【試乗記】トヨタRAV4アドベンチャー(4WD/CVT)/RAV4ハイブリッドG(4WD/CVT)
- トヨタRAV4アドベンチャー(4WD/CVT)/RAV4ハイブリッドG(4WD/CVT)
帰ってきた実力派
日本市場から姿を消していた間に、北米ではトヨタブランドトップの販売台数を誇るモデルにまで成長を遂げた「RAV4」。3種類の四駆システムと、悪路での高いパフォーマンスを期待させるタフなスタイリングを採用した新型を、一般道とオフロードに連れ出してみた。
海外では超人気者
コンパクトでカジュアルなクロスカントリービークルを縮めた「ライトクロカン」の草分けとして、一世を風靡(ふうび)したオリジナルの初代RAV4がデビューしたのは25年も前のこと。まあ3年ほど前までは一応日本でもRAV4(3代目)がラインナップされていたものの、ほとんど存在感はなく、したがってカムバックとか復活といっても、これからトヨタが狙いたい若いユーザーの多くは何だかよく分からないというのが正直なところだろう。
新型は5代目に当たるが、4代目は海外専用車となり日本では販売されなかったために、まったく同じように先日、日本市場にカムバックした「ホンダCR-V」よりさらにご無沙汰な感じは否めない。
もっとも、海外では以前から大活躍中だ。RAV4はこれまでに累計800万台以上を生産しているトヨタにとっては重要なボリュームモデルであり、特に北米では年間40万台以上のセールスを誇る(2017年には「カムリ」を上回って日本車トップを記録)トヨタのベストセラーSUVである。最近では珍しい話ではないけれど、国内では影が薄くても海の向こうでは稼ぎ頭という代表格だ。
新型RAV4の外寸は、全長4610mm×全幅1865mm×全高1690mm(「アドベンチャー」の場合)、ホイールベースは2690mmと、同様にカムバックした新型ホンダCR-Vとほぼ同サイズ、「マツダCX-5」や「スバル・フォレスター」よりはほんの少し大きなSUVと捉えてもらえればいい。ちなみに「ハリアー」よりは全長が10cmほど短く、スタイリングは明らかにタフで逞(たくま)しい道具感を押し出したもので、「ハイラックス」や北米向けのピックアップトラック「タンドラ」との共通性を感じさせる。
新型は5代目に当たるが、4代目は海外専用車となり日本では販売されなかったために、まったく同じように先日、日本市場にカムバックした「ホンダCR-V」よりさらにご無沙汰な感じは否めない。
もっとも、海外では以前から大活躍中だ。RAV4はこれまでに累計800万台以上を生産しているトヨタにとっては重要なボリュームモデルであり、特に北米では年間40万台以上のセールスを誇る(2017年には「カムリ」を上回って日本車トップを記録)トヨタのベストセラーSUVである。最近では珍しい話ではないけれど、国内では影が薄くても海の向こうでは稼ぎ頭という代表格だ。
新型RAV4の外寸は、全長4610mm×全幅1865mm×全高1690mm(「アドベンチャー」の場合)、ホイールベースは2690mmと、同様にカムバックした新型ホンダCR-Vとほぼ同サイズ、「マツダCX-5」や「スバル・フォレスター」よりはほんの少し大きなSUVと捉えてもらえればいい。ちなみに「ハリアー」よりは全長が10cmほど短く、スタイリングは明らかにタフで逞(たくま)しい道具感を押し出したもので、「ハイラックス」や北米向けのピックアップトラック「タンドラ」との共通性を感じさせる。
3種類の4WD機構
- 「RAV4アドベンチャー」を含むガソリンエンジン車が採用する2リッター直4 DOHC 16バルブエンジンは、最高出力171ps、最大トルク207Nmを発生。トランスミッションは、「ダイレクトシフトCVT」と呼ばれる機械式発進ギアとCVTを組み合わせた10段シーケンシャルシフトマチックを搭載する。
新型RAV4には2リッター4気筒直噴ガソリンエンジン(最高出力171ps/最大トルク207Nm)と2.5リッター直噴4気筒にモーターを組み合わせたハイブリッドパワートレイン(前輪駆動車はシステム最高出力218ps/「E-Four」は同222ps)が用意されているが、ともにカムリで登場したいわゆるダイナミックフォースエンジンである。
さらに3種類の四輪駆動モデルがラインナップされ、加えて試乗会では試せなかったもののガソリンとハイブリッドに1車種ずつ前輪駆動モデルも用意されている。ひとつの車種にパワートレインと駆動方式の組み合わせを5種類も用意するという大盤振る舞いだが、それもRAV4が世界中に投入するグローバルモデルであり、今後登場するニューモデルにもメカニズムを展開する狙いがあってこその布陣だろう。
中でも注目は「ダイナミックトルクベクタリングAWD」と称する新しい4WDシステムで、アドベンチャーと「G“Zパッケージ”」グレードに装備される。前後軸間にカップリングを備える従来型のシステムは「ダイナミックトルクコントロール4WD」という名称なのでちょっと紛らわしいが、ダイナミックトルクベクタリングはその名の通り、積極的に左右後輪のトルク配分比を変えてヨーモーメントを発生させ、ハンドリングと安定性を向上させるという凝ったシステムだ。
基本はもちろん前輪駆動ながら、リアアクスルの左右に湿式多板カップリングを備え、それぞれの圧着力を制御して前後軸間のトルク配分は最大50:50まで、左右各後輪へのトルク配分は0:100~100:0の間で変化させるというもの。さらに前後アクスルにそれぞれラチェット式のドグクラッチを装備し、4WDが必要でない場合には切り離して燃費向上を図るシステムである。いわゆるセンターデフもリアデフも備わらないが、後輪軸左右のカップリングを制御することで、センター/リアデフをロックした場合と同様の悪路走破性を得ることもできるし、オンロードでは旋回性能向上につなげることもできる。
聞けばそもそもの開発のきっかけはオンロードでのハンドリング向上だったらしい。2基のドグクラッチと左右カップリングを併用した四輪駆動システムは世界初だという。またリアアクスルにモーターを備えたものは従来通りのE-Fourだが、こちらもリアモーターをパワーアップさせた新タイプである。
さらに3種類の四輪駆動モデルがラインナップされ、加えて試乗会では試せなかったもののガソリンとハイブリッドに1車種ずつ前輪駆動モデルも用意されている。ひとつの車種にパワートレインと駆動方式の組み合わせを5種類も用意するという大盤振る舞いだが、それもRAV4が世界中に投入するグローバルモデルであり、今後登場するニューモデルにもメカニズムを展開する狙いがあってこその布陣だろう。
中でも注目は「ダイナミックトルクベクタリングAWD」と称する新しい4WDシステムで、アドベンチャーと「G“Zパッケージ”」グレードに装備される。前後軸間にカップリングを備える従来型のシステムは「ダイナミックトルクコントロール4WD」という名称なのでちょっと紛らわしいが、ダイナミックトルクベクタリングはその名の通り、積極的に左右後輪のトルク配分比を変えてヨーモーメントを発生させ、ハンドリングと安定性を向上させるという凝ったシステムだ。
基本はもちろん前輪駆動ながら、リアアクスルの左右に湿式多板カップリングを備え、それぞれの圧着力を制御して前後軸間のトルク配分は最大50:50まで、左右各後輪へのトルク配分は0:100~100:0の間で変化させるというもの。さらに前後アクスルにそれぞれラチェット式のドグクラッチを装備し、4WDが必要でない場合には切り離して燃費向上を図るシステムである。いわゆるセンターデフもリアデフも備わらないが、後輪軸左右のカップリングを制御することで、センター/リアデフをロックした場合と同様の悪路走破性を得ることもできるし、オンロードでは旋回性能向上につなげることもできる。
聞けばそもそもの開発のきっかけはオンロードでのハンドリング向上だったらしい。2基のドグクラッチと左右カップリングを併用した四輪駆動システムは世界初だという。またリアアクスルにモーターを備えたものは従来通りのE-Fourだが、こちらもリアモーターをパワーアップさせた新タイプである。
扱いやすく実用的
さすがはトヨタのベストセラーというか、やはりグローバルカーというべきか、海外市場で人気を博してきただけに、前後席ともに広々としており、ドライバーズシートからの見晴らしもクリアでルーミーだ。
Aピラーやドアミラー周辺の斜め前方、Cピラー周りの斜め後方の視界にも配慮されており、スタイリングよりも実際の扱いやすさを重視していることがうかがえる。運転席まわりには小物入れスペースも充実しており、乗り込んですぐ安心できる“道具感”がインテリアにも漂っている。
ラゲッジスペースも最大580リッターと余裕たっぷりで、奇をてらわずに実用性を重んじているところは歓迎できる。
海外向けにトヨタが真面目に作るとこれほど納得できる“いい道具感”があるのか、とあらためて感心するところではあるが、同時になぜこういうモデル(ハイラックスなども含め)を国内向けに継続的にラインナップしてこなかったのかと不思議にも思う。まあそれは開発や生産技術ではなく、商品企画の問題ではある。
ちなみに最上級グレードの「ハイブリッドG」(E-Four)を含めてカーナビは全車オプション設定、また先進的安全運転支援システムの中の後方監視やブラインドスポットウォーニングはグレードによってオプションになるので要注意だ。
Aピラーやドアミラー周辺の斜め前方、Cピラー周りの斜め後方の視界にも配慮されており、スタイリングよりも実際の扱いやすさを重視していることがうかがえる。運転席まわりには小物入れスペースも充実しており、乗り込んですぐ安心できる“道具感”がインテリアにも漂っている。
ラゲッジスペースも最大580リッターと余裕たっぷりで、奇をてらわずに実用性を重んじているところは歓迎できる。
海外向けにトヨタが真面目に作るとこれほど納得できる“いい道具感”があるのか、とあらためて感心するところではあるが、同時になぜこういうモデル(ハイラックスなども含め)を国内向けに継続的にラインナップしてこなかったのかと不思議にも思う。まあそれは開発や生産技術ではなく、商品企画の問題ではある。
ちなみに最上級グレードの「ハイブリッドG」(E-Four)を含めてカーナビは全車オプション設定、また先進的安全運転支援システムの中の後方監視やブラインドスポットウォーニングはグレードによってオプションになるので要注意だ。
乗り心地も上々
いかつい外観の割には、と言ったら失礼ながら、RAV4はガソリンエンジン車でも軽々と走りだす。2リッターエンジンには発進用ギア付きの「ダイレクトシフトCVT」が組み合わされるが、例によって取り立ててシャープとか力強いというわけではないものの、ガソリン車で1600kgあまりの車重にはまずまず十分というところ。回転フィーリングは若干ラフではあるが、常用域で扱いやすい健康的で実用的なエンジンだ。
難点はやはりというか、例によってというかCVTである。発進用ギアのおかげでスルッと滑らかに動き出すのだが、その先、中速域になるところに段付きが感じられ、また富士の裾野のようなオープンロードで速度を上げ下げするコントロールが思うように細やかにはできないのである。大きな四輪駆動車にCVTを使用することの是非を考えるべきだと思う。
いっぽうエンジン自体の排気量も大きなハイブリッドは明らかに余裕があり、同じような速度域でもよりスイスイと走れる印象がある。
ハンドリングはどちらも軽快で雑味がなく、SUVとして大切なスタビリティーも十分。乗り心地も穏当でちょうどいいところ、可変ダンパーなどの飛び道具なしでも満足できる性能を得られるという好例だ。トヨタの実力はこういうモデルに表れるのである。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)
難点はやはりというか、例によってというかCVTである。発進用ギアのおかげでスルッと滑らかに動き出すのだが、その先、中速域になるところに段付きが感じられ、また富士の裾野のようなオープンロードで速度を上げ下げするコントロールが思うように細やかにはできないのである。大きな四輪駆動車にCVTを使用することの是非を考えるべきだと思う。
いっぽうエンジン自体の排気量も大きなハイブリッドは明らかに余裕があり、同じような速度域でもよりスイスイと走れる印象がある。
ハンドリングはどちらも軽快で雑味がなく、SUVとして大切なスタビリティーも十分。乗り心地も穏当でちょうどいいところ、可変ダンパーなどの飛び道具なしでも満足できる性能を得られるという好例だ。トヨタの実力はこういうモデルに表れるのである。
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