【レクサス ES 新型】Fスポーツ初採用にミラーレス化、これまでのES像を変える[開発者インタビュー]
レクサスは7代目となる『ES』を10月24日より発売した。ESは1989年にフラッグシップセダンの『LS』とともにレクサス最初のラインナップとして誕生していたが、日本への導入は今回が初となる。そこで開発担当者であるレクサスインターナショナルLIZ製品企画チーフエンジニア・榊原康裕氏に、ESのポイントを聞いた。
◆あえてLSに似せたデザイン
----:デザインについてお伺いします。新しいプラットフォームを得たこともあり、先代から大きく印象が変わりました。このデザインで一番やりたかったことは何だったのでしょうか。
榊原:ぱっと見て走りを予感させることです。“Provocative Elegance”というデザインコンセプトで、挑発させるエレガンスとでもいいましょうか。エモーショナルとエレガンスさを両立させ、ぱっと見て走りを予感させ、またぱっと見て一目惚れするデザインにしたかったのです。先代はどちらかというとエレガンス方向に振っていましたので。
----:これまでのESを一度断ち切ろうかというような勢いのデザインだと。
榊原:そうです。実は最初、これまでの継承案と今回のようなアグレッシブな案とで色々な意見がありました。その時は圧倒的に継承案で、アグレッシブな案は「これはESではない」といわれました。しかし、このまま継承案を進めたらこれまでと変わらず平均年齢はどんどん上がってしまう。そこでもう一度、今度はアグレッシブな案を3つくらい作ってようやくその方向に決まったのです。
----:それはものすごい決断が必要だったと思います。
榊原:そうですね。台数が出ていなければ、前のモデルは駄目だから今度はアグレッシブなモデルで、と誰もが行けると思うのですが、アメリカの女性などにもある程度は受け入れられていましたから、そこを変えるというのは勇気が必要でした。
----:今回デザインを大きく変えようという一番のトリガーはユーザーの年齢だったのでしょうか。それともユーザーの声として少しエレガンスすぎるという声だったのでしょうか。
榊原:それらにプラスして世の中の流れ、そして、レクサスのフューチャーチャプター、第3世代としての味です。よくスケッチを見て「LSと似ている」と意見をもらうのですが、それはある意味で褒め言葉。第3世代のレクサスに相応しく、わざとLSに似せているところもあります。
----:LSでは6ライトを採用していますが、ESでは違いますね。
榊原:6ライトまでは必要ないという判断です。今回のような綺麗なデザインでは4ライトで十分でした。ただしCピラーの三角の部分がとても重要で、なかなかこういうものはありそうでなかったりします。通常ですとドアのフレームに沿って回らせて終わるところで、そうするともう少し印象が変わったかもしれません。しかし、この三角の部分があることで、伸びやかな後ろに流れるイメージが表現されています。
◆初の「F SPORT」は走りに自信がある証
----:今回ESとしては初めてF SPORTがラインアップされましたが、これは走りに自信を持ったからこそなのでしょうか。
榊原:そうです。多分プラットフォームが変わらなかったらラインアップはなかったでしょう。今回の改善点のひとつでもある、乗り心地は良いけれどもう少しスポーティーな走りができれば、という声に応える形で導入を決めました。
----:このF SPORTはグローバル展開ですか。
榊原:はい、アメリカでも中国にもあります。
----:F SPORTの赤黒内装はかなりコントラストがついて、派手なものですね。
榊原:従来のESのイメージが染み付いた方々にとってはびっくりするでしょう。そもそもESにF SPORTというイメージは結び付かないでしょうし、さらに赤のシートというのはかなり冒険ですよね。
----:その辺りは日本ではフラットに見られるでしょうし、先入観もないでしょうね。
榊原:F SPORTでESのイメージが変わっていくといいのですが。
◆「デジタルアウターミラー」の採用はチャレンジだった
----:さて、量産車としては世界初のデジタルアウターミラーが採用されました。これは最初からESに採用することが前提で開発されていたのですか。
榊原:いえ、企画当初は決まっていませんでした。法規でこのミラーが認められているのは、現在は日本や欧州ぐらいで、アメリカではまだ認められていません。国連の法規が決まったのが2016年の夏ぐらい。ESの立ち上がりが2017年の秋と決まっていましたのでチャレンジしようと決めたのが2016年の後半でした。当然先行技術としてはやってはいましたので、このESのデザインに合うようなデザインに変更していったのです。
実は当初はとんでもない形というか(苦笑)、格好悪くてありえないといって何度もやり直しをした結果、今のアウターミラーのデザインに落ち着きました。
----:コンセプトカーなどでは本当にちょっとだけ飛び出してカメラがあるだけというものもありますね。
榊原:ESもカメラは外側についていますが、同時にパノラミックビューモニターのカメラもその仕様に対応させたいので、このカメラが押し出されているという構造的な理由もあります。それから、本当に小さくしてしまうと、これまでのドアミラーで車両感覚をつかんでいる人にとってどうなのだろうなど、そういうお客様のことも考え、普通のミラーよりはかなり小さくはなってはいますが、それでもコンセプトカーなどよりは大きくなっています。
----:雨が降った時とか窓が曇っている時にもはっきり見えるというのはとても魅力的ですね。
榊原:夜も見やすいですよ。
このデジタルアウターミラーの採用はチャレンジでした。今レクサスは他との差別化を図るための4つのディファレンシエーターとして、ブレイブ・デザイン、エグゼラレーティング・パフォーマンス、匠クラフトマンシップと、イマジナティブ・テクノロジーを設定しています。
そのひとつであるイマジナティブ・テクノロジー、先進技術を何とかESに取り入れたかったのです。あまりESで世界初というイメージはないでしょう。例えばLSであれば色々と満載というイメージですよね。なので何かやらないと悔しいという思いでチャレンジしました。開発体制も尋常ではなく、いくつもワーキングチームを作りました。決断するマイルストーンを設けて、僕や部長などが集まって、ようやく完成したのです。
----:一番大変だったことは何ですか。
榊原:色々あるのですが、法規自体がまだ確立されていないので、ひとつひとつ設計者なり法規の関係者が当局と交渉をしてというのは大変だったと思います。
ウインカーを出すと映像が広角になるというのも、これも勝ち取ったものです。実は「広角にしてはいけない」という法律もあるので、ESもデフォルトではできないようにしなければいけませんでした。ですから一回一回お客様がセットしないと変わりません。本来の通常のドアミラーと同じようにというのが法規の思想なのです。しかし、これからは色々な会社が交渉して変わっていくでしょうし、今も毎年少しずつ変わっていると聞いています。
----:安全に関わる部分で、しかも最初に装備されたので、これから実際にどのように使われるかもまだ分からないところがありますね。
榊原:ドキドキしますね。色々な方がいるでしょうし、全然慣れないという人もいるでしょう。そこで今回は実際に試乗してもらって納得して購入してもらうようにしています。気に入らないから元に戻してといってもすぐにはできませんから。
(レスポンス 内田俊一)
◆あえてLSに似せたデザイン
----:デザインについてお伺いします。新しいプラットフォームを得たこともあり、先代から大きく印象が変わりました。このデザインで一番やりたかったことは何だったのでしょうか。
榊原:ぱっと見て走りを予感させることです。“Provocative Elegance”というデザインコンセプトで、挑発させるエレガンスとでもいいましょうか。エモーショナルとエレガンスさを両立させ、ぱっと見て走りを予感させ、またぱっと見て一目惚れするデザインにしたかったのです。先代はどちらかというとエレガンス方向に振っていましたので。
----:これまでのESを一度断ち切ろうかというような勢いのデザインだと。
榊原:そうです。実は最初、これまでの継承案と今回のようなアグレッシブな案とで色々な意見がありました。その時は圧倒的に継承案で、アグレッシブな案は「これはESではない」といわれました。しかし、このまま継承案を進めたらこれまでと変わらず平均年齢はどんどん上がってしまう。そこでもう一度、今度はアグレッシブな案を3つくらい作ってようやくその方向に決まったのです。
----:それはものすごい決断が必要だったと思います。
榊原:そうですね。台数が出ていなければ、前のモデルは駄目だから今度はアグレッシブなモデルで、と誰もが行けると思うのですが、アメリカの女性などにもある程度は受け入れられていましたから、そこを変えるというのは勇気が必要でした。
----:今回デザインを大きく変えようという一番のトリガーはユーザーの年齢だったのでしょうか。それともユーザーの声として少しエレガンスすぎるという声だったのでしょうか。
榊原:それらにプラスして世の中の流れ、そして、レクサスのフューチャーチャプター、第3世代としての味です。よくスケッチを見て「LSと似ている」と意見をもらうのですが、それはある意味で褒め言葉。第3世代のレクサスに相応しく、わざとLSに似せているところもあります。
----:LSでは6ライトを採用していますが、ESでは違いますね。
榊原:6ライトまでは必要ないという判断です。今回のような綺麗なデザインでは4ライトで十分でした。ただしCピラーの三角の部分がとても重要で、なかなかこういうものはありそうでなかったりします。通常ですとドアのフレームに沿って回らせて終わるところで、そうするともう少し印象が変わったかもしれません。しかし、この三角の部分があることで、伸びやかな後ろに流れるイメージが表現されています。
◆初の「F SPORT」は走りに自信がある証
----:今回ESとしては初めてF SPORTがラインアップされましたが、これは走りに自信を持ったからこそなのでしょうか。
榊原:そうです。多分プラットフォームが変わらなかったらラインアップはなかったでしょう。今回の改善点のひとつでもある、乗り心地は良いけれどもう少しスポーティーな走りができれば、という声に応える形で導入を決めました。
----:このF SPORTはグローバル展開ですか。
榊原:はい、アメリカでも中国にもあります。
----:F SPORTの赤黒内装はかなりコントラストがついて、派手なものですね。
榊原:従来のESのイメージが染み付いた方々にとってはびっくりするでしょう。そもそもESにF SPORTというイメージは結び付かないでしょうし、さらに赤のシートというのはかなり冒険ですよね。
----:その辺りは日本ではフラットに見られるでしょうし、先入観もないでしょうね。
榊原:F SPORTでESのイメージが変わっていくといいのですが。
◆「デジタルアウターミラー」の採用はチャレンジだった
----:さて、量産車としては世界初のデジタルアウターミラーが採用されました。これは最初からESに採用することが前提で開発されていたのですか。
榊原:いえ、企画当初は決まっていませんでした。法規でこのミラーが認められているのは、現在は日本や欧州ぐらいで、アメリカではまだ認められていません。国連の法規が決まったのが2016年の夏ぐらい。ESの立ち上がりが2017年の秋と決まっていましたのでチャレンジしようと決めたのが2016年の後半でした。当然先行技術としてはやってはいましたので、このESのデザインに合うようなデザインに変更していったのです。
実は当初はとんでもない形というか(苦笑)、格好悪くてありえないといって何度もやり直しをした結果、今のアウターミラーのデザインに落ち着きました。
----:コンセプトカーなどでは本当にちょっとだけ飛び出してカメラがあるだけというものもありますね。
榊原:ESもカメラは外側についていますが、同時にパノラミックビューモニターのカメラもその仕様に対応させたいので、このカメラが押し出されているという構造的な理由もあります。それから、本当に小さくしてしまうと、これまでのドアミラーで車両感覚をつかんでいる人にとってどうなのだろうなど、そういうお客様のことも考え、普通のミラーよりはかなり小さくはなってはいますが、それでもコンセプトカーなどよりは大きくなっています。
----:雨が降った時とか窓が曇っている時にもはっきり見えるというのはとても魅力的ですね。
榊原:夜も見やすいですよ。
このデジタルアウターミラーの採用はチャレンジでした。今レクサスは他との差別化を図るための4つのディファレンシエーターとして、ブレイブ・デザイン、エグゼラレーティング・パフォーマンス、匠クラフトマンシップと、イマジナティブ・テクノロジーを設定しています。
そのひとつであるイマジナティブ・テクノロジー、先進技術を何とかESに取り入れたかったのです。あまりESで世界初というイメージはないでしょう。例えばLSであれば色々と満載というイメージですよね。なので何かやらないと悔しいという思いでチャレンジしました。開発体制も尋常ではなく、いくつもワーキングチームを作りました。決断するマイルストーンを設けて、僕や部長などが集まって、ようやく完成したのです。
----:一番大変だったことは何ですか。
榊原:色々あるのですが、法規自体がまだ確立されていないので、ひとつひとつ設計者なり法規の関係者が当局と交渉をしてというのは大変だったと思います。
ウインカーを出すと映像が広角になるというのも、これも勝ち取ったものです。実は「広角にしてはいけない」という法律もあるので、ESもデフォルトではできないようにしなければいけませんでした。ですから一回一回お客様がセットしないと変わりません。本来の通常のドアミラーと同じようにというのが法規の思想なのです。しかし、これからは色々な会社が交渉して変わっていくでしょうし、今も毎年少しずつ変わっていると聞いています。
----:安全に関わる部分で、しかも最初に装備されたので、これから実際にどのように使われるかもまだ分からないところがありますね。
榊原:ドキドキしますね。色々な方がいるでしょうし、全然慣れないという人もいるでしょう。そこで今回は実際に試乗してもらって納得して購入してもらうようにしています。気に入らないから元に戻してといってもすぐにはできませんから。
(レスポンス 内田俊一)
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