「もしも特別仕様車があったなら」。理想の1台に仕上げたアルトラパンSSとの22年・22万キロ
2004年に迎え入れてから、まもなく所有22年となるオーナーさんのスズキ・アルトラパンSS。
2002年に初代ラパンが発売されてから約1年後、シリーズで初めて64馬力仕様のターボエンジンとフロアシフトの5MTを追加した「ラパンSS」がデビュー。「SS」は「ストリートスポーツ」の意味で、トランスミッションは5速MTの他にコラム4速AT、駆動方式はFFと4WDがラインナップされました。
オーナーの「SS」さんは、「もしも、ラパンSSに特別仕様車があったなら」という設定で、ディーラーで注文すれば買える純正パーツをうまく流用して活かしつつカスタムしてきたそうです。
今回はSSさんとアルトラパンSSのお話です。
――SSさんがクルマを好きになったのはいつでしたか?
2歳くらいですね。気がつけばトミカで遊んでいて、そのあとラジコンに一時期ハマって……小学生のころはミニ四駆にどっぷりでした(笑)。
愛車歴でいうと、ペダル式の三輪車と四輪車が始まりで、その後は二輪(自転車)、小学生のころはミニ四駆のバーニングサンとネオ・バーニングサンでした(笑)。大学生のころは、プレステの「グランツーリスモ」にハマりまして、初代から3まで完全にやり込みましたね。ミニ四駆とグランツーリスモで“クルマを弄る”ことの基礎を学んだような気もします(笑)。やがて運転免許を取得し、スズキ・ワゴンR FX(CT21S型:初代ワゴンR)、現在のラパンSSに至ります。
――「原体験」として覚えているクルマとの思い出はありますか?
まず、祖父が仕事で使っていたマツダ・ポーターバンの助手席ですね。子ども用のハンドル付きチャイルドシートのようなものを着けてもらっていました。祖父のステアリングさばきに合わせて一緒にハンドルを回すのが楽しくて、自然と「クルマって楽しいな」と感じていました。また、同じく祖父が仕事で使っていたマツダ・ポーターキャブにジャングルジムのようによじ登ったり、荷台から飛び降りたりして遊んでいました。
それから、親が乗っていたスズキ初代アルトの存在が大きいです。このクルマの後部座席で育ったようなもので、のちにトミカから「リミテッドヴィンテージ」として色やステッカーがまったく同じミニカーが発売されたときは、即購入しました。この3台が実車の原体験です。
――原体験がクルマとの付き合い方を確立させたのでしょうか?
祖父がポーターバンを30年以上乗っていたので、自分も「気に入ったものは末永く使う」という精神を受け継いでいると思います。
――お持ちのラパンSSは、走行距離22万kmを超えたそうですね。おめでとうございます!
そうですね、ありがとうございます。22年22万kmになりました(笑)。
――すごいです。そんなラパンSSを知ったきっかけは?
きっかけは、2001年のモーターショーに出ていたラパンのコンセプトモデルですね。そのシルエットが、祖父が乗っていたポーターバンにも似ているのが印象的でした。
当時は「次のアルトなのかな」と予想していたんです。まさか翌2002年の1月30日に、アルトの派生車種「アルトラパン」として登場するとは思いませんでした。
――そこから「SS」というグレードにたどり着いた理由は?
2002年の東京オートサロンに、ボーイズレーサー仕様にカスタマイズされた1台のラパンが展示されていたんですよね。SSのエンブレムも含めたその雰囲気が、クラシカルかつスポーティーで、とてもよかったんです。
このSS仕様のカスタムラパンの反響がよかったのか、翌2003年のマイナーチェンジでオートサロンに出ていたものとほぼ同じ雰囲気のまま、SSがラインナップに加わりました。しかも、ラパン初のフロア5速MTと64馬力のターボ。実際に行きつけのショップでカタログももらって帰りましたし「もし乗り換えなければならない事態になったらこれもありだな」と、何となくではありましたが思いを馳せていました。
――それが、望まぬ形で現実になってしまった……ということですね……。
はい……。2004年のある日、当時の職場からの帰り道で飛び出してきたタヌキを避けたばっかりに、事故でワゴンRを廃車にしてしまいました。
それで新たなクルマをとなったわけですが、ワゴンRは弟がもう1台乗っていたので、今度はもっと“自分用”に振っても良いかなと思ったときラパンSSが思い浮かんだんです。
ボディカラーは、白・黒・銀・赤、そしてグレーが設定されていたのですが、デビュー時に広報車両として雑誌に出ていたのがラパンSSと同時に追加されたグレーの新色「アズールグレーパールメタリック」だったので、これに決めました。
――納車当時のこと、覚えていますか?
覚えています。なんとなくこの個体とは長い付き合いになりそうな予感がしたので、当時の自分にできる範囲で、丁寧に慣らし運転しようと思いました。5000kmまでは3000回転までに抑えて、なるべくターボブーストをかけないように。最初の3000kmまでは、1000kmごとにオイル交換。以降は、3000kmごとに欠かさずオイル交換をしています。
シート位置を合わせたうえで、砲弾型で鏡の面積が小さなドアミラーを、見やすいようにしっかりと調整しました。また、かつてガレージセールで入手してワゴンRに取り付けていたメッキのドアロックノブを“遺品”として廃車時に取り外していまして、これが形状が同じだったため“移植”。
そしてルームミラーは、夜間の走行時に後続車のライトが眩しかったので、これはすぐに何とかしたいと思いました。防眩式ルームミラーではなかったので、防眩式に交換したところ、結果的にそれが最初のカスタムとなりました。
以降は、アルトの一族の名に恥じることなく、あるときは通勤に。あるときは家族を乗せて買い物に。あるときは愛犬を病院に。あるときはクルマの催事のために遠征し……積載力はワゴンRほどの余裕はないものの“あると便利なラパンSS”として、その機動力を十分に発揮して活躍してくれています。
――初ドライブはどんな場所でしたか?
海へ……とかだと良かったんですが、通勤路です(笑)。片道30kmで山坂道もあるんですけど、ターボが効き始めたら楽々と登っていくので驚きました。最初は慣らしを意識していたので、あまり負荷をかけないようにゆっくり走っていました。
――ラパンSSに乗るようになって、心境の変化はいかがでしたか?
ワゴンRを事故で失ったときのあの悲しみは二度と味わいたくないし、このクルマとどこまでいけるか試してみたいとも思うようになりました。
たまたま出先で遭遇した「ラパンクラブ中四国(LC4C)」のオフ会との出会いも大きかったです。同じ車種の仲間との交流はカーライフの糧になりましたね。
―――どんな雰囲気のオフ会だったんですか?
ファンシー、ラクジュアリー、レトロ調やレーシーなものまで、いろんな方向性のラパンが一堂に集まっているのが印象的でしたね。
カスタム志向はバラバラなのに、お互いを尊重して仲良く楽しんでいる光景がすごいな〜と思っていました。自分もその末席に加えていただいて、さまざまな場所でのオフ会に参加しましたね。
最終的には解散となってしまって、やはりワンメイクの集まりはなかなか難しいんだなと感じました。最後のオフ会のときにいただいたステッカーをまだ貼っていまして、このステッカーを見て当時のメンバーが懐かしく思ってくれたらうれしいですよね。
―――初代ラパンならではの“あるある”ってありますか?
我が家のラパンSSはまだ正常ですが、助手席前の小物入れの爪が折れてしまって、引き出しが開きっぱなしになることがあるようです。
コンセプトモデルの登場から25年が経とうとしていますが、デザインが気に入って乗っている人が多いからなのか、大事に乗られている“飼い主”さんが多いようです。近い年式の他車種と比べても、街で見かける頻度はまだまだ多いように感じますね。
―――大事に乗られているオーナーさんも多いと思います。オフ会では、カスタム面でも収穫があったとか。
いろいろありますが……一番はワイパースイッチでしょう。別車種のスイッチがそのまま使えて、ワイパーに間欠コントロール機能が追加できると知ったときは衝撃でした。同じ電装メーカーの部品同士だとこういう流用が可能なんだと気づかされた出来事でしたね。
のちに、このオフ会での話で出た車種に加えて、別車種のワイパースイッチを流用してさらなる機能を追加することに成功しました。
――仲間っていいですね。そして、SSさんもカスタムを豊富にされていると伺っています。
カスタムについては、日常使いの不便さを解消したいと思ったことが発端でした。さっきも話した防眩式ルームミラーが最初です。当時お世話になっていた整備士さんに「夜間に眩しいのでなんとかならないか」と相談して、MC系ワゴンRの初期に装備されていたミラーを試してみたら、まさかのポン付けでいけたんですよ。
――そこから純正流用を好まれるようになった?
部品流用の楽しみに目覚めました(笑)。その後もルームランプがルームミラー部にしかなく、ラゲッジルームが暗かったのでワゴンR用(MH21)のルームランプを増設。白色のサイドウィンカーが、ボディカラーに対して目立ち過ぎと感じたのでワゴンR前期用(MC系)のオレンジ色に。ちなみに、ラパンも途中からオレンジ色に変更されてるんですが、そちらはカプラー形状が違うので、その先の配線まで変えないと使えないんですよね。
また、自分は喫煙者ではないので、灰皿を初代MRワゴン後期用のドリンクホルダーに交換。パワーウインドウスイッチのベゼル(枠)とアルミホイールのセンターキャップは、同じくMRワゴンのAリミテッド用を流用しています。
そのほかにも、ZC31系スイフトからはシフトノブと、先にも話したワイパースイッチを使って、間欠コントロール機能やリヤワイパー間欠機能も追加しました。雨の日には効果絶大です!
初回の車検を迎えたとき、すでに走行距離が6万キロも走ってしまっていたので、リフレッシュも兼ねてスズキスポーツのスポーツコンフォート2輪車高調、ボディ補強3点セット、TYPE Sp-X マフラーなどを入れて、スズキスポーツ仕様っぽくしました。
――快適に使えるよう、整えていった感じがしますね。外装パーツもいろいろと?
初代ラパンはグレードや仕様が多彩だったので、外装パーツの流用も楽しめます。メッキのタイプのドアミラーとドアノブは「ラパンモード」からの流用です。
それから、BピラーとCピラーは、ラパンの特別仕様車「ベネトンバージョン」や「キャンバストップ」に使われていた黒く見せるステッカーを流用して、サイドウインドウと一体に見えるように仕上げています。
2代目ラパンからラゲッジマットを流用、3代目現行ラパンからドアバイザーの「Lapin」エンブレムを流用。そのほかにも、いただきものの「SUZUKI」筆記体エンブレム、マイティボーイの「5 SPEED」エンブレムを使って旧車っぽさを出してみました。
また、純正でもリヤガラスに「SUZUKI ALTO」のステッカーが控えめに貼ってあるのですが、もう少しアルト一族であることを強調したくて、ステッカーより少々アピール強めな2代目アルトのエンブレムを同じ位置に貼っています(笑)。
――架空の特別仕様車が実在するような佇まいを醸し出していますね。
自分でも「これは……試作機みたいだな」と思います。カスタムのコンセプトは当初「純正品流用を基本とした間違い探し仕様」だったのですが、次第に「メーカーが特別仕様車・スズキスポーツリミテッドを試作していたら?」という“ifの世界”を形にしたくなっていきました。助手席前の小物入れの上に、スズキスポーツのエンブレムと、MC系ワゴンRに使われていた「Limited」のエンブレムをうまく組み合わせて、スズキスポーツリミテッドのエンブレム風に取り付けて、いかにも正規の特別仕様車であるかのように主張させています(笑)。
ラパンSSには特別仕様車が存在していないので、もし計画があったらこんな感じで試作されていたのではないかと、思いを馳せています。
ちなみに、LC4Cのオフ会ではよく「ノーマル?」って聞かれていました(笑)。気づく人は気づいてくれるんですが、純正流用スタイルがメインのオーナーさんはほとんどいなかったようです。
――ラパンと長く付き合うなかで「ここは大事にしている」というポイントはありますか?
長く乗るためには大事故をしないことがいちばんだと思いますので、走行時の安全確認はもちろん、タイヤを妥協せず、純正採用品と同等、もしくはそれ以上のタイヤを履くことでしょうか。
もう一点は“早期発見・早期治療”ですね。いつもと違う音やにおい、振動に気づいたら、必ずチェックして、大事になる前に行きつけのディーラーへ受診します。2ストロークの初代アルトに乗っている友人でもある整備士さんをはじめ、スタッフの皆様が自分の「まだまだ乗るから」という意思を理解してくれ、予防整備も含めてこの個体のコンディション維持に尽力してくださっています。また、信頼できる仲間とのネットワークも大切にしていますね。
――どんなお仲間ですか?
現在、ラパンSSのほかに弟から引き継いだワゴンR、360ccと550ccの軽自動車も所有しているのですが、自分の力だけで維持していけるものはないです。整備や情報共有も含めて“旧車の維持はお互いさま”だと思っていて、それに賛同してくださる信頼のおける旧車仲間とのネットワークも大切にしています。このラパンSSも永く乗っていれば、やがて旧車になっていきますから。
―――弟さんから託されたワゴンRと2台体制で乗られていますが、乗り分けは難しくないですか?
弟が都会に出るときに「帰ったときには乗るから、維持管理は任せた」と置いていったワゴンRと“相互補完”を心がけています。なるべく交互に乗ることで、一方に走行距離が偏らないようにして互いの過走行を減らし、2台とも良い状態で長生きしてもらえるようにしています。
また、スタッドレスタイヤとホイールは、この2台で1年交代でシェアして、ホイールキャップだけ各々の純正品を流用して履かせています。
――SSさんの愛車たちは幸せですね。では、ラパンSSを一言で表すならどんな言葉が浮かびますか?
「野うさぎ」ですね。「ラパン」はフランス語で「うさぎ」なので。カラーバリエーションが豊富だった初代ラパンですが、この個体はボディカラーが「アズールグレーパールメタリック」なので、なんとなく野うさぎのイメージがあります。一見可愛らしくて大人しそうなうさぎですが、いざというときにはその瞬発力を活かして生き抜いていく……そんなイメージが、ラパンSSの走りっぷりとも重なるところがありますね。
――確かに! そんなラパンSSと22年・22万kmを走ってきていますが、現在のコンディションはいかがですか?
おかげさまで、現在に至るまで大きなトラブルもなく元気に走ってくれていますね。関係者各位のご尽力があってこそです。感謝しています。
――最後に、愛車との今後の予定を教えてください。
これからも変わらず乗り続けるつもりです。どこまで走っていけるのか、自分が先かクルマが先か……そんな気持ちで、行けるところまで一緒に行ってみるつもりです。
それと、以前スズキ歴史館に行ったとき、時間がなくて生まれ故郷の工場まで行けなかったので、いつか訪ねてみたいですね。あとは……HA36ワークス(8代目アルトワークス)のペダルゴム周りが流用できないかな、と密かに考えていたりします(笑)。
22年と22万km。数字だけ見ても相当な走行距離と年月です。ここに至るまでには、数字以上にさまざまな出来事があったと思いますが、それをいつも通りの普通のことのように淡々と語るSSさんが印象的でした。その様子がむしろ愛車との「絆」を感じさせてくれます。ラパンSSはこれからも“現役機”として、新たな流用カスタムも柔軟に受け入れつつ、SSさんの相棒として走り続けていくことでしょう。
(文:野鶴美和 写真:SSさん提供)
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