自然体で付き合ってきた15年。いすゞ アスカとの“信頼関係”
街でよく見かけていたクルマが、いつのまにか姿を消していたと気づく瞬間があります。
月に何十万台ものクルマが製造されている以上、自然なことかもしれません。そうした中で久しぶりに健在な姿を見かけたとき、オーナーさんには頭が下がる思いです。
今回の主人公「catwalk」さんの愛車は、シリーズ4代目のいすゞ・アスカ(CJ3型)。
ホンダ・アコードのOEM(相手先ブランド製造)として、1997年から2002年にわたって販売された4代目アスカは「LF(1.8L)」と「LJ(2.0L)」のふたつのモデルで構成されています。catwalkさんの個体はLJです。
このアスカに乗り始めて今年で15年目というcatwalkさんのカーライフと、愛車への想いを伺いました。
――いわゆる“レア車”になると思うんですけど、声をかけられませんか?
実は、全然気付かれないんですよ(笑)。一昨年に旧車のミーティングへ参加したときに、旧車オーナーさんたちに初めて気づかれたくらいです。
――それは意外です。アコードとの違いって、よく見るとわかりますか?
リアとフロントに「ISUZU」、リアとサイドに「ASKA」のロゴが付けられています。純正ホイールやグリルも、ISUZUオリジナルの形状です。アコードのオーナーさんがグリルを交換して“ASKA仕様”にすると聞いたことがあります。
――よく見るとわかりますね。他にはありますか?
エンジンのヘッドカバーを見ると「Honda」のロゴがないんです。ここがOEMならではだと思いますね。
――では、アスカを選んだ理由を教えてください。
まずは、珍しいクルマだから。もともと自分は、人とかぶらないクルマに惹かれるようです。以前もスズキ・ジムニーや、ポンティアック・ファイヤーバード(トランザム)に乗っていました。
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初めての愛車だったスズキ・ジムニー
ジムニーは初めての愛車で、当時は乗っている人がそんなにいなかったように思います。トランザムはシリーズ3代目の最終型で、私の個体は1992年式でした。いわゆる『ナイトライダー』のベース世代です。ナイト2000仕様で見かけることはあっても、オリジナルのトランザムはあまり見かけなかった気がします。
アスカを選んだ大きな理由は、やはり車名ですね。高校生のころからCHAGE and ASKAのファンで「ASKA」という名前のクルマがあると知ったときは、かなり驚きました。
ちなみに、トランザムも正式車名は「ファイヤーバード(=火の鳥)」で、チャゲアスのロゴに通じるところがあるんです。当時一人で「おぉ!」となっていました。初代アスカもグローバルカーとしてGM(ゼネラルモーターズ)と関連があったりするので、私にとってこの2台にはつながりを感じています。
――なるほど…! そもそも、クルマに興味を持ったきっかけは?
物心がついたころには好きでしたね。当時の我が家は日産ブルーバードを代々乗り継いでいて、祖父も父もブルーバードでした。自分が知っているだけでも、シリーズ3世代を乗り継いでいた記憶があります。
私は男3人兄弟で、家族で遠出するときにはブルーバードの後部座席が指定席みたいな感じでした。
当時は高速道路が今ほど整っていなかったので、下道を走りながら途中で食事をはさんで目的地まで走っていました。そんな移動時間がとても楽しかったです。走っているクルマを見て、家族で“ナンバー集め”をしたり、車種を当てたりする遊びをしたりしていました。
――「クルマで過ごす時間」という原体験が、今のカーライフにつながっているわけですね。では、あらためてアスカとの出合いを教えてください。
アスカを知ったきっかけは、中古車サイトだったんですよ。普段から中古車情報を眺めるのが好きで、特に買うつもりがなくても見ていたんです。
いつものように、友人と「このクルマいいよな」とチェックしていたときのことでした。たまたま検索した結果に、1台だけ引っかかったんです。思わず友人に「『ASKA』というクルマがある!」と言ってしまうほどの衝撃を受けました。
黒で5速MT。値段も現実的で、車検も半年ほど残っていました。「これを逃したら、もう出てこないかもしれない」と友人に話すと「買っちゃえば?」と言うんです。急に購入意欲が湧いてきました(笑)。
当時は独身でしたし、もし維持が大変だったらそのときに考えればいいくらいの気持ちでした。
――納車日のことは覚えていますか?
当日は友人と一緒に行く予定だったんですが、都合が合わず一人で夜行バスに乗って横浜へ向かいました。
現車確認して、契約を済ませたあと「このまま自走で帰ります」と伝えたら、ショップの方が気を使ってくれて、バッテリーをサービスで交換してくれました。
ガソリンがほとんど空だったので、近くのスタンドで給油しました。純正ナビを使おうとしたら、画面が劣化していて心許なかったですが、そのナビを頼りに走ったのを覚えています。
――寄り道はされましたか?
ちょうどその日、トランザム繋がりのクルマ仲間たちが静岡方面にツーリングしているという話を聞き、帰り道で合流しました。
アスカ自体、実車を見たことがない人が多かったですね。知っている人は「OEMのね」という感じのリアクションでした。
ツーリングが解散したあと、そのまま名古屋の友人宅まで走って一泊させてもらいました。翌朝は、友人と一緒に朝食を食べてから帰宅しました。
――いきなり長距離でしたけど、購入初日とは思えないほど濃い一日ですね。
そうですね。これまで左ハンドルのトランザムに乗っていたので、右ハンドルは久しぶりでした。なぜか妙な安心感がありました(笑)。
――名義変更の手続きはご自身でされたそうですね?
はい。チャゲアスにちなんだ希望ナンバーにしたかったので、ネットで事前に申し込んで、必要な書類を揃えて友人と陸運局に持っていきました。
流れ自体は想像していた通りでしたが、ナンバープレートの封印の外し方だけ分からなかったんです。二人でいろいろやっても外れなかったので、最終的には近くにいた職員の方に外してもらいました。
――納車されて15年経ちますが、これまでどんなところへ出かけてきましたか?
いろいろ行きましたね。結婚して子どもが生まれてからは、アスカで家族旅行に行くことも増えました。子どもは、前のほうが景色もよく見えるという理由で、成長してからは助手席に座ることが多いですね。
――catwalkさんが幼いころに体験してきた「お出かけ時間」が引き継がれているように感じますね。グッときます。
かもしれませんね。あとは旧車イベントにも行っています。ただ、ずっと“見学専門”だったんですよ。
昨年初めて“展示車輌”として参加しました。
――意外ですね。展示側として参加したイベントはいかがでしたか?
新鮮でしたね。これは偶然なんですけど、隣に弟が乗っていたスバル インプレッサWRX(GC8型)がいて、並んで展示するかたちになったことがうれしかったです。
それから、初めてアスカを通じたチャゲアスファンの方との出会いもあり、驚きました。
――刺激的な1日だったんですね。ところで、これまでに故障などはありましたか?
2020年に、いすゞからリコールの案内が届いたんです。生産から何年も経つのに意外でしたし、きちんと対応してもらえて安心しました。滅多にない機会なので、訪問記念に写真も撮ってしまいました(笑)。
修理といえば、リコールと同じ年にラジエーターの修理がきっかけで、劣化した部品のリフレッシュをしました。依頼したショップは、姫路にあるアコード・トルネオの専門店です。
フロントとリアのアッパーアーム、ロアアームのボールジョイントブーツ、タイロッドエンドのブーツ類をまとめて交換してもらいました。
作業中に、デスビからのオイル漏れが見つかったので修理。クラッチマスターの交換や、エアコン作動時の異音対策でエアミックスモーターも交換しました。
マフラーも排気漏れしていたため、ショップおまかせで無限のマフラーに交換してもらいました。このマフラーになってから、低音がキレイになった気がしてうれしいです。
――リフレッシュは大事ですね! こちらの専門店は、主治医的なショップなんですか?
「主治医」は、トランザムのころからお世話になっている県内のショップです。姫路の専門店では、アスカが製造から20年目となる節目の車検だったということもあり、一度プロフェッショナルの目線で見ていただくことにしました。もしアコード関係で困ったときには、またお願いしたいと思っています。
――心強いですね。あらためて、このアスカで気に入っている点を教えていただけますか?
セダンなんですけど流れのあるフォルムが気に入っています。それから、リアスポイラーのランプ。ブレーキランプとは別に、スポイラー部分が点灯するのがちょっとしたアクセントになっていてキレイなんですよ。
――走らせていて楽しい瞬間は?
天気の良い日などは、窓を開けて2速から3速に引っ張ってシフトアップするときの音を楽しむこともあります。気持ちいい吹け上がりですね。
――アスカとの良い関係が伝わってきます。これからの愛車との予定は?
週に一度は必ず乗るようにしているので、定期的なドライブと洗車でしょうか。
県内の広域農道を探検するのが好きで、地図で調ベて出かけたりするんですよ。それを続けていきたいなと思っています。
でもいつの日か、全国走破してみたいですね。新婚旅行が北海道で、ロードスターをレンタルして道内一周したことがあるんです。あれをもう一度マイカーでやってみたいと思っています。
――現在感じている愛車への想いをお聞かせください。
最初はこんなに長く乗るつもりはなかったんですけど、今は「いいクルマと出合えたな」と素直に思えます。
アスカを修理に出している間にアコードを代車で借りていたんですが、やはり違うんですよね(笑)。いなくなると寂しい。家族の一員みたいな存在になっていることにも気づきました。今後も楽しく乗っていけたらと思います。
自然体なカーライフが素敵なcatwalkさん。希少性は喜びとして受けとめつつ、日々のドライブやメンテナンスを欠かさない。しかし、溺愛しすぎない。そんなちょうど良い「距離感」が、アスカとの信頼関係を育んでいるように感じました。
お話を伺いながら「乗り始めたころには見えていなかったことが、今だからこそわかるようになった」という印象を受けました。「いい出合い」と思えること自体が、15年の答えなのかもしれません。
これからも、アスカとの時間を心地よく重ねてくださいね。
(文:野鶴美和 写真:catwalkさん提供)
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