

そんな歴代ハイエースの中でも、1989年にデビューした先代の100系は、最終型でも既に20年以上が経過しており、さすがに街中で見かけることは少なくなってきた。しかし、そのいっぽうで2輪のレースパドックでは今でも頻繁に目にするモデルだ。
というのも、1980年代に訪れた第二次バイクブームの影響もあって『2輪のレースを始めた時からずっとコレ』というように、こだわりを持ってトランスポーターとして使い続けているオーナーが少なくないのである。

三重県で開催した出張取材会にご来場くださった『いせぢのティラ』さん(以下、ティラさん)ご夫婦も、そんな『こだわり有り』のハイエース スーパーカスタムG“リビングサルーンEX" (KZH106W)を所有するオーナーだ。
このハイエースに乗って、冬はゲレンデ、それ以外の季節はサーキットなどへ出かけられているそうで、サーキットでは、ティラさんがティラノサウルスの着ぐるみを身に纏い、レース観戦を楽しんでいらっしゃるという。

なぜティラノサウルスの着ぐるみを着て…という話は後回しにして、まずは、ティラさんのご主人である『飼い主』さん(※ニックネーム)に、100系ハイエースに乗り始めたキッカケを伺ったところ、ミニバイクレースに参戦していた時期にトランスポーターとして手に入れて以来ずっと100系ハイエースに乗り続けていて、現在の愛車は3台目だという。

飼い主さんは、いわゆるプロライダーではないものの、ミニバイクレースから段階的にステップアップを果たすなど、かなり本格的にレースをされていたようす。
「最初は標準ボディのバンに乗っていたんですが、GP-MONOというロードレースに参戦することになって、マシンが大きくなるだけじゃなく持ち込む機材も増えたのでハイルーフのスーパーロングに乗り換えたんです」
増えた機材を搭載するのが目的なので『ワゴン』ではなく『バン』を選択したまでは同じだったが、1台目が4WDのMT車だったのに対し、2台目は2WDのAT車を選択したという。

4年ほど2台目の100系ハイエースと共にGP-MONOを戦った後、ロードレースからは引退。引退した後も、ミニバイクでレースを続ける他、レースやチームの運営に関わっていたそうで、トランポでありながら遠征地で宿泊もできるというハイエースがなくてはならない存在だったことから、手放すことなく乗り続けたそうだ。
そして、その頃に飼い主さんとティラさんは、サーキットで出会うこととなる。

元々オートバイやクルマのモータースポーツが好きで、レース観戦などを楽しんでいたティラさん。当時からカメラが趣味で、サーキットに足を運んではオートバイの写真を撮っていたという。
「写真をキッカケにライダーさん達と知り合って交流するようになったこともあって、私もレースを観戦する側からスタッフとして参加する側になったんです」
ティラさんがチームスタッフとして、耐久レースのお手伝いで鈴鹿サーキットを訪れた時、そのチームの監督をしていたのが飼い主さんで、その縁でお二人はご結婚されたという。
そしてご結婚後、共通の趣味があってもいいだろうと、ティラさんが飼い主さんをスキーに誘ったことが、現在の3台目100系ハイエースに繋がるキッカケとなった。

「彼はスキーをやったことが無くて、初めて行った時には上手く滑れなくて、ゲレンデでキレられて(笑)。ただ、一緒に行った友人がスノースクート(自転車状の雪上用ソリ)もやる方で、それに乗せてもらったら、そっちは初心者離れした上手さを披露してくれたんです(笑)」

それ以来、冬場はスノースクートを楽しむためにご夫婦でゲレンデに通うようになった。当初は2台目の100系ハイエースで行っていたそうだが、雪の山道を走るには2輪駆動やエンジンパワーは心許なく、さらにATなので延々と続く上り坂は辛くて、何よりチェーンを巻いた時の乗り心地は酷かったという飼い主さん。

しかもその頃には走行距離が26万kmを超えていて、トラブルもいろいろと発生していたそうで「特にオイル漏れが酷くなってきて『もう買い換えよう』と思ってクルマ探しを始めたんです」とのこと。
そして探しはじめたクルマは、やっぱり100系ハイエース。飼い主さんにとって、他の車種を選ぶという選択肢は存在しなかったようだ。

「ちょうどその頃、たまたま仕事でハイエースじゃないんですけど、ディーゼルターボのクルマに乗ることがあって、それがなかなかパワフルだったんです。100系ハイエースにはディーゼルターボもあるから『ターボならゲレンデまでの登りも楽になるだろう』と、探し始めたんです。そして、いつも行く岐阜のゲレンデの近くにあるお店で出会ったのが、現在の愛車となるハイエース・リビングサルーンEXの4WDでした。走行距離が3万kmと、何十万kmという走行距離が当たり前の中古ハイエースにしてみたら新車みたいな距離で、状態も良かったためその場で買うことを決めました」

手に入れた3台目となるハイエースは、北海道で使われていた車両だったそうで、融雪剤の影響でアンダーカバーを固定するボルトが全部錆びているなど下まわりの状態はイマイチだったものの、それ以外は見立て通り程度良好。しかもこれまでのバンとは違って、ワゴンはリヤがコイルスプリングなのもポイントとなった。
「バンは板バネでしたからね。乗り心地も良くなったし、ディーゼルターボでパワーもあるし、四駆だからゲレンデへの雪道がすごく快適になりましたよ」と、お二人とも大満足のご様子。

ハイエースワゴンの特別仕様車としてラインアップされたスーパーカスタムG“リビングサルーンEX"は、専用シート生地の回転対座シートやブロンズガラス、専用ボディカラーに専用サイドストライプ&専用ステッカーなどの特別装備が特徴のモデル。

当初は、バイクを積むこともあるので、3列目シートを外して乗車定員変更することも考えていそうだが「フラットになったり、回転対座にもなるリヤシートは、サーキットで打ち合わせをしたり、ゲレンデで車中泊する時に便利だし、あまりに乗り心地も良いのでそのまま残したんですよ」と、ティラさん。
「バンの時は、冬場に車中泊すると冷え込んですごく寒かったんですが、ワゴンはやっぱり違いますね。快適に眠れますから」と、飼い主さんは車中泊時の快適性も絶賛だ。

そんな愛車で4輪のトップカテゴリーレースを観戦しに行くだけではなく、ティラさんは前述したようにティラノサウルスの姿で楽しまれているそうだ。

「ティラノサウルスのスーツを着て走る『ティラノサウルスレース』という競技があって、それが富士スピードウェイのメインストレートで開催されると知って、参加してみることにしたんです」
ティラノサウルスレースは海外発祥の競技でありながら、日本ティラノサウルス競技連盟という団体もあるほど、国内でも町興しの催しなどとして全国各地で開催されているのだそうだ。

「出場するためにはティラノスーツを着なくちゃいけないんですけど、はじめて参加を考えていた時に、たまたまSNSで余っているティラノスーツを譲ってくれるという投稿を見つけたんです。そうして譲っていただけることになったので、無事にティラノサウルスレースに出場できました」
ちなみにこの時、余っていたティラノスーツは4着あったそうで、ティラさんと同じように3人の方が譲り受けたそうだ。
「皆さんモータースポーツがお好きな方で、レース観戦でサーキットに集まるので『それならみんなでティラノスーツを着て歩かない?』って盛り上がって以後、ティラノスーツを着てパドックをウロウロするようになったんです」

2025年のスーパーフォーミュラ開幕戦でもウロウロしてきた(笑)そうで「観客の方から『この前、カートの会場にも居ましたよね?』なんて声を掛けてもらったり、鈴鹿サーキットとスーパーフォーミュラの公式サイト、それからJスポーツさんが撮影した写真とか動画を使ってくれたりもしたんですよ!」と、ティラノサウルス姿のティラさんは、サーキットのパドックではちょっとした有名人になっているようだ。

そして、そんなティラさんをサーキットまで快適に運んでくれる100系ハイエースも注目度が高いそうで「こんな旧いクルマを見つけて『いいな、いいな』って羨ましがってくれる人がすごく多いんです」と嬉しそうに教えてくれた。

元々、新車のように綺麗なクルマだったという恩恵かもしれないが、それ以上に、飼い主さんとティラさんがしっかりと愛情を注ぎ、楽しそうに乗られているからこそ、ハイエースもますます“良いクルマ”として輝きを放って見えるに違いない。

(文: 坪内英樹 / 撮影: 土屋勇人)

※許可を得て取材を行っています
取材場所: 霞ヶ浦緑地(三重県四日市市大字羽津甲)

[GAZOO編集部]