僕の愛車は32万km超えのマークⅡ! いつか娘に引き継ぐ日を夢見て
マークII、チェイサー、クレスタが「マークⅡ御三家」と呼ばれ始めた1980年代は、「お隣も 隣の隣も マークII」とも言われていたそうで、タクシーや教習車、パトカーなど、周りを見渡せばマークIIが沢山走っていたと教えてくれた「景浦さん」。
今回の取材対象者である景浦さんは当時小学校1年生で、お父様が新車で買って乗っていたマークⅡが思い出のクルマでもあったと話してくれました。
今回は、景浦さん×マークII のお話をお届けします。
――猫も杓子もマークII……。すごい人気だったんですね!
そうかぁ〜、知らないですよねぇ〜。街を歩けば「あっ!マークIIだ〜!」というくらい、人気のクルマだったんですよ。僕の父が乗っていて、自慢のクルマでもありました。
――どういうところがカッコいいと思ったのですか?
今のクルマでは見られないエッジの効いたシャープなデザインと、真っ白で大きなボディー。
あとは、小学生でバブルを楽しんだわけではなかったんですけど(笑)、クルマにつく装備がだんだんと高級志向になっていくというか、先進的な装備が採用されていっているというのは何となく分かったので、それがカッコいいと思っていました。
――先進的な装備とは?
例えば、デジタルメーターですね。僕の乗っている71型マークIIの1つ前の世代から装備され始めたんですけど、速度が数字で表示されるだけではなく、バーが伸び縮するメーターになっているんですよ。
ただ、液晶といっても今のクルマみたいな感じではなく、緑色に発光する程度だったんですけどね(笑)。だけど、当時としては目新しく、見るたびにカッコイイ~!みたいに思っていました。
――ほかにも、そういったお気に入り機能はあったのですか?
僕の71マークIIは「グランデツインカム24」というグレードなんですけど、「TEMS」という機構が搭載されているんです。やっぱり、それが気に入っているかなぁ〜!
足周りの硬さを、自動あるいは任意で調整するというもので、おかげで路面状況に合わせて快適に運転することが出来るんです。今でこそそれほど珍しいものではありませんが、これも当時からすると「最先端」のイメージでした。
――走るとどんな感じなのですか?
ソフト、ミディアム、ハードとあって、急ブレーキをかけるようなシーンは車体が前下がりにならないようにハードになったり、速度が80km/hくらいになると、車体を安定させる為にソフトだった乗り心地が硬めに変わったりします。
マニュアルにしておけば、速度関係なく任意で自分の好きな硬さに調整することも可能なんですよ。
――それを伺って思ったのは、諸々の機能が今のようになる過渡期のクルマだったんでね。
そうそう!最初も話したんですけど、それを子供ながらに理解していて、カッコいいと思ったんですよ。
ちなみに、この機能は車高調などのサスペンションに換えてしまうと失われてしまうので、そうならないように、TEMS対応のショックアブソーバー(KYB製)とスプリング(RSR製)に交換してあります。だから少し車高が下がっている程度で、割とノーマル然としているんですよ。
――ノーマル仕様にこだわっているのですか?
いや、そこまでがんじがらめで純正に拘っているわけではありません。ヘッドライトはLEDに換えていますし、エンジンルームを見ると社外品がチラホラありますしね。
車を走らせる上で、より機能的、効率的になるものであれば、取り込む事にそこまで抵抗はありません。ただし、基本的にはノーマルのスタイルが好きなので、見た目を大きく変えたいと思わないだけですね。
そうは言うものの、一時期は社外品のホイールとスポーツマフラーを装着し、ハンドルとシートも換えていたんですよ。だけど、結局はノーマルの良さに戻ってきてしまって、シンプルでムダの無い姿がカッコイイと思えるようになりました。
ナビも無いし、オーディオもCDだったりと快適ではない部分もありますが、ドアポケットに「マップル」を忍ばせておいたり、信号待ちでCDを差し替えたりする事こそが、昭和車に乗る醍醐味では無いかと思っています!
――なるほど。子供の頃に乗っていた昭和のクルマを、実際に運転するようになってどうですか?
懐かしさと嬉しさでいっぱいでした。子供の頃、僕は父が運転する後ろ姿を見ながら、リアシートでエンジン音や排気音を聞くのが大好きだったんですよ。
それを自分の操作で体感するというのは至福のひとときです。それと同時に、大人になったような気がしました(笑)。
このクルマは静岡から岡山まで引き取りに行って、自走で帰ってきたんです。幼少のころから高校2年生になるまで実家で乗っていたということもあって、初めてハンドルを握った時に「こんなに自分にしっくりくるクルマがあるんだ」と驚きました。
その際に後輩が付いてきてくれたんですけど、あまりにも慣れていたから「このクルマに何年も乗ってらっしゃるような運転ですね」と言われましたよ(笑)。
――今後、どういう風に乗っていきたいですか?
もしもですよ?もしも、娘がマークIIを引き継いでも良いと言ってくれるとしたら、それはとても嬉しいことだな〜なんて。
だから彼女が乗る時に困らないように、きっちりと整備をして、いつでも安心して乗れるようにしておきたいです。そして、このクルマの良さに気付いてもらえたら、それは本望です。
そんな情景を想像しながら嬉しそうに話してくれた景浦さん。「もしも乗ってもらえたら」と話していましたが、多分それは「ぜひ乗って欲しい!」ということでしょう(笑)。
父から娘へと、このマークIIのオーナーが変わり、助手席でほほ笑む景浦さんを想像してうれしくなる筆者なのでした。
(文:矢田部明子)
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