「好きなクルマを自分好みの性能に仕上げて乗りたい!」超こだわりオーナーの快速マイティボーイ
今回、取材にお邪魔した『昭和の乗り物大集合in片男波海水浴場』は、和歌山県和歌山市の南側、左右を海で囲まれる細長い海岸という絶景スポットの駐車場で開催された。昭和を代表するクラシックなスポーツカーに並んで、日本ならではの“軽自動車”で参加される方も多くいらっしゃったのが印象的であった。
ボディサイズの話は抜きにして、現在は660ccまでの排気量が認められる軽自動車規格だが、1976年から1990年までの間、それまでの360ccから大きく排気量アップした550ccまでのエンジンが認められた、いわゆる旧規格の時代があった。
スズキの軽自動車、ハッチバックボディのFFである2代目セルボをベースに、リヤ側をバッサリとカットし、特徴的だった大型リヤウインドウガラスの部分を荷台としたピックアップトラックに変形させたのがマイティボーイの成り立ちだ。
本業はビルメンテナンスなどの高圧まで手掛ける電気工事士という『ジープ』さん。
高校生の頃からはじめたというアマチュア無線は「海外の人とも交信できることが楽しくて、40歳を過ぎるくらいまで続けていましたよ」とのことで、自宅の庭にアンテナを延長するための鉄塔を立ててしまうほど熱中していたそうだ。
お話を伺うほど、好きなことにはとことんこだわり、なんでも自分の手でやりつくさないと気が済まない性格なことが伺えるジープさん。もちろんクルマに関しても同様で、まわりの仲間からもさまざまな相談が舞い込むほどだというから、その熱量はアマチュア無線以上といえるだろう。
そして、愛車のマイティボーイに関しても、そんな友人の相談がキッカケとなって手に入れたクルマなのだという。
あるときマイティボーイを手に入れた友人が「もっと速くしたい」と言い出し、さまざまな案の中からたどりついたのが2代目アルトワークスに搭載されていたDOHCターボのF5B型エンジンを載せるというプランだった。
1年強だけのわずかな期間販売されたこのモデルは、マイティボーイのSOHC自然吸気のF5A型と比べてはるかに素性が良いとされ、さらに9000rpmという高回転まで回すためのショートストローク化も施されている、当時のスズキのフラッグシップエンジンだ。
660ccではなく旧規格の550ccのまま、カタログ数値で比べるとマイティボーイの28psから自主規制枠いっぱいの64psとなり2倍以上ものパワーアップとなる。
完成したF5B型エンジン仕様のマイティボーイの走りは軽快そのもので、そのパッケージに魅了されたジープさんも、みずからマイカーとしてマイティボーイを迎え入れ、おなじようにエンジンを載せ換えるに至ったという。
軽そうなノリでお話されてはいるものの、実はかなりハードな内容だと思うが「無線もクルマも趣味にはかなりお金をかけてきたけど、やって自分が楽しいのが一番」と笑う。
電気工事士の本業の腕を活かして配線加工もお手の物。アルトワークスからECUを移植して、配線は繋ぎ直してマイティボーイのメーター類がそのまま動く状態に仕上げている。駆動系にはより強度の高い新規格660cc向けのマニュアルミッションを移植することで、安心感もアップさせているという。
外見にもジープさんの個性が反映されていて、ボンネットにはインタークーラーターボが新設されるのに合わせてアルトワークスのダクト部分だけをマイティボーイに移植。さらにアルトワークスらしさをストライプでアレンジしている。こういった板金塗装は親戚にいる腕の良い職人さんにお任せしているそうだ。
それらの作業を行なっているというガレージの写真を見せていただくと、旧型のジープやランドクルーザーなどが部品取りを含めて10台以上キープされている驚きの景色が広がっていた。よくよく聞いてみると、ご本人のニックネームの通り、72歳のジープさんにとっての『想い出のクルマ』もジープだったという。
「運転免許を取得してから数年はマツダのキャロルやK360に乗っていたけど、それらを全部売って、20歳の頃にジープを買ったんだ。友達がジープを持っていたのも少し影響はあったけど、左ハンドルとボディの形状と品質の良さに魅力を感じたんだよね」
軍事系の趣味があったジープさんは、自衛隊の装備品として三菱がノックダウン生産を行なっていたジープに興味を持ち、手に入れたいという思いを強くしたそうだ。アメリカからの輸入モデルではなく、自衛隊の装備品と同じモデルが良かったのは「まっすぐなボンネットはその時代だけで、フェンダーにかけて曲がったデザインになってからは好きじゃないんだ」とのこと。それに当時の輸入モデルはボディパネルの生産国がフィリピンだったことも、国産にこだわった理由だという。
そうしたポイントをおさえつつ手に入れたのがCJ3BJ3と呼ばれる自衛隊で使われた左ハンドルのガソリン車モデルのジープで、それ以降、十数台にわたるジープとの愛車ライフを送ってきたという。
「今となってこれだけジープにのめり込んだ理由を改めて考えると、自分で改造をしていくのに向いているクルマだからというのが大きいかな」と、その魅力についても語ってくれた。
たとえばこちらはジープさんがトレーラー用に仕上げ、さらに後ろに牽引される荷台もジープをカットして製作したというもの。トレーラー部分は強度計算も自分で行ない、保安基準に適合するように作ったという。ちなみに写っているのは幼い頃の息子さんだ。
また、トレーラハウスを牽引するロングボディのモデルでは、和歌山県内を中心に家族を連れて2泊の旅に出かけるなんてことも多かったそう。
そして現役で乗っているというトヨタ・ランドクルーザーは、40型をベースに60型の6気筒4000ccターボを換装した特別仕様なクルマとなっていて「最近はイベントに参加する時はだいたい一緒」と、お孫さんといっしょにカーライフを楽しんでいるようだ。
そんなジープさんの原動力となるのは『好きなカタチのクルマに、自分が満足する性能で乗りたい』という気持ちだそうで、現在は1990年式のジープを購入して、そのディーゼルエンジンを自然吸気からターボへと変更する作業も進めているのだという。
さらに古いクルマを調子の良い状態で維持するためにも、スペアパーツはクルマごとでいいから手に入れられる時にストックしておくというのが習慣化しているそうで、それがガレージにクルマが増えている理由なんだとか。
ジープが描かれたTシャツを着てマイティボーイの助手席に乗ってきたお孫さんとともに、イベントを楽しんでいたジープさん。「今後の目標というか生きがいも、もちろんクルマいじり。趣味ひとすじだね」と満面の笑みでこたえてくれた。
世代の離れた2人のクルマ好きが、これからも一緒にイベントへ参加し続けるために、いつまでもジープさんの元気な姿が変わらないでいることを期待するのであった。
(文:長谷川実路 / 撮影:清水良太郎)
※許可を得て取材を行っています
第四回 昭和の乗り物大集合in片男波海水浴場2024
取材場所:片男波海水浴場(和歌山県和歌山市和歌浦南3丁目1740)
[GAZOO編集部]
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