スカイライン家族で英才教育を受けジャパンに辿りつく

  • 日産 スカイライン2000ターボGT-E・S

    日産 スカイライン2000ターボGT-E・S

1977年8月に登場した、5代目スカイラインに乗るのは「こうじさん」。このクルマのコンセプトが“日本の風土が生んだ日本の名車”なことから、「ジャパン」の愛称で多くの人に親しまれているクルマです。

昨今の旧車ブームもあり、高値で取引されることの多い車種ですが、免許取り立てだったこうじさんは、そんなにカッコいいクルマだとは思っていなかったそうです。

こうじさん×スカイライン2000ターボGT-E・S のお話をお届けします。

―――カッコいいと思っていなかったのですか?

正直なところ…、そうです。親がジャパンの前に乗っていた、ケンメリの方が好きでした。

小学生の時にケンメリのテレビコマーシャルが流れていたんですけど、丸いテールランプに一目惚れしてしまって、自家用車にしたらどうかと親に直談判して購入してもらったんです。

家族で使うから4ドア、母が運転するからオートマだよという条件を渋々受け入れつつ、エンジンは6気筒を勝ち取りました。

―――ど、どうやってそそのかしたのですか?

そそのかすって!アドバイスしたと言ってください(笑)。6気筒の方がノーズが長いから、事故した時に少しでも安全なんじゃない?と言ったんです。

―――安全で推してくるとは。策士ですね。

褒め言葉として受け取っておきます(笑)。そんなケンメリを2台乗り継いだあとに、ジャパンが我が家に来ました。

ショートノーズ でブリスターフェンダー、角ばったデザインがヨーロッパ車っぽくて、“何か”好みじゃなかったんですよ。流線型のボディで、アメ車っぽいケンメリの方が良いなと思いました。

ジャパンの後に登場する、6代目スカイライン 通称「鉄仮面」というやつはカッコいいと思ったけど、なぜかジャパンはダメで……。でも、年月を重ねるごとに、良い味出してるなと感じるようになりました。

―――単純な疑問なんですけど、なぜケンメリに乗り続けなかったのですか?

海の近くに住んでいたから、新車で買っても3年くらいで錆びてしまうんです。今じゃ考えられないかもしれないけど、ウインドウゴムの下なんかも錆びるんですよ。

だから、車検のたびに買い替えていて、スカイラインからスカイラインに乗り換えるという流れだったんです。

ジャパンも2台連続で乗っていて、高校生の時に、4ドアでオートマ、ターボのジャパンが家にいました。このジャパンのおかげで、ジャパンのカッコ良さに気付けましたね。

―――どんな心境の変化があったのですか?

免許を取って、初めて乗ったのがコレだったんです。

クルマが好きだったから、運転できるということが嬉しくて、学校から帰ってご飯を食べてすぐに、お台場にあった埋立地や浦安にある鉄鋼団地にドライブに行っていました。

友達のクルマで行ったときに、事故でクルマが動かなくなるということがあってね〜。みんなお金を持ってないから、「バカだよねー」「なんか、頭が痛い気がする」とか話しながら、4時間かけて家まで歩いて帰ったのは笑い話ですね。

そういう青春の思い出が詰まっているから特別な存在になって、愛着が湧いていくとカッコいいと思うようになったんです。

―――それからしばらく他のクルマに乗られていたようですが、再びジャパンを購入した理由は?

最初に乗った4ドアでオートマのジャパンは、22歳の時に維持費の安い1500ccのトヨタ車に変わりました。

それから何台もクルマを乗り換えて、いろいろな経験をしてきても、心のどこかに“小学生の頃から好きだったスカイライン”、“初めて運転したジャパン”への捨てがたい気持ちが燻り続けていたんです。

旧いスカイラインの集まるイベントへ行ってみたり、中古車を探してみたり悶々としている日々が続いて…。

そんな時に、某オークションサイトを見ていたら、恐ろしく程度の良いジャパンを見つけて、すぐに実車を確認しに行って即決しました。

―――改めてジャパンのハンドルを握ってみてどうでしたか?

不思議なもので、運転していると当時のことを思い出して新鮮な気持ちになるんですよ。

長いノーズの両端に見えるフェンダーミラー、ハンドルは細身で大径。小学生の頃、頑張ってワックス掛けしたあとに雨が降ったことが合ったんですよ。最悪だと思う反面、ボンネットの上で雨粒がダンスするように見えて大好きだったのを思い出しました。

だけど変わったこともあってね。当時はすごく明るいと感激したハロゲンライトは、HIDや LEDに慣れた目には暗く映りました。

こういうのがあるから、このクルマを手放せなくなるんです。あと、16年間乗ってきて思うのは、ジャパンの良さが分かるようになってきたということです。

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―――例えば、どんなところですか?

走りに関しては、ダンパーがしっかりと効いていて収まりが良く、安定しているところですね。

加速も良いし、何より「キーン」という過給音がするのが愛らしい!145馬力しかないから大した速度は出ないんですけど、この音が鳴り出すとイメージ的に速く走っている気がするし、“Dr.スランプ アラレちゃん”の 「きーんっ」という掛け声を思い出して笑顔になっちゃうんです。

―――取材始めに言っていた“カッコいいと思えなかったデザイン”は、やっぱりそのままですか?

いえ、素敵な所は沢山ありました。内装だと、インパネ中央部にあるイラストモニターの近未来感、その周りに連なっているメーターには、何本も横にラインが入っているんです。よーく見ないと分からないけど、これがあると立体的に見えるんです。

外装は、サイドからみたウェッジシェイプのボディーライン、今乗っているのは2ドアだからBピラーがなくてスッキリして見えること、リアのメッキ部分に細かくスリットが入っていることなど、内装同様に細かい部分にまでこだわっていて、とてもカッコいい一台でした。

―――再び愛車として迎え入れたジャパンに対して、今どんな想いでしょうか?

そうですね。なんだかんだ言ってますけど、とどのつまり……

大好き

なんですよ。

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現在、主にイベントに参加する時に乗っているそうですが、免許を返納するまでに北海道にある“ケンとメリーの木”に行くのが夢だそうです。

昔見たケンメリのCM撮影が行われた場所だそうで、同じように写真を撮るのが夢なのだとか。その際は、写真をお待ちしております!

(文:矢田部明子)

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