【試乗記】トヨタRAV4アドベンチャー(4WD/CVT)
- トヨタRAV4アドベンチャー(4WD/CVT)
ハンサム野郎の凱旋
SUVの世界販売台数でナンバーワンの座に君臨する「トヨタRAV4」。2年半ぶりにカムバックした日本でも好調なセールスを記録しているこのクルマの魅力はどこにあるのか? 輸入車ともドメスティックな国産車とも違う、トヨタの世界戦略車の妙味に触れた。
見ない間にすっかりイケメンに
「あれは、誰だっけ?」
「ほらほら、〇〇君よ。△△部の!」
「あー!」
ようやく思い出した。
たしか、当時はもっとイモっぽかったけど、愛嬌(あいきょう)のあるわりといい感じの男子だったっけ。その彼が久方ぶりに集まった同窓会で、周囲を圧倒するほどイイ男になって現れた。
「これは、2度目の結婚を狙うか! でも~残念。私、既婚者だったわー」
なんて、ついおばちゃん根性丸出しになってしまうほど、〇〇君はとにかくカッコいい。学生時代にはまったくのノーマークだったイケメン君との再会。ワクワクするなぁ。
いきなり茶番を披露して申し訳ないが、新型RAV4との出会いは、まさにこういう感じだ。
約2年半を海外で過ごしての帰国だが、その間にも世界180の国と地域で販売され、2018年には約83万台を売り上げた。そんな実績を引っ提げての凱旋(がいせん)である。これは1994年の初代登場から25年間にわたって地道に進化し続けてきた証しであり、アメリカをはじめ世界中の多くの人に選ばれた証しでもある。しかも、2016年からは3年連続でSUVのグローバル販売ナンバーワンの座に輝いて……などと言葉にすると簡単だけど、グローバルでナンバーワンって、実はとんでもなくスゴイことだ。
「ほらほら、〇〇君よ。△△部の!」
「あー!」
ようやく思い出した。
たしか、当時はもっとイモっぽかったけど、愛嬌(あいきょう)のあるわりといい感じの男子だったっけ。その彼が久方ぶりに集まった同窓会で、周囲を圧倒するほどイイ男になって現れた。
「これは、2度目の結婚を狙うか! でも~残念。私、既婚者だったわー」
なんて、ついおばちゃん根性丸出しになってしまうほど、〇〇君はとにかくカッコいい。学生時代にはまったくのノーマークだったイケメン君との再会。ワクワクするなぁ。
いきなり茶番を披露して申し訳ないが、新型RAV4との出会いは、まさにこういう感じだ。
約2年半を海外で過ごしての帰国だが、その間にも世界180の国と地域で販売され、2018年には約83万台を売り上げた。そんな実績を引っ提げての凱旋(がいせん)である。これは1994年の初代登場から25年間にわたって地道に進化し続けてきた証しであり、アメリカをはじめ世界中の多くの人に選ばれた証しでもある。しかも、2016年からは3年連続でSUVのグローバル販売ナンバーワンの座に輝いて……などと言葉にすると簡単だけど、グローバルでナンバーワンって、実はとんでもなくスゴイことだ。
「トヨタ=あかぬけない」は過去の話
カッコよさのワケは、なんといってもワイド&ローの手法を用いたこのスタイルにある。そのうえ、ツートンルーフの「アドベンチャー」では車高がさらに低く見え、ふんばり感も一層増す。個人的オススメは、斜め後方からのアングル。リアドアからリアオーバーハングに向かってえぐられたV字の意匠と、某B社の「ホフマイスターキンク」をほうふつとさせるCピラー付け根の造形、エッジの効いた多角形のフェンダーアーチなど、近くから見ても、遠くから見てもほれぼれする。
実はこのデザイン、2017年12月のロサンゼルスモーターショーで発表されたコンセプトカー「FT-AC(フューチャー・トヨタ・アドベンチャー・コンセプト)」とほぼ同じものだ。2つの八角形(オクタゴン)を90度ずらしてはめ合わせた「クロスオクタゴン」をデザインテーマに、鎖をつなげたようなガッチリとしたフォルムが形作られている。
コンセプトカーでかなりイイ線いってたクルマの場合、結果的には少し残念な姿となって市販されることが多いが、RAV4では2年前の時点でカタチがほぼ完成していたことになる。もっとも、このデザインの完成までには、日米3つの開発拠点が出し合った3案がすべて白紙となり、そこから再び新しいデザインを練り上げられたという。このエピソードだけでも、トヨタの本気度がうかがえる。
新型RAV4を見れば、「イマイチあかぬけないのがトヨタ車らしい」なんてたわごとは過去のもののようだ。若干ロボっぽいが、決してオタクっぽくはない。女性にもすんなり受け入れられそうなフォルムの美しさがあるし、フレンドリーさも持ち合わせている。個人的にはトヨタデザインを俯瞰(ふかん)するうえでのターニングポイントになりそうなクルマだと感じた。
実はこのデザイン、2017年12月のロサンゼルスモーターショーで発表されたコンセプトカー「FT-AC(フューチャー・トヨタ・アドベンチャー・コンセプト)」とほぼ同じものだ。2つの八角形(オクタゴン)を90度ずらしてはめ合わせた「クロスオクタゴン」をデザインテーマに、鎖をつなげたようなガッチリとしたフォルムが形作られている。
コンセプトカーでかなりイイ線いってたクルマの場合、結果的には少し残念な姿となって市販されることが多いが、RAV4では2年前の時点でカタチがほぼ完成していたことになる。もっとも、このデザインの完成までには、日米3つの開発拠点が出し合った3案がすべて白紙となり、そこから再び新しいデザインを練り上げられたという。このエピソードだけでも、トヨタの本気度がうかがえる。
新型RAV4を見れば、「イマイチあかぬけないのがトヨタ車らしい」なんてたわごとは過去のもののようだ。若干ロボっぽいが、決してオタクっぽくはない。女性にもすんなり受け入れられそうなフォルムの美しさがあるし、フレンドリーさも持ち合わせている。個人的にはトヨタデザインを俯瞰(ふかん)するうえでのターニングポイントになりそうなクルマだと感じた。
走りに見る程よいマッスル感
感心したのはデザインだけではない。試乗したのは、2リッターの「ダイナミックフォースエンジン」を搭載したアドベンチャー。ボディーの大きさからすれば排気量がもっと大きくてもいい感じもしたが、乗ってみると意外としっくりくる。アクセルを踏み増すたびに「モーモー」というくぐもった音を響かせながらも、息切れすることなくスムーズに走ってくれた。
なにより、操作性の良さには驚いた。直進安定性がいいし、コーナーでも自然と行きたいほうに姿勢を変え、運転がうまくなったような気持ちにさせてくれる。これは「ダイナミックトルクベクタリングAWD」のおかげだ。前後軸間のトルク配分に加え、後輪のトルクも左右独立で制御することによって旋回時の車両安定性を高めるもので、これによってアスリートのような走りを実現している。
とはいえ、体脂肪率6%のキレッキレボディーというわけではない。少しののりしろを維持しながらコーナーを曲がる感覚からすると、15%ぐらいが適当だろうか。そんな風に体を鍛えたことは一度もないので、あくまでイメージの話なのだが、とにかくRAV4には、見る方が引くような鍛えすぎのマッチョではなく、日常生活に支障のない程度の適度なマッスル感がある。このやりすぎてない感じが、RAV4の走りなのだ。
なにより、操作性の良さには驚いた。直進安定性がいいし、コーナーでも自然と行きたいほうに姿勢を変え、運転がうまくなったような気持ちにさせてくれる。これは「ダイナミックトルクベクタリングAWD」のおかげだ。前後軸間のトルク配分に加え、後輪のトルクも左右独立で制御することによって旋回時の車両安定性を高めるもので、これによってアスリートのような走りを実現している。
とはいえ、体脂肪率6%のキレッキレボディーというわけではない。少しののりしろを維持しながらコーナーを曲がる感覚からすると、15%ぐらいが適当だろうか。そんな風に体を鍛えたことは一度もないので、あくまでイメージの話なのだが、とにかくRAV4には、見る方が引くような鍛えすぎのマッチョではなく、日常生活に支障のない程度の適度なマッスル感がある。このやりすぎてない感じが、RAV4の走りなのだ。
“あいまいさ”を排したことの勝利
見て、乗って、申し分ないデキだとはすぐに感じることができた。とはいえ、なぜそこまでいいと感じたのか、それをかみ砕くまでには少々時間がかかった。
で、ようやくひとつの考え方としてわかったことがある。それは、国内専用車に感じる“あいまいさ”との決別なのだ。メリハリのつけ方がうまいとでも言ったらいいだろうか。どういうクルマかということを明確に打ち出し、必要な装備の取捨選択がしっかりできている。だからこそ結果的にすごくいいクルマに仕上がる。
日本特有の“おもてなし”は、やり過ぎればおせっかいにもつながり、結果的に焦点のぼやけたあいまいなクルマになってしまう。国内での需要を見込んだ情緒的なデザインは、日本発のブランドを海外に発信するのには効果があるだろうが、多くの人にとってはあまり興味のないものだ。
今回は舗装路のみの試乗だったが、実のところ新型RAV4の特徴は、3つの4WDシステムを設定し、本格四駆としての性格を強く打ち出しているところにある。これが数あるライバルと戦うための武器なのだ。
だからこそ、デザインでもわかりやすくたくましさをアピールしているし、インテリアに目を移せば、ダッシュボードやシートが直線基調でまとめられ、ここでも視覚的な“あいまいさ”をなくしている。ステアリングフィールやアクセルレスポンスの良さからも、どっちつかずな部分は感じられない。つまり、デザインや操作感といった言語がともに明快であり、日本以外のさまざまな国や地域の人たちにも、どんなクルマかということが理解されやすいつくりになっている。
で、ようやくひとつの考え方としてわかったことがある。それは、国内専用車に感じる“あいまいさ”との決別なのだ。メリハリのつけ方がうまいとでも言ったらいいだろうか。どういうクルマかということを明確に打ち出し、必要な装備の取捨選択がしっかりできている。だからこそ結果的にすごくいいクルマに仕上がる。
日本特有の“おもてなし”は、やり過ぎればおせっかいにもつながり、結果的に焦点のぼやけたあいまいなクルマになってしまう。国内での需要を見込んだ情緒的なデザインは、日本発のブランドを海外に発信するのには効果があるだろうが、多くの人にとってはあまり興味のないものだ。
今回は舗装路のみの試乗だったが、実のところ新型RAV4の特徴は、3つの4WDシステムを設定し、本格四駆としての性格を強く打ち出しているところにある。これが数あるライバルと戦うための武器なのだ。
だからこそ、デザインでもわかりやすくたくましさをアピールしているし、インテリアに目を移せば、ダッシュボードやシートが直線基調でまとめられ、ここでも視覚的な“あいまいさ”をなくしている。ステアリングフィールやアクセルレスポンスの良さからも、どっちつかずな部分は感じられない。つまり、デザインや操作感といった言語がともに明快であり、日本以外のさまざまな国や地域の人たちにも、どんなクルマかということが理解されやすいつくりになっている。
受注状況にユーザーの期待が表れている
もちろん、必要なところではしっかり“おもてなし”している。例えば荷室の使い勝手の良さ。デッキボードは高さを2段階で調節でき、上段に据えれば床面を開口部と同じ高さにできる。この状態で後席を前に倒すと、段差なく広がる室内に長い荷物をそのまま滑らせて入れ込むことができる。さらに、バックドア開閉に便利なフットオペレーションも装備されているという具合だ。
そんなデキのいい新型に期待している人は多く、発表から1カ月間の国内受注状況は、月販3000台の目標に対して8倍の約2万4000台を記録したという。このうち9割は4WDで、20~30代の若いユーザーが全体の4割を占めているそうだ。260万円からという価格設定を考えると、「トヨタセーフティセンス」も付いていてコストパフォーマンスは高い。やっぱりなぁ。
そこで再び、妄想は冒頭の同窓会シーンへと膨らんでいく。
「へぇー! スゴイじゃないの。わたし、やっぱり聞いてみようかな~」
「なにを?」
「『ね、〇〇君、もう結婚してるの?』って」
(文=スーザン史子/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
そんなデキのいい新型に期待している人は多く、発表から1カ月間の国内受注状況は、月販3000台の目標に対して8倍の約2万4000台を記録したという。このうち9割は4WDで、20~30代の若いユーザーが全体の4割を占めているそうだ。260万円からという価格設定を考えると、「トヨタセーフティセンス」も付いていてコストパフォーマンスは高い。やっぱりなぁ。
そこで再び、妄想は冒頭の同窓会シーンへと膨らんでいく。
「へぇー! スゴイじゃないの。わたし、やっぱり聞いてみようかな~」
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