自動車部に入部してから見つけた初めての愛車。2ZZエンジン搭載のセリカは妥協なき選択
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トヨタ・セリカSS-Ⅱ(ZZT231型)
クルマ好きにとって、自分好みのスタイリングや性能を手に入れるためのカスタマイズは、楽しみのひとつでもある。しかし、そこで使用するパーツは自分の欲しい性能に特化した社外品だけではなく、純正部品を活用したアップグレードも選択肢に入ってくる。
特に、2000年世代のモデルともなると、メーカーからも多くのカスタマイズパーツがオプションとして用意されているケースも多い。そのため、社外パーツを使わなくても十分に自分好みのアレンジが可能になるというわけだ。そんな純正スタイルにこだわりながら、自分だけの一台を目指してカスタマイズを楽しんでいるのが2005年式トヨタ・セリカSS-Ⅱ(ZZT231型)のオーナー『Ray』さんだ。
セリカと言えば、日本を代表するスペシャリティスポーツのひとつ。1970年に誕生した初代から7代目となるこのZZT23#系まで、7世代36年の歴史を持ち、各世代ともに若者を中心に人気を集めたモデルである。
最終型となるこのZZT23#系は1999年に登場し、それまで設定されていた4WDではなくFFレイアウトとなり、グレード体系も上級モデルとして2ZZ-GEエンジンを搭載する『SS-Ⅱ(ZZT231型)』と、エントリーモデルとして1ZZ-FEを搭載する『SS-Ⅰ(ZZT230型)』の2種類に絞られた。
そんなセリカをRayさんが手に入れたのは4年前。大学1年生の頃のことだ。
「昔からクルマが好きで、大学入学と同時に自動車部に入部しました。その頃は運転免許を持っていなかったのですが、同期がシルビア(S15型)に乗っているのを見て、漠然とカッコイイな〜って思いながら、愛車を夢見て中古車サイトを物色していましたね。当時は予算の都合などもあって、2ZZを積んだMT車ということで、トヨタ・カローラランクスか、アレックスを探していたんですが、バイト先の先輩に『セリカも同じパッケージングだよ』と、聞いたんですよ。本音を言えばランクスやアレックスを探していたのは、こだわりたい条件と予算から割り出した妥協点だったんです。ですから、このモデルのセリカを知ってしまってからは、一気に心を奪われてしまいました」
Rayさんのクルマ選びでこだわったのは、連続可変バルブタイミング・リフト機構を持つ2ZZ-GEを搭載しているMT車であること。ライトウエイトスポーツのパワーユニットとして、今も人気を集める4A-GEや3S-GEの後継機となるこのユニットは、高回転域でハイカムに切り替わるという機構によって、アクセルを踏めば踏むほど楽しめるエンジン。走らせる楽しみを存分に味わえるので、このエンジンの搭載は愛車の必須事項だったという。
ターゲットがセリカに定まったところで、再びインターネットを中心にして、愛車探しを再開したRayさん。しばらくすると個人売買で色やグレード、年式、価格などの条件が揃った個体を発見した。車体は群馬県にあるというので、すぐに両親を説得し、島根県から高速バスと新幹線を乗り継いで現車確認に足を運んだという。
「この時はまだ運転免許を取得して1ヶ月程度しか経っていなかったんです。だから、現車確認に向けてネットで買う時のポイントやセリカのウィークポイントなどを事前に研究しておきました。現地に着いてからも詳しい先輩とオンラインでチェック項目を確認してもらい、1時間くらいかけて細かいところまで見せてもらいました。結果、はじめての愛車として問題はないと判断し、購入に至りました」
購入した時は、夏真っ盛りながら、スタッドレスタイヤと社外ホイールが装着されていた。そのため、夏タイヤへの交換とともにホイールも好みのものへと変更するべく検討をおこなったという。
「セリカのホイールはPCD100の5穴のため、他車種の純正ホイールという選択肢だと、なかなか好みのものが見つからなかったんです。でも同世代のカルディナGT4用がシンプルな5本スポークで、サイズもジャストという情報を得ました。アフターパーツブランドのホイールだとどうしても主張が激しくなってしまいそうで、純正流用なら自然なフォルムでまとめられるのでは?と考えたのが、これを選んだ理由ですね」
エアロパーツなども純正品だが、マフラーに関しては2ZZ-GEの性能を引き出すために、アフターパーツの砲弾タイプに変更。スタイリングだけでなく、高回転域まで回して楽しめるセリカのキャラクターに合わせてアレンジしているというわけだ。
「購入時から、基本的な整備やメンテナンスは自分達で行うようにしています。でも、やはりプロではないので、整備に関してはいろいろなトラブルもありましたね。購入後1年が経過したあたりで、エンジンオイル交換をしていたところ、なぜだかブレーキが固着しちゃって、夜中まで掛かって直してみたり…。他にも、セリカオーナーのミーティングで、瀬戸内セリカdayというものがあるんですが、前日にクーラント交換をしていた時に、エア抜きのパイプを折ってしまって参加できなかったこともあります。現在は大学院の1年生で、そのまま自動車部に在籍しているので、今後も思い出が増えるのかもしれませんね(笑)」
7代目セリカの特徴は、直線を基調としたエッジを効かせたスタイリング。Rayさん自身もこのフォルムにひと目惚れし、4年経った現在でもまだまだ愛情は尽きないという。
昨年は新品の車高調整式サスペンションを導入し、フェンダーアーチとタイヤとのクリアランスを考慮しつつ、車高を下げすぎずに丁度良いバランスをと考えながらセットアップしたそうだ。
この時代のセリカには、多彩なオプションパーツが揃っているというところも、純正を基準にカスタマイズ楽しむRayさんにとっては嬉しいポイント。
リヤガーニッシュの『CELICA』のエンブレムは純正ではないものの、当時のオプションパーツとして用意されていた発光体をベースに、青森県のオーナーが復刻したものをセットした。さらにフューエルリッドはTRD製のスケルトンタイプを装着。スケルトンや発光といったキーワードは、平成中期のブームを捉えたアイテムであり、Rayさん世代には新鮮に映っているのだとか。
ボンネットスクープは『TRDスポーツM』に装着される大型タイプに交換。こういったアイテムを含め、純正オプションパーツは年々希少になっていくため、手に入れられるチャンスがあったら、頑張って手に入れるように心掛けているそうだ。
「もともとスポーツカーが好きだったので、クーペフォルムの中でも最近のクルマにはない尖ったセリカのデザインは、他には見当たらないので気に入っています。特にボディサイドのキャラクターラインは、ノペッとなりそうな面を引き締めて、スポーツカーらしい印象を作ってくれていると思います。当初探していたランクスやアレックスも悪くはないのですが、やっぱりクーペデザインのセリカを手に入れて正解だったと思いますね」
クリアな状態をキープしているヘッドライトは、当初は“イカリング”が組み合わせられたカスタム品が装着されていたという。しかし、購入時に付属していた純正ヘッドライトの表面を磨きこんでリフレッシュをおこなったうえで装着することで、ノーマルフォルムへと戻したそうだ。
ボディカラーはグレーメタリックと呼ばれる純正色。運転席側はキレイな状態をキープしているが、助手席側はクリア層が飛んでしまい、白くボケた状態になってしまっているのが悩みのタネそうで、今後はお金を貯めて同色でペイントし直すことも考えているそうだ。
大学1年生の夏から4年間。セリカとの思い出は、自動車部との仲間とともに過ごしたかけがえのないものであることは間違いない。
「運転免許を取ったばかりで何も知らない自分に、クルマの楽しみを教えてくれた先輩。そして整備に付き合ってくれた同期や後輩と過ごした記憶は、このセリカにいっぱい詰まっています。だからパーツの供給がある限り、乗り続けていきたいなって思っています。もちろん、大学の仲間との思い出だけでなく、両親や祖父母を乗せてドライブに出掛けた家族との思い出もあるので、これからもどんどん走らせていって、さらに多くの思い出を作っていきたいですね」
大学で教わる勉強とは違う、クルマを通じて築き上げた仲間との絆。学生という限られた時間を有意義に過ごすことができたのは、このセリカが相棒だったからとも言える。
大学院へと進んで、さらに勉学を深めながら、後輩との思い出を紡いでいく媒介として、このセリカはRayさんとともに走り続けていくのだ。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 稲田浩章)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:島根大学 松江キャンパス(島根県松江市西川津町1060)
[GAZOO編集部]
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