モリゾウがスーパー耐久の理事長に就任! 伝統を守りつつ未来と世界に通ずるレースに向け新組織「STMO」が発足

  • スーパー耐久未来機構(STMO)のモリゾウ(豊田章男)理事長と桑山晴美副理事長と加藤俊行専務理事

    スーパー耐久未来機構(STMO)のモリゾウ(豊田章男)理事長(左)と桑山晴美副理事長(中)と加藤俊行専務理事(右)

2024年4月20日、「ENEOS スーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE」がスポーツランドSUGOで開幕した。その会場では、スーパー耐久の運営体制が変更となり、スーパー耐久未来機構(STMO)の設立とモリゾウさん(トヨタ自動車 豊田章男会長)が理事長に就任することが発表された。

2024年のスーパー耐久はレースフォーマットと予選方式の変更が行われている。開幕戦となるスポーツランドSUGOのレースは昨年に続き2レース制となるが、1レースの時間が4時間レースとなった。そのため、4月20日(土)にグループ2の予選と決勝、4月21日(日)にグループ1の決勝レースが行われる。
また、そのグループ分けも、
グループ2がST-Z、ST-Q(#12、#55、#92)、ST-1、ST-5
グループ1がST-X、ST-Q(#28、#32、#271)、ST-2、ST-3、ST-4
とそれぞれのグループが速度差があるクラスとの混走とすることで、よりスリリングなレース展開を演出している。

予選方式も、これまでのAドライバーとBドライバーの合算タイムから、ノックアウト方式に変更となったり、第2戦富士24時間からはマルチアングル配信が開始するなど見どころも多い。
  • スーパー耐久のこれまでの歴史をまとめた資料

    スーパー耐久のこれまでの歩み

そうした変更に加えて、4月20日(土)にはレースの運営体制も大きく変更となることが発表された。
スーパー耐久は、1991年に創設されたスーパー耐久機構(STO)により、国内参加型モータースポーツの最高峰としての歩みを始めた。リーマンショックの直後には参戦台数が低迷した時期もあったが、そこからは右肩上がりに参戦台数を増やしてきた。
そしてST-XクラスやST-Zクラスなどの世界的にジェントルマンレースで使用されるFIA GT3、FIA GT4車両のクラスができたことで、プロのレーシングドライバーの参戦も増え、見る人にも参戦する人にもより魅力的なレースへと進化することに。

さらに、2021年には賞典外ではあるもののメーカーの開発車両が参戦可能なクラスとしてST-Qクラスが新設され、トヨタ、マツダ、SUBARU、日産、ホンダという自動車メーカーが、モータースポーツを起点としたクルマづくりや仲間づくり、水素や合成燃料などによるカーボンニュートラルに向けた取り組みなど、課題解決に向けた仲間として参戦をしている。

そうした流れを加速させ、新たなテーマとして「チームやファンに未来を見せたい!!」というコンセプトを実現するべく、一般社団法人 スーパー耐久未来機構(STMO)が新設されることとなった。
  • スーパー耐久未来機構(STMO)のロゴ

    スーパー耐久未来機構のSTMOは、「Super Taikyu MIRAI Organization」の略

  • スーパー耐久未来機構(STMO)のモリゾウ(豊田章男)理事長

    スーパー耐久未来機構(STMO)のモリゾウ(豊田章男)理事長

その理事長を務めるのは2018年からドライバー、そしてチームオーナーとしても参戦を続けるモリゾウさんだ。この新たな法人名に込めた想いを次のように語った。
「一緒に自動車産業を盛り上げていく、そしてモータースポーツ業界の明るく楽しい“未来”をつくっていきたい。この“M”には自動車産業にとってこんなにも素晴らしい場をつくってくださった(スーパー耐久の)創始者、充さん(故・桑山充(みつる)氏)へのリスペクトの気持ちも込めさせていただきました」

発表会見の中で“モリゾウ理事長”は、これまでのスーパー耐久を「村祭り」に例え、「手作り、顔なじみ、誰でも参加できる」レースとしてスーパー耐久の良さは残しながらも、アジアを代表するレースとして他のアジア地域での開催や、アジアのチームが参加したいと思えるようなレースにしていきたいと語る。その先にはニュルブルクリンク24時間など、ヨーロッパのモータースポーツにつながる道も作っていきたいという。

さらには、ST-Qクラスで取り組むカーボンニュートラルやもっといいクルマづくり、モータースポーツのファンづくりなども、一つのエントラントとしての活動以上に推し進めていくことになるだろう。
  • スーパー耐久未来機構(STMO)の桑山晴美副理事長

    スーパー耐久未来機構(STMO)の桑山晴美副理事長

これまでスーパー耐久機構の事務局長を務めてきた桑山晴美氏は、このSTMOでは副理事長として引き続き現場対応を取り仕切っていく。
その桑山氏は数年前より「レースを守っていくために、未来のために、個人の会社が運営をしていていいのかと悩んでいた」という。そうした中、思い浮かんだのはお金や名誉のためではなく未来のモータースポーツ、クルマ業界のために尽力するモリゾウ理事長だったという。

桑山副理事長は、これまでのスーパー耐久を守りながらも、「新たなタスクがたくさんあるので肩の荷が降りた気はしない」というように、かねてから取り組んできたスーパー耐久をより楽しめるレースにするための活動やアジアでのレース開催に向けて尽力していくこととなりそうだ。
  • スーパー耐久未来機構(STMO)の加藤俊行専務理事

    スーパー耐久未来機構(STMO)の加藤俊行専務理事

また、新たにSTMO専務理事として参画する加藤俊行氏は、カーボンニュートラルや開催地域の振興など、スーパー耐久の渉外的な役割を果たしていくという。

この会見には、SUPER GTを運営するGTアソシエーションの坂東正明代表も訪れ、「STMOは今後SUPER GTと仲良くしていただけますか?」と質問し笑いを誘う場面も。
それに対し、モリゾウ理事長は「“スーパー”と名の付いた3つのレース(SUPER GT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久)は日本のレース業界を盛り上げるという共通の山(目的)は一緒だと思います」と、今後開催スケジュール面も含め連携をとっていきたいと答えている。
  • SUPER GTを運営するGTアソシエイションの坂東正明代表

    SUPER GTを運営するGTアソシエイションの坂東正明代表

モリゾウ理事長は「こういう体制にしても、未来がすぐに語れるようなものではない。長い目で見てほしい」と語るように、具体的な施策についてはこれからという状況のようだ。

だが、自らチームオーナー、選手としてレースに参戦していることやアジア各地での仲間づくりとモータースポーツイベントの開催、さらにはFIAの評議委員を務めるなど、多方面での実績やつながりを持つことは、今後のスーパー耐久、さらには日本のモータースポーツの発展の大きな力になるに違いない。
  • スーパー耐久未来機構に協賛する企業との記念撮影

(文:GAZOO編集部 山崎、写真:GAZOO編集部)

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