距離感が心地良い トヨタ・サイノスは私にとって、まさに“友達以上、恋人未満”

「どのクルマよりも最高」とか「サイノス一途です」みたいなスタンスではないです。

そう語るのは、1993年式のトヨタ・サイノスβ (EL44)とカーライフを送られているズーマさん30歳。

20歳の時に三菱・FTOをマイカーに迎え、その後マツダ・ロードスターを経て、28歳で今のサイノスに乗り始め、今年で2年目になるという。

「クルマは子供の時から好きだけど、ものすごい熱意を持って接するわけではない」と言うが、彼のカーライフは一体どんなストーリーなのでしょう。

今回は、サイノス×ズーマさんのお話です。

――サイノスの存在は、以前からご存知だったのでしょうか?

実際に乗ったり触ってみたりって言う経験はなかったんですが、子供の時に街で走っていたクルマだったので、知っていましたよ。昔見ていた景色の一部にサイノスがあった、みたいな感覚ですかね。

――サイノスに乗ろうと決めた理由はなんだったんでしょう?

初めての愛車FTOを買う前、祖父が1.3 Lエンジンのトヨタ・コルサに乗っていて、よく借りて乗っていたんですよ。コルサを気に入り「いつか1.5 Lの方で、せっかくならMTのクルマに乗ってみたい」と、軽く思うようになったんです。

それから数年経ち、隣町の中古車屋さんでたまたま、コルサがベースとなるサイノスを見つけた時に、そろそろ乗ってみるかって思って、購入に至りました。

  • お祖父様のコルサ

――サイノスに乗ろうと、前々から決めていたわけではなかったんですね。

そうなんです。一生のうちに絶対乗りたいとか、すごく熱心に探して見つけ出したとかではなかったんですよね。
売っていた場所が遠かったりとか、状態が悪かったなら買ってなかったと思います。

――1つ前の愛車であったロードスターは、何故乗ろうと思ったんですか?

ロードスターを買ったのは、クルマ好きとして、一度マツダの名車に乗ってみたかったからっていう理由でした。それと、自分がどこまでクルマを好きになれるかも試してみたかったんですよね。
結果、確かに素晴らしい名車ではあったのですが、何故か夢中にはなりきれませんでした。

  • マツダ・ロードスター

――そうだったんですね…。それは何故なのか、解明は出来たのでしょうか?

はい。自分のクルマに対する向き合い方が、“程よい距離感で楽しみたい”っていうスタンスだったことに気付いたんです。

――ロードスターがそのことに気付く鍵となったわけですね。

最初のFTOに乗り始めてから現在のサイノスまでの期間が、ちょうど10年なんですけど、自分のそのスタンスに気付いたのが、2台目のロードスターに乗ったときだったんです。

――サイノスに乗り換えたのも、そのスタンスに気付けたからなのでしょうか。

そうです。あと、ものすごく現実的な話になってしまうんですけど、ロードスターを下取りに出したら、思ったよりも良い価格で見積もってくださったんです。約2年半ロードスターで楽しめたし、その買取価格なら、サイノスを買って新たなカーライフを送ってみたいなって思ったんですよね。

それと、今後2、30年後にここまで状態が良いサイノスに出会え、乗ることができるのかと考ると、“ない”と思い、購入しました。

――サイノスの納車日のことは覚えていますか?

覚えています。実は、納車日にサイノスを取りに行った帰り、偶然街中で見かけてくれた人がいたんですよ。しかも、私が納車日に投稿したSNS投稿を見つけてくれたんです。

それがきっかけでやり取りをしてみたら、ご近所さんで年齢も近かったので、今では一緒にドライブする仲になっています。サイノスに乗り始めた初日から、すごく素敵な体験ができたんですよ。

――納車日、初めてサイノスに乗った時のフィーリングはどうでしたか?

なんだろう…。90年代のクルマだなというか、割と普通だなっていうのはありましたね。祖父のコルサが1.3 Lで100馬力のエンジンで、サイノスが1.5 Lの115馬力で、その差は15馬力。レスポンスは1.3 Lの方が良かったですね。真っすぐの道を運転すると、早く感じるので、そこまで不満は無かったです。

――ズーマさんがサイノスに乗っていて、楽しさや幸せを感じる瞬間ってどういう時なんでしょう?

運転しているだけで楽しいタイプなので、難しい質問ですね…。やっぱり交通量が少なくて気持ちよく走れるワインディングロードとか、ビーナスラインみたいな場所を走ると気持ちよくて、めちゃくちゃ楽しいって感じます。

あと、坂道もしっかり走ってくれるので、それも楽しいところです。

――今後はどのように乗っていきたい、などの予定はありますか?

外装はデカールが剥がれてしまっていたり、古傷があったりするので、お金を貯めて直していきたいですね。その他にも色々とケアすべき箇所はあるんですが、気負い過ぎず、長く付き合って行けたら良いなって思っています。

――自分にぴったりなクルマに出会ったということですね。

そうですね、サイノスは好きですよ(笑)。ただ、今まで乗ってきたFTOやロードスターのフィーリングとか、祖父のコルサに乗った経験があるからか、どうしても比べてしまうということはあります。

でも、今思うと、今まで違うクルマに乗ってきて、それぞれの特徴や違いがわかったからこそ良いというか、さっき話した私のスタンスに合っているクルマだと感じるんです。

このクルマだったら付き合いやすいし、維持しやすいなっていうのは間違いなく感じます。

――今のズーマさんにとってサイノスはどんな存在なんでしょう?

サイノスの当時のCMキャッチコピーが、“友達以上恋人未満”なのですが、本当にその言葉が僕にとってはしっくりきます。程よい距離感をキープできるサイノスとのカーライフはとても心地が良いですね。

一方で、熱意を持って愛車を整備している人を見ると、そこまでやってあげられなくてごめんねっていつも思います。

ズーマさんが物心がつく前、親から頼まれたおつかいの途中で、歩道橋の上から行き交うクルマを2時間くらい眺めてしまっていたことがあったのだとか。
「心配になって、お母さんが探しに行ったんだよ」という話を後から聞いて驚いたという。

歩道橋の上からの当時の眼差しは、少し遠くから自分の愛車を気にかけている、今のズーマさんの様子と似ていて、クルマに対する無意識な深い愛情はずっと変わらないのだろうなと、筆者の心が温かくなる取材となりました。

【X】
ズーマさん

(文:秦 悠陽)

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