コンセプトカー トヨタXYRへの一目惚れから26年。ZZTセリカへの変わらない情熱

  • GAZOO愛車取材会の会場である埼玉県の『埼玉スタジアム2〇〇2』で取材したトヨタ・セリカ SS-Ⅱ(ZZT231型)

    トヨタ・セリカ SS-Ⅱ(ZZT231型)


世界各地で開催されるモーターショーには、各メーカーが未来を見据えたコンセプトカーを出品する。その多くは開発中の技術やデザインの方向性を示すもので、ショーモデルそのままの姿で市販化されることは稀だ。
しかし、例外もある。1999年のデトロイトモーターショーで登場し、後に市販版セリカへとつながった『トヨタ XYR』もその1台だ。
このコンセプトカーのデザインに衝撃を受け、学生時代から「いつか自分の愛車に」と心に決めたのが、トヨタ・セリカ SS-Ⅱ(ZZT231型)のオーナー『スペア18』さんである。

「子供の頃、ナイトライダーを見てクルマに興味を持ち、首都高バトルやグランツーリスモといったカーゲームによって、クルマの沼にハマっちゃいました。ゲームの中ではスープラ(JZA80型)をベースにしたTRD3000GTを好んで使っていて、他にもMR2(SW20型)ベースのTRD2000GTとかもカッコ良いよなって憧れていました。その影響で、運転免許を取ったらエアロパーツが装着されたトヨタのスポーツカーに乗るぞって、漠然と考えていたんです。そんな時、1999年のデトロイトモーターショーで発表されたトヨタXYRを雑誌で見たんです。もう鳥肌が立つくらい衝撃的で、このクルマに乗りたいって本気で思いました」

ほどなくして憧れだったトヨタXYRは7代目トヨタ・セリカとして発売が開始され、もはやこのセリカ以外のクルマは目に入らなくなってしまっていたスペア18さんは、運転免許を取得すると“親ローン”で新車のセリカTRDスポーツMを手に入れた。

念願の限定車ZZTセリカを手にした喜びから、クルマ熱はさらに加速。オーナーズクラブに参加し、オフ会へ通い、当時まだ現役だったJGTCのセリカを観戦するためサーキットにも足を運んだ。ほかにも頭文字Dの聖地巡礼などなど、ZZTセリカと過ごす時間は増え続けていった。
しかし、別れは突然訪れる。
「2004年のことですが、雨の日に擦り減っていたタイヤで水溜まりを踏んでしまったんです。そのままコントロールを失ってガードレールに衝突。あっけなく廃車になってしまいました…。自分の不注意と整備不足で愛車を失ってしまったのはショックでしたが、その戒めとして廃車になってしまった愛車から、交換した後期型のテールランプとシフトノブ、TRDスポーツMのリヤウイングを持ち帰りました」

こうしてTRDスポーツMとはお別れしたものの、やはりその他のクルマに興味を持てずにいたスペア18さん。しかし、2009年に再び転機が訪れる。
「近所の中古車屋さんにシルバーのZZTセリカが置かれていたんです。それを見た時、やっぱりZZTセリカに乗りたいと思うようになりました。その個体はタバコの臭いが酷かったので購入には至りませんでしたが、そこから本格的に探し始めて、最終的に見つけたのが今のSS-Ⅱです。ディーラー整備で大切に扱われていたようで、迷わず購入を決めました」

「購入時の走行距離は6万kmほどでしたが、それから16年で20万kmを超えています。整備に関しても、お世話になっているディーラーのメカニックさんが、元々ZZTセリカに乗っていたため、メンテナンスに関する情報やパーツの調達など、安心してお任せできるのは運が良かったのかな。以前乗っていたセリカのように、整備不足でお別れすることがないよう、常に万全の状態を維持できるように環境も整えています」

ちなみに、ZZTの一部に採用された高性能・多部品構成のスーパーストラットサスペンションは、現在では部品供給が厳しく“厄介”と見られがち。しかしスペア18さんはノーマルストラットモデルを選択することでその不安を回避。さらに現在は新品ノーマルサスにリフレッシュ済みで、乗り心地にも不満はない。ホイールはスーパーストラットモデルに装着されていた純正品に交換している。

購入を決めるきっかけとなったのが、ディーラーオプションのエアロパーツが装着されていたこと。子供の頃に憧れたTRD3000GTやTRD2000GTといったエアロフォルムを彷彿とさせるスタイリングは、あの頃思い描いたカッコ良いエアロをつけたトヨタ車そのものだったという。
『JGTCセリカのエアロフォルムをフィードバックしたTRD1800GTがあったら』という空想マシンを完成させるという意味でも、このエアロパーツが購買意欲を刺激したというわけだ。

そして手を加えた最初の箇所は、初代から取り外して保管していた“思い出のパーツ”たちだった。
「2台目となるZZTセリカを購入し、まず手を加えたのが初代から外した後期テールとTRDスポーツMのリヤウイング、そしてシフトノブを移植することでした。理想の形というか、志半ばで失ってしまったTRDスポーツMでの後悔を忘れないためには、これらのパーツを組み合わせることが必要だと感じていたんです。もちろん、このZZTセリカを手に入れてからは、以前のように暇があれば全国色々なところに出掛けるようになりました。北は秋田、南は滋賀あたりまでですが、中でも富士スピードウェイでの撮影会とパレードランは特に印象深いですね」

純正エアロパーツに加え、スタイリングのアクセントとして取り入れているのがスポーツリッド。当時のスケルトンブームに合わせて、トヨタがオプションパーツとして販売していたアイテムは、今や入手困難なプレミアムパーツ。2010年に購入した際には在庫が2つしかなかったというだけに、まさに“滑り込み”で手に入れた逸品だ。

ZZTセリカへの愛は、コレクションにも現れている。
モデルカーはもちろん、カタログや雑誌に至るまで様々で、特に雑誌に関しては運転免許を取る前のデビュー時に発売されたものを購入し、解説やインプレッションを読み込んでオーナーになる前の勉強にも使っていたものだ。こういった資料を捨てることなく大切に保管し続けているのも、スペア18さんのZZTセリカに対する愛の強さを物語っている。

「ZZTセリカとは直接関係ないのですが、ブルーインパルスも好きなので、航空祭など飛行展示に合わせてセリカで遠征もしています。時計やヘルメットバッグなどはブルーインパルスにちなんだものを愛用しているんです。ちなみに、ブルーインパルスの中ではライトウイング担当の3番機が推しですね」

スタリイングはもちろんだが、インテリアに関しても純正状態をキープ。
「子供ができてからはセリカで出かける時間が減っていますが、暇な時は峠巡りなんかもしています。速そうなデザインではありますが、実際に走らせるとそれほど…という性能ではありますが、ハイカムに切り替わった6000rpmからの加速感や8000rpmまで回りきるエンジンはやはりスポーツカーですよ。そして、ノーマルの内装だからこそ“セリカらしさ”を感じられるんです」

シートに関してもノーマルをそのまま使用。20万kmも走行しているにも関わらず、退色していることもなく、コンディションの良い状態が維持できているのは普段からの手入れが行き届いている証拠。また、後部座席には9歳と5歳になるお子さんのためのジュニアシートもセットされている。

「以前はパッソをファミリーカーとして所有していました。けれど、パッソにはETCを付けていなかったので、どちらかと言えばセリカがファミリーカーのような扱いでしたね。今は家族の移動用に2013年式のトヨタ・スペイドを用意しているので、今回は久しぶりに家族みんなでセリカに乗ってのドライブとなりました」

コンセプトカーにひと目惚れしてから26年。その恋心を今も失うことなく、一途にZZTセリカを愛し続けているスペア18さん。その思いを継続できるのは、意外と維持費が掛からないことにもあるという。
「大きな故障がないのは定期的なメンテナンスのお陰ですかね。また、タイヤの径も小さいので交換費用も抑えられますし、燃費も12km/Lくらいは走るのでガソリン代もほどほど。無理せず“趣味も実用も楽しめる”のが、ZZTセリカの完成度なんじゃないでしょうか」

(文: 渡辺大輔 / 撮影: 堤 晋一)

※許可を得て取材を行っています
取材場所: 埼玉スタジアム2002(埼玉県さいたま市緑区美園2-1)

[GAZOO編集部]