【試乗記】BMW X3 M40d(4WD/8AT)

【試乗記】BMW X3 M40d(4WD/8AT)
BMW X3 M40d(4WD/8AT)

運転席以外には乗りたくない

最高出力326psの3リッター直6ディーゼルターボエンジンを搭載する「BMW X3 M40d」に試乗。BMW Mが手がけた高性能ディーゼルと、同社がスポーティーなチューンを施したというシャシーの組み合わせを味わってみた。

強烈なパンチ

2017年10月に日本でのデビューを飾った第3世代の「X3」。新たなトップモデルとなる「M40d」は、それから約1年後の2018年9月に追加設定された。
2017年10月に日本でのデビューを飾った第3世代の「X3」。新たなトップモデルとなる「M40d」は、それから約1年後の2018年9月に追加設定された。
フロントエプロン(バンパー下部ボディー同色)やサイドスカート、ワイドホイールアーチなどのMプロデュースのエクステリアパーツを装備している。
フロントエプロン(バンパー下部ボディー同色)やサイドスカート、ワイドホイールアーチなどのMプロデュースのエクステリアパーツを装備している。
「X3 M40d」は、ディフューザー機能を持ったリアエプロンを標準装備。スクエアタイプのテールパイプフィニッシャーも専用アイテムとなっている。
「X3 M40d」は、ディフューザー機能を持ったリアエプロンを標準装備。スクエアタイプのテールパイプフィニッシャーも専用アイテムとなっている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4725×1895×1675mm、ホイールベースは2865mm。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4725×1895×1675mm、ホイールベースは2865mm。
街中の混んだ道をノタノタと這(は)うように走っていたときには、実はちょっとばかり複雑な気持ちだった。原稿どうしよう……? と軽く悩んだほど。なぜなら、まぁ今から思えば選んだ道がよくなかったという側面もあったのだけれど、何しろ路面が荒れているところだとやたらとゴツゴツとした乗り味で、「SUVなのにここまで締め上げられているのかぁ……」とか「自分でステアリングを握っているから身構えられていいけれど、こりゃ運転席以外にはあまり乗りたくないかも」と、そっちのほうにばかり気を取られちゃっていたのだ。

ところが、である。高速道路の本線に合流しようと前が空いたのをいいことにアクセルペダルを初めてグイと踏み込んでみたら、一発で気分が変わった。われながら単純だとは思うけど、「あっ、これはしょうがない」と思わずニヤついてしまったのだ。

BMWのSUVラインナップの中核をなすX3に追加されたこのM40dは、「d」の文字が表すとおりディーゼルエンジン搭載車であり、「M」の文字が表すとおり開発にはBMW Mが関わっている。パワーユニットは「X5 35d」などに搭載される3リッター直列6気筒ディーゼルターボをベースに「Mパフォーマンス」のモデルにふさわしいところまでチューンナップが加えられ、ベースの最高出力265ps/4000rpmと最大トルク620Nm/2000-2500rpmから同326ps/4400rpmと同680Nm/1750-2750rpmへと大幅に引き上げられているのだ。

そのパンチは、強烈としかいいようがない。アクセルペダルを踏み込むといきなりドーン! と680Nmのトルクが襲ってきて、途中からいつしか立ち上がってきていたパワーとバトンタッチをして、326psの高みへと向かいながらグイグイと加速していく。速い。文句なしに速い。

2017年10月に日本でのデビューを飾った第3世代の「X3」。新たなトップモデルとなる「M40d」は、それから約1年後の2018年9月に追加設定された。
2017年10月に日本でのデビューを飾った第3世代の「X3」。新たなトップモデルとなる「M40d」は、それから約1年後の2018年9月に追加設定された。
フロントエプロン(バンパー下部ボディー同色)やサイドスカート、ワイドホイールアーチなどのMプロデュースのエクステリアパーツを装備している。
フロントエプロン(バンパー下部ボディー同色)やサイドスカート、ワイドホイールアーチなどのMプロデュースのエクステリアパーツを装備している。
「X3 M40d」は、ディフューザー機能を持ったリアエプロンを標準装備。スクエアタイプのテールパイプフィニッシャーも専用アイテムとなっている。
「X3 M40d」は、ディフューザー機能を持ったリアエプロンを標準装備。スクエアタイプのテールパイプフィニッシャーも専用アイテムとなっている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4725×1895×1675mm、ホイールベースは2865mm。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4725×1895×1675mm、ホイールベースは2865mm。

他のディーゼルとは違う

「X3 M40d」はMパフォーマンスモデルとして専用チューニングが施されたサスペンションや「バリアブル・スポーツ・ステアリング」「Mスポーツブレーキ」などスポーティーな装備を採用。
「X3 M40d」はMパフォーマンスモデルとして専用チューニングが施されたサスペンションや「バリアブル・スポーツ・ステアリング」「Mスポーツブレーキ」などスポーティーな装備を採用。
フロントに縦置きされる3リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジンは、最高出力326ps、最大トルク680Nmを発生させる。
フロントに縦置きされる3リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジンは、最高出力326ps、最大トルク680Nmを発生させる。
走行モードによってメーターのデザインも変更される。写真は燃料使用効率を引き上げる「エコプロ」モードの状態。
走行モードによってメーターのデザインも変更される。写真は燃料使用効率を引き上げる「エコプロ」モードの状態。
トランスミッションは8段ATを採用。シフトパドルも備えている。シフトレバー横に、ドライビングモード切り替えスイッチが配される。
トランスミッションは8段ATを採用。シフトパドルも備えている。シフトレバー横に、ドライビングモード切り替えスイッチが配される。
でも、僕が「これはしょうがない」とすんなり思わされたのは、単に速いから、というだけが理由じゃなかった。まるでガソリンエンジンのような鋭いレスポンス。パワーがピークを迎える4400rpmを過ぎても、チカラこそ頭打ちにはなるもののさらに1000rpmぐらいは余裕で回ろうとする勢いのよさ。何よりディーゼルであることを疑いたくなるほどの、心くすぐるサウンドと滑らかな回転フィール。それは明らかにBMWのストレート6のテイスト以外のなにものでもないし、明らかにMの気持ちよさ以外のなにものでもない。

他のあまたあるディーゼルエンジンとは、ちょっと違う。そういう性質のクルマなのだから、足腰が締め上げられるのは当然だろう。これは間違いなくドライバーに走りを楽しませるためにつくられたクルマなのだから。と、そんなふうにスルッと気分が変わっちゃったのである。

そう考えると、締め上げられたシャシーの良いところが目につき始める。速度が高くなるにつれ、フラットライド感が増し、さらにしなやかにも感じられるようになった。車体が堅牢(けんろう)に仕上げられているのでサスペンションもしっかりと仕事を果たすことができて、そのサスペンション自体も完成度が高いから、ドンと大きな入力があっても余計な動きを生じさせないし振動が変に残ったりもしない。

それでも時折「ん?」と感じるのは、フロントが245/40R21でリアが275/35R21という、か細いとはいえないサイズのランフラットタイヤを履いていることに起因するのだろう。

「X3 M40d」はMパフォーマンスモデルとして専用チューニングが施されたサスペンションや「バリアブル・スポーツ・ステアリング」「Mスポーツブレーキ」などスポーティーな装備を採用。
「X3 M40d」はMパフォーマンスモデルとして専用チューニングが施されたサスペンションや「バリアブル・スポーツ・ステアリング」「Mスポーツブレーキ」などスポーティーな装備を採用。
フロントに縦置きされる3リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジンは、最高出力326ps、最大トルク680Nmを発生させる。
フロントに縦置きされる3リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジンは、最高出力326ps、最大トルク680Nmを発生させる。
走行モードによってメーターのデザインも変更される。写真は燃料使用効率を引き上げる「エコプロ」モードの状態。
走行モードによってメーターのデザインも変更される。写真は燃料使用効率を引き上げる「エコプロ」モードの状態。
トランスミッションは8段ATを採用。シフトパドルも備えている。シフトレバー横に、ドライビングモード切り替えスイッチが配される。
トランスミッションは8段ATを採用。シフトパドルも備えている。シフトレバー横に、ドライビングモード切り替えスイッチが配される。

面白いようにグイグイ曲がる

「マルチファンクションMスポーツレザーステアリングホイール」は「X3 M40d」に標準装備されるアイテム。試乗車はオプションの「イノベーション・パッケージ」を装備し、ジェスチャーでオーディオなどがコントロール可能だった。
「マルチファンクションMスポーツレザーステアリングホイール」は「X3 M40d」に標準装備されるアイテム。試乗車はオプションの「イノベーション・パッケージ」を装備し、ジェスチャーでオーディオなどがコントロール可能だった。
試乗車は質感の高いシート表皮である「BMW Individualエクステンド・レザー・メリノ タルトゥーフォ」をオプションで選択していた。
試乗車は質感の高いシート表皮である「BMW Individualエクステンド・レザー・メリノ タルトゥーフォ」をオプションで選択していた。
リアシートのバックレストは40:20:40の分割可倒式。センター部分のみを倒せば、スキーなどの長尺物を収納しながら4人分の座席を確保できる。
リアシートのバックレストは40:20:40の分割可倒式。センター部分のみを倒せば、スキーなどの長尺物を収納しながら4人分の座席を確保できる。
5人乗車時で550リッターの容量となる荷室。後席シートバックをすべて倒すと、1600リッターまで容量を拡大可能だ。
5人乗車時で550リッターの容量となる荷室。後席シートバックをすべて倒すと、1600リッターまで容量を拡大可能だ。
よく曲がる。視界が高いことを除けば、SUVを走らせている感覚など全くないぐらい、身のこなしはスポーティーだ。ステアリング操作に対してみじんも遅れることなくノーズは素直に正確に、ドライバーが行きたい方向を指そうとする。

コーナーのイン側のサスペンションが伸びていくというよりもアウト側のサスペンションが適切に沈み込みながら姿勢を作っていくような感覚があって、どのタイヤも路面を捉えることをさぼったりはしない。面白いようにグイグイ曲がる。とても安定しているし、とても速い。駆けぬける歓び? もちろんある。それも濃厚に。

もっとも今回はサーキットやワインディングロードを心ゆくまで堪能できたというわけでもなく、すべてを理解したつもりなども全くないのだけど、それでも速度域が上がるほどに車体が次第に小さく感じられていくような感覚が得られたというのは、よくできたスポーツカーがそうであるのと同じで、クルマがドライバーの意思に忠実に動いてくれていることのひとつの証し。

それに日常領域プラスアルファの範囲内でも明確に楽しさが伝わってくるというのは、クルマを走らせることそのものにドラマだったりエンターテインメント性だったりをついつい求めてしまうタイプのドライバーにとっては素晴らしい贈り物のひとつでもある。僕もそういうタイプのドライバーであるからして、このX3 M40d、SUVの中のお気に入りのトップクラスにいきなり食い込んできた。当初とはまた違う意味も加わって、あらためて「運転席以外には乗りたくない」と思ったほどなのだ。

「マルチファンクションMスポーツレザーステアリングホイール」は「X3 M40d」に標準装備されるアイテム。試乗車はオプションの「イノベーション・パッケージ」を装備し、ジェスチャーでオーディオなどがコントロール可能だった。
「マルチファンクションMスポーツレザーステアリングホイール」は「X3 M40d」に標準装備されるアイテム。試乗車はオプションの「イノベーション・パッケージ」を装備し、ジェスチャーでオーディオなどがコントロール可能だった。
試乗車は質感の高いシート表皮である「BMW Individualエクステンド・レザー・メリノ タルトゥーフォ」をオプションで選択していた。
試乗車は質感の高いシート表皮である「BMW Individualエクステンド・レザー・メリノ タルトゥーフォ」をオプションで選択していた。
リアシートのバックレストは40:20:40の分割可倒式。センター部分のみを倒せば、スキーなどの長尺物を収納しながら4人分の座席を確保できる。
リアシートのバックレストは40:20:40の分割可倒式。センター部分のみを倒せば、スキーなどの長尺物を収納しながら4人分の座席を確保できる。
5人乗車時で550リッターの容量となる荷室。後席シートバックをすべて倒すと、1600リッターまで容量を拡大可能だ。
5人乗車時で550リッターの容量となる荷室。後席シートバックをすべて倒すと、1600リッターまで容量を拡大可能だ。

間違いなくスポーツカー

プラットフォームは従来同様にFRベース。50:50の理想的な重量配分を実現している。サスペンションに軽量なアルミ製パーツを使用し、バネ下重量を軽減したほか、先代比で55kgの軽量化にも成功している。
プラットフォームは従来同様にFRベース。50:50の理想的な重量配分を実現している。サスペンションに軽量なアルミ製パーツを使用し、バネ下重量を軽減したほか、先代比で55kgの軽量化にも成功している。
「M」のロゴが入ったスポーティーなデザインのステアリングホイールを装備。スポーク左部分にACC関連のスイッチが集中しており、直観的に操作が可能だ。
「M」のロゴが入ったスポーティーなデザインのステアリングホイールを装備。スポーク左部分にACC関連のスイッチが集中しており、直観的に操作が可能だ。
試乗車にはBMW Individual Vスポーク・スタイリング7261と呼ばれる20本スポークデザインのホイールがオプションで装着されていた。
試乗車にはBMW Individual Vスポーク・スタイリング7261と呼ばれる20本スポークデザインのホイールがオプションで装着されていた。
ランフラットタイヤ装着のせいか、乗り心地は硬めだが、スポーティーグレードという位置付けにふさわしいリニアなハンドリングを披露してくれた。
ランフラットタイヤ装着のせいか、乗り心地は硬めだが、スポーティーグレードという位置付けにふさわしいリニアなハンドリングを披露してくれた。
ただし、である。X3はSUVラインナップの中では大きすぎず小さすぎずというところにあって、SUVの購入を考えている人たちに最も注目されるクラスに当てはまる。そこで老婆心ながら申し上げることにすると、このモデルは週末に家族そろって穏やかにお出掛け、というような使い方にピタリとマッチする、とはちょっとばかり言いにくい。

そういう使い方には「M」のバッジのつかないスタンダードなX3の方が何倍もふさわしいと思うのだ。M40dの878万円という価格はX3の中では飛び抜けて高価で、その下のグレードとは150万円近い価格差がある。それはいったいどういうことなのか、ちゃんと理解する必要がある。

今やSUVの世界もセダンやステーションワゴンと同じく、カテゴリーの中で多様化が進んでいる。スポーティーであることをうたったモデルも少なからず存在する。M40dはその中にあって、間違いなく高性能スポーツカーに位置づけられるべきモデル。そしてディーゼルエンジンの魅力的な部分を大きく膨らませ、ドライバーの気持ちを削(そ)ぐような部分を極力排除して仕立て上げられた、まれなモデルでもある。

クルマに癒やしよりも快を求める人に、ぜひ試してみてほしいと思う。ハマっちゃっても責任は持たないけれど。

(文=嶋田智之/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

プラットフォームは従来同様にFRベース。50:50の理想的な重量配分を実現している。サスペンションに軽量なアルミ製パーツを使用し、バネ下重量を軽減したほか、先代比で55kgの軽量化にも成功している。
プラットフォームは従来同様にFRベース。50:50の理想的な重量配分を実現している。サスペンションに軽量なアルミ製パーツを使用し、バネ下重量を軽減したほか、先代比で55kgの軽量化にも成功している。
「M」のロゴが入ったスポーティーなデザインのステアリングホイールを装備。スポーク左部分にACC関連のスイッチが集中しており、直観的に操作が可能だ。
「M」のロゴが入ったスポーティーなデザインのステアリングホイールを装備。スポーク左部分にACC関連のスイッチが集中しており、直観的に操作が可能だ。
試乗車にはBMW Individual Vスポーク・スタイリング7261と呼ばれる20本スポークデザインのホイールがオプションで装着されていた。
試乗車にはBMW Individual Vスポーク・スタイリング7261と呼ばれる20本スポークデザインのホイールがオプションで装着されていた。
ランフラットタイヤ装着のせいか、乗り心地は硬めだが、スポーティーグレードという位置付けにふさわしいリニアなハンドリングを披露してくれた。
ランフラットタイヤ装着のせいか、乗り心地は硬めだが、スポーティーグレードという位置付けにふさわしいリニアなハンドリングを披露してくれた。

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