昔は乗れなかったダイハツ・シャルマン ダイハツ車を愛するオーナーが想い続けた特別な一台

  • GAZOO愛車取材会の会場である倉敷スポーツ公園で取材したダイハツ・シャルマン(A55型)

    ダイハツ・シャルマン(A55型)



香川県で自動車整備店を営む『カワゾメ』さんの愛車は、1985年式のダイハツ・シャルマン(A55型)である。

今も昔も小型車の生産が中心のダイハツにとってシャルマンは当時の最上級車、今風に言えばフラッグシップモデルであり、当時、ダイハツの販売店で整備士として働いていたカワゾメさんにとっても憧れのクルマだったそうだ。
「シャルマンは当時の勤め先では社長専用車で、社員は乗ることができなかったんです。独立して自分の店を経営するようになってからも、その時の憧れが強く残っていて、たまたま業者向けのオークションで見かけた時、飛びつくように購入しました(笑)」

ちなみにこのシャルマンは、ダイハツとトヨタが1967年に業務提携を行い、その関係を深めていく過程の時代に誕生した車種であり、1974年発売の初代モデルはE20系の2代目カローラ、1981年発売の2代目モデルはE70系の4代目カローラがベースとなっている。

もちろんダイハツのフラッグシップモデルとして高級感を演出するための工夫も凝らされていて、カワゾメさんが乗る2代目シャルマンにおいては外板のプレスラインやインテリアはダイハツ独自のデザインを採用。カローラには装備されないリヤクォーターウインドウも追加されている。

販売店に勤務していた時代は、整備士だけでなく営業も掛け持ちするなど、忙しく働いていたカワゾメさん。その時に培ったノウハウや人脈が今も生きているが、特に古いダイハツ車を所有していたり、新たに購入したいと考えている人からの信頼は厚く、カワゾメさんのお店はちょっとした駆け込み寺となっているそうだ。

そのため、中古車として流通するダイハツ車には常にアンテナを張っているが、それでもシャルマンの販売物件を見かけることは本当に稀。特にカワゾメさんが乗る2トーン仕様はレア中のレアだそうだ。

「このクルマは、おそらく前のオーナーさんの時に塗装を塗り直していると思うんですよね。そうでなければ、ボディサイドのピンストライプが消えちゃっていることが多いので。すごく大事に乗られてきたことがわかるだけに、極力前のオーナーさんが乗っていたのと同じ状態をキープしておきたいなと思っています」

確かにパッと見ただけでもキレイなコンディションが保たれていることが伝わってくるシャルマン。昭和レトロを感じさせるレースのシートカバーやリヤウィンドウのカーテン、さらには可愛らしいぬいぐるみなども、前のオーナーさんから継承したものだそうだ。捨ててしまうのは簡単なはずだが、当時の空気感とともに、前オーナーさんの想いやこのクルマが歩んできた歴史を大事にしているところに、カワゾメさんの人柄が垣間見える。

カワゾメさんのシャルマンは1.5リッターの3A-U型、直列4気筒SOHCエンジンを搭載する、最高級グレード『ALTAIR(アルティア)』のGグレード。シャルマンは83年にマイナーチェンジ、84年に一部改良が入り、前期、中期、後期と分けられる。85年式のカワゾメさんのシャルマンは後期型だ。

ちなみにカワゾメさんお気に入りの2トーンカラーも年代で色味が変わっているとのこと。前期型は初代ソアラと同じ組み合わせだが、中期型で一度2トーンの設定がなくなり、後期型では再びトヨタのワンボックスカーであるマスターエースサーフと同じ2トーンで塗られているのだそう。そんなことを知っている人は、カワゾメさんを含めて日本に一体何人いるのだろうか?

E70系カローラはAE85およびAE86型のカローラレビン/スプリンタートレノともシャシーを共有しているため、シャルマンもエンジンや足回りの一部パーツはAE85やAE86と共有することができる。AE86が人気車種であるが故に、今後も部品の供給がある程度期待できるのは有難いが、最も入手が困難なのが外板パネルだそうだ。

「この時代のクルマあるあるですけど、外板はやっぱり錆びやすいんですよね。そしてシャルマンはレア車だけに、ドナーとなるクルマを見つけることも難しい。実はドアのゴムモールもカローラとは合わないんですよ。Aピラーとかリヤドアとか、一部塗装が浮いちゃってきてますから、本当に大事にしようと気をつけています」

シャルマンが新車の時から、何台も整備してきたカワゾメさんのところに辿り着いたのだから、シャルマンにとっては最高の嫁ぎ先に恵まれたと言っても良いだろう。プロならではの人脈を辿ると、物によっては新しく作ることも可能で、実際にマフラーは純正と同様の形状を再現し新たにステンレスで作ったそうだ。

フロントマスクに個性を与えるフォグランプもディーラーオプションだそうだ。特徴的なメッシュデザインを採用したホイールは、当時のディーラーオプションだった純正ホイール。タイヤの泥よけは標準装備だったもので、『CHARMANT』のロゴが入っているところが可愛らしい。テールランプもE70カローラとは異なるデザインで、外板パネルと同様、入手が困難なパーツのひとつという。

「ラジオやカセットオーディオも当時のまま残っているんですけど、オートアンテナが動かなくなっているので、ラジオは聴けないんですよね。いつか直したいと思っています。あと、エアコンは当時ディーラーにクルマが入ってきてから後付けするのが当たり前だったので、何台つけたかわかりません。1日に3台とか、もうそればっかりやってたこともありましたね(笑)」

シャルマンのエアコンは冷気を発生するクーラーボックスがインパネの奥にあるため、取り付けに手間がかかるのだそう。ただ、そんな苦労話を披露する時もカワゾメさんはいつも笑顔だ。もし、カワゾメさんが整備を仕事として割り切ってやっている人だったら、そうはならないはず。その表情には、これまで仕事で関わってきたダイハツ車が本当に好きなんだなと感じさせる温かみと、“なんとかしてやろう”という力が漲っている。

「このクルマは半ドアの警告音も、ちょっと特徴があるんですよね。他のクルマだと、ブーブーって感じが多いんですけど、こいつはピヨッピヨッって感じで、なんかカワイイんですよ(笑)」

最近はコンディション維持のため、イベントに参加する時などにしかシャルマンには乗らないようにしているというカワゾメさん。旧車ばかり集まるイベントでも、シャルマンは珍しがられることが多く、カローラのミーティングに参加した時には、「なぜか一番目立つ、いいところに停めさせてもらいました(笑)」と、嬉しそうに話してくれた。

今ではSNSを通じてダイハツ車乗りのコミュニティにも参加し、“自分のクルマを直して欲しい”と、県外のオーナーさんから依頼を受けることも多いとのこと。人一倍のダイハツ愛を胸に秘めたカワゾメさんは、ひとりのシャルマンオーナーであると同時に、多くのダイハツオーナーにとって頼りにされる、縁の下の力持ちだ。

(文: 小林秀雄 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:倉敷スポーツ公園(岡山県倉敷市中庄3250-1)

[GAZOO編集部]

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