最初は乗り気じゃなかったトヨタ・86が『最高の愛車』へと変わっていったその理由とは
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トヨタ・86 GT(ZN6型)
どんなに愛着を持ったクルマであっても、故障や経年劣化といった問題が顕著になってくれば、お別れの選択を余儀なくされてしまうケースもあるだろう。しかしながら、次に乗り換えたクルマに愛情を移行できないという人も少なくない。
この2014年式トヨタ・86 GT(ZN6型)のオーナー『ミスター』さんもまた、当初は乗り換えによって愛情の行方が分からなくなってしまったひとりだ。
以前はトヨタ・MR2(AW11型)を所有していたというミスターさん。すでに旧車と呼ばれる年式に差し掛かった愛車は、常に修理との戦いでもあったという。
特にボディのサビや腐りは日々進行してしまい、直してもまた次の部分にサビが発生するというイタチごっこが続いていた。さらに、Tバールーフ車だったため、雨漏り対策は施していたものの、徐々に劣化が進んでしまっていた。極め付きは、スーパーチャージャー搭載車であったことで、専用のエンジンパーツが入手困難になってしまったのが、手放す決意を促す最大の要因となってしまったのだ。
乗っていたMR2は、経年によるヤレの他にも、左右でホイールベースが違っていたため、事故車である可能性も高かったという。しかし、そんな状態であっても、唯一無二の存在として愛情を持って接していた。
「MR2を手放す決意をしたのは、会社の下取り車としてこの86が入ってきたこともキッカケになりました。手頃な価格で乗れるスポーツカーというのは、修理に四苦八苦していた自分にとってはかなり魅力的に映りましたね。さらに、子供が生まれたばかりで、趣味のクルマにお金はかけられない。下取り車だからリーズナブルだと、妻を説得して購入に踏み切りました。ただ、本音を言えばまだMR2に乗りたかった。もっと言えば、乗り換えるならスバル・インプレッサSTI(GRB型)に興味があったので、86には今ひとつ愛着が湧かなかったんですよ」
こうして4年前に手に入れた86は“欲しかったクルマ”ではなく、しかも購入する際に86について調べていく中では、スタイルCBやGRスポーツといった車体に目移りするばかりで、スタンダードなGTへの興味はなかなか盛り上がることはなかったという。
それでも、MR2では叶えられなかった『家族みんなでドライブする』という目標を実現できる4シーターのレイアウトは、徐々にポジティブな思考へと変化させてくれた。
また、いざ乗ってみると想像していた以上に好感触だったことが、気持ちを切り替える大きな転換点となった。特に2.0リッターエンジンによる加速力はMR2と比べても格段にアップし、さらに6速MTは高速道路を走っていても楽チン。30年以上の進化は確実に快適性をもたらしてくれた。
そして、これまでとは違った快適性を体感したことに加えて、愛情を深めるキッカケとなったのがカスタマイズによって自分好みのスタイルを作り上げたことである。
特にアルミホイールはデザイン的にも好みであった、エンケイ製のRPF1をチョイス。この取材会を前に交換したアイテムで、F1由来であるそのスポーティなデザインで86のスタイリングをより際立たせてくれる。
「会社的にもあまりハードなカスタマイズはできないのですが、何よりも妻にバレないレベルで手を加えています。ですからなるべく交換したことが分からないように(笑)、純正サイズで収めているのですが、このホイールに関してはまだ妻に話していないんですよね…」
スポーツカーらしい排気音を楽しむのも、愛情を深めるカスタマイズの一手。そこで、マフラーにはHKS製をチョイスし、サウンド面とともにカーボン柄を加えるスポーティなルックスも作り上げている。
「MR2に乗っていた時は、修理に手間とお金が掛かっていたんですが、86ではその予算をカスタマイズにかけられるようになりました。手間を掛ければ掛けただけ、自分の思い描いた姿に変化していくのは今までとは違った楽しみですね。おかげで86がどんどん“自分のクルマだ”って気持ちが盛り上がっていくので、当初とは比べ物にならないほど愛情が深まってきていますヨ」
スタイリングだけでなく、運転する際に自分の視界に入るインテリアパーツも好みに合わせてリフレッシュ。ステアリングはスポーツカーらしくMOMO製に変更しながら、小径化したことでクイックな操作感を手に入れている。
また、細かい部分ではメーターフードや助手席前のパネルなどを後期型の純正品に変更。これらのパーツはネットで見たカスタマイズ例を参考に、徐々に組み替えているそうだ。
ドアハンドルやセンターコンソールはBRZ用の純正品と交換。純正パーツながらアレンジが違ったアイテムを組み合わせることでその印象を変えている。また、レクサス・LC純正のスタータースイッチを移植するなど、細かいポイントのアップデートも行なっている。
“なるべく奥さんにはバレないように”という、苦心しながらのカスタマイズは、純正よりも若干落とされた車高やリップスポイラー、そして後期型ヘッドライトへの交換程度で抑えられている。
足まわりは純正形状のショーワ製サスペンションキットを装着しているが、奥様から『前と比べると乗り心地が変わった』との指摘があったという。
バレないように気を使っていても、実は奥様もわかったうえで多少のことは許容してくれているのだろうというのは、想像に難くない。
なんでも、後期型の純正ヘッドライトは寝ぼけた状態でネットオークションをしていてウッカリ落札してしまったものだという。よって、当初は片側しか入手できていなかったために、仕方ないからと改めてもう片方を“そ~っと購入”して装着。無事カスタマイズが遂行されたご様子だ。
フロントセクションのカスタマイズポイントだけでなく、社外のテールランプや純正リヤウイングなど、リヤ周りのスタイリングも気に入っているという。
現段階で、86への満足度はかなり高くなったということで、カスタマイズはこれにて一旦終了と考えていると言う。だがしかし、あくまでも『一旦』であり、カスタマイズの虫が目覚めないという保障はない。
「最初は愛情が湧かなかったのですが、こうして自分好みにカスタマイズしていくと、どんどん好きになっていくものですね。所有して4年になりますが、この86のスタイリングには大満足しています。その甲斐もあって、今では最愛のクルマとして大切に乗り続けていこうと考えるようになりましたよ」
「本当はガンガン走らせて、もっと86を楽しみたいとも思っているのですが、ヤレを促進させてしまうことが勿体なくて…。そのため、現在は通勤に軽自動車を使って、この86は休日のドライブ専用車になっているのですが、家族でのドライブも楽しめる理想の一台に仕上がったと思います!」
「クルマのことを考えて、カーポートも作りました。また、コーティングを施工して常にキレイな状態を維持しているんですよ」と、語るように、良いコンディションを長くキープするための環境整備にも尽力している。
最愛だったMR2から乗り換え、4年という月日を共に過ごすことで『愛車』と呼べるまで作り込んできたミスターさんの86。その愛情はすでに歴代の愛車を超え、ずっと乗り続けていくための努力も、過去一番となっていることは間違いのない事実なのだ。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 稲田浩章)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:島根大学 松江キャンパス(島根県松江市西川津町1060)
[GAZOO編集部]
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