父と息子が共有する『最後のエボ』ランサーエボリューション ファイナルエディションと歩んできた10年
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三菱・ランサーエボリューション ファイナルエディション(CZ4A型)
限定という言葉は、いつの時代も人の心をくすぐる特別な響きを持つ。
特にクルマの場合、標準車にはない豪華装備や専用仕様が与えられることが多く「限定車=お得で特別な存在」と感じる人は多いだろう。さらにその台数が少ないモデルであれば “特別な満足感”も味わえる。つまりスペックを超えた所有する喜びを得られる存在というわけだ。
そんな“特別な一台”を愛車に選んだのが、三菱・ランサーエボリューション ファイナルエディション(CZ4A型/2015年式)を所有する『ショウ』さんだ。
当初はWRCなどの競技に参戦するためのホモロゲーション取得用に期間や生産台数を限定して発売される“ランサーのエボリューションモデル”という位置付けからはじまった『ランエボ』。その後、人気の高まりとともにランエボⅦからは『ランサーエボリューション』という車名でラインアップされるようになり、ランエボXでは台数や期間を限定しない“カタログモデル”として販売されるに至った。
そして、そんなランエボシリーズのモデル末期となる2015年に1000台限定で発売した“最後の限定車”こそが、ショウさんの愛車であるファイナルエディションなのだ。
「ファイナルエディションを買う前は、同じランエボⅩのAT(SST)車に乗っていました。とは言っても、まだ学生でしたので父が気に入って購入したランエボⅩを1年くらい借りていたという感じです。そのクルマにも不満はなかったんですが、付き合いのあったディーラーから『ファイナルエディションが発売される』という電話をもらったのが買い換えるキッカケになりました。もちろん、当時は学生ですから新車を購入できるような身分ではなかったのですが、父と一緒に契約したことでローンを通すことができたのは幸運。共同所有で支払いは折半という形でファイナルエディションに乗り換えることができました」
ちなみにランエボⅩのエンジンは、第3世代(ランエボⅨ)まで搭載されていた4G63から新開発の4B11へと変更されている。標準仕様では280ps/43.0kgm(後期型では300ps/43.0kgm)のスペックを発揮しているが、ファイナルエディションではエキゾーストバルブを変更するとともに、専用チューンが施され313ps/43.7kgmへとパワーアップ。名実ともに“最強のランエボ”へと進化しているのだ。
性能に関しては文句なく大満足。しかも純正で補強バーなども装備されているため、新たに手を加える必要を全く感じなかったという。しかし、それでもオプション設定されていたタワーバーに変更したことで、重量は1.7kgほど軽量化を果たしているという。
(正式名称にはⅩという番号は付かないが、記事内ではファイナルエディションについても『ランエボⅩ』と呼称させていただく)
「ランエボⅩってノーマルの状態で完成されたクルマだと感じました。だから性能に関わるような余分なカスタマイズは行わないと決めていました。一部カラーコーディネイトを兼ねてパーツ交換していますが、基本的には純正スペックを維持しています」
もちろんマフラーもノーマルをそのままキープ。純正オプションで用意されていたヒートプロテクターを装着することで、純正のパッケージングながらスポーティな装いとなっているのはショウさんもお気に入りのポイントだ。
「子供の頃はインプレッサが好きで、WRCで活躍していた印象から将来は丸目インプに乗りたいって考えていました。でもランエボⅩを手に入れてからはカタログを買い漁ったり、ネットで様々な情報を学んで行くうちに、その魅力にどんどん惹かれていったんです。特に電子制御の素晴らしさは機能を学んだことで理解できるようになりましたよ」
乗り換えるに当たって、以前乗っていたのがAT(SST)だったこともあり、久しぶりのMT車に合わせて納車前にはレンタカーを借りてMT操作のおさらいもしたという。そして納車された時はまだ学生だったこともあり、時間の余裕は十分。通学など毎日のように乗って出かけることがほとんどだったという。
「父と共同所有という形でしたが、結果的に学生時代は僕がずっと乗っていたので、父はほとんど運転する機会がありませんでした。でも父もクルマ好きで、一時期は家族のためにクルマ趣味を封印していたこともあり、ランエボⅩを購入したことをキッカケに父のクルマ趣味が暴走してしまって…新たにクラウンマジェスタとか購入して、そちらに気を取られていたので、なし崩し的にランエボⅩは僕のものになったとような感じですね」
その後、大学を卒業し社会人として働きはじめると乗る機会は減少したものの、愛情が冷めることはなく、月に一度の洗車で、ボディは新車同様の輝きを放つ。
「以前は毎日のように乗っていたんですが、そのペースは月に1度のイベントやドライブといった程度まで激減してしまいました。でも、納車のタイミングでランエボ用のガレージも建てていたし、しっかり洗車もしているので、ボディは綺麗な状態をキープできているというのは、乗る機会が減ってしまっても安心して維持できている理由ですね」
ホイールはノーマルで専用カラーのBBSを装着し、ブレンボのキャリパーなども標準装備。エボシリーズらしいパフォーマンスを備えた装備も、ショウさんが考えるコンセプト通りに一切手を加えることなくそのままの姿で残されている。
ランエボⅩではWRCには参戦していなかったものの、マッドフラップなどのオプションパーツも存在しているのはエボシリーズだからこそ。また、グリル内部を照らすLEDライトなど、ファッション性に富んだオプションパーツも用意されていたのは意外な事実。こういったオプションパーツを上乗せすることで、ショウさんのファイナルエディションはより一層、特徴的に色付けているのだ。
「ファイナルエディションの購入者特典として、ディーラーからもらった豪華なカタログがあるんです。が、このブックレットは未開封のまま保存しているので、自分もその中身がわからないんですよ(笑)。たぶんこのままこのブックレットを開くことはないんですが、記念として一生大切に保管していくんだと思います」
エクステリア同様にインテリアも極上コンディションのノーマル状態を維持している。優れた電子制御による安定したハンドリングなど、ハードな走りにも対応していることは理解しているが、やはり1000台限定というレアな存在から、サーキットなどで使用することは考えていない。もちろん、休日のドライブでも丁寧な運転を心がけ、クルマに負担をかけないようにしているそうだ。
標準車ではファブリック仕様となるレカロシートは、ファイナルエディションではレザーとアルカンターラのハイブリッド仕様となっている。シートの設計は共通のため、ホールド性などは同様ながら質感の違いは特別感があり、乗っていても満足感はひときわ高い。エンジンのパフォーマンスだけでなく細部の仕立ても最後を飾る限定車らしい作り込みとなっているというわけだ。
シフトコンソールに輝くシリアルナンバープレートは限定車の証。
ちなみに、ファイナルエディションは限定数の1000台があっという間に完売となったそうで、ショウさんはディーラーから連絡を受けてすぐに契約まで踏み切ったため購入することができたけれど、少しでも迷っていたら手に入れることはできなかったかもしれない。
「現在の走行距離は3万6000kmくらいなので、あまり走っていないのかな。でもそのほとんどは学生時代に僕が走らせていて、共同所有だったはずの父が乗ったのは極わずか。本当なら今日も父と一緒に来た方がよかったのかもしれませんが、ナイショで参加させてもらっています。以前もイベントに出場して雑誌に載った時も父には事後報告でしたし、ユーチューバーの方に取材してもらった時も父には黙っていましたから、今回も帰ったら伝えてみます」
ランエボⅩをキッカケに、クルマに乗る楽しさを学んだというショウさん。そんなショウさんとともにその楽しさを分かち合うことができるのは、共同所有者でもあるお父さんにとっても大きな喜びでもあるはず。
今回の取材会のようにサプライズの話題作りや、それにまつわる会話など、同じクルマ好き同士として時間の共有。この理想的とも言える親子関係の構築にも、ランエボⅩがひと役買っていることは間違いないだろう。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 堤 晋一)
※許可を得て取材を行っています
取材場所: 埼玉スタジアム2002(埼玉県さいたま市緑区美園2-1)
[GAZOO編集部]
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