【WRC2021】WRC 第10戦ラリー・フィンランド エバンスが今季2勝目を挙げ、ドライバー選手権はオジエとエバンスの一騎打ちに

  • トヨタ ヤリスWRC33号車(エルフィン・エバンス、スコット・マーティン)

10月3日(日)に2021年FIA世界ラリー選手権(WRC)第10戦ラリー・フィンランドのデイ3が行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(ヤリスWRC 33号車)が今季2勝目を挙げた。これで、ヤリスWRCは、デビュー以来フィンランドでは負けなしの4連覇を飾っている。
また、セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア組(ヤリスWRC 1号車)が総合5位でフィニッシュ、ドライバー選手権、マニュファクチャラー選手権でもトヨタ勢が首位を堅持している。

昨年は新型コロナウイルスの影響で中止となり2年ぶりの開催となったラリー・フィンランド。WRCを代表する超高速グラベル(未舗装路)イベントであるフィンランドは、ヤリスWRCにとって第二の故郷として、この地でその戦闘力を磨いてきている。事実、ヤリスWRCのデビューした2017年から2019年まで3連勝を飾っている。
そして、今年の開催は誕生70周年という記念すべき大会ともなっている。

ラリー・フィンランド デイ3の結果

1位 E.エバンス (トヨタ ヤリス WRC) 2h19m13.7s
2位 O.タナック (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +14.1s
3位 C.ブリーン (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +42.2s
4位 E.ラッピ (トヨタ ヤリス WRC) +58.8s
5位 S.オジエ (トヨタ ヤリス WRC) +2m54.4s
6位 G.グリーンスミス (フォード フィエスタ WRC) +5m02.3s
7位 A.フォルモー (フォード フィエスタ WRC) +6m22.9s
8位 T.スニネン (フォルクスワーゲン ポロ GTI R5) +9m52.1s
9位 M.オストベルグ (シトロエン C3 Rally2) +10m07.8s
10位 E.リンドホルム (シュコダ ファビア R5 Evo) +10m52.8s
34位 K.ロバンペラ (トヨタ ヤリス WRC) +1h02m51.7s

エバンスが今季2勝目! ドライバー選手権はオジエとエバンスの争いに

3日間のスケジュールで行われるラリー・フィンランドのデイ1では、6本のステージが行われ、HYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAMのクレイグ・ブリーン/ポール・ネーグル組、オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ともにi20クーペ WRC)が1-2でフィニッシュし、ヒュンダイ勢が好調さを見せる。
トヨタ勢の最上位はエバンスが3番手につけた。

続くデイ2では、トヨタにとって波乱の展開となる。SS8で、新たなコ・ドライバーのアーロン・ジョンストンと出場した勝田貴元が右リアを破損してデイリタイアに。続けてSS10でカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(ヤリス WRC)がコースオフしフロント部分を破損、こちらもデイリタイアとなっている。

そうした中、デイ2で大活躍を見せたのがエバンスだ。オープニングのSS7からSS10にかけて、4ステージ連続でベストタイムを記録! SS8の時点で首位に立っている。その後もSS14と最終ステージでもベストタイムを記録、9ステージ中6ステージを制し、2位のタナックに9.1秒の差をつけ首位からデイ3に臨むこととなった。

迎えた最終日のデイ3は、2本のステージを各2回、4本のステージを走行、合計距離は45.74kmと3日間で最短。ここでもエバンスが安定した速さを見せる。
エバンスは、オープニングステージのSS16こそ2番手タイムだったものの、その後の3ステージでは全てベストタイムを記録し、第4戦ラリー・ポルトガル以来となる今シーズン2勝目を飾った。

これで、優勝による25ポイントに加え、最終のパワーステージのボーナス5ポイントも獲得、ドライバー選手権のライバルである、ヒュンダイのティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組(i20クーペ WRC)がリタイア、デイ3で再出走を果たしたもののノーポイントに終わったロバンペラとの差を、それぞれ36ポイント、37ポイント差に引き離すことに成功し、ランキング2位争いを有利に進められることとなった。

一方、ドライバー選手権ランキングトップであるトヨタのセバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア(ヤリス WRC)は、6位フィニッシュで190ポイントに。エバンスに24ポイント差に縮められるも、引き続きランキング首位をキープしている。
なお、今回の結果によりタイトル獲得の権利を有するドライバーはオジエとエバンスのふたりに絞られ、残り2レースでトヨタ勢同士の熾烈な争いが繰り広げられることとなる。
また、マニュファクチャラー選手権でもトヨタがヒュンダイとの差を61ポイントに拡げた。

そして今回の優勝により、トヨタは通算200回のWRCポディウムを獲得した、3番目のマニュファクチャラーということになっている。

今回のレースで、プライベーターとしてヤリスWRCをドライブしたエサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組は総合4位でフィニッシュ。勝田貴元は、デイ2のデイリタイアを経て再出走し、総合37位で完走している。

  • エルフィン・エバンス、スコット・マーティン(トヨタ ヤリスWRC33号車)

豊田章男チームオーナーのコメント

今シーズンは4度のホームラリーがあるはずでした。
ヤリスを開発・生産する日本でのラリー、チームが工場を構えるエストニア、そして本拠地であるフィンランドでの2度の戦いです。2月のアークティックラリーは2位に留まり、7月のエストニアではカッレの頑張りで勝利できましたが、今回はチームが本拠を構えるユバスキュラが舞台。本当の意味でのホームコースです。そして日本は中止になってしまったので、なんとしても勝ちたい…。ドライバー達も、チームのみんなも、そして代表のヤリ-マティも、いつも以上にプレッシャーがかかっていたと思います。その中でエルフィンとスコットが勝利し、ホームタウンのファンのみんなを笑顔にしてくれました。ヤリスWRCが生まれた街、育てられた道に恩返しができたような気持ちです。

エルフィン、スコット、そしてチームのみんな、ありがとう。二人は、今季、一度もリタイアせず必ず、最後のパワーステージまで走りきってくれています。それによりヤリスは確実に強くなりました。そのことにも心から感謝したいと思います。

セブとジュリアンは不利な出走順にも関わらず、着実な走りでポイントを獲得してくれました。あと2戦、最高のシーズンエンドを迎えるべくセブらしい強い走りを見せて欲しいと思います。カッレと貴元には、慣れ親しんだフィンランドの道でしたが、悔しさの残るラリーになってしまいました。しかし、未来につながる学びがあったと思います。いつか二人が地元のファンを笑顔にする日が来ることを期待しています。

今シーズンも残り2戦、引き続き、ヤリ-マティを中心にチーム全員が心をひとつにして走り抜いてください!そして、チームのみんなが笑顔になれるシーズンエンド…ファンの皆さんに笑顔になってもらえるシーズンエンドをよろしくお願いします!

追伸 ヤリ-マティへ
自分でシャンパンを持たないポディウムはどうでしたか?3年前にユバスキュラで君と一緒に上ったポディウムを思い出したよ。前にも言ったけど、あの時、僕はオィットに渡されたシャンパンを真っ先に君の方に向けていた。君と上れたポディウムが、それくらい嬉しかった。君もフロントに入ってしまったから二人で一緒にポディウムに上ることはできなくなってしまったけど、また現地で一緒に戦いたい。その日が1日も早く来ることを願っています。どっちがポディウムに上るかは、その時になったら相談しよう!

追伸 エサペッカとヤンネへ
カラーリングは違ったけど君たちが地元フィンランドで再びヤリスに乗ってくれて嬉しかった。ヤリスで参戦し始めた2017年、チームにとっての2勝目をあげてくれたのがユバスキュラで走った君たちだった。今回、惜しくもポディウムには立てなかったけど素晴らしい走りでの4位おめでとうございます!3年ぶりのヤリスの乗り心地はどうだったか?また聞かせてください!

  • エルフィン・エバンス、スコット・マーティン(トヨタ ヤリスWRC33号車)

TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのコメント

<<ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)>>
ラリー・フィンランドでの優勝は常に特別なことですが、我々のチームにとってはなおさらのことなので、このラリーで再び勝つことができて嬉しく思います。今年は競争が非常に激しかったですが、エルフィンのパフォーマンスを見れば、我々のクルマが速かったことはわかると思います。正直なところ、彼は優勝候補ではなかったかもしれませんが、この週末最速のドライバーだったことが証明されました。本当に素晴らしい仕事をしてくれました。金曜日の夜、暗闇の中で行われたオィッティラのステージで、彼は何かを掴んだのか大きな自信を示し、その後トップに立つと最後まで順位を守り抜きました。今回の勝利を、彼はとても誇りに感じることでしょう。ドライバー選手権に関しては、チャンピオンの権利を持つのはセブとエルフィンの2人に絞られ、マニュファクチャラー選手権についても、非常に有利な状況になりました。

<<セバスチャン・オジエ (ヤリスWRC 1号車)>>
今日は、パワーステージでポイントを獲得することが目的でしたが、残念ながら、スタート直後にトラブルが発生してしまい、良いタイムを出すことができませんでした。今回は自分たちのラリーではありませんでしたが、そういうこともたまにはあります。とにかく、前を向いて進まなければなりません。チャンピオンシップではまだいい位置にいますし、次のスペインとターマックラリーがとても楽しみです。そこでどのように戦うべきかは、理解しています。エルフィンは今週末素晴らしかったですし、良くやったと思います。

<<エルフィン・エバンス (ヤリスWRC 33号車)>>
チームのホームラリーで優勝することができて、特別な気分です。似たような特徴を持つラリー・エストニアでは困難な戦いを強いられましたが、それもあって今回このような結果を残すことができて本当に良かったです。事前のテストではクルマにいくつか変更を加え、金曜日の早い段階から大きな自信を得ることができました。チームのみんなの働きに感謝しています。この週末は、本当に楽しんで走ることができました。このクルマでフィンランドの道を走れて幸運だったと思いますし、その上で優勝できたのは特別なことです。また、チャンピオンシップに関してもポジティブな結果になりました。ドライバーズタイトルは依然難しい状況ですが、これからの全てのイベントでベストを尽くして戦います。

<<カッレ・ロバンペラ (ヤリスWRC 69号車)>>
今日は、ステージを全て走りきることに徹しました。昨晩、チームは素晴らしい仕事でクルマを直してくれましたが、それでもダメージはかなり大きく、100%の状態ではなかったので、ジャンプをしたり、クルマにストレスをかけないように気をつけて走らなければなりませんでした。また、自分自身も昨日から背中に痛みを感じていたので、必要な状況となった時にマニュファクチャラーポイントを獲得できるように、ステージを走りきることだけに集中しました。エルフィンは素晴らしい仕事をしましたし、彼の優勝を祝福したいと思います。私にとっては、多くを期待していただけに難しい週末になりましたが、次のスペインを楽しみにしています。

次戦のWRCは10月14日~17日、「ラリー・スペイン」

次戦は1週間のインターバルという短いスパンで行われる「ラリー・スペイン」。2年ぶりの開催となるラリースペインは、スペインのバルセロナの南側に位置するサロウを中心に開催され、近年のグラベルとターマック(舗装路)の両路面を走行する「ミックス・サーフェス・ラリー」ではなく、今年は完全なターマックラリーとなりとして開催される。全体的に流れるようなコーナーが多く、路面もスムーズではあるが、新たなステージも加わることで、これまでのラリースペインとは一味違った大会となりそうだ。

[ガズー編集部]