「やっぱり角張った4ドアが好きなんですわ」。最初に憧れた日産 グロリア(Y30型)に原点回帰
「自分が高校生の時は、周りはバイクやクルマ好きばかりでしたよ。運転免許を取って就職したら、こういった4ドア車を買って乗るのが当たり前という雰囲気でしたからね」
海をバックに映える白いボディがオーラを放つ、こちらの1986年式日産・グロリア(Y30型)のオーナー『Y3くん』さんは、そう当時のことを振り返ってくれた。そして、そんな周りの友人と同じく、高校を卒業するとすぐに人生初の愛車としてC31型のローレルを購入したという。
セドリックとグロリアは、ニッサン4ドア車のハイブランドモデルであるが、当時就職したばかりのオーナーさんにとってセド・グロはあくまでも憧れだった。金銭的にローレルならばどうにかなっても、セド・グロは簡単には手の届かない存在だったという。
「あの頃は中古でもY30は高くてよう買わんかったですね。前期型が良くて、角張ったカタチも大好きだったんですけど。C31ローレルは当時としては安かったし、これもハードトップモデルがあって解放感もあって良かったので選びました。周りもセダンじゃなくてハードトップばかり選んでましたからね」
そして、その当時に周りで流行していたというのが、エアロパーツを身に纏って車高を低く構えたカスタムスタイル。自身も流行りに乗って同じ道に進むものの、少しだけ王道を外すようなスタイルが好みだったそう。
「純正からかけ離れすぎて派手なのはあまり好みじゃなかったんで、エアロパーツは装着していましたが、純正デザインに似ている雰囲気のものを選んでいました。それが人生で一番カスタムしたクルマかなぁ。その後もホイールを交換したりすることはありましたけど、エアロパーツにまでは手を出さなくなりましたね」
そんなC31型ローレルを3年ほど所有したのち、二世代新しいC33型ローレルへと乗り換えることに。ここから先も、今に繋がる怒涛の『ニッサンの4ドア歴』が続くかと思いきや、その愛車遍歴は少し変わったジャンルへとシフトしていくことになる。
「実は、ずっと左ハンドル車に乗りたいという思いがあって、そんな時、ディーラーでホンダ・アコード スペシャルエディション(CB型)が販売されていたんです。このクルマは逆輸入車で左ハンドルなんですよ。そんな経緯で、ローレルから乗り換えることにしたんです」
そして、31歳で結婚したことを機に、家族用のクルマと、ご自身の趣味グルマという2台を所有する愛車生活が始まっていったそうだ。そんな中、続いてやってきたブームは“ピックアップトラック”だった。
「今までずっと全高の低い4ドアばかりだったから、今度は違う方向のクルマが欲しくなってしまったんですね」
ピックアップトラックとして最初に購入したのは、商用車らしい無骨なスタイルが気に入ったダットサントラック(D21型)であった。やがて生活にも余裕ができ始めていたこともあって、さらに大きなピックアップトラックが欲しくなり、今度はフルサイズのシボレーK1500を購入して、7年ほど乗ることになったという。
それらのクルマ選びは、使い勝手よりも自分好みなスタイリングを重視していたという。逆に、家族用のクルマは比較的スモールパッケージで、乗りやすさを重視した国産SUVを選んでいたそうだ。まずは、いすゞのウィザードに乗り、続いてスズキの初代エスクードをチョイスした。中でもエスクードは、時期を開けて2台を乗り継ぐほどお気に入りのクルマとなったそうだ。
「20代の頃に近所で見たエスクードがとても印象的だったんです。近所の先輩がローライダー仕様にカスタムしたハイラックスに乗っていたのですが、ある時、その人のクルマがエスクードのローライダーに換わったんです。それがカッコ良く見えて、いつかエスクードを買ってみてもいいなあと思っていたんですよね。さすがに自分が買った時は子供もいたし、家族用のクルマですからホイールを交換するくらいでローライダーのような目立つカスタマイズはようやらんかったですけどね(笑)」
こうして愛車遍歴を振り返ってくれたオーナーさんだが、かつての自分が4ドア車へ憧れるキッカケとなった『グロリア』を手に入れる機会は2019年に訪れた。
「中古車サイトで検索する時に『4ドア』という条件だけを入れて検索してみたら、本当にたまたま、家から20分で行ける近所にグロリアが売られていたんです。運転免許を取った当時に、買いたいと思っても買えなかったクルマだし、金銭的にもスペース的にも手元にあと1台置いておけるくらいの余裕がありましたから」
グロリアを購入してから5年間、燃料や点火系などマイナートラブルのみで乗り続けられているそうで、彼がこのクルマに惹かれたのはその程度の良さにもあったという。
このグロリアは、どうやら祖父が購入し、そこから父、息子と3世代で大切に乗り継がれた家族間オーナー車だったという。そのおかげでナンバーも当時のまま残っており、それを引き継ぐ形で「このグロリアを大事にキープしていきたいですね」と話す。
そこでまず手を加えたのは、昔のような元気の良いカスタマイズ……ではなく、紫外線による被害を最小限に食い止めるための“ダッシュボードマット”装着であった。
カスタマイズカーの世界ではすでに酸いも甘いも経験してきた、ナイスミドルならではのチョイスであろう。
2024年現在、56歳となったY3くんさんの愛車遍歴は、4ドアに始まり、ピックアップトラック、SUVと多種にわたるラインナップを誇ってきた。しかし、それでも再び4ドアに戻ってきた自分を見返すと「やっぱりこの当時の角張った4ドアの恰好が一番好きなんですわ」と、今の心境を話してくれた。
釣り人の格言にある『フナに始まり、フナに終わる』と言ったように、原点回帰こそが人生の趣であり、その奥深さなのであろう。
グロリアは人生で最初に憧れたクルマだけど、簡単には買えなかったクルマである。
アンケートに掲げてくれた「ずっと乗っていられるようにしたい」という目標に、なによりも相応しい愛車がまさにこのグロリアであったのだ。
(文:長谷川実路 / 撮影:清水良太郎)
※許可を得て取材を行っています
第四回 昭和の乗り物大集合in片男波海水浴場2024
取材場所:片男波海水浴場(和歌山県和歌山市和歌浦南3丁目1740)
[GAZOO編集部]
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