「練習用」として譲り受けた走行距離約23万kmのプリウス。今では夢を一緒に追う“パートナー”になった
埼玉県にお住まいの大学3年生“ひろさん”(21歳)。彼の愛車は、ブラックのトヨタ・プリウス(30系)です。驚くべきはその走行距離。メーターが刻む数字は、すでに23万kmに達しています。
一般的には「そろそろ寿命か」と思われがちな距離ですが、ひろさんにとっては今まさに、新しい世界へ連れていってくれる現役バリバリの「相棒」なのだといいます。当初は「練習用」としてやってきた一台が、なぜ彼にとってかけがえのない存在になったのか。そして、この過走行のプリウスと共に、彼は今どんな夢を描いているのか。若きオーナーの情熱的なカーライフをじっくりと伺いました。
――まずは率直に伺いますが、走行距離約23万kmというのは、大学生の愛車としてはかなりインパクトがありますね。このプリウスとはどういったきっかけで出合ったのでしょうか?
僕は末っ子で、家は男ばかりの三兄弟なんです。うちには「免許を取ったら車を所有する」という、ちょっと変わった暗黙の了解があって、強制ではないんですけど(笑)2年前の2月、僕が免許を取ったタイミングで家にやってきたのが、父が入手してきた、知り合いの会社などで役目を終えたこのプリウスでした。
プリウスは、小学生のころに“エコカー”としてニュースでよく目にしていた車でもあります。小学校3年生のとき、絵を描く授業で「好きだったスーパーカーにエコ要素を取り入れたらおもしろいんじゃないか」と考えて、スーパーカーにプリウスの要素を取り入れた絵を描いたことがあるんです。それが、初めて入賞した作品で、今でも思い出に残っています。
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小学生時代のイラスト
だから、免許を取ったタイミングで、父が知り合いの会社から譲り受けたプリウスと初めて対面したとき、どこかシンパシーを感じました。
――「練習用」としてやってきたんですね。当時の走行距離はどれくらいだったのですか?
当時は22万km弱でした。親父からは「ぶつけてもいいから、これでしっかり練習してこい」と言われて乗り始めたんです。最初は「いつか乗り換えるまでの練習台」という感覚でした。でも、気づけばもう23万kmに届いてて。2年間じっくり付き合っていくうちに、生活のすべてをこなしてくれる、なくてはならない相棒になっていました。
――お父様も車がお好きだったのでしょうか。ひろさん自身が車にのめり込んだ原点はどこにあるのでしょう。
完全に父の影響ですね。物心つく前から、家には常に車の気配がありました。決定的だったのは、幼いころに家族旅行で乗ったゴーカートです。「自分の操作で車が動く」という感覚に衝撃を受けて、そこから一気に沼にハマりました。
車の見た目やカッコよさ、運転の楽しさ……。気づけば友達がゲームやアニメの話をしている横で、僕だけは「どうすればもっとスムーズに、カッコよく曲がれるか」を本気で考えているような子供でした。
――ひろさんは小学生のころからすでに「走り」に関心があったんですね(笑)。
そうですね(笑)。YouTubeでレーシングドライバーの土屋圭市さんのドライビング動画を食い入るように見ていました。学校の授業中も、先生にバレないように机の下でこっそり足を動かして、「ヒール&トウ」の練習をしていたほどです。とにかく頭の中は車のことばかりでした。
――そこまで熱狂的だと、将来は「車に関わる仕事がしたい」といった夢も持たれていたのでは?
はい、高校1年生のころは本気で「レーサーになりたい」と思っていました。でも、普通の高校生にはどうすればその道に繋がるのかまったく分からない。悩んだ末に、気づいたら土屋圭市さんのAE86で有名な「テックアート」に、アポなしで突撃していました。「ここで車について学ばせてください!」って。
――アポなしで直接お店に行ったんですか!? 高校生でそれはすごい行動力ですね。
若気の至りというか、とにかく必死だったんです。結果は当然、丁重にお断りされましたが(笑)。でも、そのときに「断られてもいいから一歩踏み出す」という経験をしたことが、今の僕の血肉になっています。
実は僕、根はとても「ビビリ」なんです。今でも何か新しいことをする前は足が震えるほど緊張します。でも、中学で応援団長や学級委員などをやって、人前で震えながらも最後までやり遂げたときの「達成感」を知っている。その成功体験が、今の僕を支えてくれています。
――その「ビビリながらも一歩踏み出す」姿勢が、今の活動にも繋がっているのでしょうか。SNSで拝見したのですが、最近は愛車のポスター制作をされているとか。
昨年末、就活を目前にして「自分は本当は何が好きなんだろう」と深く考えました。そこで出た答えが、幼いころからの「車好き」と、昔牛乳パックで船を作って遊んでいたころのような「ものづくり」への情熱でした。この二つを結びつけて、オーナーさんが大切にしている愛車の姿を、一生残るかたちにできたらおもしろいんじゃないか、「ポスター」にできたら最高だなっておもったんです。
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制作したポスター
――独学で始められたそうですが、実績ゼロの状態からどのように活動を広げていったのですか?
最初はやっぱり怖かったですよ。でも、あの高校時代の突撃経験を思い出して、憧れのGR 86オーナーさんに「ポスターを作らせてください!」と直接DMを送ったんです。いわば「直談判」ですね。その方が僕の熱意を汲み取ってくださって、そこから少しずつ認知が広まっていきました。先日はそのご縁でオーナーズミーティングにも参加させていただいたんです。
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制作したポスターとモデル車
――ミーティング会場には最新のスポーツカーが並んでいたと思いますが、走行距離23万kmのプリウスで乗り込むのは勇気がいったのではないですか?
めちゃくちゃ怖かったです(笑)。会場はピカピカのGR 86ばかり。そこにブラックの、しかも23万km走ったプリウスで入っていくわけですから、正直「浮くんじゃないか」って不安で。でも、僕が作った作品を見て、オーナーの皆さんが「かっこいいね」と声をかけてくださった。車種やスペックに関係なく、作品を通じて車好きの皆さんと対等に繋がれた。あの瞬間、このプリウスが僕を新しい世界へ連れてきてくれたんだなと確信できました。
――実際に長年寄り添ってみて感じる「この車ならではの良さ」はどこでしょう。
最初は単に「静かな車」という印象でしたが、乗るほどに「究極のオールラウンダー」だと気づかされます。モーターのトルクがあって力強いし、何より空力設計が良いのか、高速道路での安定感が抜群なんです。23万km超えでも、レンタカーで借りる最新のミニバンよりずっと安心してハンドルを握れます。5人乗れて、荷物もたくさん積めて、燃費もいい。常に「高い平均点」を叩き出してくれるこの車は、本当に信頼できる相棒です。
――生活のあらゆるシーンを共にしているプリウスですが、ひろさんにとってこの車はどんな存在ですか?
ただの移動手段ではなく、僕の喜怒哀楽をすべて知っている「相棒」ですね。大学への通学やジム通い、それにドライブ。悩んでいるときにこの子を運転していると、そっと心の支えになってくれる感覚があります。それに、この車のおかげで、埼玉の自宅からお台場や栃木へ友達を乗せていったり、車を持っていない友達を駅まで迎えにいってそこから新しい仲間の輪が広がったりと、交流がとても広がりました。
――車があることで、人間関係も豊かになっているんですね。
そうなんです。僕は人に頼ってもらうのがとても好きなので、周りに車持ちが少ない中で「ひろ、出してよ」と頼られ、みんなを「非日常」に連れていけるのがうれしいんです。最近も、友達を乗せて5人で神奈川の山まで夜景を見に行ったんですよ。
――神奈川の山に夜景! それは素敵な思い出ですね。
周りが真っ暗な中で海まで見渡せる絶景と、ポツポツと輝くビル群の光。そして見上げれば満天の星。そんな「非日常」の感動を仲間と一緒に味わえたのは、このプリウスがいてくれたからこそです。23万km走っていても、この子はまだまだ僕を新しい場所へ連れていってくれる。車を持つことで、自分だけでなく周りの人まで笑顔にできるんだなと、あらためて実感した夜でした。
――最後に、今後の目標を教えてください
まずは自分の力で、目標である「GR 86」を購入したいです。そのために、このポスター制作の活動もしっかり軌道に乗せていきたい。
アルバイトだけでは届かない高い壁ですが、今のプリウスとともに、今の自分にできることを一つずつ積み重ねていきたいです。
【X】
ひろさん
(文:新里陽子 編集:平木昌宏 写真:ひろさん提供)
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