【試乗記】マツダCX-30 XD Lパッケージ(4WD/6AT)

マツダCX-30 XD Lパッケージ(4WD/6AT)
マツダCX-30 XD Lパッケージ(4WD/6AT)

神は細部に宿る

マツダの新型クロスオーバーSUV「CX-30」に試乗。映り込みを意識したという大胆なボディーパネルにまずは目を引かれるが、このクルマの魅力の源泉はそれだけではない。内外装の随所に施された丁寧な“仕事”によって、美しい世界観をつくり上げているのだ。

必然性のあるサイズ

「マツダ3」に続く、マツダの新世代商品群第2弾として発売された「CX-30」。シャシーなどの基本コンポーネントはマツダ3と同じ。
「マツダ3」に続く、マツダの新世代商品群第2弾として発売された「CX-30」。シャシーなどの基本コンポーネントはマツダ3と同じ。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm。全長と全幅が「CX-3」と「CX-5」の中間にぴたりと収まる一方で、全高は3台の中で最も低い。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm。全長と全幅が「CX-3」と「CX-5」の中間にぴたりと収まる一方で、全高は3台の中で最も低い。
フロントまわりではヘッドランプをグリルよりも大幅に後ろにレイアウトした“奥目”が特徴。ランプを点灯すると、その前にあるメッキパーツも一緒に光るようになっている。
フロントまわりではヘッドランプをグリルよりも大幅に後ろにレイアウトした“奥目”が特徴。ランプを点灯すると、その前にあるメッキパーツも一緒に光るようになっている。
今回のテスト車は1.8リッターディーゼルモデルのトップグレード「XD Lパッケージ」の4WD車。車両本体価格は330万5500円。
今回のテスト車は1.8リッターディーゼルモデルのトップグレード「XD Lパッケージ」の4WD車。車両本体価格は330万5500円。
いまやすっかりマツダの看板シリーズになったクロスオーバーSUV。その最新モデルがCX-30だ。ポジション的には「CX-5」と「CX-3」のあいだ。屋根の低いマツダ車との関係では「マツダ3」格のSUVということになる。

3車のボディーサイズを書き出してみると、このようになる。
  • CX-5:全長×全幅×全高=4545×1840×1690mm
  • CX-30:全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm
  • CX-3:全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm
こうして寸法比較すると、CX-5がかなり大きい。逆にCX-3はイメージよりかなり小さい。デザインの統一性が高いためか、またSUVを増やすの!? と感じさせなくもないCX-30だが、マツダSUVシリーズの新顔として、ちゃんとサイズ的な必然性があったわけである。

パワートレインは1.5リッターがないことを除いてマツダ3と同じ。すなわち2リッターガソリンが2種類と、1.8リッターディーゼルである。

今回試乗したのはディーゼルの「XD Lパッケージ」の4WD(330万5500円)。ちなみに同じクリーンディーゼルを搭載したマツダ3の同級グレードは320万9555円。ついついCX-30に手が伸びてしまいそうな価格設定といえる。

「マツダ3」に続く、マツダの新世代商品群第2弾として発売された「CX-30」。シャシーなどの基本コンポーネントはマツダ3と同じ。
「マツダ3」に続く、マツダの新世代商品群第2弾として発売された「CX-30」。シャシーなどの基本コンポーネントはマツダ3と同じ。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm。全長と全幅が「CX-3」と「CX-5」の中間にぴたりと収まる一方で、全高は3台の中で最も低い。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm。全長と全幅が「CX-3」と「CX-5」の中間にぴたりと収まる一方で、全高は3台の中で最も低い。
フロントまわりではヘッドランプをグリルよりも大幅に後ろにレイアウトした“奥目”が特徴。ランプを点灯すると、その前にあるメッキパーツも一緒に光るようになっている。
フロントまわりではヘッドランプをグリルよりも大幅に後ろにレイアウトした“奥目”が特徴。ランプを点灯すると、その前にあるメッキパーツも一緒に光るようになっている。
今回のテスト車は1.8リッターディーゼルモデルのトップグレード「XD Lパッケージ」の4WD車。車両本体価格は330万5500円。
今回のテスト車は1.8リッターディーゼルモデルのトップグレード「XD Lパッケージ」の4WD車。車両本体価格は330万5500円。

随所に漂う手づくりの逸品感

エクステリアでは、なんといってもリアフェンダーとドアパネルとが織りなす美しい曲面が最大の特徴。“面で魅せる美”とうたわれている。
エクステリアでは、なんといってもリアフェンダーとドアパネルとが織りなす美しい曲面が最大の特徴。“面で魅せる美”とうたわれている。
Aピラーが立体的な形状となっており、車体の左側から光が当たると、右側のピラーにもハイライトが入るようになっている。
Aピラーが立体的な形状となっており、車体の左側から光が当たると、右側のピラーにもハイライトが入るようになっている。
ワイパーが収まるボンネット終端部分のパネルは、筆者がこれまでに見た(気づいた)クルマの中でも極めて薄い部類に入るものだ。
ワイパーが収まるボンネット終端部分のパネルは、筆者がこれまでに見た(気づいた)クルマの中でも極めて薄い部類に入るものだ。
タイヤサイズは全グレードとも215/55R18が標準。テスト車には「トーヨー・プロクセスR56」が装着されていた。
タイヤサイズは全グレードとも215/55R18が標準。テスト車には「トーヨー・プロクセスR56」が装着されていた。
「美しく走る」という広告コピーでもおなじみのCX-30は、ビジュアル系のエクステリアが大きなセールスポイントである。

冬のギラッとした日差しの下、ソウルレッドのボディーを観察すると、リアフェンダーの面の張りが美しい。微妙な3次曲面がもたらすドアの映り込みも格別だ。Kカメラマンがいつになく激写している。

細部の仕上げも見もので、例えばワイパーが収まるボンネット終端部のパネルはネコの耳のように薄く見える。これだって大量生産の金型から生まれていることには違いないが、そう感じさせない手づくりの逸品感が随所にある。跳ね石などでちっちゃなエクボひとつできても悲しいだろうなあ、なんてやっかみしか思い浮かばない美ボディーである。

Lパッケージということもあり、インテリアもきれいで上質だ。ドア内張りやダッシュボードのフェイクレザーは本物っぽく見えるし、ステアリングやATセレクターのリアルレザーは手触りがいい。使ってナンボのSUVにこのほうがいいのかどうかは考え方だろうが、レザー感の高い室内だ。

一方、これだけデザインに重きを置いたボディーだから、リアシートや荷室はとくべつ広いわけではない。その点でもCX-3とCX-5の中間である。ノーズの長いプロポーションはマツダ3に通じるが、サイドウィンドウは後ろまで広くとられているため、3の「ファストバック」のように、昔の「日産チェリーX-1クーペ」並みに斜め後方が見えないということはない。

エクステリアでは、なんといってもリアフェンダーとドアパネルとが織りなす美しい曲面が最大の特徴。“面で魅せる美”とうたわれている。
エクステリアでは、なんといってもリアフェンダーとドアパネルとが織りなす美しい曲面が最大の特徴。“面で魅せる美”とうたわれている。
Aピラーが立体的な形状となっており、車体の左側から光が当たると、右側のピラーにもハイライトが入るようになっている。
Aピラーが立体的な形状となっており、車体の左側から光が当たると、右側のピラーにもハイライトが入るようになっている。
ワイパーが収まるボンネット終端部分のパネルは、筆者がこれまでに見た(気づいた)クルマの中でも極めて薄い部類に入るものだ。
ワイパーが収まるボンネット終端部分のパネルは、筆者がこれまでに見た(気づいた)クルマの中でも極めて薄い部類に入るものだ。
タイヤサイズは全グレードとも215/55R18が標準。テスト車には「トーヨー・プロクセスR56」が装着されていた。
タイヤサイズは全グレードとも215/55R18が標準。テスト車には「トーヨー・プロクセスR56」が装着されていた。

パワーはもっとあってもいい

「マツダ3」や「CX-3」よりも車両重量が重いため、1.8リッターディーゼルエンジンに力強さは感じなかった。「CX-30」は、ゆったりとした走りが特徴だ。
「マツダ3」や「CX-3」よりも車両重量が重いため、1.8リッターディーゼルエンジンに力強さは感じなかった。「CX-30」は、ゆったりとした走りが特徴だ。
インテリアでは“人とクルマとの一体感”を表現。メーターパネルとエアコンの吹き出し口をドライバーを中心に左右対称に配置することで、“コックピット感”を演出している。
インテリアでは“人とクルマとの一体感”を表現。メーターパネルとエアコンの吹き出し口をドライバーを中心に左右対称に配置することで、“コックピット感”を演出している。
ディーゼルモデルには6段ATのみが設定される。ガソリンモデルではパーキングブレーキスイッチの前方に備わるドライブモードセレクターも、ディーゼルモデルでは省かれている。
ディーゼルモデルには6段ATのみが設定される。ガソリンモデルではパーキングブレーキスイッチの前方に備わるドライブモードセレクターも、ディーゼルモデルでは省かれている。
ディーゼルのCX-30はゆったりした走りの中型SUVである。最高出力116PS、最大トルク270N・mの1.8リッターディーゼルターボは、マツダ3やCX-3に搭載されているものと発生回転数などのチューニングも含めて同じである。だが、1530kgの車重はマツダ3のXD Lパッケージより60kg重い。「マツダ2」ベースのCX-3比だと160kgも重い。当然、動力性能にパンチは感じない。

しかも今回、試乗に同道したのは1リッターコンパクトSUVの「トヨタ・ライズ」だった。クラスは違うし、もちろん比較テストでもなんでもないのだが、車重1tをきる軽量ボディーを元気のいいガソリン3気筒ターボで動かすライズととっかえひっかえしていると、正直、CX-30はちょっと“眠たい”なあと思った。

ただこのクリーンディーゼル、マナーのよさはさすがである。初めてライズから乗り換えたときは、こっちのほうがガソリンエンジンではないかと思った。それほど滑らかで、音も静かだ。6段ATがいまどき段数不足であるという指摘もあるようだが、乗っていて特に不満を覚えるようなことはない。それよりも、これだけスポーティーな美丈夫なのだから、カタログアピールを考えても、エンジンのアウトプットにもう少し色をつけられなかったものかと思う。

「マツダ3」や「CX-3」よりも車両重量が重いため、1.8リッターディーゼルエンジンに力強さは感じなかった。「CX-30」は、ゆったりとした走りが特徴だ。
「マツダ3」や「CX-3」よりも車両重量が重いため、1.8リッターディーゼルエンジンに力強さは感じなかった。「CX-30」は、ゆったりとした走りが特徴だ。
インテリアでは“人とクルマとの一体感”を表現。メーターパネルとエアコンの吹き出し口をドライバーを中心に左右対称に配置することで、“コックピット感”を演出している。
インテリアでは“人とクルマとの一体感”を表現。メーターパネルとエアコンの吹き出し口をドライバーを中心に左右対称に配置することで、“コックピット感”を演出している。
ディーゼルモデルには6段ATのみが設定される。ガソリンモデルではパーキングブレーキスイッチの前方に備わるドライブモードセレクターも、ディーゼルモデルでは省かれている。
ディーゼルモデルには6段ATのみが設定される。ガソリンモデルではパーキングブレーキスイッチの前方に備わるドライブモードセレクターも、ディーゼルモデルでは省かれている。

曲がりたくなるウインカー音

マツダが“ディミング(調光)ターンシグナル”と呼ぶウインカーは、余韻を残すように明滅するのが特徴。室内では“コチコチ”という音が聞こえる。
マツダが“ディミング(調光)ターンシグナル”と呼ぶウインカーは、余韻を残すように明滅するのが特徴。室内では“コチコチ”という音が聞こえる。
最上級グレードたる「Lパッケージ」には、ピュアホワイトレザーのシート表皮や運転席の電動調整機構が標準装備。運転席と助手席のシートヒーターやステアリングヒーターも装備する。
最上級グレードたる「Lパッケージ」には、ピュアホワイトレザーのシート表皮や運転席の電動調整機構が標準装備。運転席と助手席のシートヒーターやステアリングヒーターも装備する。
リアシートの背もたれは60:40の分割可倒機構を備えている。この写真ではそれほど広く見えないが……
リアシートの背もたれは60:40の分割可倒機構を備えている。この写真ではそれほど広く見えないが……
前席の下が大きく開いており、ゆったりと足を入れることができる。
前席の下が大きく開いており、ゆったりと足を入れることができる。
約360kmを走って、燃費は13.8km/リッター(満タン法)だった。トヨタ・ライズも13km/リッター台だったが、こちらはもちろんレギュラーガソリンより2割近く安い軽油でいける。2020年年明けから波乱含みの中東情勢だ。というか、波乱のない平和な中東が果たしてこの先実現するのだろうか。

ディーゼルの最上級モデルだから、運転支援システムを含めて装備は豊富だ。冬場の味方、ステアリングヒーターやシートヒーターも標準装備である。

でも、CX-30に乗っていて細かいところで妙に気に入ってしまったのはウインカーの音だった。“コチコチ”という、まったく反響が残らない音で、いままで聞いたことがない上質なウインカー作動音である。これが耳に心地よくて、いつもより多めに曲がりたくなった。外で見るLEDのウインカーもひとくせあり、余韻を残して拍動するように明滅する。「神は細部に宿る」を合言葉にさまざまな部署の人ががんばってつくったと感じさせるクルマである。

CX-30はたしかに美しく走りたい人のSUVだ。最大の魅力は、丹精込めたスタイリング。そのルックスにはガソリンエンジンのほうがよりマッチしていると思ったが、燃料コストの安いクリーンディーゼルがフツーに選べるのはもちろんマツダSUVならではである。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

マツダが“ディミング(調光)ターンシグナル”と呼ぶウインカーは、余韻を残すように明滅するのが特徴。室内では“コチコチ”という音が聞こえる。
マツダが“ディミング(調光)ターンシグナル”と呼ぶウインカーは、余韻を残すように明滅するのが特徴。室内では“コチコチ”という音が聞こえる。
最上級グレードたる「Lパッケージ」には、ピュアホワイトレザーのシート表皮や運転席の電動調整機構が標準装備。運転席と助手席のシートヒーターやステアリングヒーターも装備する。
最上級グレードたる「Lパッケージ」には、ピュアホワイトレザーのシート表皮や運転席の電動調整機構が標準装備。運転席と助手席のシートヒーターやステアリングヒーターも装備する。
リアシートの背もたれは60:40の分割可倒機構を備えている。この写真ではそれほど広く見えないが……
リアシートの背もたれは60:40の分割可倒機構を備えている。この写真ではそれほど広く見えないが……
前席の下が大きく開いており、ゆったりと足を入れることができる。
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