一体感が半端ない! スバルファンの応援がSUPER GTで際立つワケを応援団長に聞いた
国内で人気ナンバー1のレースであるだけでなく、世界的にもその競争力に注目が集まるSUPER GT。GT500クラスとGT300クラスのそれぞれの魅力的なレーシングカーと興奮必至の抜きつ抜かれつのバトルとともに、SUPER GTに欠かせないものが「ファンの応援」だ。
ファンからの応援、期待に応えるべくチーム、ドライバーやチームは奮起し熱いバトルを繰り広げる。
いっぽう、ファンも応援するチームの色とりどりのウェアを身にまとい、応援することでSUPER GTをより楽しんでいるようだ。
応援を介して一体となるファンとドライバー、チームそれぞれの想いを取材する今回の企画、先日はドライバーとチームがファンに対して抱く感謝と決意について、SUBARU BRZ R&D SPORTに取材した記事をお届けした。
第2弾は、グランドスタンドの一角を青く染めるスバルファンが、SUPER GTの応援の中でもひと際一体感を感じさせるワケ、そしてファンが一体となりどのような想いを届けたいと感じているのか、応援団長を務めるマリオ高野さんに聞いてみた。
マリオ高野さんがスバルの応援団長となった経緯は?
まずは、マリオ高野さんについて少しご紹介しておこう。
本職は自動車ライターで、以前から自身もスバル車に乗っていたことでスバルに関する記事は「ちょっと熱量高く」取り組んでいたという。
実は球場の隣に引っ越してしまうくらい西武ライオンズの大ファンというマリオ高野さんは、年間50試合くらい野球観戦に行くこともあったという。これが後の応援団長就任につながったようだ。
ある日、スバルの方との雑談の中で応援団のようなものを立ち上げ、ファンシートでの応援を盛り上げていきたいという話があったそう。そこで、スバルのことをよく知り、野球の応援をよく見ていた(応援団ではなかったそうだが)ということで白羽の矢が立った。
そして、2013年から応援団長として旗振り役を務めることとなっている。
熱狂的だけどどんな人でも溶け込めるスバルファン
そんなマリオ高野さんにまずは、傍から見ても一体感を感じるスバルのファンのみなさんがどのような方々なのか伺った。
「他の自動車メーカーは複数台のチームが参戦していますが、スバルのマシンは1台で孤軍奮闘しているので、応援する気持ちが凝縮していますし、ファンの向いている方向が一つなんです。
また、搭載している『EJ20』というエンジンが、スバルファンにとって象徴的な存在だというのがあります。
1989年から30年使われていたエンジンで、スバルファンが所有してきた一般のクルマにも搭載されてきたエンジンですが、そのルーツを辿ると1990年代~2000年代に世界ラリー選手権(WRC)で大活躍したインプレッサに搭載され、スバルのWRCでの栄光の時代を支えたエンジンでもあります。
その当時にスバルファンになった方も多いですし、今も現役で戦っているEJ20も情念を注ぐ対象として大きいんですよね。
スバルファンはスバル車に乗っている方も多く市販車と密接につながっていて、自分のクルマにかける愛情とスバルを応援する愛情がとても近いんだと思います」
実際にファンとしてはスバル車に乗っていない人や、SUBARU BRZ GT300のドライバーの井口選手、山内選手のファンなどもいるだろうが、そうした人たちもすぐに溶け込める雰囲気があるという。
「スバル車もいろいろなラインアップが増えてきて乗っている人も多様化してきています。スポーツカー好きだけじゃなくて、例えばAWDのSUVとかアイサイトの安全性に惹かれた人とかですが、スバルファンも同じようにいろいろな方が増えてきています。
ですので、WRCで全盛時代の“宗教的な”ファンの方ばかりではないので、スバル車に乗っていなくても青いウェアさえ着ていてもらえれば一瞬で溶け込めると思います。
また、井口選手や山内選手のファンの人も溶け込みやすいのは、2人のドライバーが家族的に愛されているからだと思います。2015年から8シーズンに渡り2人で走ってきていてもうスバルファミリー化していますから」
「Tシャツを売り込みたいわけではないですが」と前置きがあったものの、やはり独特のブルーがスバルファンのアイデンティティの一つでもありそうだ。
チャンピオンの獲得でファンの団結はゆるぎないものに!
2009年第6戦からレガシィB4、そして2012年からBRZでSUPER GTを戦うスバルだが、2021年ようやくチャンピオンを獲得したことで、ファンの結束力は「何も怖いものがない」レベルまで到達しているという。
「2017年~2019年くらいまで言い方は悪いですが暗黒の時代があって、勝利どころかチャンピオンなんて夢のまた夢みたいな雰囲気もありしました。それでもファンはみんなで支え続けて、レガシィ3年、そしてBRZの10年、あわせて13年の挑戦が昨年ようやく花開いてチャンピオンを獲得できました。
でも、苦楽を共にしたのはファンだけじゃないんです。ドライバー、チームスタッフもファンがそういう状況で応援しているということを理解してくれていて、彼らもよく『スバルファミリー』という言葉を使って親しみを持ってくれています。
BRZは繊細でちょっと環境が変わるとドライバー的に難しいクルマになったりして浮き沈みが激しいところがあるんです。でもチャンピオンを獲ったという実績もありますし、信じてついてきて良かったなと思わせてくれたので、その分今後多少躓くところがあっても、動じずに支えるという気持ちが揺るがなくなっています。
僕たちファンも何も怖いものがないので、思う存分挑戦してほしいですよね。外れた時は仕方ないですし、僕たちは何があっても大丈夫ですから!」
コロナ禍以前のように思いっきり応援したい
そんな熱い想いを語ってくれたマリオ高野さんだが、コロナ禍の影響で現在は応援団らしい活動がほとんどできていないという。
以前は、レース前にはスバルブースの前で決起集会を行ったり、レースの時はマシンがグランドスタンドを通過するたびに大きな応援旗を振り、さらにレース後にはドライバーやチームから聞いた話を元にファンの前でスピーチを行ったりと、陰に日向に応援団長として奔走していた。
そのような状況に対し、「まずはコロナ禍以前の状況に戻りたいというのが一番ですね。そうすればみんなで集まってコミュニケーションも取りやすくなりますし、大きな応援旗をみんなで交代で振りあったり、いろいろなアクションで視覚的にも盛り上げることができるようになりますから」と、現状のもどかしさも語ってくれた。
ただ、ここまでお届してきたようにスバルファンは、マリオ高野さんの言葉を借りれば「感情の根源」でつながっており、ドライバーもチームもファンも「スバルファミリー」なのだ。
そのため大きなアクションがなくても、そのメッセージは十分に届いているし、昨年チャンピオンを獲得したことで、それが揺るぎないものとなったのだろう。
「ドライバーやチームは、ちょっと成績が低迷するとファンに申し訳ない、ファンが離れるんじゃないかと不安になるかもしれませんが、そういうことは一切考えずに大胆に挑戦していってほしいですね。思う存分戦っているところを僕たちも観たいですしね!」
もちろん、スバル以外のチームも熱狂的なファンがいるわけだが、スポーツとしてのドライバーやチームへの憧れのみならず、特定の車種ではなく「スバルという自動車メーカー自体」への愛情が根底にあるからこそ、一体感を感じることができるということなのだろう。
次回は、グランドスタンドの一画をスバルブルーで埋め、熱き応援をドライバーやチームに届けるスバルファンのみなさんに伺ったお話をお届けしよう。
(文:GAZOO編集部 山崎 写真:GTアソシエイション、GAZOO編集部)
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