お揃いカスタムなども施しながら4台のコペンを家族で楽しむ

  • GAZOO愛車取材会の会場である徳島県の『徳島中央公園』で取材したダイハツ・コペン

    ダイハツ・コペン


ご家族で仲良く、2台のコペンで参加してくださった『D,G』さん。実はこの他にも2台のコペンを所有しており、合計4台ものコペンに囲まれて暮らしていらっしゃるという強者である。

今回の出張取材会に乗ってきてくれた2台のうち、車体がシルバーのコペン(L881型)は、とても珍しい左ハンドルのドイツ仕様だ。
コペンと言えば軽自動車=日本専売というイメージが強いが、実は少数ながらヨーロッパやオーストラリアなどの海外市場にも輸出されていたのである。D,Gさんは滋賀県にある専門ショップに依頼して、並行輸入されたそうだ。

エンジンはK3-VE型という1.3リッターNAの直列4気筒エンジンを搭載。本来の659ccターボと比べて倍近い排気量があり、トルクフルで山道を走るのも楽しいという。

「初めて買ったコペンは今でも自宅に保管してあるんですが、そっちは全身エアロパーツを装着したり、やれることは全部やり切ったと言えるくらいカスタマイズを楽しんできました。乗り比べると、実は1.3リッターNAよりもチューンナップしたターボ車の方が最高速では有利だったりするんですけど、私も年齢を重ねるとともに少し落ち着いてきまして。今はゆったり流せる1.3リッターNAの方が楽ですね(笑)」
659ccターボのコペンと1.3リッターNAのコペンを乗り比べできるだけでも、かなり稀有な体験だと思う。

実際にコペンのオーナーズクラブに所属していて顔も広いD,Gさんをもってしても、他で1.3リッター仕様を見る機会はかなり限られているそうだ。

「自分が知っている限り、国内で左ハンドルのコペンに乗っている方は、あと3人いらっしゃいますね。欧州仕様という意味では、イギリス仕様の右ハンドルも入れて10台いるかいないかだと思います。ドイツ仕様の総数が大体6,000台くらいと聞いたことがありますので、希少であることは確かですね。ダイハツのディーラーに乗って行くと、左ハンドルがあることを知らないスタッフもいて驚かれることもあります(笑)」

外観で日本仕様との違いを判断するのは難しく、ワイパーの取り付けが逆になっているなど、コペンオーナーでもなかなか気付きにくい細かな違いを目ざとくチェックするしかないそうだ。

「年とともに落ち着いた」と話すD,Gさんだが、それでもカスタマイズの熱が冷めたわけではまったくなく、希少なドイツ仕様でも臆することなく自分好みのカスタマイズを施していらっしゃる。
まず目を引くのは、なんといってもランボルギーニのように上向きに開くドア。これはD,Gさんにとってはマストアイテムのようで、普段奥様が乗っているもう1台の白いコペンと、さらにもう1台の3台を埼玉県のNRFという専門ショップにまとめて持ち込み、オリジナルのキットを装着したそうだ。

また、同時に内装の張り替え作業も行ない、ドアの内張やハードトップの内側は赤を基調としたカスタムインテリアに変身。メーターフードはスエード張り、センターコンソールはカーボンと、他では見られないオリジナリティも表現されている。

マフラーは1.3リッターNAに合わせて、大阪の専門店テイクオフに依頼してワンオフで製作。テールエンドのみDスポーツ製を取り付け、真ん中にLEDランプも備えるスポーティなリヤビューを実現した。

「コペンのカスタマイズは本当に奥が深くて、オフ会に行っても同じものがないと言えるくらい個性もバラバラなんです。チューニングしたらしただけ変化も感じ取れますし、本当に楽しいクルマです」

個性が違うという意味では、もう1台の白いコペン(L880K型)もとてもユニーク。普段は奥さんの移動用ということで、奥さんの好みを聞いた上でD,Gさんがカスタマイズしているそうだ。ホイールのリムやドアミラーがブルーになっているのも、奥さんの好きな色を反映させている。

ステアリングは落ち着きのあるウッド調を採用し、シートはコペンの20周年を記念して発売された特別仕様車から流用。シートとシートの間には大きなサブウーファーが備わり、重低音の効いたサウンドも楽しめる。
そして、さまざまなカスタマイズのなかでも奥さんが特に気に入っているというのが、エンジンのヘッドカバーに描かれたドルフィンのペインティングだ。

「私がラッセンの絵が好きなので、夫が友人にお願いしてラッセン風に描いてもらったものなんです(笑)。私たちが出会うきっかけになった別のコペンのエンジンにも、お揃いで描いてもらって。忘れられない記念になりました」

奥さんにもコペンの好きなところや普段の使い方について話を伺っていると、そんな風にヘッドカバーの絵のことだけでなく、不意におふたりの馴れ初めについても聞き出すことができた。そう、何を隠そう夫婦を結んだのもコペンなのである。

奥さんは子供の頃は武道系の部活に入ったり、社会人になってからはバイクに乗ったりと、“何かと男性っぽいことをするタイプ”だったのだそう。
だが、ヘルメットを脱ぎ着すると髪型や化粧が乱れるのが悩みで、安全性のことも考えるとクルマに乗り換えた方がいいかもと思うようになった頃に出会ったのがコペンだったという。コンパクトで運転しやすく、オープンにして走るとバイクのような爽快感も味わえるところが気に入ったのだそうだ。

そしてコペン乗りが集まるオフ会でD,Gさんと出会い、意気投合。数年の交際を経て、結婚に至ったのだが、初めて出会った時にD,Gさんが乗ってきていたコペンと、奥さんが乗るコペンのエンジンに、お揃いのイラストを描いてもらおうと提案したのがD,Gさん。おふたりが出会った記念を、形あるものとして残しておきたかったのである。

「コペンと出会えたおかげで妻と知り合いましたし、子供にも恵まれました」と、D,Gさんもコペンが結んでくれた縁を振り返る。

「コペンの最大の魅力は、仲間が増えることです。私も最近ではイベントに参加する側から運営する側に回ることが多いのですが、高級車の集まりとはちょっと雰囲気が違って、誰でも溶け込みやすいんですよね。この間、信州で行われたイベントでは190人くらい集まって、楽しくビーナスラインを走ることができました。家族3人、これからもイベントに参加したり、ドライブに出かけたり、楽しくコペンライフを続けていきたいです」

コペンを愛し、コペンに愛されたD,Gさん。その笑顔は、どこまでも晴れやかだった。

(文: 小林秀雄 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:徳島中央公園 (徳島県徳島市徳島町城内1-番外)

[GAZOO編集部]