日本国内だけでなく、世界的にも高い人気を誇る日本の旧車カスタマイズ…東京オートサロン2024

東京オートサロンは、最先端のカスタマイズが発信される場であるとともに、巷の流行が反映される場所でもある。昨今、クルマ好きたちの間で人気が高いジャンルのひとつが旧車であり、オートサロンで最先端を発信し続けてきたチューナーも「昔を懐かしんで1台仕上げたので展示してみました」と旧車を展示する例も少なくない。
東京オートサロン2024で、そんな意外性を含んだ出展車両として注目を集めたのが、これまで数々のデモカーで東京国際カスタムカーコンテストのグランプリを受賞してきたVeilSide(ヴェイルサイド)のセドリック。いわゆるボロボロの状態だったベース車を見つけ、この状態にまでレストモッドしたそうだ。
ベースとなるのは3代目セドリック(230型)の2ドアハードトップ。代表の横幕さんにこの車両を選んだ理由を伺うと「子供の頃に父親が同型のセドリックに乗っていたから」だという。

黎明期のヴェイルサイドでは、ハコスカやサンマルZに搭載されたL型エンジンのチューニングを多数手掛けていたそうで、そんな昔を懐かしみながら“当時の技術ではできなかったけれど今だからできるチューニングエンジン”に組み上げたそうだ。
その仕様を掻い摘んでお伝えしようとすると『L28改3.2ℓ』と、当時の説明と変わらなくなってしまうが、その内容は、アルミ削り出し加工のシリンダーヘッドやワンオフのマニホールド、リンク製のフルコンピューター制御(ECU)による6連スロットル化やダイレクトイグニッション化など、現在考え得るL型チューニングの最先端を詰め込んだ仕様に仕上げられている。

  • 現行GT-Rの純正色であるジェイドグリーンに塗装されたボディに組み合わせるホイールは、旧車のド定番となるRSワタナベ。サスペンションやブレーキはオリジナルパーツで現代風に強化している。またフェンダーはノーマル風を装うが、ボディラインを保ちつつ、微妙にワイドな形状でワンオフしている。

  • インテリアも、基本的に元の状態を再生。ステアリングは日産旧車の定番であるダットサンコンペに変更。その奥のメーターパネルはリンク製の多機能デジタルメーターやCARTEKのワイヤレスコントロールシステムを組み合わせて大変更されている。

5ナンバーサイズの2000GTを新規製作!

今から8年前に『ROCKY3000GT』を世に送り出したロッキーオート。トヨタがヤマハ発動機と協力して1967年にデビューさせた名車、トヨタ2000GTのイメージをそのままに作り上げたロッキーオートオリジナルの車両で、50台限定で発売された。
50台を納車し終えた後も、欲しいという声が続いたが「50台限定」というROCKY3000GTオーナーとの約束を死守して増産は行わなかったそうだ。
しかし、ROCKY3000GTが欲しいという人たちの声も無視することはできない。それなら今度は、よりトヨタ2000GTに近づけた別のクルマ、つまりROCKY2000GTを新たに作り、購入希望者の声に応えようとなったという。
ROCKY3000GTは3ナンバーサイズのボディサイズであり、搭載エンジンも3ℓ直6となっていたが、東京オートサロン2024に出展されたROCKY2000GTは、トヨタ2000GT同様の5ナンバーサイズのボディに2ℓ直6エンジンを搭載している。
さらにROCKY2000GTにはオープンボディを追加。トヨタ2000GTの市販モデルには設定されなかったが、映画『007は二度死ぬ』用に作られたトヨタ2000GTをベースとしたボンドカーはオープンボディを採用。ROCKY2000GTは、そんなボンドカーをも繊細に再現しているのである。
佇まいはトヨタ2000GTそのものながら、乗り味や快適性は現代の車両同様というROCKY2000GTは、今春公道デビューを果たす予定だ。

  • エクステリアだけでなく、インテリアもトヨタ2000GTのイメージに仕上げられている。注目はインパネに組み込まれるウッド素材。トヨタ2000GT同様にウォールナットを採用しているそうだ。しかもこれは今後市販されるROCKY2000GTの標準装備となるそうだ。

  • オープンボディにはボンドカーがそうであったように、ワイヤースポークのホールを組み合わせる。しかも既存のモノではなく、ロッキーオートオリジナルで製作したホイールとなる。サイズは16インチ×7.0Jで、205/50-16サイズのタイヤを組み合わせる。

  • テール中央に2本出しとなるマフラーもトヨタ2000GT同様のキャプトンタイプ。テールランプやバンパーは、ROCKY3000GT製作時にトヨタ2000GTの純正品同様の形状で製作されたものなので、ROCKY2000GTにも継続使用されている。

  • オープンボディだけでなく、本来のクーペボディとなるROCKY2000GTも展示された。この神々しいボディラインは、トヨタ博物館に何度も足を運び実車を観察すると共に、トヨタワークスドライバーとしてトヨタ2000GTのステアリングを握った細谷四方洋氏の監修があればこそ出来上がったものだそう。

アメリカからやってきた240Z

ご存じの通り、日本の旧車人気は国内だけのものではない。1960年代から多くの日本車が輸出されたアメリカ、特にロサンゼルスでも熱狂的なマニアが居る。TAS2024の出展車両の1台である1972年式のDATSUN 240Z(初代フェアレディZの北米輸出モデル)も、そんな熱狂的なオーナーであるRIKOさんによってカスタマイズされた1台となる。
カスタマイズのコンセプトは、1970年代にIMSA(アメリカで開催されるレースシリーズ)に参戦していたZのレース仕様を、RIKOさん流にアレンジしたものだという。
とにかく日本やその文化が大好きなRIKOさんだけに、組み込まれるカスタマイズパーツも可能な限り日本製を選び組み上げているのが特徴となる。
ちなみに、このZは2021年のSEMAショーにも出展していて『バトル・オブ・ザ・ビルダーズ』というコンテストのインポートクラスでトップ10に選ばれた車両でもある。

  • エンジンはL28ET、つまり2代目Zの北米輸出仕様に設定された280ZXターボ用のブロックをベースに排気量を3.1ℓに拡大。燃料共有はキャブレター仕様とするが、そのキャブは、北米でほぼ流通していないミクニ製ソレックスを装着する。日本製にこだわるRIKOさんにしてみれば、Zに組み込むキャブレターであれば、ミクニソレックスがマストなのだという。

  • 1970年代のIMSAのレーシングカーをイメージしたというだけに、前後フェンダーには巨大なオーバーフェンダーが装着される。また日本が大好きなRIKOさんだけに、ホイールはワーク、タイヤはトーヨー、サスキットはテインと日本ブランドのパーツを組み合わせている。

  • インテリアもレーシングカーそのもの。ワンオフ製作されたインパネや、張り巡らされたロールバー、レーシングパーツそのものとなるTILTON製ペダルなどを組み込み、さらにRIKOさん流のアレンジを加えたド派手なコクピットを作り上げている。

  • リアゲートを開けると本格的なロールケージの取り回しがよりよくわかる。ちなみにリアゲートに付く3分割タイプのスポイラーの背面に貼られた漢字は、RIKOさんが崇拝する自動車雑誌OPTION総帥の稲田大二郎さんへのリスペクトを表しているもののようだ。

文章・写真:坪内英樹
[GAZOO編集部]