富士24時間 GRカローラの水素エンジンは更に深化
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ST-Q ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept
水素カローラは21年、22年は気体水素、23年からは液体水素で富士24時間に参戦、21年は358周、22年は478周、23年は358周をしている。23年に周回数を大幅に少なくしているが、液体水素を燃料タンクから吸い上げる燃料ポンプを2回交換したためだった。これはレース開始前から計画されており、2回の交換作業で7時間ほど要した。一方、充填1回あたりの周回数(平均)は、21年は10周、22年は12周、23年は15周と毎年増えてきている。
24年の液体水素GRカローラは、昨年の最終戦以降から開発を進め、主に3点進化をしている。
1点目は、液体水素燃料ポンプの耐久性を3倍以上向上させ、24時間無交換にしていること。
一般的なクルマの燃料ポンプは回転型の燃料ポンプであるが、液体水素用エンジンは、圧力の高い状態で水素を送りたいため往復動式ポンプを使用している。昨年までの構造は、ポンプのモーターが片方からクランクに力を加え、クランクのベアリングに偏った負荷を加え続けるため、耐久性に問題があった。今年は、ギアでクランクを挟み、片持ちさせない構造(Dual-Driveクランク機構)に改善し耐久性を大幅に向上させている。
2点目は、水素燃料タンクの形状を円筒形から楕円形に変更し、水素搭載量を10kgから15kgに増やしたこと。
その結果、充填1回あたりの周回数の目標が昨年の2倍の約30周となった。気体水素は高圧のため円筒形の必要はあるが、液体水素は低圧のため異形(楕円)でもタンクとして問題がないようだ。一方で法整備がされていないため、異形のタンクを使うために自治体と相談して今回使えることになったそうだ。
3点目は、CO2回収装置のフィルター交換作業の自動化による、CO2回収量のアップだ。
昨年までは、ピットインしたときにメカニックが吸着用フィルターと離脱用フィルターを入れ替えていた。そのため、ピットインする前に吸着用フィルターが吸着性能の限界まで吸着達し、一定時間吸着できない状態になっていた。今年は、フィルターを円形とし自動で回転させるように改良したので、CO2が一杯にならないそうだ。
他には、給水素する装置を40%程度小さくしたそうだ。
このように液体水素エンジンは着実に深化してきている。折しも昨年の11月に、GRカンパニーの高橋プレジデントは「水素エンジンは、市販化へ7合目に差し掛かった」と公言していたので、誰しもが、現時点、そして今年の目標を知りたくなるとこだ。
現時点について、高橋プレジデントは「昨年7合目のお話をしましたが、そこが7合目であったか今はわからなくなっています。ゴールが近くなっているのか、遠くなっているのか、まだわかっていないこと(未知の領域)があるんだなというのを学びました。だからスーパー耐久の場で色々な挑戦をしていくことが大事だと思っています。どこがゴールか分からないけど、着実に進んでいくように仕事を繰り返していきます」と述べた。
山登りをしていると、途中に複数の偽ピークがあることがよくある。水素エンジン開発は、単調な富士山の登山でなく、日本に多くある山登りと同じだと感じた。ピークだと思ったら、そこに近づいたら偽ピークだと気が付き、現地点が分からなくなるのと同じことではないだろうか。でも一歩ずつ足を進めればで、本当の山頂には近づくはずだ。
高橋プレジデントは度々「水素社会はクルマ、インフラ、法整備が重要」と言っている。今回の楕円形の異形タンクは、豊田会長が水素社会推進議員連盟の小渕優子会長にサポートして欲しいと相談させていただき、小渕会長が法整備の面も動いてくれたおかげで、色々進んだそうだ。特にインフラ、法整備については、未来に向け官民学が連携して一歩ずつ進めることが大事なようだ。
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燃料ポンプ Dual-Driveのクランク機構
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液体水素異形(楕円)タンク
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燃料タンク 左は昨年の円筒型 右は今年の楕円形型
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今年のCO2回収装置
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ガズーレーシングカンパニーの高橋プレジデント
(GAZOO編集部)
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