25年間乗り続ける最高の“汎用機”、スズキ ワゴンR エアロRS(CT51S)

  • スズキ・ワゴンR エアロRS

1993年9月3日に登場した、スズキ ワゴンR。シリーズ6代にわたり、軽自動車のロングセラーとして、今も多くのユーザーに愛され続けている名車です。

そんな初代ワゴンRの中でも、ひときわスポーティな雰囲気をまとったグレードが、1997年4月のマイナーチェンジ(4型)でデビューした「エアロRS(以下、RS)」。今回の主人公「エアロRS」さんの愛車です。

25年間乗り続けているというエアロRSさんの愛車は、現行モデルの構成にはないターボ・5MTのFFというレアな仕様だそうです。

―――エアロRSさんがクルマ好きになったのは何歳頃でしたか?

2歳頃には、クルマのおもちゃで遊んでいたそうです。お気に入りだったのは「西部警察」に登場する「サファリ」のミニカーでした。ボタンを押したら音が鳴るやつです。

それから、祖父が仕事で使っていたマツダ ポーターバンの助手席に、子ども用のハンドル付きチャイルドシートを設置してもらっていました。祖父がステアリングを切るタイミングに合わせて、見よう見まねでハンドルを回してドライブ気分を楽しんでいました。

―――お祖父様とのドライブが原点になっているのですね

祖父のおかげで、クルマは生活の中にいつもありました。走っているときの匂いや音、外の景色までセットで記憶に残っていますね。

―――ワゴンRを知ったきっかけは何だったのですか?

中学生の頃に、テレビCMで見たのが最初です。トールボーイスタイル、左右で違う1+2ドア、90年代RVブームの象徴のようなルーフレールなど、当時の軽自動車とはちょっと違うスタイルが印象的でした。

それからしばらく経って1997年3月に、うちの親がワゴンRを買ったんです。あの頃は消費税が5%になる直前で、3%のうちに買いたいということでNA・5ドア仕様の「FX(3型)」が我が家にやって来て、僕も乗っていました。

―――もともとワゴンRが身近な存在だったのですね。ではRSを愛車に迎えたのは?

  • スズキ・ワゴンR エアロRSの運転席のドアが開いている様子

実は、2000年に我が家で増車したクルマなんです。弟が、運転免許を取ったタイミングでFXに乗ってみたら「乗りやすいけど、操作系が軽すぎる」とのこと。ならばターボモデルなら操作系もそれなりに強化されているだろうと、ターボのワゴンRを探し始めました。

そうしたところ、この1997年式の「エアロRS」が売りに出されていたんです。前オーナーはカーショップを経営していて、店頭に展示された後しばらくは、奥様の専用車として使われていたようです。前オーナーが積車で直接納車してくださったことを覚えています。

ヘッドライトには、前オーナーによってアイラインが付けられていたんですが、これが今ではこのクルマのアイデンティティになっていますね。前オーナーさんが目にしたとき「まだ走ってるんだ」と喜んでくれたら、自分もうれしいです。

―――なるほど。RSは当初、弟さんの愛車だったんですね

そうです。一時期我が家には初代ワゴンRが2台いたんです。ところが、僕が2004年頃に飛び出してきたタヌキを避けた結果の事故でFXを廃車にしてしまったので、FXから白に塗装していたルーフレール、メータークラスターなどの遺品をRSに移植して、我が家のワゴンRはRSのみとなりました。

弟が実家を出てからは「RSの維持は兄貴にまかせる」って感じになってしまったので、自然と乗る機会が増えて、いつのまにか愛車になっていました。でも、弟が帰省したときだけ彼に優先権があるんですよ(笑)。

―――兄弟でシェアっていいですね!25年間、実際に乗ってこられていかがですか?

  • スズキ・ワゴンR エアロRSのメーター

最初に乗ったときは、「ターボ車ってこんなに良く走るのか」と驚きました。HA21系アルトワークス譲りのK6Aツインカムターボを搭載していて、レッドゾーンは8500回転から。我が家のクルマの中でも一番の高回転型です。ブーストがかかってから聞こえてくる「キーン!」というタービンの音もお気に入りです。

生粋のスポーツカーには敵いませんが「このカタチでこんなに走るの?」というギャップがおもしろいですし、背の高いボディゆえのロールやねじり剛性の弱さもあって限界は高くないですが、操る楽しさも味わえるクルマだなと思っています。25年で22万km以上走っています。

―――走りと見た目とのギャップも魅力なのですね

  • ジムカーナを走るスズキ・ワゴンR エアロRS
  • ラゲッジルームに洗濯機も積めるスズキ・ワゴンR エアロRS

我が家では一番の“汎用機”なので「乗せてヨシ、乗ってヨシ、載せてヨシ」。ホントに何でもそつなくこなしてくれます。たとえば家族で遠方へ梨を買いに行ったり、愛犬を病院に連れて行ったり。大物の家電を買ったときも、荷室が広く大活躍です。

祖父が仕事で使っていたポーターキャブ(軽トラック)が不調のときは、代役で洗濯機を載せたこともありました。当時、祖父が「ワゴンRはこんなに積めるのか!」と驚いていたことを思い出します。

それでいて、ABSもトラクションコントロールも付いてないぶん、走りの基本が鍛えられます。友人主催のゆるいジムカーナに参加したこともあるんですが「これでジムカーナ走るの?大丈夫?」と心配されるくらいの場違い感すらも楽しめたりします(笑)。

タイムを狙うというより、このクルマの特性を活かして走りたいように走らせるドッグラン感覚…まるで愛犬を楽しそうに走り回らせているようなイメージですね。

―――まさに万能選手ですね!日々のメンテナンスで気をつけている点は?

  • スズキ・ワゴンR エアロRSのエンジンルーム

やっぱり早期発見・早期治療ですかね。音やニオイで「いつもと違うな」というわずかな違和感を見逃さないようにしています。クルマも人間と一緒だと思います。

オイル交換は、だいたい3000kmごとです。スズキ純正のオイルをずっと使い続けていますが、オイル消費もないですし圧縮も正常です。以前、エンジンヘッドからオイルの滲みが出たことがあってパッキン交換したんですが、ヘッドの中はスラッジなどの汚れもなく「新品みたいにきれいだった」と整備士さんに褒められたこともありました。

基本的な整備は、行きつけのディーラーにお願いしています。2023年には、ワゴンRの30周年を祝うディーラーのブログに載せていただいたりしているんですが、初代アルトに乗る友人をはじめ、古くからの付き合いがある整備士の皆さんが“かかりつけ医”として、このワゴンRを四半世紀にわたりメンテナンスしてくださっています。

年式なりの手のかかる部分は、旧車の扱いに慣れた仲間の整備士さんに相談しながら、走りの質感にも気を配るようにしています。

現在まで良いコンディションで乗り続けることができているのは、ディーラーの整備士さんや、旧車仲間の存在があってこそですね。自分一人だけの力では到底不可能でした。

困ったときには頼れる人たちがいてくれるし、それぞれの得意分野を活かして情報を出し合える環境があるからだと思っていて、いつも感謝しています。

―――整備士さんや仲間の皆さんとの関係も、しっかり築かれてきたのですね。続いて、カスタムについても教えてください

  • スズキ・ワゴンR エアロRSと海

メインテーマとしてはワゴンRに「スズキスポーツリミテッド」が存在したらという設定でカスタムしています。

スズキスポーツの名を冠したアルトワークスの特別仕様車が1998年に出ていたんですよ。白いボディにサイドステッカーというスタイルが印象的で、当時それを見て「RSにもあってもおかしくなかったのでは?」と考えたことがきっかけでした。

純正風コンプリートカーをイメージして、スズキスポーツ製のマフラー、ストラットタワーバー、ブースト計など、実際当時のディーラーで購入できたパーツを少しずつ集めて、自分なりの“スズキスポーツ リミテッド仕様”をカタチにしてみました。

お気に入りは、アルトワークス スズキスポーツ リミテッドの純正のホーンボタンです。ステアリングの形状が同じだったので、無加工で使えました。しっくり収まってくれると「こういう仕様が試作でホントにあったんじゃないか」って思えてきますよね。

  • スズキ・ワゴンR エアロRSのステアリング

―――手を入れていくうえでこだわっている点はあるんですか?

「ワゴンRであること」を崩さないようにしています。自分としてはロールバーやピラーバーで剛性を上げるよりも、積載スペースや日常使いの快適さを優先させ、ワゴンとしてのパッケージングを活かしたいです。ワゴンRのRは「不敗神話のR」ではなく「革新(Revolution)」と「くつろぎ(Relaxation)」のRなんですから。

あとは「RS」というグレード名にも思い入れがありますね。個人的に、「ワゴンRのS=スポーティバージョン」と「RS=ロードスポーツ」という2つの意味があると思っています。なので、実用車だけど、スズキらしいスポーツマインドも感じられる仕様にしたいという気持ちがあります。見た目も中身も“ワゴンであ〜る(※車名の元となったとも言われているだじゃれ)”けど、走っても楽しい仕様を意識しています。

―――クルマ仲間のネットワークはいかがですか?

  • スズキ・ワゴンR エアロRSのリヤ

我が家では趣味としてではなく、あくまで“実用機”として乗ってきたのでイベントなどにはほとんど出したことがないんです。

なのでさっきもお話ししたように、つながりといえば整備に関わってくれる仲間くらいなんですよね。それでも、このクルマを見た方が「うちの親が昔乗ってた」と懐かしがってくれたり、「あんた、ココ変えとるな」とさりげなくカスタムに気づいてくれる方がいたり、走行距離のキリ番を楽しみにしてくれる人もいたり。ちょこちょこ気にかけてくれる人がいるのはうれしいです。

我が家に来てから四半世紀、気づけば6世代前の立派な旧車領域に入って、街中でも見かけることが少なくなりました。そろそろ旧車イベントにもちゃんと出していこうと思っているので、新しいつながりができたらいいなと思います。

実は、今現在、このRSを含めて、それぞれ規格の異なる軽自動車を4台所有しているんですが、自分の力だけで維持するなんて到底できることではありません。だからこそ、頼れる仲間がいてくれることのありがたさを日々感じています。

整備や情報の共有も含めて「旧車の維持はお互い様」と考えています。これからもクルマを通じてできたネットワークを大事にして、皆と楽しんでいきたいですね。

―――ぜひエンジョイしてくださいね。最後に、愛車と今後やりたいことを教えてください

今まで、四国の4分の3周&“酷道(国道)”439号の半分走破、“酷道”429号完全走破をしたり、角島にも行ったりしました。県北に雪が降れば、スタッドレスタイヤを履いて走りにいくこともあります。エコランも思ったより楽しめて、リッター24km超えを記録したこともあります。今後も、冒険要素のあるロングドライブをしてみたいですね。長期の休みがとれれば九州一周とか、行ったことのない場所を走ってみたいです。

今も新しいワゴンRが出るたびに試乗はしているんです。1+2ドアやルーフレールが廃止されたり、新エンジンや安全装備が追加されたりと、メーカーの取捨選択と進化はまちがいなくありますが、実用面ではどの世代もちゃんと“ワゴンRしてる”んですよね。

でもだからといって乗り換える理由もなくて(笑)。自分にとってはこのクルマがしっくりきています。これからもこのワゴンRエアロRSと共に走って行けたらいいですね。

  • スズキ・ワゴンR エアロRSと雪景色

日常使いを大切にしながら、走りも楽しむ。道具としての「相棒」であると同時に、家族の一員として愛情を注ぐエアロRSさんのカーライフには、愛車とのあたたかな関係が築かれていました。

(文:野鶴美和 写真:エアロRSさん提供)