トヨタカローラ姫路が手掛けた公園「カロひめパーク」で挑む新たな社会貢献のカタチ
兵庫県姫路市が進める「ひめじ景観まちづくり」の一環として3年ごと、今年で13回目を迎えた「姫路市都市景観賞」の建造物部門に、「COROHIMEPARK(カロひめパーク)」という公園が選出された。実はこの公園はトヨタ販売店のトヨタカローラ姫路が手掛けた公園だ。
2023年11月にオープンしたカロひめパークは、それほど大きな公園ではないがふわふわドームがあったり子供が走り回るには十分で、さらに冷暖房付きのおしゃれなドーム型の建物が点在するなど、見た目にもとてもおしゃれさを感じさせる。
今回取材に訪れた当日は、このカロひめパークで毎月開催される「カロひめフェス」というお祭りが開催されていたが、家族連れはもちろん、友達同士で自転車で遊びに来る地元の小学生、中学生の姿も多かった。
いったいなぜトヨタカローラ姫路という自動車の販売店が公園をつくろうと考えたのだろうか。それは単に顧客の囲い込みにとどまらず、多様な地域活性や社会貢献への想いが込められ、それがさまざまなカタチで実践されているという。
そんな“新たな社会貢献の核”となるカロひめパークの設立の経緯やなぜ毎月のようにイベントを開催しているのか、そしてこの公園を通じて叶えたい地元への想いなどを現地で伺った。
瀧川祥也社長「カロひめパークは新しい社会貢献へのチャレンジ」
1966年に「トヨタパブリカ姫路」として創業したトヨタカローラ姫路は、兵庫県の西寄りのエリアに14店舗(中古車、輸入車含む)を展開している。このカロひめパークは、トヨタカローラ姫路のひめじ店、GR Garage姫路と併設してつくられている。
このひめじ店とカロひめパークの一部の車両展示エリアには、全車種の試乗車が取り揃えられ、カロひめパーク内にはひめじ店以外の店舗のスタッフ向けの商談ルームも用意されるなど、トヨタカローラ姫路の中核店舗の一部としての役割も持ち合わせている。
ただ、カロひめパークはそうした自社の顧客サービスのためだけではなく、地域の街づくりの一環であったり、さらには「兵庫県の西寄りエリアの地域活性を目指す」という壮大な夢を持って生まれている。
まずはトヨタカローラ姫路の瀧川祥也代表取締役社長に設立の経緯を伺った。
「これまで地域貢献というと、CSR活動として地域の団体やイベントに寄付や協賛をすること、最近ではSDGsのようなものが多いと思います。ただ、我々が改めて地域貢献について考えた時、地域の方も我々も楽しめるような貢献や活動ができないかという発想が生まれました。
また最近のディーラーの店舗展開では、豪華でレクサスのような店舗が最終形のようなイメージがあると思います。でも建物だけでは、あまりクルマに興味がない方であったり、他メーカーのクルマにお乗りの方などを集めることができるわけではありません。そこで、我々はカローラ店ですし30代~40代のファミリー層のお客様が多いので、敷居が低くて気軽に入れる施設をつくりたいと考えました。
実際にお客様に聞いてみると、『子供が走り回れる公園のようなもの』があるとうれしいという話があり、そのことも含めていろいろなことをみんなと一緒に考えてこのカロひめパークという、一つの新しい地域貢献のカタチにチャレンジしてみることにしました。またこの公園を活用していくためにはデザインで魅了するということもとても大切な要素だと考えて力を入れています」
壷阪泰樹副本部長「カロひめパークを中心に地域を盛り上げたい」
では実際にはどのような社会貢献を行っていこうと考えているのか。説明していただいたのは壷阪泰樹取締役営業副本部長だ。
「地域のボランティアや交通安全の啓蒙などの社会貢献活動はこれからも引き続き行っていきます。それにプラスして私たちが行いたい社会貢献は、『住みやすい街をつくる』ことです。住みやすい街には人が集まってきますし、そうすると雇用が生まれ地域が活性化されていきます。
そしてこのカロひめパークを中心にイベントなどで地域を盛り上げていきたいと考えていますが、このカロひめパークの周辺のエリアだけではなくトヨタカローラ姫路の商圏となる兵庫県の西寄りのエリア全体を盛り上げていきたいという地域貢献のカタチをコンセプトに掲げています」
壷阪副本部長によると「住みやすい街づくり」「雇用創出」「地域活性化」の3つがこのカロひめパークを活用した社会貢献活動のキーワードとなるようだ。
冒頭でも紹介したように、このカロひめパークは都市景観賞に選ばれるほどのデザイン的な魅力はもちろん、おしゃれなドーム型展示場の中は冷暖房完備で手を洗う設備もあり、遊んでいる子供たちを親も快適に見守ることができる。もちろんお手洗いの設備もとてもきれいで利用しやすい。
実は、地域の幼稚園や保育園の遠足に使われることもあるといい、募集した初月から7園200人以上の園児が訪れるなど、楽しむだけではなく活用される公園ともなっている。
また併設されているひめじ店の店内の施設も地元の住民に開放されており、2階の無料の作業スペースには地元の中学生などが勉強しにきたり、テーブルの置かれているスペースでは奥様方が集まりゆっくりとお話している姿もよく見るという。
さらに幼児向けのプレイルームも広く、店内には大型のネットの遊具などもあり、商談や車検の待ち時間などではなく、「普通に集まれる場所」として利用されているという。
しかもドリンクサーバーも無料で利用できるというから驚きだ。
壷阪副本部長は「ここで勉強している中学生のみなさんは図書館などより集中できると言ってくれますし、気分転換に隣のカロひめパークで少し遊んでまた戻ってきて勉強したりしていますよ」と話してくれた。
自動車販売店には用事がないと行きにくいという方が多いかもしれないが、こうした生活に密着した販売店の店舗はとても珍しい取り組みだろう。
「雇用創出」イベント開催やキッチンカーの製作などで地元に貢献
このカロひめパークでは、月に1回「カロひめフェス」というイベントを開催している。その際には、ドーム展示場で地元の飲食店のグルメを楽しめるようにしている。
また地元の業者や店舗によるキッチンカーが出展しやすいようにあらかじめ設計されており、7か所の出展スペースと電源設備が整備されている。
発電機による騒音などがないため、公園内で主に聞こえる音は子供たちの楽しそうな笑い声という、とても落ち着いた雰囲気でイベントを楽しめる。
また、地元出身の双子兄弟が学生時代に起業した「アイスは別腹」グループとコラボレーションし、キッチンカーを2台製作している。「ジェラート号」と「クレープ号」と名付けられたキッチンカーは、カロひめフェスはもちろん各種イベントに出展し、地元発の本格的なデザートが人気となっている。
なお、このキッチンカーは災害が起きた際には、温かい食べ物を提供できるように各地に派遣できるような体制を整えているという。
こうしたイベントを月に1回以上開催することにより、地元での経済活動や雇用の輪が広がってきているという。
「地域活性化」トヨタカローラ姫路の商圏の自治体の魅力もアピール
トヨタカローラ姫路が商圏とする兵庫県の西寄りのエリアは、実は兵庫県内の13の「消滅可能性都市」のうち10都市があるという。そこで毎月開催するカロひめフェスでそういった都市の特産品フェアなども実施し、自治体のPRにも貢献しているという。
また地元の企業とコラボレーションした企画なども実施している。スポーツ用品で有名なミズノのグループには、スポーツ用品のものづくりに特化したミズノテクニクスという企業があり、その4つの工場の中の一つでトヨタカローラ姫路の商圏内にある波賀工場は野球のグラブやミットの製造を行っている。
このミズノ用品を取り扱う近隣企業「ベースボールプロショップWIN」とコラボレーションしたマイグラブ作りイベントには、参加費17,600円ながら16組の募集枠はすぐに締め切りとなる程人気だったそうだ。
店舗の顧客サービスにも活用
もちろんカロひめパークは自社の店舗の顧客サービスにも活用されている。カロひめパークを貸し切りにできるプランと、カロひめフェスで優待するプランと2種類用意されている。
貸し切りプランでは、カロひめパーク内の周回道路を使った電動カートの走行体験なども可能だという。これも構想段階から織り込まれており、先に電動カートを購入し、その電動カートが安全に走行できるように道幅や縁石の高さなどが計算されている。
こうした各店舗の顧客サービスの際には、店舗を閉めてスタッフ全員がそのイベントで顧客とのコミュニケーションをとりやすいようにしているという。
特にサービスのスタッフについては、通常の作業があるとお客様とゆっくり話す機会は少ないだろうが、こうした取り組みを会社として推奨していることで、サービススタッフのコミュニケーション力の向上やより顧客と店舗との関係が深くなるように活用されているのだ。
SNSを意識したカロひめパークの広報活動
このカロひめパークを運用するにあたり重要視していることの一つは「SNSでの拡散」だという。パーク全体のデザイン性はもちろんだが、ドッグランのスペースには地元のペットカフェ店とコラボレーションして、インスタ映えスポットを設けるなど、利用者によるSNSでの拡散をしてもらえるような仕掛けも取り入れている。
また、トヨタカローラ姫路としてもVtuberの「かろひ」を社員(設定は女子高生ではあるが)として採用、YouTubeの動画やSNSで活躍の場を広げている。
カロひめフェスは11回の開催で2万人の来場者を記録
毎月開催されているカロひめフェスの様子もお届けしよう。このカロひめフェスは入場無料で、アトラクションや飲食の購入などには、「かろひコイン」というコインをあらかじめ購入して参加することとなる。コインは次回の利用も可能とのこと。
このかろひコインが使えるのは、毎回行われる中央の地中展示場で行われるわくわく縁日とポップコーンやドリンクのブースだ。
それ以外にもキッチンカーの出展や地元のグルメが味わえるブース、ドームでは毎回趣向の異なるコンテンツも行われている。
こうしたイベントは全てトヨタカローラ姫路の社員が運営しているが、どのスタッフも笑顔がとても素敵なのが印象的だ。それは瀧川社長も同様で、スタッフと気軽に談笑したり、イベントや来場者の様子を微笑んでみている姿が印象的であり、それがこのイベントの全体的な優しい雰囲気を醸し出しているのかもしれない。
少しはトヨタカローラ姫路が目指す、新たな社会貢献へのチャレンジの様子が伝わっただろうか。なかなか文字にして伝えるのは難しいところはあるが、地域の方にはこのカロひめパークが浸透していることが感じられるエピソードがある。
それは、最初に紹介した姫路市都市景観賞へのエントリーはトヨタカローラ姫路が自ら行ったのではなく、他薦だったそうだ。
誰が応募してくれたのかは分からないとのことだったが、デザインはもちろんカロひめパークのさまざまな取り組みが地元の方たちの間に伝わっているからこそ、今回の都市景観賞の受賞につながったのだろう。
ただ、まだカロひめパークが誕生してから1年。社会貢献の理想の姿が見られるのはまだ先にはなるだろう。
だが、経営陣が自ら活用方法についてコミュニケーションを重ね、イベント運営や通常時の運営には6名の専任の社員が置かれるなど、取材を通じてその本気度が伝わってきた。
近隣の方はもちろん、姫路市にドライブに行かれた際には、ぜひともカロひめパークに足を運んでいただくとともに、この素敵な雰囲気とスタッフの笑顔を体感いただきたい。
(文、写真:GAZOO編集部 山崎)
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