出来ないことって、そうそうない!クジラクラウンを、アメリカに持っていくと決めた私
「えっ!? アメリカで就職する!? 大丈夫なの?」「クジラクラウンを持っていく!? やめときなよ」「なんか、変わってるよね〜」「不安とかないの? 心配……」。これらのコメントは、アメリカに行くつい2ヶ月前によく言われたと話してくれのはMariさん。
しかしその後、少しの沈黙があり……よく考えると、子供の頃から何億回と言われてきたと豪快に笑って教えてくれました。
今回は、Mariさん×クジラクラウンのお話をお届けします。
―――ツッコミ所がありすぎて、どこから聞きましょうか……。じゃあ、まずは何故クジラクラウンを愛車として迎え入れたのか?から教えて下さい。
高校と大学がアメリカで、そっちで免許を取ろうとしていたんです。だけど、路上テスト前にコロナが世界的に流行り始めて、結局免許を取れずに日本に帰って来ることになってしまったんですよ。
とくに“クルマ好き”というわけではなかったんですけど、免許を取れなかったのが心残りだったのと、日本に帰ってきてもステイホームで暇を持て余していたから、免許を取ろうかな〜と思ったんです。
で、それならクルマが欲しいなと思って、何気なくネットで色々調べていると、クジラクラウンに出会ってしまったんです。70年代のクルマ独特のカクカクしたデザインが可愛いし、母国である日本車、バン、完璧!となって、このクルマに乗るためにマニュアル免許を取ることを決めました。
―――す、すごい決断力!
それくらい“このクルマじゃないとダメ”と思わせる理由がクジラにはあるんですよ。例えば、エンブレムが七宝焼で唐草模様がばぁっと入っていたり、最上級グレードだとシートが西陣織など、ディテールの細かさが素敵なんです。
プラクティカル(実用的)に使うことを想定したデザインが多い新型車にはないところですね。
私が人生において大事にしているのが、“1回しかないから、やったらよかったと後悔することはしない”なんですけど、クジラに乗らなかったらそれになっちゃうと思ったんです。だから、仮免許の時に試乗に行って、すぐに購入を決めました。
周りには「旧車ってそれなりに故障もするし大変だよ?」って言われたんですけど、もう止まらなかったんですよね。
―――ちなみに、旧車が新型車より故障が多いというのは知っていたのですか?
いえ、全く知りませんでした(笑)。だって私、デザインのみで決めちゃったので。
―――実際のところ、どうだったのですか?
それなりに大変でしたね(笑)。エンジンのオーバーホール、足周り、あっ!そういえば、ガソリンが漏れたこともありました。
それまで、旧車どころかクルマに乗ったことすらないものだから、ガソリンの匂いが車内に充満して燃費が悪くても、「さすが旧車だな!」と妙に納得して気付かなかったんですよ(笑)。
ある時、フルで入れて次の日の朝に空になっていたことがあって、これは故障だと気付いたんです。故障の度にテンポよく修理していって、今ではやっとまともに走れる状態になりました。
―――途中で心は折れなかったのですか?
よく聞かれるんですけど、最終的に何とかなればいいよね♪というマインドなんですよ。
青春時代をアメリカで過ごしてきたからなのかは分かりませんが、良い意味で期待をしていないんです。バスが時間通りに来ないなんて、アメリカでは当たり前ですしね。それよりも、クジラに乗ることでどんなアートを感じるか?自分の心をどういう風に震わせられるか?とか考えていましたから。
だからこそ、私はアメリカにクジラを持ってきました。運ぶのに3ヶ月〜6ヶ月かかると言われたんですけど、一昨日届いたと連絡があったんです。1ヶ月で届いてラッキーって感じです。
―――え、ちょっと待って下さい。今、アメリカにいるんですか?
そうです!私、やっぱりアメリカで働くことにしたんです。そして、クジラも持ってきちゃいました。
―――大丈夫ですか?ちゃんと運転出来ていますか?
全然大丈夫ですよ!むしろ、クジラって小回りが効かないし、止まるとか曲がるという細かい作業が苦手だから、道幅や駐車場の枠も広いフロリダの方が合っている気がします。
唯一心配していたのが、スピードが出ないから煽られるんじゃないか?ということだったんですけど、みんな物珍しいのか「何のクルマ?!素敵だね。動画を撮らせて」とか、毎日話しかけてくれます。
それこそ、昨日は「クラウンにずっと憧れていたんだ」という少年が話しかけてくれました。聞くとアメリカ全土でもクジラクラウンってほぼいないらしいので、母国のクルマを広めるチャンスかもと、週末はカーショーにエントリーしてみようと言う夢が出来ました。まぁ、勝手になんですけどね(笑)。
―――そんなMariさんに質問です。乗って良かったですか?
はい!やめとけって億万回に感じるくらい言われましたが、後悔は全くありません。そして、やってみてできないことって、ほとんどないなと改めて思いました。
アメリカに留学したいと電子辞書を片手に過ごした10年前、クジラクラウンに乗るぞと決めた2年前。諦めなければ、スムーズに物事が運ばなくても何とかなるんだ、その先に新しい何かがあるんだと感じることが再び出来ました。
実は、14歳の頃、私には獣医になるという夢があったんです。でも、解剖の授業を受けたあとに、向いていないかもしれないなと心境の変化があり、かなり落ち込んだ時期があったんですよ。
そんな時に2週間交換留学したオーストラリアで、ホームステイ先の子が「ネイチャー!」と言いながらバナナの皮を草むらに投げたんです。それを見て“ゴミをゴミ箱に捨てなくちゃいけないというのは固定概念”で、私はそういうのに縛られていて、もっと世界は広いんじゃないか?それを知らずに死んでいくのは嫌だ、やりたいことに挑戦してみようと変わったんです。
以降、やりたいことにはチャレンジして、これからも後悔のないようにクジラとカーライフを楽しんでいきます。
Mariさんのインスタを覗くと、「週末に開かれるカーショー」にエントリーしたものの、かなり本格的なイベントだった模様……。でも、Mariさんならきっと大丈夫!ネイチャーーーー!
【Instagram】
pig_riさん
(文:矢田部明子)
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