EVからコンプリートまで。最新の技術でアップグレードされた『第二世代GT-R』たち・・・東京オートサロン2025

  • R32型スカイラインGT-RをEV化したR32EV

    日産自動車のR32EV


1990年代〜2000年代の東京オートサロンの主役と言えば、第二世代のスカイラインGT-R(BNR32型/BCNR33型/BNR34型)たちであった。そんな第二世代GT-Rも、気が付けば生産終了から20年以上が経過した立派な旧車となり、R35の登場も相まって昨今ではオートサロン会場でもマイナーな存在となっていた。しかし、東京オートサロン2025では、その流れに変化の兆しが。

もちろん、さまざまなカスタムパーツでパワーアップやワイドボディ化、派手に彩られたチューニングカーもいる中で、一見純正然としているものの実は最新の技術で生まれ変わった第二世代GT-Rも大きな注目を集めていた。

ここでは、そんなレストア以上のアップグレードが施された第二世代GT-Rの中から3台をお見せしよう。

THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Z

  • THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Z

    THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Z

日本を代表するチューニングパーツメーカーであるHKSが『THE HKS』という堂々たるネーミングを冠したコンプリートカー販売を展開するという。
コンプリートカーと言うと、これまでは現行車をベースにチューニングやカスタマイズを施した車両というイメージが強かったが、『THE HKS』はベースに旧モデルを使い、車体のレストアを施した後にチューニングまで施した車両を販売するというものだ。

その『THE HKS』のデモカー的な車両として製作されたのが、TAS2025でHKSブースに展示された『THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Z』。
いちどフルストリップ状態にしてから再生したというボディに、3リッターへと排気量を拡大したRB26DETTエンジン、最新のビッグタービンを組み合わせて850psという途方もないパワーを発揮するユニットを搭載している。

この大パワーを活かすために、前後に巨大なエアロパーツを装着しているが、特に注目なのがリヤウイング。なんとモーター駆動の可変式としており、走行状況に合わせて最大の効果が得られるようにウイングの迎角を変更できるという。

  • THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Zのエンジンルーム
  • THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Zのタービン
  • THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Zのエンジンルーム
  • THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Zのタービン

エンジンはRB26DETTがベースで、排気量を3リッター化したHKSのコンプリートエンジン。タービンは大容量の最新モデルGT7095_BBで、最高出力は625kw(849.8ps)というHKSのGT-Rらしい強靭なスペックを誇る。

  • THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Z
  • THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Zのフロントスポイラー
  • THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Z
  • THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Zのフロントスポイラー

リヤにはDRS(Drag Reduction System)という、簡単に言えば、走行状況に合わせてウイングの角度が可変する機能を有するウイングが装備される。ウイングの可変機構は電動モーターで緻密な作動が可能。そんなリヤウイングに合わせ、フロントにも大型のディフューザーを組み合わせている。

  • THE HKS SKYLINE GT-R BNR34 Dimension:Zのサイドデカール

HKSの車両販売事業として新たに展開される『THE HKS』。Dimension X、Dimension Y、Dimension Zの三つの方向性を持たせた車両を展開していくという。このGT-RはDimension Zのフラッグシップモデルとなる。

R32EV

  • R32型スカイラインGT-RをEV化したR32EV

    R32型スカイラインGT-RをEV化した「R32EV」

日産ブースには、1989年式のR32型GT-RをEVにコンバートした車両『R32EV』が展示されていた。単に旧車を電動化したという単純なものではなく、R32GT-Rならではの走りの楽しさを徹底的に解析し、それをデジタル制御できるEVならではの利点を活かし、RB26DETTエンジンを搭載するR32GT-Rかのような走りを再現しているという。

このR32EVは、日産自動車としてではなく、R32GT-Rの走りの楽しさを30年後、100年後に残したいという思いを持った日産の技術者である平工良三氏を中心とした有志の手で作られたものだという。
そのこだわりはパワー特性だけでなく、走行時にドライバーに伝わる振動やサウンドまで再現されていて、あたかも往年のR32GT-Rを操っているかのような感覚に浸れるまで仕上げてあるそうだ。
アナログだったR32GT-Rを、現在の技術でデジタル化。言うなればデジタルリマスター版のような立ち位置がR32EVという形だ。旧車の新たなる可能性を示した1台と言えるであろう。

  • R32EVのエンジンルーム

本来、名機RB26DETTが収まっていたエンジンルームには160kw(217.5ps)を発揮するモーターが収まる。リヤにも同じ駆動モーターがもう1機搭載され、合計の最高出力は本来のRB26DETTを超える320kw(435ps)となっている。

  • R32型スカイラインGT-RをEV化したR32EVのシート
  • R32型スカイラインGT-RをEV化したR32EVのステアリング
  • R32型スカイラインGT-RをEV化したR32EVのシート
  • R32型スカイラインGT-RをEV化したR32EVのステアリング

走行時のサウンドや振動を発生させる機能を有するという専用のバケットシートを装備。また変速もR32GT-Rの楽しさのひとつと捉え、変速機を装備しているかのような操作を行なえる、シフトレバーとパドルレバーも備わる。

  • R32型スカイラインGT-RをEV化したR32EVのバッテリー

R32GT-Rでは後席となっている部分には、リーフNISMO RC02にも使われていたリチウムイオン駆動バッテリーが搭載され、それが専用のカバーで覆われている。

日産サービスセンター 車体リビルドパッケージ

  • 日産サービスセンターがリビルドしたR34型スカイランGT-R

    日産サービスセンターがリビルドしたR34型スカイランGT-R

日産の系列会社である日産サービスセンター。日産車の納車前点検やオプション部品の装着といった業務を行なう会社だが、鈑金塗装修理部門もあり、これまで多くの第二世代GT-Rの鈑金塗装を行なってきたという実績を有する。
そのノウハウを活かし、第二世代GT-Rのリビルド事業も展開しているそうで、その参考例として東京オートサロン2025に出展したのが、このR34型GT-R(BNR34)だ。

エンジンや駆動系、それから内装やハーネス類などをすべてボディから取り外し、ボディの錆びや劣化を診断した後、新車同等の状態にリビルドするという『車体リビルドパッケージ』を税込550万円というワンプライスで展開しているそうだ。
自動車メーカー基準の仕上がりとなるリビルドボディは、四半世紀前の車両を、見た目はもちろん機能的にも、まさに新車のように再生していた。

  • 日産サービスセンターがリビルドしたR34型スカイランGT-R

美しく仕上げられたペイントも、当然車体リビルドバッケージに含まれる内容。日産という自動車メーカー基準で再塗装されたボディは、まさに新車のような輝きを放つ。

  • 日産サービスセンターがリビルドしたR34型スカイランGT-Rのエンジンルーム
  • 日産サービスセンターがリビルドしたR34型スカイランGT-Rのストラットタワーバー
  • 日産サービスセンターがリビルドしたR34型スカイランGT-Rのエンジンルーム
  • 日産サービスセンターがリビルドしたR34型スカイランGT-Rのストラットタワーバー

例えばエンジンルーム内のストラットタワー部のシール処理など、完全なるラインオフ状態に仕上げているワケではなく、時間を経たことで判明した弱点部は、敢えてオリジナルには拘らず、対策を施した処理方法としているのも特徴だという。

(文章・写真: 坪内英樹)

東京オートサロン2025

GAZOO愛車広場 出張取材会 in 福井、京都
参加者募集中! 3/31 10:00まで

MORIZO on the Road