深夜のWRC中継で見た勇姿に一目惚れ! 憧れ続けたランエボⅣが“終のクルマ”としてガレージにやって来た
-
三菱・ランサーGSRエボリューションⅣ (CN9A型)
幼少の頃からクルマ好きだったという『384works』さん。中学、高校時代からは当時深夜帯のテレビで放送されていたモータースポーツ中継を視聴し始めるようになり、そこで目に止まったのが、三菱のランサーエボリューションⅣ(以下、ランエボⅣ)のラリーカーだった。
「なぜかF1とかGTカーではなくラリーカーに興味があって、パリ・ダカールラリーでパジェロが活躍する姿を見て『世界の競合たちと戦う三菱ってスゴイ!』と、応援していました。そんな中、目に飛び込んできたWRCで激走するランエボⅣのカッコ良さはまさに衝撃的でした」
「ランサーは市販車ベースの改造車というところも惹かれた理由のひとつでしたね。市販モデルもまんまラリーカーの雰囲気で、運転免許を取ったら絶対買うぞ! と思いました。とは言え、300万円を超える新車価格は若者には非現実的で、とても手は出せませんでした。そこで仕方がなく買ったのがシルビア(S13型)の中古車。S13と言うと、今ではネオクラシックカーブームの影響でびっくりするような価格が付けられていますが、当時は激安車だったんですよ」
当初は妥協の末に購入したはずのシルビアだったが、乗り続けていくうちにFR車ならではの独特なドライビングの面白さに目覚めた384worksさん。レーシングコースでのドリフト走行会にも参加するようになり、時にはコースアウトやクラッシュも経験。3台のS13を経た後にはS14型のシルビアに乗り換えるなど、20代はドリフトにどっぷりハマっていたと、当時を振り返る。
「30歳を過ぎた頃からは仕事がとても忙しくなって、シルビアを自宅に置いたまま長期の出張に出ることが多くなりました。不思議と、あれほど憧れていたランエボⅣへの熱意も冷めて、クルマ趣味からは徐々にフェードアウト。まわりの仲間がオートバイに乗るようになったので、私も大型自動二輪の免許を取りに行った後、スズキのGSX-R1000を買って、たまの休みの日には九州方面などあちこちツーリングに出掛けていました」
大型のオートバイに限らず、RGV-Γ(ガンマ)やYZF-R25といった中型クラスにも乗るなど、30代はもっぱらバイク一辺倒の日々だったという。その後、年齢を重ね40代を過ぎてからは再びクルマ趣味へと気持ちが向き始めるように。この時に考えたのが『終のクルマ選び』だった。
「シルビアの後はこれといったクルマは買ってなくて、正直オートバイだけでも特に問題のない環境でしたが、年齢的に“最後に乗るならコレ!”という究極の一台が欲しくなりました。この時、忘れかけていたランエボⅣへの想いが蘇り“今度こそ絶対手に入れるぞ”とネットや雑誌で物件を探し始めました。ところが、その頃には1990年代スポーツカーの中古車相場がどんどん上がり始めていて、探すならもう少し本腰を入れなければと、ドリフト時代にお世話になっていたショップさんにクルマ探しのお願いに伺いました」
「ショップさんに行くと『またシルビア?』と言ってきたので(笑)、ランサーのエボⅣですと答えると、ちょっとビックリされました。それでもなかなか条件に合った個体は見つからず一年が過ぎ、良い個体があったら業販をお願いするから、一緒に探してほしいとの連絡があり、引き続き自分もクルマ探しを行っていたところ、大阪でまずまずの条件となる個体を見つけました。それが今の愛車です」
現在でこそ、新車さながらの輝きを放つ384worksさんのランサーGSRエボリューションⅣ(CN9A型)だが、購入前の実車確認のために大阪まで行った時には、塗装の退色や各部のサビなど、経年劣化が多数見受けられ、とても“掘り出しもの”と言える状態ではなかったとのこと。
それでもほぼ無改造状態が保たれた2オーナーのサンルーフ付き車両という個体は市場では極めて珍しかったことから、熟考の末、劣化部分については後々手を加えて行くつもりで購入を決断。
長年所有してきたGSX-Rを資金の足しとして手放すことにはなったものの、ついに憧れのランエボⅣオーナーの夢が実現! 手元に実車が届くや、そのままショップに持ち込み、レストア並みのリフレッシュ作業をオーダーし、作業が開始された。
「数ヶ月後、仕上がってきたクルマを見た時には、あまりのカッコ良さに感動しました。ドリフト時代にカスタマイズ的なことはひと通りやり尽くしたので、今回はできるだけノーマルの形を守って、モディファイも改造のためではなく初期化のために行なうことを心掛けています」
「ボディは全塗装したけど、あえて純正と同色に。マフラーが社外品となっているのは、元々付いていた純正品のサビが修復不能なくらい激しかったためです。ホイールも純正品は自宅に保管しています。あと、マッドフラップはどうしても付けたかったので自作して、ロゴ部分を『RALLIART』でなく『MITSUBISHI』としているのがコダワリ。いかんせん30年前のクルマなので純正部品の欠品が結構多くて、日頃からオークションとにらめっこしながら、こまめにパーツを集めています」
リフレッシュの完了後、普段乗りを始めてもうすぐ2年目を迎えるとのことだが、実車の印象は先述した通り新車のようなコンディション。機関部分もウォーターポンプやゴム製のパイピング類など、純正部品が入手できるところは先々のトラブル対策のためにひと通り整備済み。
モール類の劣化やランプ類のくすみも見受けられず、日頃から愛情が注がれてきたクルマであることは一目瞭然だ。実際、洗車も定期的にたっぷり時間をかけて行われているようで、ボディや内装はもちろん、フェンダー内部の樹脂製ライナーまでピカピカ。
「ライナーが汚れていると、クルマ全体がヤレて見えるようで、すごく気になるんです。だからチョイ乗りした後もこまめに手入れをした上で、ボディカバーを掛けて保管しています。ちなみに、ドアやトランクリッドに貼ったステッカーはパソコンで作りました。ルーフパネルをカーボンラッピングとしているのはファッション性というよりは、ルーフのスポット部分からのサビの発生を防ぐための保護が目的です」
「その他、足まわりは車高調整式サスペンションを装着していますが、高さはノーマルと同等にとどめています。そもそもラリーカーの車高って結構高めだし、ローダウン車で街乗りする時の使い勝手の悪さは、シルビアの時代に嫌というほど経験しましたからね(笑)。性能面を見ればランエボVとかVIIとかも良いなとは思いますが、これを手放してまで買い替えるつもりはありません。やっぱり僕が最初に衝撃を受けたのはWRCを戦うランエボⅣ。ランエボシリーズでは最後の5ナンバーボディだし、実際、走らせてみるとコンパクトだから運転もしやすいんですよ。もうサーキットを走らせるつもりはないし、いつまでも大切に乗り続けていきたいですね」
384worksさんのご年齢は47歳(2025年現在)と“終のクルマ”を選ぶには少々早過ぎでは? という感もあるが、自身はいたって本気。その頑なまでの意志は『年齢とか病気とか、自分が何らかの事情でこのクルマに乗れなくなる日がきた時、次の方にしっかり乗り継いでいただけるような状態を保ち続けていたいんです』という言葉にも表れている。
「これから兵庫まで戻ります。大体3時間くらいかな? 結構雨にも降られたので、そのあとは頑張って洗車します!」
憧れ続けたランエボⅣが手元にある生活が、とにかく楽しいといったご様子の384worksさん。気のせいだろうか、その隣に佇むランエボⅣのフロントマスクがどこか微笑んでいるように思えた。
(文: 高橋陽介 / 撮影: 稲田浩章)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:米子駅前だんだん広場(鳥取県米子市弥生町2-20)
[GAZOO編集部]
三菱 ランサーに関する愛車記事
-

-
深夜のWRC中継で見た勇姿に一目惚れ! 憧れ続けたランエボⅣが“終のクルマ”としてガレージにやって来た
2025.08.24 愛車広場
-

-
家族で育んだラリー愛が導いた憧れの一台。ランエボXと兄弟の物語
2025.07.20 愛車広場
-

-
子供の頃から憧れていたランエボを手に入れ、家族や仲間と共に愛でる
2025.04.17 愛車広場
-

-
数々の出会いをもたらしてくれた相棒“エボX”は家族の一員
2025.02.08 愛車広場
-

-
18年の付き合いで自分の体に馴染んでいる『ランエボ』という贅沢な趣味
2024.01.31 愛車広場
-

-
好きになったキッカケは兄への対抗心!? 誕生日にやってきた愛機三菱・ランエボVI
2024.01.25 愛車広場
GAZOO愛車広場 出張取材会in鳥取
-

-
全日本ラリー参戦車のアルトワークスと共に走り続ける先に見据える夢とは
2025.08.28 愛車広場
-

-
ターボがこだわりのファミリーカーMPVは、趣味心も家族も満足させてくれる我が家のスーパーカー
2025.08.26 愛車広場
-

-
深夜のWRC中継で見た勇姿に一目惚れ! 憧れ続けたランエボⅣが“終のクルマ”としてガレージにやって来た
2025.08.24 愛車広場
-

-
「僕はこのクルマじゃないと、ダメなんです!」パジェロエボリューションを2台乗り継ぐオーナーの熱意と努力
2025.08.23 愛車広場
-

-
多彩な活動を展開する現役アイドルが選んだプリウスは、信頼性に富み省燃費性能も高い敏腕マネージャー
2025.08.13 愛車広場
-

-
『RX-8』と共に走り、SNSをフル活用しながら自分らしさを追求する
2025.08.12 愛車広場









