30歳の時に乗っていたクルマが、52歳になって戻ってきた!マークⅡ、新たな人生は映画車両!?
35年間自動車屋さんで働いている「本池さん」に、運命的なことが起こったそうです。それは、30歳の時に購入したクルマを、52歳になりもう一度所有するということ。
何年間も働いてきて、こんなにドラマチックなことを経験したのは初めてだと興奮気味に話してくれました。2人のオーナーの手を渡り、再び戻ってきたのはなぜなのだろうか?
今回は、本池さん×トヨタのマークⅡのお話をお届けします。
――ズバリ、なぜまた手元に戻ってきたのですか?
と、唐突だなぁ(笑)!なんか、もっとこう、順を追って話したかっ…
――で!どうなんですか!?
わ、わ、分かりましたよ!ちょっと落ち着いて(笑)!
30歳の時にマークⅡセダンを購入したんですけど、それをセダン好きの友人に譲ることになったんです。その友人が大切に乗ってくれていたんですけど、結婚を機にとある方に譲って、その方が乗れなくなってしまって、また僕の所に戻ってきたという流れです。
――う~ん。もうちょっと詳しく説明して欲しいですね。
だから言ったのにぃ!!じゃあまずは、幼少期のことから話しますね。
そもそも、僕がクルマ好きになったのは、お袋の影響が大きいんです。FRのジェミニ、ハードトップのカリーナなど、ちょっと癖のあるクルマに乗っていて、そこでクルマの楽しさを覚えた感じです。
とは言っても、免許が取れるのはまだまだ先。だから、そんな僕がはまったのがカタログ集めなんです。小学生5年生が、ママチャリでディーラーを回ってカタログをもらうんですよ(笑)。
カタログの中でも特に好きだったのが、海外仕様車のスペックが書いてあるカタログでね。銀座や九段には外国の観光客が多いので、ここらにあるディーラーを特に回ってました。
ちなみに、1番面倒を見てくれたのは、九段下にあるトヨタメーカーのショールームでした。そのこともあって、僕はトヨタ党になったんです。子供の頃から大人になった今でもカタログを収集しているので、2万冊くらいのカタログが家にあります。
――2万冊……。すごいです。
子供ながらに貰ってばかりだと申し訳ないと思い、高校生のときは「クレスタを友達のお父さんが考えてるよ」って営業マンに紹介したこともありました。バブルの頃だったから、それで契約が決まっちゃったりするんですよ。
17歳の時に始めた洗車ボーイのアルバイトは、ディーラーで紹介してもらったんです。そこで、ナンバー変更や名義変更などの書類の書き方を覚えていき、夜間大学に通いながら、卒業後にクルマ屋さんに就職しました。
そして、マークⅡセダンを買うことになるわけです。
――おお!ついにですね!
いよいよです(笑)。
ある日、僕の働いていたクルマ屋さんに「平成7年・マークⅡグランデ・20万円で買ってくれませんか?」というファックスが届いたんです。これを見て、3ナンバーのマークⅡがこの値段なら買いだ!と、ぜひ店に持ってきてくれと返信しました。
ところが、いざ来たのを見ると……、セダンだったんです……。当時マークⅡといえば、ワイドボディーのツアラーVか3ナンバーのグランデが売れ筋だったので、店頭に置いても箸にも棒にも引っかからなくてね。それで、責任を取って購入することになってしまったんです。
――なるほど。欲しくて購入したというわけではなかったんですね。
マークⅡを買うなら、ワイドボディが良かったんですよ。ただ、そのあと“あること”に気が付いて、セダンが好きになるんですけどね。
――“あること”ですか?
型式がGX81なんですけど、このGX80系はセダンだけ輸出していたんですよ。7年12月まで製造していたので、本当に最後の最後のセダンだったというわけです。
僕は、海外仕様車のスペックが書いてあるカタログが好きだと言ったでしょ?だからそれを知って、カタログに載っていた車両のようにクレシーダ仕様にすることが出来るじゃん!と心が高鳴りました。
ハワイや香港に行ってエンブレム買ってきたり、部品番号を現地ディーラーで焼いてもらって日本に持ち帰り、あらためて発注したんです。そしたら、なぜか全部東京にあったという……(笑)。
――えっ!?なら海外に行かなくてもよかったのでは……。
ん?何か言いました?
と、まぁこんな感じで、わりと直ぐにパーツが集まったので、あとは取り付けるだけってところまできた時に、セダンをコレクションしている友人に譲ってくれと言われたんです。
迷ったんですけどね、コイツなら大事にしてくれるだろうと思ったし、集めてきたパーツを全部取り付けて輸出車仕様にするという約束をして、渡しました。そしたら彼は、全部やってのけた上に、当時の最上級仕様にコンバートしてくれました。
足周りはツインターボ用の15インチ、内装はグランデからグランデGに、彼の理想とするマークⅡに仕上げていました。ところが、その友人が結婚を機にクルマを買い替えるとのことで、水戸にいらっしゃるオーナーの手に渡ったんです。
――そのあと、本池さんの元に返ってきたんですか?
そうです。水戸のオーナーが乗れなくなっちゃって、クルマを引き取ってくれないか?と連絡があったんです。僕が引き取らなかったら、処分を考えているとのことだったので、愛車として迎え入れました。こんなに不思議なことが起こるんですねぇ……。
足車も含め3台も所有する羽目になっちゃったし、ガソリン代のかかるクルマなので、なにやってんだよ僕は(笑)!って感じなんですけど、残さなくちゃと思ったんですよ。嬉しいし、よく帰ってきてくれたという思いもあるけど、使命感というのもありましたね。
――実際に乗ってみてどうでしたか?
ちょこちょこ状態を見てみたんですけど、程度が落っこってないからビックリしましたよ。いいオーナーに恵まれたんだなぁって。
それと、今乗っても良くできていると感じました。エアコンとパワステは付いているし、静かで尖っていないから運転も楽ですしね。そりゃあ、最新のクルマほど快適かって言われたら違うし、安全装置も付いていないけどね。80年代のクルマっていうのを感じさせないくらい、なんというか……、完成されていました。
本池さんの働く車屋さんは、映画やドラマの取材協力として車両貸し出しも行っているのだとか。なんと、マークⅡは早速撮影現場へと駆り出されたそうです。今後は映画車両として活躍する、新たな人生が始まるかもしれません。
(文:矢田部明子)
[GAZOO編集部]
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