心を奪われたヴェロッサの優美なCM。想いを温め続け、24年後ついに愛車に
30代前半は仕事や子育てに大忙しで、大好きなクルマまで手が回らなかったと懐かしそうな声で話す「Oさきさん」。毎日があっという間に過ぎていき、当時のことは思い出せないと語る中、トヨタ・ヴェロッサのテレビコマーシャル(CM)だけはずっと鮮明に覚えていたと自信満々に答えてくれました。
今回は、Oさきさん×ヴェロッサのお話をお届けします。
―――大変申し訳ないのですが、ヴェロッサと言われて、すぐにクルマが思い浮かびませんでした……。
それそれ!その反応、とても嬉しいです。
―――あ、あの……私がいうのもあれですが……。普通は、怒っていいところではないでしょうか?
いやいや。そうなるのも至極当然のことで、このクルマってたった3年弱で生産終了になったし、総生産台数が約2万4000台の不人気車だから、知らなくて当然なんですよ。
基本となるメカニズムは9代目マークII(X110型)と同じなのに、現行車の時代でも街中で全く見かけませんでしたからね〜(笑)。ちなみに、最近300台規模の旧車イベントに参加しましたが、1台もヴェロッサは来ませんでした。
でも、オーナーからすると、ソコが愛おしいんです。それに、考え方を変えれば、それだけ他人と被らないってことじゃないですか。
―――なるほど……そういった考え方もありますね。そんなOさきさんはヴェロッサのどこが好きなのですか?
全てです。全体的なフォルムやフロントのデザイン、リアライトの形など、日本車っぽくない、オシャレでかっこいいところが大好きです。ヴェロッサが発売されたのが2001年だったんですけど、その時に流れていたCMを見て「うわぁ!乗りたい!」と一目惚れしてしまいました。
なぜなら、ブラックチェリーマイカのヴェロッサが、ボディーを偏光させながら優雅に走っていく姿には、イタリアの風が流れていたから。オシャレで、上品で、高貴な感じがして、その当時の僕とは真反対の出立ちで目を惹かれたというのもあったのかなぁ。あの頃は子供も小さかったし、今の生活状況では無理だなと購入は我慢しましたけどね。
―――それから24年、どういうキッカケで憧れのヴェロッサを手に入れることになったんでしょうか?
欲しいな〜と心の奥で思いながらずっと過ごしてきて、子供が成人して手を離れた5年前に中古車サイトを見ていたら、たまたま近所のクルマ屋さんがヴェロッサを販売していたんです。しかも、あろうことか“エクシード”という特別仕様車! すぐに見に行って、1週間も待たないうちに判子を押しました(笑)。
―――エクシードという特別仕様車だと、どこが違うんですか?
通常はメッシュのフロントグリルが、クロームめっきを施した縦バー構造になっているんです。あとは、グリル真ん中のエンブレムがゴールドになって、ゴージャス感が増し、よりヨーロッパ車っぽくなるといった感じですかね。
実際に乗ってみたら、内装もすごく良いんですよ〜。インパネ周りやパワーウインドウスイッチ周辺がウッド調になっていて、高級車に乗っているんだ……という気分にさせてくれます。
あとは、運転席に座ると、徐々にヴェロッサが欲しかった当時の思い出が蘇ってくるのも良かったと思えるポイントです。それは、お金じゃ買えない“大切なもの”ですから。
そう考えると、今までの愛車って、主に移動手段として乗ってきたから「走ってこそ」だったけど、ヴェロッサに関しては、何をするわけでもなく30分くらいずーっと眺めたり、ちょっと汚れがあったら拭くとか、そんな感じで触れ合っていますね。どちらかというと、側にいてくれるだけで幸せという存在かもしれません。
―――じゃあ、あまり乗られていないんですか?
通勤で平日に1回乗って、休日は少し流して、あとは車庫で休憩してもらっています。という具合にあまり乗っていないんですけど、走りもなかなかのものですよ〜。
―――どんな感じなのですか?
スピードではなく雰囲気で満足感をくすぐるイメージです。ヴェロッサのエンジンは1Gと1JのターボとNAというラインナップなんですけど、僕のはあまり速くない1Gの方なんです。スピードは出ないんだけど、むしろこのタイプが自分に合っていたなぁとつくづく感じますね。
お話したように、僕の中のヴェロッサってCMのようにゆっくり優雅に走るイメージだから「この速度感がほんとうにちょうど良かったな〜」なんて乗るたびに思っています。30代前半の頃に夢見たクルマに乗れたと、嬉しさもゆっくり噛み締められますしね。
―――これぞ、孫可愛がりってやつですね!笑
そうかもしれません(笑)。これでいいんですよ。自分にとってヴェロッサは、大切にしたい、思い出の宝箱のような存在なんです。今後は、なるべく無理をさせないように、負担がかからないような乗り方をして、できるだけ長く一緒にいられたらいいなと思います。
今後も、川越の街中をぶらり走りながら、ゆっくり自分らしくカーライフを送りたいというOさきさん。綺麗にしているので寝心地が良いのか?近所の猫にも人気だと笑いながら話してくれました。一人ひとり、それぞれに全く別のカーライフがある。Oさきさんにインタビューしていると、それを強く感じました。
【Instagram】
tiro20200924さん
(文:矢田部明子 写真:Oさきさん提供)
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