ブリヂストンのワイヤレス充電タイヤを見て、改めて電気自動車社会には電力が大量に必要だと感じる…ジャパンモビリティショー2023

10月28日(土)にJAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー)が一般公開されました。2019年の東京モーターショーと、4年ぶりに名称を改めて行われたジャパンモビリティショーとの違いは何かと問われたら、国内自動車メーカーの殆どがバッテリーEV (以下BEV)を展示していたことでしょう。しかも多くのブースでBEVを運転している楽しい未来の姿が想像できる映像も流れていましたので、近い未来にはBEVが街中に溢れるのかもしれないと思えます。

でも忘れてはいけません。BEVには航続可能距離、充電ポイント、トータルでのカーボンニュートラルという課題があります。しかし、今回の展示を見ていると近い将来に航続可能距離が1,000kmを超えるクルマの発売も予定されていますので、航続可能距離は早々に課題ではなくなるでしょう。
では、充電ポイントはどうなのでしょうか。現在日本のBEV向け充電スタンドは約2万拠点。その内、普通充電スタンドが1.4万拠点、急速充電スタンドが8千拠点で、いわゆるガソリンスタンドに比べて圧倒的に少ないのです。そのため経済産業省は、2030年までに充電器を30万口(内:急速充電3万口)、出力の平均を40kwから80kwに引き上げる計画を進めています。これについても近いうちに課題ではなくなるのかもしれません。

そして充電を楽にしてくれるシステムが、走っている最中にクルマが自動で充電してくれるワイヤレス給電システムです。仕組みは、路面に埋め込まれた送電コイルからクルマの受電コイルに非接触で電力を送るというものです。2タイプあり、クルマの下に受電コイルを置くタイプと、タイヤ内に設定するタイプがあります。クルマの下に受電コイルを置くタイプは多くの国で研究が進められており、トヨタもイスラエルとの共同会社で研究を行っています。一方、タイヤ内コイルを設定するタイプは珍しく、東京大学大学院新領域創成科学研究科が、デンソー、日本精工、ブリヂストン、ロームと共に研究開発を行っています。

今回ブリヂストンブースにそのタイヤ内コイルで充電するタイヤがひっそりと展示されていました。このタイプは送電コイルと受電コイルの距離が車の下にコイルを置くタイプより近いため、効率的かつ大きな電力を受けることが可能です。そのため、タイヤ一本あたり25kwの充電能力があります。定まったルートを走るバス、トラック、工場内のAVG(無人搬送車)などが対象となりそうです。気になる点は、スチールワイヤーが使われているタイヤは使用できないので、航空機やレース用タイヤのようなスチールレスタイヤが必要となります。ですが、ブリヂストンが専用タイヤを作ってくれることでしょう。

このように充電ポイントやワイヤレス給電システムが増えることにより、全世界の充電総出力は2030年までに2021年の約9倍(IEA Global EV Outlook)になります。これだけ多くの電力をカーボンニュートラルで調達することは難しいかもしれません。そうなるとガソリン車の排ガス規制と同じように、電費の良いクルマ、バッテリーのリユース、カーボンニュートラルなクルマ作りなどについて規制がつくられることになるかもしれませんね。

(GAZOO編集部 岡本)