トヨタ 二酸化炭素を吸いながら走るクルマをスーパー耐久の次戦以降に投入!?…ジャパンモビリティショー2023

11月4日、ジャパンモビリティショー2023のモータースポーツブースで、スーパー耐久のクラス Q(ST-Q)に参加しているメーカーのドライバーやプロジェクト関係者が、サスティナブルなモータースポーツの取り組みについてのトークショーを行った。観客席にいた自工会会長の豊田章男氏は、自工会会長そしてモリゾウ両面の顔としてゲスト参加した。

スーパー耐久は、スーパーフォーミュラやSUPER GTのようにレース競技用車でプロレーサーが順位を争う競技でなく、市販車をベースとしたクルマを使いプロとアマチュアが順位を競う「偉大なる草レース」と呼ばれる競技だ。また世界三大24時間レース(ル・マン、スパ、デイトナ)に次ぐ24時間レースとも言われている。2021年から他のクラスに該当しないスーパー耐久機構が認めた開発車両の参戦も可能となった。2023年はST-Qクラスにスバル、日産、ホンダ、マツダ、トヨタがエントリーし、カーボンニュートラルに向けた開発や様々なパーツ開発を行いつつ、ガチンコのバトルを行っている。

トークショーは、ROOKIE Racing(ルーキーレーシング)の佐々木雅弘選手、ホンダの広報部に所属するチーム代表及びドライバーの木立純一選手、マツダの寺川和紘選手、日産(ニスモ)の岡留康文氏、スバルの佐々木孝太選手、そしてピストン西沢氏の司会で行われ、観客席は子供から年配の方、男女問わず多くの方で満席となった。

トークショーでは、各メーカーがST-Qに参戦している目的と苦労話をした。
ROOKIE Racingの佐々木雅弘選手は目的を、エンジンの燃料を水素に変えることにより、地球に優しいクルマを開発すること、そしてEVになり部品点数が減ったときの雇用を守るためだと説明した。そして、「今後はマイナスエミッションとして二酸化炭素を吸いながら走るクルマをつくろうとしている。来週の富士スピードウェイから走るのかな?すでにテストは開始しています。地球を綺麗にするクルマです。」と驚きの発表をした。苦労は、-253℃で比重の軽い液体水素を、様々なGがかかるレースカーのタンクの中で維持することだと述べた。

ホンダの木立純一選手は、カーボンニュートラル燃料(CNF)を利用して持続可能なモータースポーツの可能性を探っていくと同時にモータースポーツの普及をしていくこととだと語った。しかも最近レースに参戦するホンダの車両が減ってきているので、そのような車両を提供していきたいし、EVになってもホンダの血筋は守っていきたいと語った。

スバルの佐々木孝太選手は目的を、社員育成としてクルマの面白さを若手スタッフに知ってもらうことと述べ、市販車の開発をしている若手達が、普段の開発ではできないようなもっと先進性のあることを試したりしていると述べた。またサスティナブルの取り組みとして、航空機の余ったカーボンを利用してボンネットなどに再利用する取り組みを行っているとのことだ。スバルの代名詞であるアイサイトをレースカーに採用しており、レース内での赤旗、ピットでのストップ時に利用してきたいと語った。

日産ニスモの岡留康文氏は目的を、サスティナブルな燃料をモータースポーツにどのように使っていくのか検討することと、フェアレディZの商品開発やアフタパーツへのフィードバックと述べた。お客様にZに乗って楽しい走りを味わってもらうことを狙いつつ、将来CNFが市販化されたときに問題なく対応できるようにレースに参加して研究しているとのことだ。

マツダの寺川和紘選手は、参戦の目的をCNFという燃料の選択肢を増やしていくことと、マツダの宝であるロードスターを将来に向けより良いものにしていくためと述べた。駆動系については特に苦労しているらしく、市販向け車両は無駄を省いた軽いものが良いのだが、レースで使うと40分で壊れてしまったそうだ。しかも、レースで使うものを開発したこともないため、何故故障したのかを追求することから始めたそうだ。しかしレースでミッションは度々壊れ、今年前半のレースは夜中までミッションの交換作業を行うことも度々あった。

飛び入りしたゲストのモリゾウ氏がST-Qについて説明を行った。
「スーパー耐久にはST-Qクラスは初めからありました。スーパー耐久にはアジアに進出してきいたい、そしてクルマの開発に使って欲しいという想いがありました。そのため、私が参戦するときはその枠組みを活用しようと思い、ルーキーレーシングから2台参戦しました。その後の岡山国際サーキットでマツダさん、そして86としのぎを削っているスバルさんも参加、その後、日産、ホンダさんも参加しました。」
「レースで開発しているため特徴が二つあります。一つは競争しながらアジャイルに開発をする。もう一つは皆が見ている実験室であることです。カーボンニュートラルとか未来のクルマは皆で作っていくものだと思うのです。サーキットにいるメカニック、エンジニア、またサーキットに来られないエンジニアが競争しながら一緒に未来づくりしようよ、というのがST-Qクラスだと思います。」
未来のクルマづくりについて、
「私が32号車に乗った唯一の貢献は、水素=爆発というイメージを私が乗ることにより、水素=未来になったことです。私のようなアマチュアとプロが同じクルマを共有することが大変難しかった。そうなると評価にもクルマ作りにもならない。そのため私の技能を磨いてくれたり、クルマを強くしたり、お客様が見ている、そんななかで鍛えられた気がします。」

最後に豊田章男自工会会長が締めの挨拶を行った。
「今年からジャパンモビリティショーという名前に変えて、500社を超える様々な会社が参加してくれたモビリティショーにお越しいただきありがとうございました。そしてブリヂストン、ピストン西沢さんなどのおかげで、クルマ好き、そして運転大好き、こんな人がモータースポーツを盛り上げ、そしてクルマの開発に関わり始めています。大好きなことをやれば、必ずすばらしい商品は出てきます。こんな現場でこんなに頑張っている人いるよということをジャパンモビリティショーで体感いただけると思います。その一部がここで感じられたのはないでしょうか。開催は今日、明日になりましたが、ぜひ皆様にも未来づくりにご参加いただきたいと思います。」

2023年のスーパー耐久は、11月11-12日に富士スピードウェイで行われる4時間レースが最終戦になる。各クラスで年間チャンピョンを競う戦いが行われるが、ST-Qはレースで順位は決めている(賞典外)ものの、年間チャンピオンを決めることのないクラスとなる。なおST-Zクラスは埼玉トヨペット Green Braveがすでに年間チャンピオンを決めている。

GAZOO.comでは2023年に各チームに協力していただきピットツアーを行ってきたが、最終戦はST-Qクラスの各チームと協力して盛大に行う予定だ。参加申し込みは11月6日迄となるので、興味ある人は今すぐ申し込んで欲しい。

GAZOO.comピットツアー申込のURL
https://community.gazoo.com/article/post/news/4091/

スーパー耐久のST-Qクラスを理解するにはとても有意義な1時間のトークショーでした。スーパー耐久はGT3公認車両などとヤリス、フィットなどが混走、その上ST-Qのような未来のクルマも走るレースのため面白さはSUPER GTに負けないと思います。少しディープな世界かもしれませんが、YouTubeでライブ配信も行われていますので、ぜひご体験ください。

  • ジャパンモビリティショー スーパー耐久トークショー ピストン西沢氏、トヨタ佐々木雅弘選手、日産岡留康文氏、マツダの寺川和紘

    左から:ピストン西沢氏、トヨタの佐々木雅弘選手、ホンダの木立純一選手、マツダの寺川和紘氏

  • ジャパンモビリティショー

    左から:マツダの寺川和紘氏、日産(ニスモ)の岡留康文氏、スバルの佐々木孝太選手

  • ジャパンモビリティショー

    登壇した豊田章男自工会会長とピストン西沢氏

  • ジャパンモビリティショー
  • ジャパンモビリティショー

    観客席にいた豊田章男自工会会長

  • ジャパンモビリティショー

    選手などのサイン

  • ジャパンモビリティショーに展示されているルーキーレーシングの32号車ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptとマツダの55号車MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept

    ルーキーレーシングの32号車ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptとマツダの55号車MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept

  • ジャパンモビリティショーに展示されている

    SUPPER GT参戦車両

  • ジャパンモビリティショーに展示されているWRC参戦のトヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID

    WRC参戦のトヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID

  • ジャパンモビリティショーに展示されているWEC参戦のトヨタ GR010 HYBRID

    WEC参戦のトヨタ GR010 HYBRID

  • ジャパンモビリティショーに展示されているNissan Formula E Gen 2 Car

    Nissan Formula E Gen 2 Car

(GAZOO編集部 岡本)

MORIZO on the Road