【WEC 第1戦】18/19シーズン開幕戦をトヨタが1-2で制す…優勝は中嶋一貴らの8号車TS050、アロンソがデビューウイン

優勝した#8 トヨタのブエミ、アロンソ、中嶋一貴。
現地5日、世界耐久選手権(WEC)2018/2019シーズンの開幕戦決勝レースがベルギーのスパ・フランコルシャンであり、LMP1クラスのトヨタTS050が1-2フィニッシュを飾った。優勝クルーは中嶋一貴、S.ブエミ、F.アロンソで、アロンソはデビュー戦勝利となっている。

過渡期を迎えたWECの“今季”は「スーパーシーズン」との名称で、2018/2019シーズンとして実施される。今年と来年、2回のルマン24時間レースを含む全8戦のスケジュールで、2019年6月のルマンがシーズン最終戦になる。

今季、最上位クラスのLMP1にハイブリッドカーで臨むのはトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)のみ。一昨年限りでアウディが、そして昨年を最後にポルシェが去り、自動車メーカーとしてWEC LMP1に関与するのはトヨタだけになってしまったかたちだが、だからといって、決して“ひとり勝ち”が約束されているわけではない。

新たなシーズンに向けては、プライベートチームが走らせるLMP1の非ハイブリッドカーも“戦える”ようにする方向で、規則面の調整等が継続的に施されてきている。これまでは台数的にも戦闘力的にもほとんど存在感がなかったLMP1非ハイブリッドカーだが、今季開幕戦決勝には5台が登場、LMP1クラスはトヨタのハイブリッドカー「TS050」2台を含む新たな構図の戦いに入った(さらに数台のLMP1非ハイブリッドカーが決勝に出場するはずだったが、体制面のゴタゴタ等で退いた陣営もあった)。

トヨタによれば、非ハイブリッドカーはトヨタTS050よりも「1周あたり49パーセント多い燃料」「37.5パーセント多い瞬間燃料流量」を使え、車重面でも軽いなどのメリットがあるという。ドライバーに関しても、アンドレ・ロッテラーやニール・ジャニといった超一流どころが加わった陣営(レベリオン・レーシング)もあり、トヨタにとっては非ハイブリッドカーが一定以上の脅威になるかもしれない、と開幕前から予想されていた。実際、開幕戦の予選での周回タイムを見ても、トヨタ勢と非ハイブリッドカー勢上位の差は以前ほど決定的に大きくはない(1周2分近いコースで約2秒差)。

トヨタは予選で無難に1-2を確保したかに思われたが、トップタイムの7号車TS050(小林可夢偉 & M.コンウェイ & J-M.ロペス)が「燃料流量計について、予選前に申告していたものと異なるシリアルナンバーの部品が使用されていたことが予選後の車検で発覚」したためにタイム抹消、1周遅れでの決勝参加というペナルティを受ける思わぬ事態に遭遇。これは性能に影響する違反ではなかったが、チームは「ミス」として認め、「裁定を全面的に受けいれた」。

6時間の決勝レースはドライコンディションのもと、8号車TS050(中嶋一貴 & S.ブエミ & F.アロンソ)が繰り上がりのポールから発進するかたちで始まった(全クラス総計34台出走)。結果から言えば、決勝レースにおいてトヨタの勝利が脅かされるような状況はなく、1周遅れでスタートした7号車もレース中間点の3時間が経過する頃には2番手へと浮上、トヨタは1-2フィニッシュで新季開幕戦をまずは“ほぼ順当に”制した。幾度かあったセーフティカーのタイミング等により、最後は2台が1.444秒の僅差でゴール。優勝は中嶋一貴らの8号車で、小林可夢偉らの7号車が2位。8号車に乗った05&06年F1王者アロンソは“デビューウイン”ということになった。

優勝:#8 トヨタ フェルナンド・アロンソのコメント
「チームとして最高の優勝という結果を残すことができて嬉しい限りだ。冬の間のテストと並行して、トヨタの東富士研究所と(ドイツの)TMGが全力で開発を続けてくれた。その努力に報いるためにも、何としてもレースで結果を残したいと思っていた。自分にとって最初のWECのレースで優勝できたことは、喩えようもなく嬉しいことだ。ともに戦ったセバスチャン(ブエミ)と一貴には本当に感謝したい」

優勝:#8 トヨタ 中嶋一貴のコメント
「シーズン初戦で優勝することができ、本当に嬉しいです。自分の最初のスティントでは様々なアクシデントが起こり、セーフティカーが入ったことでリードを失い、なかなか厳しい状況ではありましたね。前半はミスをしてしまう場面もありましたが、慌てずに自分のリズムを取り戻すことができました。3スティント目はタイヤの摩耗もあって辛い状況でしたが、何とか自分がすべき仕事はできたと思います。今後に向けても、しっかり準備に取り組みたいですね。何はともあれ、素晴らしいシーズンのスタートとなりました」

LMP1クラスの3位はレベリオン・レーシングの#3 レベリオンR13-ギブソン(M.ベシェ & T.ローラン & G.メネゼス)。彼らは4番手でのゴールで、僚機の#1(ロッテラー & ジャニ & ブルーノ・セナ=故アイルトンの甥)が3番手でゴールして表彰台にも上がったのだが、レース後の車検で#1はマシン底部のスキッドブロックの厚みが足りず、失格となった。レース中に想定以上に削れてしまったものと見られる。

レベリオンの2台はトヨタ勢から2周遅れ。今回のレース内容と結果から考える限りにおいて、プライベーターの非ハイブリッドカーは相当に速くなったとはいえ、トヨタにとって一定以上の脅威になったとは思えないところだ。6月の第2戦ルマン24時間に向けては、様々な意味での“動き”が注目されることになるかもしれない。

LMP1以外の各クラスのウイナーは以下の通り。

LMP2:#26 オレカ07-ギブソン(R.ルシノフ & J-E.ベルニュ & A.ピッツィトーラ)
LMGTE-Pro:#66 フォードGT(S.ミュッケ & O.プラ & B.ジョンソン)
LMGTE-Am:#98 アストンマーティン・ヴァンテージ(P.ダラ・ラナ & P.ラミー & M.ラウダ)

メーカーバトル華やかなLMGTE-Proクラスは、フォード、ポルシェ、フェラーリの順でクラス表彰台を分け合う結果となり、新規参入したBMWの「M8 GTE」はクラス5位が最高だった。LMGTE-Amクラスでは澤圭太が乗り組むクリアウォーター・レーシング(#61 フェラーリ)が3位に入って表彰台へ、石川資章が乗るMRレーシング(#70 フェラーリ)は同クラス5位。

ついに始まったWECの新シーズンだが、予選日には日本絡みで残念な出来事もあった。今年のスーパーフォーミュラ(SF)とインディカー、そしてWEC LMP1に並行参戦するピエトロ・フィッティパルディがクラッシュを喫し、両足を骨折してしまったという。彼は当初の予定では、このあとの5月中はインディ500を含むインディカー・シリーズに集中し、SFには7月の第4戦富士から復帰する予定だったが、当面しばらくは療養生活を余儀なくされるものと見られ、SFへの参戦プランにも影響が及ぶ可能性が出てきている。

WECスーパーシーズンの第2戦は6月16~17日決勝の2018年ルマン24時間レース(フランス)。トヨタにとっては悲願の同レース総合初優勝という、目下の最大目標へのチャレンジとなる。

(レスポンス 遠藤俊幸)

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