トヨタ セルシオと17年間共にして気付いた“安心感”

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2006年式の最後のセルシオ(UCF31)後期型に乗るのは、現在40代のともさん。17年前にセルシオを購入し、1オーナーで乗り続けてきたという。

今年の初め、石川県の実家に帰省することになったともさんは、能登半島地震の被害に遭った際に、セルシオだからこそ乗り越えられたことがあったのだとか。

今回は、セルシオ×ともさんのお話です。

――セルシオが初めてのマイカーだったんですか?

実は、初めての愛車はマークⅡで4、5年ほど乗っていたのですが、故障してしまって…。新しい愛車を探す時に、当時からトヨタが好きだったので、見た目がとても好みなセルシオにしました。それで、マークⅡからセルシオに乗り換えたんです。

――当時、セルシオを見て、どこが購入の決め手になったんですか?

まず、エアサスペンションのクルマに1度乗ってみたかったというのと、純正ナビが付いていないのが良いポイントでした。

当時のナビって、ブラウン管みたいになっていて、古さを感じるナビなんですよ。それだったらナビは要らないと思っていたので、好都合でした。あとは。純正の見た目が好きだったので、完全純正というのも気に入り、このシルバー色にも惚れてしまったというのが、購入の大きな決め手かもしれませんね。

――確かによーく見ると、少しアイスグレーのような色味ですよね!

このシルバーは、未だに他のクルマには使用されていないみたいなんですよね。カッコよくて、未だに飽きない最高な色です。

――ともさんは、完全純正というのにもこだわり続けているんですよね?

そうです。当たり前のことなんですが、メーカーが1番良しとしている状態が純正だと思うんですよ。その形を大切にしたくて…。

オーナーの好みにカスタムされているクルマも好きなのですが、このセルシオにカスタムするかと聞かれたら、ちょっとなあ…って。何をやっても、セルシオの元の美しさには勝てないですよ。

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――もしもパーツをつけるとしても、それも純正にこだわるんでしょうか?

自分は降雪地域に住んでいるので、冬はタイヤを変える必要があるんですけど、夏用も冬用も純正ホイールで揃えています。そういえば、リップスポイラーもネットで完全純正のものを探して、最近付けましたね。

――純正へのこだわりがやっぱりすごいですね…。

見た目もそうですし、クルマのバランスも純正の方が絶対良いと思うんですよね。

例えば、ホイールでいうと、純正の物は適度な重さで、足にも負担がかからないですし、クルマにとっても1番良い状態だと思っています。

長く美しく保ちたいので、それも純正にこだわる理由の1つです。

――購入当時と比べて、セルシオへの評価に変化はありましたか?

購入当時は、「マークⅡよりカッコ良いな」という、単純に見た目で満足していましたね。

でも、乗ってみて初めて「あ!これは次元が違う!!」って感じたんですよ。ファーストクラスに乗っているかのような乗り心地に、とにかく驚きましたね。地面を感じないというか…。船に乗っているかのような、ちょっと浮いているような感じがすごく感動しました。

内装の居心地の良さも相まって“これを求めていたんだ”と気付いたんです。

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――昔からずっとセダンが好きだったとSNSで拝見しましたが、それは何故ですか?

派手な物よりフォーマルな物に惹かれるから、だと思います。これはクルマに限った話ではなくて。例えば洋服も、ノーマルなデザインのものが好きなんですよね。

セダンは「The クルマ」っていう形じゃないですか。だから好きなんだと思います。横から見ても美しくて、未だに見惚れちゃうくらいです(笑)。

――SNSで投稿を始めようと思ったきっかけも、セルシオだったんですか?

そうですね。というのも、トヨタのクラウンはSUVスタイルになって、デザインを変えて新たに販売しているじゃないですか。

そういうのを聞いて、2度とセルシオのような顔のクルマには、今後新車で出会えないんじゃないかと思って…。だから「セルシオの形」を少しでも映像で残して、世界にシェアしていきたいという気持ちが生まれたんです。

それと同時に、セダンやセルシオの安全性、デザインの魅力も、動画で伝えていきたいと思っています。

――そんな「セルシオの魅力を知り尽くすともさん」が思う、幸せな瞬間ってどういう時ですか?

セルシオは、主に通勤で乗っているんですけど、そのちょっとの時間ですら本当に楽しいですね。自分にとってはご褒美タイムです(笑)。

――具体的にどのように楽しんでいらっしゃるんですか?

例えば、クルマを運転する時、自分は音楽を流さないんですよ。静粛性とV8エンジンの音が何よりも最高のBGMになるのでね(笑)。

アクセルを踏むと鳴るキュイーンっていうエンジン音と、マフラーの音が大好きです。

――17年間というセルシオライフを歩んできた中で、セルシオとの印象的な思い出はありますか?

つい最近の能登半島地震ですね。自分は実家が能登半島にあるため、年末年始は帰省していたんですよ。

――そうだったんですね…。辛いことをお話しさせてしまい、すみません。

家族は全員無事だったので、大丈夫ですよ。ただ、避難所の受け入れがなかなか難しくて、被災時は女性陣だけ避難所に受け入れてもらって、男性陣は地震発生後から4日間くらい、野宿生活だったんです。

とても寒かったですが、金沢に帰るためには、道路の安全が確保されるまで待たないといけなかったんですよね。野宿中はガソリンを使うのを極力避けて、バス停で毛布にくるまっていましたよ。

――想像を絶する寒さだったと思います…。バス停で野宿する時、セルシオは近くにあったんですか?

セルシオは安全な所へ移動させた状態で待機していました。

4日間の待機後、やっと県から「通行可能な道」の情報が公開され、その道を走って帰ったのですが「本当にこれ大丈夫?」って思うほど荒れていたんです。物がたくさん落ちてるわ、段差はすごいわで…。

――それでも、帰路を進んだんですか?

はい。これはもうセルシオを犠牲にしないといけないなと覚悟して、長い道のりをなんとか運転して、無事に帰れました。

――道中はきっと、不安でいっぱいだったんじゃないでしょうか…。

セルシオは頑丈なクルマであることは間違いないのですが、なぜかそんなに不安は感じなかったんですよね。

120kmという長い距離でしたが、道中は意外にも安心感があったんですよ。「長年共にしたセルシオだからこそ安心できた」というのもあったと思います。

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――その後、傷やヘコみは大丈夫でしたか?

それが、全くの無傷で帰ってこられたんですよ。普段は遭遇しないような、めちゃくちゃ狭い道もあったんですけどね…。もう祈りながら運転していました(笑)。

今では安全に運んでくれたセルシオに、感謝でいっぱいです。後にも先にも、これ以上の印象的な出来事はないんじゃないかと思います。

――壮絶な体験を一緒に乗り越えて、セルシオの存在はさらに大きくなったんじゃないでしょうか?

そうですね。セルシオは自分にとって、友達みたいな感覚が近いと思います。

震災にあった時「セルシオは大丈夫かな」って心配になって、すぐに見に行ったんですよ。もちろん家族の安全を確認してからですが。

そのくらい自分にとって、大切な存在なんだと思います。セルシオが無事だった時は、只々安心しましたから。

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若い頃、周りのご友人はクーペ好きな人が多かったとのこと。当時からセダンにゾッコンだったともさんは、おじさん呼ばわりされ、変わり者扱いをされたという。

好きを貫き、17年間愛し続けた結果、被災時に傍で支えてくれたセルシオ。その存在を噛み締めるともさんは『最後にして最高傑作』だと、今後も語り続けるのでしょう。

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ともさん

(文:秦 悠陽)

MORIZO on the Road