京急バス、燃料電池バスSORAを公開---3月1日から東京お台場地区で運行開始

京浜急行バス SORA 説明会
京浜急行バスは2月25日、民間事業者で初導入となる燃料電池バス『SORA』を、3月からの運行開始を前に報道陣に公開した。

SORAはトヨタ自動車が2018年3月から販売を開始した燃料電池バスで、トヨタの燃料電池車『MIRAI』向けに開発したトヨタフューエルセルシステムを採用、乗車定員は78名となっている。

京浜急行バスの山下和彦整備課長は「燃料電池車は水素と空気中の酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーでモーターを回し走行する。化学反応で発生するのは水のみで大気汚染の原因となるCO2(二酸化炭素)やNOx(窒素酸化物)、PM(粒子状物質)などは全く排出しない。同じく環境対応車としてEV(電気自動車)バスがあるが、航続距離や充電時間の関係でまだ実用的ではないと考えている。一方、燃料電池車は水素ステーションが必要であることと車両価格が高いというデメリットはあるが、当社で運行している船の科学館線で、岩谷産業の有明水素ステーションが利用でき、国、東京都、トヨタの協力により導入することができた」と、SORA導入の経緯を明かした。

また山下課長は「今回の燃料電池バスは民間事業者初の導入となる」とした上で、「自由にデザインする場所が少ない中、京浜急行バスらしさと先進性を併せ持ったデザインに仕上がったと思っている。またデザインだけではなく滑りにくい床材やわかりやすい押しボタンを採用するなど、京浜急行バスのこだわりが詰まっている」と紹介した。

京浜急行バスはSORAを3月1日から大井町駅西口からお台場地区を結ぶ循環路線で運行を開始する。この循環路線は1日あたり約30便を運行しているが、そのうちの5便がSORAで運行される。またその5便のうちの1便は有明水素ステーションの最寄りの停留所であるテレコムセンター止まりとなる。

山下課長によるとこの循環路線の1日あたりの走行距離は約100kmで、SORAの航続距離は約200kmだが、毎日1回ステーションで水素を充てんすることにしているという。なお水素のコストは既存のバスのエネルギーコストに比べて約3倍とのことだ。

またSORAの今後の導入に関して山下課長は「2020年春には羽田の第1ゾーンに水素ステーションができる計画がある。オリンピック、パラリンピックでは海外から多くの人が訪れる。2台目以降を導入し、事業者が環境保全に取り組んでいる姿勢と、日本の最先端技術の高さを世界にアピールしたいと思っている。公共交通事業者の責務として今後も人に優しく、環境に優しいバスを積極的に導入したい」と話していた。

実際にSORAに同乗したところ、当然のことながら既存の路線バス特有の騒音や振動はなく、車内は本当に静かで、走りも極めて滑らかだった。

(レスポンス 小松哲也)

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