「クルマファンを増やす」ため茨城のトヨタディーラーが結集! その核となる「茨城ワクドキクラブ」が目指す先

  • 茨城ワクドキクラブ主催の防災ファミリーフェスの運営に参加した、茨城県のトヨタ販売店のスタッフ

    茨城ワクドキクラブ主催の防災ファミリーフェスの運営に参加した、茨城県のトヨタ販売店のスタッフ


2024年9月28日~29日にかけて、茨城県水戸市にあるアダストリアみとアリーナで「防災ファミリーフェス」という、家族で楽しめて防災についてもいろいろと体験しながら学ぶことができるイベントが開催された。

防災に関するイベントというと、みなさんはどのような主催者を想像するだろうか。自治体や防災の関連団体、防災対策のアイテムを製造、販売しているような企業などを思い浮かべるかもしれない。
実はこの「防災ファミリーフェス」は、茨城県下のトヨタ販売店7社とトヨタモビリティパーツ茨城支社が運営する「一般社団法人茨城ワクドキクラブ」という団体が主催している。

なぜ、自動車の販売店が防災に関する大規模なイベントを開催しているのか、そして「茨城ワクドキクラブ」とはどのような活動を行っているのか、現地でお話を伺うことにした。

「一般社団法人茨城ワクドキクラブ」が発足した経緯

  • 茨城ワクドキクラブには茨城県下のトヨタ販売店が加盟

「一般社団法人茨城ワクドキクラブ」は、先述したように茨城県内のトヨタ販売店、茨城トヨタ自動車、茨城トヨペット、トヨタカローラ新茨城、トヨタカローラ南茨城、ネッツトヨタ茨城、ネッツトヨタ水戸、ネッツトヨタつくばの7社、そしてトヨタモビリティパーツ茨城支社を加えた8社による、全185店舗(2024年9月現在)、3,500人以上の従業員を母集団とする団体だ。

「クルマを通じて、人々に幸せになってもらう」という社会的使命の下、
1.レース活動
2.従業員向けイベント
3.お客様向けフェス
4.地域貢献イベント
という4つの柱を軸に、さまざまな活動を行っている。

そんな茨城ワクドキクラブの設立や活動について、トヨタモビリティパーツ茨城支社内にある専任事務局で茨城ワクドキクラブの運営を行うリーダーの長谷部孝之さんと斎藤仁美さんにお話を伺った。

  • 茨城ワクドキクラブ事務局リーダー 長谷部孝之さん
  • 茨城ワクドキクラブ事務局 斎藤仁美さん

トヨタモビリティパーツ茨城支社内にある茨城ワクドキクラブの専任事務局の長谷部孝之さん(左)と斎藤仁美さん(右)

この茨城ワクドキクラブの発足のきっかけは、2014年に茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園で開催され、2日間で1万人以上の来場者で賑わった「ドライビングキッズフェス in 茨城」というイベントだという。

「販売店の代表の方たちの間でこのドライビングキッズフェスのようなクルマの楽しさを伝えることができる活動はとても大事という想いがありました。ただ、単発ではダメで継続的に実施していくためには専門の組織が必要だという話になり、県内の販売店の代表者のみなさんにより密に話し合いが行われました。そうして『茨城ワクドキクラブ』が2015年1月に発足することになりました」と長谷部さんが発足の経緯を教えてくれた。

2015年当時はまだチャネル制で扱う車種が各社によって異なっていたものの、ライバルでもある販売店同士がこうして協力体制を築くことができた要因の一つは、以前から茨城県トヨタの会幡谷浩史会長を中心に、各社の代表が定期的に会合を開き活発にコミュニケーションが取られてきたことが大きいという。

茨城ワクドキクラブの活動と目的

  • 茨城ワクドキクラブが実施した販売店社員向けの次世代自動車乗り比べ体験会
  • 茨城ワクドキクラブが実施したファミリー向けのアウトドアフェス

販売店社員向けの次世代自動車乗り比べ体験会 ファミリー向けのアウトドアフェス

  • 茨城ワクドキクラブが実施した中高生が対象のeモータースポーツ大会
  • 茨城ワクドキクラブが実施した中学校で出張授業を行う販売店のスタッフ

中高生が対象のeモータースポーツ大会  中学校で出張授業を行う販売店のスタッフ

2015年1月に発足し、その後2016年3月には一般社団法人となり独立した組織として活動を開始した茨城ワクドキクラブは、これまでも多様な活動やイベントなどを行っている。

それはトヨタ車や販売店のファンづくり、お客様の囲い込みということはもちろんあるだろうが、そうしたトヨタという枠を超え「クルマファンづくりの活動のしくみをつくる」ために、対外的なイベントの開催はもちろん、販売店の従業員に向けた人材育成や意識向上に向けた活動などを多数実施してきている。その一部をご紹介しよう。

1.レース活動
モータースポーツの楽しさを広めるため、発足当初は86/BRZ Raceを、現在ではYaris Cupへの参戦をサポートしている。

2.従業員向けイベント
従業員がクルマの楽しさを知り、お客様にお伝えできるよう、新型車の乗り比べ試乗会やレース観戦、カート体験などの企画を実施。またクルマの楽しい活用方法を実体験できるキャンプイベントも行っている。
さらに、過去にメディアにも取り上げられたことがある珍しい取り組みとして、茨城県の婚活支援団体と協力して販売店の社員と県内の女性が参加した婚活パーティーなども企画してきたそうだ。

3.お客様向けフェス
子供向けのクルマを通した遊びの場や家族で楽しめるアウトドア・キャンプイベント、RV車でのオフロード体験など、体験型のイベントを企画している。
そして、大人向け、ファミリー向けの企画ではアプローチできない中高生をターゲットとした企画として、eモータースポーツの大会や、J2リーグの水戸ホーリーホックやB1リーグの茨城ロボッツなど地元のスポーツチームの選手を招いたスポーツチャレンジ大会を行うなど、各年齢層に合わせた企画を実施している。

4.地域貢献イベント
上記の3つの軸に加え2020年からは、地域貢献の活動にも力を入れている。その一つが今回取材に訪れた「防災ファミリーフェス」だ。それ以外にも地域おこしイベント、自治体のイベントへの協力など、地域や行政と連携して地域の盛り上げにも積極的に参加している。
また、販売店社員による「働くこと」をテーマとした中学高校への出張授業や警察と連携した本格的な交通安全教室など、教育における社会貢献活動にも取り組んでいる。

  • 茨城ワクドキクラブ事務局の斎藤仁美さん

    茨城ワクドキクラブ事務局の斎藤仁美さん

こうしたさまざまな取り組みに対して事務局の斎藤さんは「トヨタモビリティパーツという会社に入社してまさか婚活を企画するとは思ってはいませんでしたが、いい勉強の場になっています。また、うまくこれらのイベントを活用して、店舗のみなさんがお客様との接点や絆づくりに活用いただけていることはうれしいですね」と笑顔を見せる。

いろいろなイベントを企画するノウハウや知識を蓄積していくこと、そして自治体やさまざまな団体とつながりを持つことで多様な活動を繰り広げていくためには、やはり専任の事務局があるということは非常に効果的であることが感じられる。

着実に浸透している茨城ワクドキクラブの想いと活動

  • 茨城ワクドキクラブのノボリ

茨城ワクドキクラブが設立してから10年が経過したが、その成果について長谷部さんは「小さい頃にイベントに来てくれたお子さんが、大人になってトヨタ販売店のメカニックになったとか、そういう話はちょっとずつ聞いてはいますが、まだはっきりとした成果は測れないと感じています」と振り返る。

確かに、茨城ワクドキクラブの活動は、クルマのファンづくりや地域貢献、また従業員のモチベーションを上げること、またそのノウハウや知識の蓄積であり、クルマの販売台数など成果を明確な数字で表すことは難しいのかもしれない。

ただお話を聞く中で、着実にその活動は浸透してきていることがうかがえる。

活動で得たノウハウや知識は各店舗にもフィードバックしている。例えば、防災についての店舗イベントでは実施方法を一つのパッケージとして提案することで実施する店舗が増えてきたり、中学校への出張授業に賛同し積極的に展開する販売店など、茨城ワクドキクラブ発信の活動が広がってきている。
また、店舗から「ファン作りの企画をやりたいんだけど」という相談が来るようにもなってきているという。

現状では、すべての販売店の社員が茨城ワクドキクラブの活動を理解しているわけではなく、また販売店や店舗の事情もそれぞれであるため全店舗が足並みを揃えて同じように活動することは難しいのが実情だ。だが、専任事務局が置かれているトヨタモビリティパーツ茨城支社の店舗担当の営業スタッフにより情報拡散や要望の聞き取りなどのコミュニケーションができることも、この活動にはメリットが高いだろう。

また、今回取材した「防災ファミリーフェス」の様子を見ても、水戸市の防災対策のブースはかなり力が入っているように感じられ、警察、消防、救急、さらには海上保安庁なども展示や車両の体験を積極的にしてもらう姿が印象的で、地域からの信頼度の高さも感じられた。
(陸上自衛隊も展示を行う予定だったが、災害救助のため今回のイベントには来られなかったそうだ)

そうした自治体や行政のみならず、多くの団体や地元企業などとコミュニケーションが図られ、そうした繋がりこそが販売店の親近感や信頼感として還元されているのではないだろうか。

水素ステーションも手掛ける茨城ワクドキクラブ

  • 茨城ワクドキクラブが手掛けた水素・ステーション水戸

引用:水素・ステーション水戸HP https://waku-doki.jp/suiso/

そして、全国でも珍しい取り組みとしてこの茨城ワクドキクラブは水素ステーションの設置にも大きな役割を果たしている。これまで茨城県には移動式水素ステーションが1機しかなかったため、県内でFCEV車両を販売するために「鶏が先か卵が先か」という議論があったという。
そこで、各社の代表者が自ら水素ステーションの設置に乗り出すことを決め、各販売店が出資、茨城ワクドキクラブが国や県と導入や補助金の申請などに奔走、2024年3月に水素ステーションをオープンさせた。

この水素ステーションは小型の固定式のタイプで、水素を運んでくるのではなくこのステーション内で水を再生可能エネルギー由来の電気で分解し水素を製造している。小型であるため1日に充填できる台数は数台(1日3台/事前予約制/2024年9月現在)と少なくは感じるが、それでもこのステーションが導入されてから、茨城県でFCEV車両(MIRAI、クラウン)が10台以上は販売されているという。

茨城ワクドキクラブの次の10年

  • 茨城ワクドキクラブ事務局の長谷部孝之さん

    茨城ワクドキクラブ事務局の長谷部孝之さん

2015年1月の設立から10年間、これまではさまざまな壁にぶつかりながらも“地道”に、そして“着実”に幅広い活動と知識、ノウハウの蓄積を行ってきた茨城ワクドキクラブ。

次の10年間に向けて長谷部さんは「今後も各社、各店舗に合ったファンづくりや地域貢献活動をサポートしていきたいと思います。そしてこれまでの活動のなかで、地域と繋がりができてきているので、もっと行政だったり企業、そして学校や教育委員会などとみんなでコラボレーションしながら活動をどんどん広げていきたいと思っています。他メーカーの販売店とも一緒に何かできたら面白いかなとは思います。もちろん、トヨタのファンを作るということも大切ですので、それぞれに合った企画を考えていきたいと思います」と語る。

『「夢・楽しさの発見・人の輪づくり」をテーマに感動を探す旅へ』

これは茨城ワクドキクラブのキーワードとして掲げられている想いだが、これまで積み重ねてきた経験と、たくさんの笑顔や感動を原動力に、どのような旅路を歩んでいくのか、またお届けしていきたい。

  • 茨城ワクドキクラブ

(文:GAZOO編集部 山崎 写真:茨城ワクドキクラブ、GAZOO編集部)