少年時代の衝撃を胸に。憧れを高度に実現したレクサスSC300
小学生の頃に見たD1GPドライバーの上野高広選手の30ソアラ(トヨタ3代目ソアラ)に心を奪われ、「いつかは絶対30ソアラに乗る!」と決意した『海老ちゃん』さん(以下、海老ちゃん)は、21歳で1台目のソアラを購入。一度は手放したものの、現在は再び30ソアラの逆輸入車であるレクサスSC300を手に入れ、休日を楽しむための“遊びクルマ”として欠かせない相棒になっているとのこと。現在のD1GPでは上野選手の専属メカニックとしても大活躍です。
今回はそんな海老ちゃん×レクサスSC300の素敵なお話をお届けします。
——おお、このレクサス SC300! 左ハンドルなんですね。まず、いつこの車を手に入れたんですか?
2019年の12月ですね。もう6〜7年になります。“ソアラ”って呼んでますけど、実はアメリカのレクサスSC300で逆輸入車なんですよ。アメリカの30系はV8の4.0Lと、直6の3.0L NAだけ。日本の2.5ターボは存在しません。僕のは3.0LのNAで、ゆったり走れて気に入ってます。
——では日本仕様とは全然特性が違うんですね。どうして左ハンドルに?
いやもう、完全に憧れですよ(笑)。僕が若いころ、いわゆる“レクサス仕様ブーム”というのがあって、30ソアラをアメリカンな雰囲気に寄せていくカスタムが流行っていたんです。その時から「いつかは本物の左ハンドル乗りたいな」と思っていました。
そんな中、6〜7年前に日本でも珍しい1999年式SC300(サンルーフ付)が出てきて「これはタイミングだな」と感じて乗り換えたんですよ。
——どんな出合い方だったんですか?
NATS(日本自動車大学校)で教員をしていた頃、教え子が「SC買いました!」と乗ってきたのが最初です。状態も良くてめちゃくちゃカッコよかった。冗談で「飽きたら譲ってね〜」って言っていたら、本当に1年後に「先生、乗ります?」と連絡がきて(笑)。乗っていたアリストと交換して今のSCになりました。
実は前から「レクサスのSCが欲しいな」と思っていたので、心の中ではかなりうれしかったですね。
——念願の30系が降ってきたわけですね。そもそも最初に30ソアラに惚れた理由は?
小学生の頃からD1GPを見にいっていて、ツアラーV(トヨタマークⅡシリーズ)全盛期の中で上野選手の30ソアラだけが異彩を放っていたんです。あのサイズであのキレ。衝撃でしたね。「絶対ソアラに乗る」って思ったのはそこです。
——そのころからもう“クルマの道”に入っていた感じですね。では免許取って最初に乗ったクルマは?
NATSの学生時代に買った日産スカイラインRS(鉄仮面)です。『西部警察』の赤黒スカイラインに憧れていて、ちょうど手頃な鉄仮面があったので迷わず買いました。
——いいですね〜! その後の車歴の流れも知りたいです。
NATSで二級整備士を取った後、FRPやカスタムを学べるカスタマイズ科に進んでクルマ作りに没頭していました。そのころに学科の人気が高まったこともあって「卒業したら先生に」と誘っていただき、そのまま18年教員生活を送ったんです。
憧れのソアラは就職後の21歳のとき、JZZ30型のソアラ2.5GT-Tのオートマを購入しました。VERTEXエアロを組んだりブルーにオールペンしたり、レプリカ仕様を作って楽しんでいました。このソアラは13年所有していましたが、家族ができたのを機にアリスト(トヨタ)へ乗り換えたんです。
——そしてSC300につながるわけですね。ところで、海老ちゃんはD1GPとの関わりも深いですよね?
はい。2005年に織戸学さんがD1に参戦していた頃、NATSとしてサポートに入ったのが最初ですね。織戸さんがD1復帰した2009年からは「車をNATSで管理してほしい」と言われて、車両管理全般を任されるメカ責任者になり、2015年まで担当していました。
NATSを退職後は2006~2008年まで上野選手をプライベートでサポートし、今はほぼ上野さんの専属メカとしてD1に帯同しています。
——そんな経歴の方が作るSC300…そりゃ仕上がりが違いますよね(笑)。どんなカスタムを?
最初は本当にノーマルっぽいパールホワイトだったんですが「好きに仕上げたい」と思い、VERTEXのワイドボディキットを組んで「完全に自分の好きな色でいく」と赤にオールペンしました。
——外装のコンセプトやテーマはありますか?
基本は見た目のかっこよさ重視で「赤×黒」コンセプトで統一しています。ボディメインは派手な赤ですが、要所のポイントは黒で引き締めています。あとは車高含め、そのままで車検に通るカスタムという点ですね。
——なるほど。「赤×黒」コンセプトとは、具体的にはどんなところを?
エンブレムを黒に、フロントグリルも艶消し黒にしています。あとは19インチのWedsホイールは黒ベースにクリアレッドのラインを入れてもらった特注品で、独特の深みがお気に入りです。
車高調はHKSダンパーに、ブレーキはLS460のキャリパーを移植して見栄えとバランスを調整しました。
——内装もすごくまとまってますよね!
最初、運転席にBRIDEの黒シートを入れたら、内装がベージュなのでなんかバランスが悪かったんです。だから助手席もBRIDEシートをいれて、後部座席にはソアラ用の黒シートの中古を探して、前後の統一感を出しました。
その他ステアリングはVERTEXでナビは8インチへ。スピーカー類も換えて古さをリフレッシュしています。
——海老ちゃんのこだわりが詰まったカスタムですね! このクルマはどんな用途で使っているんですか?
休日のドライブ、写真撮影、イベント参加など、完全に“遊び車”ですね。上野選手のD1デビューの頃を意識して、当時物ホイールとメッキステッカーを貼ってD1仕様にしてみたり、一眼レフを持ってアクアラインや夜の都内を撮りに行ったり。デモカーみたいに綺麗に仕上げていたので、T&Eの素材として写真を使ってもらうこともありました。
——確かに提供いただいたお写真のクオリティが高すぎです(笑)。ところで、メンテナンスはもちろんご自身で?
全部自分です。触れるところは触りたいタイプなので(笑)。元整備士ですし、クルマは「自分の手で仕上げる」のが好きなんですよね。
——いいですね〜! ところで最近、乗り換えを検討しているとか?
はい。次はV8に乗りたいんですよ。候補はレクサスIS Fです。実は昔のデモカーだった個体を譲ってもらえる話があり、SCが売れたら乗り換えようかなと考えているところです。本音ではGS FとかLSも好きなんですけど、さすがに価格が…(笑)。IS Fはそれよりずっと手頃ですし、ちょうどいいんですよね。
——SC300に負けないくらい素敵な相棒になるといいですね。最後に、海老ちゃんにとってSC300のような遊びクルマはどんな存在か教えてください。
僕にとってはストレス発散であり、気分転換であり、仲間とのつながりでもあるんです。夜にふらっと走るだけでも気持ちが整うし、教え子たちとクルマを並べて遊んだり、イベントで話したりするのも楽しい。
逆に、クルマが動かない期間が続くとストレスがたまってくるぐらい(笑)。
だから“遊びクルマ1台”は絶対に欠かせない存在です。
整備士、教員、D1メカとしての経験を積み重ねてきた海老ちゃんの言葉は、クルマを本気で楽しんできた人ならではの温かさと説得力にあふれていました。次の相棒との物語も楽しみですね!
(文:西本尚恵 写真:海老ちゃん提供)
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