【試乗記】トヨタRAV4(4WD/CVT)
- トヨタRAV4アドベンチャー(4WD/CVT)/G(4WD/CVT)/X(4WD/CVT)/ハイブリッドG(4WD/CVT)/ハイブリッドX(4WD/CVT)
攻めるTOYOTA
ついに“日本復活”を果たしたトヨタのミドルサイズSUV「RAV4」。2種類のパワートレインに3種類の4WDシステムと、ぜいたくに取りそろえられたメカのラインナップが意味するものとは? アグレッシブな走りの向こうに、トヨタの戦略が透けて見えた。
世界中で売られるベストセラーモデル
RAV4が日本からいなくなって、さてどのくらいの月日がたっていたのだろう……。
そう思いつつ調べてみると、2016年に国内販売を終了したというから、ちょっと驚いた。わずか3年前まで売られていたのなら記憶の片隅にも潜んでいそうなものが、見た目からしてまったく思い出せない。RAV4の3列シートモデルは「ヴァンガード」という別の名が与えられていたから、それと印象が同化してしまっているのかもしれないが、手前の食いぶちを思えばお恥ずかしい限りである。
世界約180の国と地域で販売され……といえば、それはトヨタの商圏のほぼすべてということ。年間販売台数は85万台余りといえば、それはトヨタの新車販売の10台に1台ということ。RAV4は「カローラ」「カムリ」と並ぶトヨタの大黒柱だ。ちなみに米国での販売順位は既にカムリを抜いており、「F-150」に「シルバラード」「ラム」といったアメリカを代表するトップ3銘柄に次ぐセカンドグループを「日産ローグ」や「ホンダCR-V」と共に形成している。
そんなクルマがなぜ日本を留守にしたのかは、CR-V復活の流れに似ているのかもしれない。SUVが世界の自動車販売の主流となる中、戦略車となるCセグメント系SUVを世界水準に合わせると、どうしても日本にはあり余る車寸になってしまう。国内の市場動向を鑑みればBセグメント系に近いサイズのクロスオーバー的なモデルの方が受け入れられやすい。そう思われていたのが4~5年前の話だろう。
が、ふたを開けてみればSUV需要の増加や多様化はメーカーのもくろみをも上回り、その中で大きすぎと考えられていたCセグメント系にも内需が見込めると判断されたわけだ。背景には、少ない車種構成で勝負するマツダやスバルの同クラス車がいずれも国内で好セールスを記録しているということも関係しているだろう。もちろん、超重要な世界戦略車の供給ネットワーク増強に乗じて国内工場稼働を活性化させるならば、そのモデルを国内販売することも自然な流れではある。
そう思いつつ調べてみると、2016年に国内販売を終了したというから、ちょっと驚いた。わずか3年前まで売られていたのなら記憶の片隅にも潜んでいそうなものが、見た目からしてまったく思い出せない。RAV4の3列シートモデルは「ヴァンガード」という別の名が与えられていたから、それと印象が同化してしまっているのかもしれないが、手前の食いぶちを思えばお恥ずかしい限りである。
世界約180の国と地域で販売され……といえば、それはトヨタの商圏のほぼすべてということ。年間販売台数は85万台余りといえば、それはトヨタの新車販売の10台に1台ということ。RAV4は「カローラ」「カムリ」と並ぶトヨタの大黒柱だ。ちなみに米国での販売順位は既にカムリを抜いており、「F-150」に「シルバラード」「ラム」といったアメリカを代表するトップ3銘柄に次ぐセカンドグループを「日産ローグ」や「ホンダCR-V」と共に形成している。
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が、ふたを開けてみればSUV需要の増加や多様化はメーカーのもくろみをも上回り、その中で大きすぎと考えられていたCセグメント系にも内需が見込めると判断されたわけだ。背景には、少ない車種構成で勝負するマツダやスバルの同クラス車がいずれも国内で好セールスを記録しているということも関係しているだろう。もちろん、超重要な世界戦略車の供給ネットワーク増強に乗じて国内工場稼働を活性化させるならば、そのモデルを国内販売することも自然な流れではある。
3種類の4WDシステムを設定
グローバルで見れば5代目に相当する新型RAV4の一番の特徴は、悪路や悪環境でのロバスト性(たくましさ・頼もしさ)を向上させるために4WDの選択肢を増やし、性能を向上させたことだ。日本仕様では一部廉価グレードにFFも存在するが、「基本は四駆モデルとして認識してほしい」とは開発陣の弁。それゆえに、2種のパワートレインに対して3種の四駆システムというぜいたくな設定となっている。
選択肢という点で言えば、新型RAV4はグレードに応じて2タイプのデザインが与えられている点も特徴だ。八角形を立体的につなぎ合わせた形状を意識したという標準系のデザインをベースに、オフロード志向を強めたグレード「アドベンチャー」ではタフネス感をより押し出したデザインを採用。特にフロントまわりはバンパー部を変更し、独立したセンターグリルを与えることで、同門の「タコマ」や「4ランナー」にも相通じる強い顔立ちとしている。さらにデザイン検討時から上下に塗り分けることを想定していたというバイカラー仕様のルーフ側には、わざわざグレイッシュな専用色を新開発してデザインになじませたという。
パワートレインは2リッター直4のガソリンユニットと、2.5リッター直4ハイブリッドユニットの2本立て。前者には発進用のギアを組み込んだダイレクトシフトCVTが組み合わせられる。双方ともに廉価グレードではFFの選択も可能で、四駆に関してはハイブリッドの側は後軸モーターの最大トルクを従来よりも強めた専用チューニングの「E-Four」を採用。前後100:0~20:80の範囲で駆動配分をリニアに可変させることが可能となった。ガソリンの側にはコンベンショナルな前後駆動配分50:50の「ダイナミックコントロール4WD」に加えて、後輪に独立した2つの電子制御カップリングを採用し、左右間の駆動配分を0:100~100:0の間でリニアに可変させる「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を新開発。アドベンチャー等の一部グレードに搭載している。ちなみにダイナミックトルクベクタリングAWDには、低負荷時に後軸側への駆動を完全に遮断し、走行負荷を低減するディスコネクト機能も備わる。
これら四駆機能を最大限に引き出すべく、新型RAV4は悪路想定のパターンを付与したドライブモードセレクターを採用。「AIM(AWD Integrated Management)」と名付けられたそれは「エコ」や「スポーツ」といったオンロード用のほか、ガソリン仕様には「岩場やダート」「泥ねい地や砂地」を想定したモードが加わる。ハイブリッド版はそれらを一括して「トレイル」とし、空転輪のみを制動し駆動力を集中させるブレーキコントロールやスロットルのコントロールなどを最適化させる。
選択肢という点で言えば、新型RAV4はグレードに応じて2タイプのデザインが与えられている点も特徴だ。八角形を立体的につなぎ合わせた形状を意識したという標準系のデザインをベースに、オフロード志向を強めたグレード「アドベンチャー」ではタフネス感をより押し出したデザインを採用。特にフロントまわりはバンパー部を変更し、独立したセンターグリルを与えることで、同門の「タコマ」や「4ランナー」にも相通じる強い顔立ちとしている。さらにデザイン検討時から上下に塗り分けることを想定していたというバイカラー仕様のルーフ側には、わざわざグレイッシュな専用色を新開発してデザインになじませたという。
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これら四駆機能を最大限に引き出すべく、新型RAV4は悪路想定のパターンを付与したドライブモードセレクターを採用。「AIM(AWD Integrated Management)」と名付けられたそれは「エコ」や「スポーツ」といったオンロード用のほか、ガソリン仕様には「岩場やダート」「泥ねい地や砂地」を想定したモードが加わる。ハイブリッド版はそれらを一括して「トレイル」とし、空転輪のみを制動し駆動力を集中させるブレーキコントロールやスロットルのコントロールなどを最適化させる。
タフさと快適さを両立
野性味を感じさせるたたずまいにふさわしく、新型RAV4はその内装もシンプルで機能的だ。空調やドライブモードセレクターのノブやドアハンドルなどはグローブ着用のまま操作することも想定した形状で、グリップ感を高める表面処理が加えられるなど、使い勝手を高めるきめ細かな配慮もなされている。前席からの視界やノーズまわりの見切り感は運転しやすさを重視、後席の着座位置も車内に埋もれることなく足入れ部も広々と開けられるなどHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)もなかなか実直だ。車内や荷室の広さは成人男性4人の旅行にも十分なほどで、日本の路上ではやはり適切とは言い難い寸法を納得させる要素は十分備わっている。
悪環境での使用を想定して部位補強を加えたTNGAを採用、先代に対してねじり剛性が60%も向上したという車台はさすがに強靱(きょうじん)だ。オンロードでの試乗中も激しい凹凸に何度か見舞われたが、ハコに至るような軋(きし)み感は皆無だった。足さばき的には19インチを装着したアドベンチャーでもきれいに路面に追従しているが、時折タイヤのエアボリューム不足で強めの突き上げを感じる場面もあり、乗り心地の点ではやはり18インチのほうが丸く収まっている。エンジンのうなり音がかえって強く意識されるほどにロードノイズや風切り音もしっかりと遮断されており、総じての快適性はクラス水準を上回るところにある。
悪環境での使用を想定して部位補強を加えたTNGAを採用、先代に対してねじり剛性が60%も向上したという車台はさすがに強靱(きょうじん)だ。オンロードでの試乗中も激しい凹凸に何度か見舞われたが、ハコに至るような軋(きし)み感は皆無だった。足さばき的には19インチを装着したアドベンチャーでもきれいに路面に追従しているが、時折タイヤのエアボリューム不足で強めの突き上げを感じる場面もあり、乗り心地の点ではやはり18インチのほうが丸く収まっている。エンジンのうなり音がかえって強く意識されるほどにロードノイズや風切り音もしっかりと遮断されており、総じての快適性はクラス水準を上回るところにある。
“悪路キャラ”を前面に
コーナリングは横方向の限界点も高く、そこに至るまでのロールもしっかり抑えられており、いわゆる背高モノにありがちな腰砕け感とはほぼ無縁と考えていいだろう。乗り心地の良さからはにわかに想像できないほど相当キビキビと振る舞うそのキャラクターを見るに、どことなくCR-Vの印象と重なるところもある。米国では流血さながらの販売バトルを繰り広げる両車ゆえ、性格が拮抗(きっこう)することは当然といえばそうなのかもしれない。
と、そこでRAV4がなぜ四駆にこだわったのかが見えてくる。ホンダはCR-Vで可能な限り多くの嗜好(しこう)や使用領域をカバーすることで収益率を保ち、日産は戦略の一環として「エクストレイル」をローグ&「キャシュカイ」と一本化し収益率を高めた。が、エクストレイルは日本市場においては初代からのタフギア的なイメージが後退しているし、CR-Vは同様のマルチパーパス的ライバルと息つく間もなく相まみえなければならない。いま、RAV4の2大ライバルにとって手薄なところが、まさにRAV4が強く押し出した悪路キャラというわけだ。まったくもって抜け目ない。
と、そこでRAV4がなぜ四駆にこだわったのかが見えてくる。ホンダはCR-Vで可能な限り多くの嗜好(しこう)や使用領域をカバーすることで収益率を保ち、日産は戦略の一環として「エクストレイル」をローグ&「キャシュカイ」と一本化し収益率を高めた。が、エクストレイルは日本市場においては初代からのタフギア的なイメージが後退しているし、CR-Vは同様のマルチパーパス的ライバルと息つく間もなく相まみえなければならない。いま、RAV4の2大ライバルにとって手薄なところが、まさにRAV4が強く押し出した悪路キャラというわけだ。まったくもって抜け目ない。
オフロードで楽しめるE-Four
新型RAV4の走破性は雪道と悪路の両方で試すことができたが、3種類の四駆システムの特性差は想像以上にはっきりしていた。最もコンベンショナルなフルタイム4WDがいたって中庸な運動特性であるのに対して、新開発のダイナミックトルクベクタリングAWDはトヨタ車らしからぬ、遠慮なき曲がり志向で、低ミュー路でもアクセルを踏み込めばノーズはグイグイとインに向いていく。もちろんその差動は片輪の上がったモーグル路などでも効果を発揮するが、手だれのドライバーが雪道などでこれを用いれば、駆動でアンダーを弱めながらスムーズに曲げていくことも容易だ。
それに並ぶ驚きは、ハイブリッドのE-Fourの側にもあった。とにかく後軸のモーターの存在感が強く、悪路の発進から踏み込んでいけばリニアに、かつレスポンスよく車体をグイグイ押し出す明確な駆動力を感じるほどだ。いままでにないこの味付けはやはり登坂路での力強さや低ミュー領域での曲げやすさなど、アクティブなドライブの面でさまざまに効果を発揮する。さんざん眠いだの緩いだのと言われてきたTHSのソリューションを、オフロードでのお楽しみの道具に用いることができるという提案も、RAV4に込められた新しさのひとつだ。できることなら安パイに収めておきたい鉄板銘柄にも容赦ない攻めの姿勢。このクルマは“トヨタのいま”を映し出してもいる。
(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車、荒川正幸/編集=近藤 俊)
それに並ぶ驚きは、ハイブリッドのE-Fourの側にもあった。とにかく後軸のモーターの存在感が強く、悪路の発進から踏み込んでいけばリニアに、かつレスポンスよく車体をグイグイ押し出す明確な駆動力を感じるほどだ。いままでにないこの味付けはやはり登坂路での力強さや低ミュー領域での曲げやすさなど、アクティブなドライブの面でさまざまに効果を発揮する。さんざん眠いだの緩いだのと言われてきたTHSのソリューションを、オフロードでのお楽しみの道具に用いることができるという提案も、RAV4に込められた新しさのひとつだ。できることなら安パイに収めておきたい鉄板銘柄にも容赦ない攻めの姿勢。このクルマは“トヨタのいま”を映し出してもいる。
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