子供の頃から憧れていたランエボを手に入れ、家族や仲間と共に愛でる

  • GAZOO愛車取材会の会場である倉敷スポーツ公園で取材した三菱・ランサーエボリューションⅩ(CZ4A型)

    三菱・ランサーエボリューションⅩ(CZ4A型)


学生時代に『俺は〇△□を絶対に買う!』といった、クラスメイトの“クルマ購入宣言”を聞いたことがあるという人も少なくない。言うは易し、さも本気で買うかのような熱弁なのだが、実際にその宣言が成就されるのは2割未満といった肌感だ。ここに紹介するオーナーは、その2割未満に入ったクルマ好きのナイスガイである。

いつかは乗ってみたいと夢見た、三菱ランサーエボリューションⅩ(CZ4A型)を手に入れた『きづく』さんは、クルマ好きになるキッカケを作ってくれた父親、クルマ趣味に理解を示してくれる奥さん、気の置けない仲間たちに囲まれ、実り多きカーライフを日々楽しんでいるという。

「なぜか子供の頃からランエボに惹かれるものがあって、生まれて初めて作ったプラモデルもランエボVIだったんです。今でも歴代モデルの中で一番好きなのはランエボVIなんですけど“いつかはランエボに乗りたい”と、現実的に考えるようになったのは高校生の頃でした」

きづくさんが高校生の時に、現役のランエボとして販売されていたのがランサーエボリューションX。ご存知の通り、歴代最後のモデルとなるランエボだが、高校生のきづくさんにとっては手の届く存在ではなかった。

「社会人になってからも、ランエボへの情熱は冷めなかったんですけど、25歳の頃にランエボXのファイナルエディションが発売されたんですよね。それも当時の状況ではやっぱり買うに買えなくて、指をくわえている間に生産を終了してしまったという感じでした」

そんなきづくさんが、ランエボの代わりに最初のマイカーとして購入したのが、同じ三菱のコルトラリーアートVersion-R(Z27AG型)であった。コンパクトカーのコルトをベースに、1.5リッターの直4ターボエンジンを搭載し、専用のオーバーフェンダーなども備えたホットハッチだ。それはそれでとても気に入り、なんと9年半に渡って25万kmを走行したという。

「今思うと、コルトを最初に勧めてくれたのも父だったんですよね。そういう父は日産のアベニールに乗った後は、カペラとかファミリアとか、割とマツダ車に乗っていることが多かったんです。それで僕も最初はロードスターを買おうかなと思っていたんですけど『コルトの速いやつ面白そうだから乗ってみろ』って感じのことを言われたんですよ。あと、父が仕事で乗っていたのが三菱ふそうのトラックだったので、それも漠然と三菱への親しみとか、憧れに繋がっていた部分もあったのかも知れません」

コルトラリーアートVersion-Rに乗っていた時から、セカンドカーとしてミニカを2台乗り継いだ他、現在は奥さんの移動用としてアウトランダーPHEVとeKワゴンも所有。「気付けば三菱車ばかりに囲まれてきました」と苦笑するが、きづくさんが本命のランエボを手に入れたのは2019年のことだった。

「仕事柄、長期で海外出張に出ることが多いんですけど、出張に出ている間にコルトの車検が切れることになっちゃったんですよね。だいぶ距離も走っていましたから、いっそのこと買い換えようかと思って、念願だったランエボを本格的に探し始めました。それで理想としていた年式と仕様の中古車がタイミングよく見つかったので購入したんです」

そんな風に経緯を説明してくれたきづくさんだが、実は奥さんと付き合っていた当時は「エボ買うまで結婚せん!」と言い続けていたのだとか。コルトの車検も確かにキッカケのひとつには違いなかっただろうが、男としてのけじめを意識したのも念願のランエボ購入に至った動機だったのではないだろうか。

そうして手に入れたランエボX。きづくさんは思い描いていた通りの走りの良さに加え「今自分はランエボに乗っている!」という所有感を満喫しているようす。そしてそれだけでは飽き足らず、もともとクルマいじりも好きだったお父さん、さらには高校時代からの仲間とともに、さまざまなカスタマイズにも着手した。

まずは1000台限定で買うに買えなかった憧れのファイナルエディションに少し見た目を近づけようと、グロスブラック塗装が施されたバンパーセンターを装着。ルーフもブラックに塗装して2トーン仕上げにしてあるが、それも当時のメーカーオプションを再現したものだ。

また、ファイナルエディションはボンネットのエアアウトレットもグロスブラックとなるのが特徴だが、そこは「最近、DIYにチャレンジしてハマっている」という、カーボン加工を実施。フロントのリップスポイラーも、きづくさん自身がベニヤ板で成形し、FRPを巻いた上でランダムにカーボンチップを固定させたという自信作だ。
購入車両には装備されていなかったフロントのフォグランプもDIYで取り付け。イエローに光るバルブを使用している。

ホイールにもこだわり、BBS製の『LM』という伝統的なモデルを装着。ファイナルエディションにもBBS製鍛造ホイールが標準装備されるが、ここは、きづくさんならではのオリジナリティを発揮したという。

「実はブレーキキャリパーとの兼ね合いで、最初はLMを装着することは断念していたんです。それで妻のために購入したアウトランダーPHEVにLMを投入してみたんですけど、それを日々見ていたらやっぱりランエボにLMが装着されていないことがだんだん悔しくなってきまして…それで改めて綿密に計測と調整を行ったら装着できることがわかったので、念願のLMオーナーになることもできました(笑)」

得意のDIYは内装にも及び、Aピラーにツイーターを固定するケースを自作。さらにインパネには日産フーガ純正のアナログ時計を埋め込み加工するなど、オリジナリティのあるカスタマイズを楽しんでいる。

そしてクルマは常にキレイな状態を保とうと、トランクには洗車用のウエスを常備。突っ張り棒を使って干す、タクシーのような古式ゆかしい整頓術も取り入れている。
「父もクルマ好きですけど、さらに遡ると祖父も同じようにクルマ好きで、このやり方は我が家で代々受け継がれてきたやり方なんですよ(笑)。クルマはいつもキレイに! が教訓で、それを実践している父の姿を見たり、色々な知識を教えてもらったりしたことで自分もクルマ好きに育ちましたから、大事に守っていきたいんですよね」

リヤウインドウに『from custom house hironoh』というステッカーが貼ってあるのが目に入ったので、馴染みのショップさんですか? と聞いてみると、実は『hironoh』がお父さんのニックネームなのだとか。
「もともとクルマをいじる楽しみも父から始まったことですし、いつもみんなで家に集まってワイワイとクルマを作ってますから、何かそれっぽい名前をつけてみたんです(笑)」

夢にまで見た愛車に、父親のあだ名をステッカーにして貼っているということからも、きづくさんとお父さんの距離感、そしてどれだけ“クルマが好きという価値観”を共有できているかが窺い知れる。

「購入時は1万4000kmだった走行距離も、いつの間にか7万9500kmまで伸びてしまいました。あとはどこまで維持できるかの勝負ですね。クルマにはいつも全力な僕のことを、海のように広い心で許容してくれている妻には本当に感謝しています。もう少しで子供も産まれるので、ランエボに乗せて一緒に旅行に出かけたりしたいです。そして、いつかはこのクルマを譲ってあげることができたら最高ですね(笑)」

祖父の代から始まり、家族4代に渡って続いていこうとしているクルマ愛。誰よりも明るく、誰よりも楽しそうにクルマの話をするきづくさんの想いは、きっと未来へと受け継がれていくに違いない。

(文: 小林秀雄 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:倉敷スポーツ公園(岡山県倉敷市中庄3250-1)

[GAZOO編集部]

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