解体業者で出会ったホンダ・インテグラ(DA6型)に惚れ込んだオーナーの熱い想い

以前は当たり前のように街中で見かけていたのに、いつの間にか消えてしまったモデルは数多いように思う。特に、90年代初頭に登場したクルマたちが今、街中から姿を消しつつある。

ホンダ・インテグラも、そんな1台なのかもしれない。1985年に初代モデルが誕生し、3代目からはスポーツグレード「タイプR」も加わりながら2006年まで販売された、ホンダの人気車種のひとつだった。デートや友人とのドライブなど、まさに青春時代の相棒だった、あるいはファミリーカーとして子どもの成長とともに過ごした思い出の愛車だった、という人たちも多いはずだ。そんなインテグラだが、最近、初代および2代目のモデルはめっきり見かけなくなったように思う。

今回は、そんなシリーズ2代目のホンダ・インテグラ(DA6型)に乗る、32歳の男性オーナーを紹介したい。初代の「クイントインテグラ」から「インテグラ」に車名が変更されたモデルだ。加えて「カッコインテグラ」のフレーズでもおなじみ、マイケル・J・フォックス出演のCMも洒落ていた。最近では「天皇陛下の愛車」としてテレビやインターネット等で見かけたことは記憶に新しい。しかし、このクルマが現役だった頃、オーナーはまだ幼かったはずだ。いったいどのような経緯で出会ったのか、そして愛車に対する思いまでを詳しく伺った。

「このホンダ・インテグラ(DA6型/以下、インテグラ)は1991年式、グレードは「XSi」になります。乗り始めてから2年経ちます。オドメータは11万キロを刻んでいますが、私の実走距離はまだ1000キロほどでして、燃料タンク内のガソリンを入れ替えるため、そしてイベントに参加のために年2回ほど乗る程度です。温存しつつも、少しでも動かさないとクルマが傷んでしまいますから」。

と話すオーナーは、この年齢で10台以上も乗り継ぐクルマ好きだ。愛車遍歴もホンダ・シビック(EF9型)にはじまり、マツダ・RX-7(FC3S型)、三菱・ギャランVR-4、ホンダ・シビック クーペ、トヨタ・スプリンター トレノ(AE92型)など、メーカーやジャンルはさまざまだ。現在はインテグラの他に、トヨタ・カローラレビン(AE86型)、日産・セフィーロ(A31型)や日産・レパード(F31型)などと暮らしている。ちなみにクルマ好きとなった原点は「いかす走り屋天国」のビデオだったという。この「いかす走り屋天国」は、アマチュアドリフト選手権・D1グランプリの原点にもなっている。

オーナーのインテグラは3ドアのクーペモデルであり、全長×全幅×全高:4390x1695x1325mm、排気量1595cc。水冷直列4気筒DOHCエンジン「B16A型」は、NAながら最大出力160馬力を発生。そう、あの「VTECエンジン」を初めて搭載したのがこの2代目インテグラなのだ。そこで、オーナーに出会いの経緯を伺った。

「この個体は、よく利用しているバイパス沿いにある解体業者の店先に置いてありました。部品取り車だろうと思っていましたが、通るたびに気になってきまして(笑)。そこで、思い切って覗いてみたのです。するとVTECでしかもMTモデルではありませんか!解体業者の社長に聞くと、まもなく海外へ輸出するつもりだったらしく『救出しなきゃ!』と、ある種の使命感をもって交渉しました。価格は予想額よりも安かったんです。もともと25万円だったところを、最終的に20万円にまで値下げ交渉をして譲ってもらいました」。

ご存じのとおり、2代目インテグラに「タイプR」は存在しない。オーナーによると、解体業者の社長は、この個体を「VTECエンジンを搭載していること」までは認識していたものの「タイプRではない」ということで、高値には設定していなかったようだ。それでいて、かなりの「極上車」だったという。

「車検も残っており、ディーラーからの下取り車だったようです。フルノーマル、女性1オーナーで2桁ナンバーのまま、整備記録簿もほとんど残っていましたし、程度の良さを確信しました。下まわりの錆はほとんどありませんでしたが、テールやトランクには水が溜まってしまうことが判明しました。その後、ガスケットやシール類はすべて集めたので、あとはきちんと修理するだけです」。

この個体を手に入れたことで、周囲の反応から意外な事実も判明したそうだ。

「バイパス沿いで目につく場所に置いてあったせいか、私の周囲では結構知られていた個体だったようです。友人たちからは『あそこに置いてあったインテグラ、どこ行っちゃったんだろう』とか『あれ、実は欲しかったんだよ』だとか『○○のホンダにあった個体で、しかもMTモデルなんだよ』ということまで知っている人もいたほどです。実は自分が手に入れたと言うと『ウソでしょー!』と驚かれましたね」。

もしかすると、この個体はオーナーを呼んでいたのかもしれないとすら思えてくる。さらに、イベントへ乗っていくと珍しがられることが多いのだとか。

「イベントへ参加すると、モディファイされていたり逆輸入だったりと、さまざまなインテグラがいます。私の個体はモディファイするのが好きな人から見るとオリジナルの良さはわかりにくいかもしれないですが、珍しがられることが多いです。中古で出てきてもほとんどモディファイが施されており、オリジナルは高価だと聞きました」。

野暮な質問になってしまうが、話の流れでモディファイを施した箇所はあるのか訪ねてみた。

「もちろんフルノーマルです。この個体には、当時のオプション装備はほとんど装着されていたんです。サンルーフ・サンルーフバイザー・本革シフトノブ・CDチェンジャー・空気清浄機・マフラーカッター・マットガード。ホンダの純正オプションが好きなので、これだけついていれば大満足です。モディファイといえば、購入当時についていたカセット・CDチェンジャーが壊れてしまったので、ホンダ純正GathersのCD・MDプレーヤーに交換したくらいです。それから、タイヤの扁平率が65サイズという安いタイヤを履いていたので、純正サイズである195/60 14インチに交換しています。このインテグラの純正サイズは、現行で採用している車種がほぼないので、タイヤメーカーも取り扱いが限られてしまいます。しかも高価になってしまうので、前オーナーは65扁平にしていたのだと思います。こんな感じで壊れたパーツは交換しましたけれど、今後もモディファイする予定はまったくありません」。

会話を進めるほどにオーナーの思い入れや熱意が見えてきた。最後に、このインテグラとこれからどんなカーライフを歩んでいきたいのかを伺った。

「ふとしたきっかけで手に入れましたが、今後手放す気は一切ありません!2年間所有してみて「気づき」もかなりありましたし、できる限りオリジナルに近い仕様にこだわり、むしろ今以上にコンディションを良くしていきたいと考えています。それから、シビックとインテグラが揃ったので、CR-X(EF8)もいずれ迎えたいですね。そうすれば“HONDA三兄弟”が揃うじゃないですか!」。

と、オーナーは声をはずませる。この2代目インテグラは、例えば「NSX」や「タイプR」といった誰もが目に留めるようなモデルではないかもしれない。すでに多くの個体が解体されていったことだろう。だが、ホンダの基本思想である「M・M思想」が生きたスポーティーかつ流麗さを実現させたスタイリング、そしてDOHC VTECエンジン…。あらためて見ると、魅力がちりばめられた1台であると気がつくだろう。今回のオーナーのような人たちが1人でも多く、インテグラをはじめとした「大衆車として生を受けたクルマ」たちを永く愛し続けることを願いたい。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]