4ドアセダンはSUVのカウンターとなるか? 国産モデル3台乗り比べ…インサイト、カムリ、レガシィB4
『プリウス』を中心としたエコカーはハッチバックのイメージが強い。トヨタでは『アクア』や『ヴィッツ』、日産なら『ノート』や『リーフ』、ホンダには『フィット』がある。これらハッチバックにはコンパクトなボディに荷物も積めて燃費もいいんだぞ! というメッセージが込められる。
ところが、その潮流に新たな兆しも見え始めた。それがここでスポットを当てるホンダ『インサイト』。3世代目に進化したこのクルマは、これまでハッチバックでモデルチェンジしてきたが、今回は4ドアセダンというパッケージングを選んだ。
そこで今回は、そのインサイト含むミドルクラスセダン、トヨタ『カムリ』、スバル『レガシィ B4』を駆り出し、関東近郊での中距離インプレッションを実行。パワートレイン、走り、乗り心地、デザインなど、各車の個性を探ってみた。
◆ホンダ インサイト
4ドアセダンのメリットはいくつかある。そもそものスタイリングはフォーマルでビジネスシーンに使える。いまも各国の国賓級を迎えるようなイベントは4ドアセダンがデフォルトだ。また、独立したトランクを持つのもそう。荷物と乗員を分け、くつろぎのキャビンを演出できる。それに運動性能の高さもセールスポイント。これまでもハイパフォーマンスな4ドアセダンは歴史上何度も登場した実績がある。特に輸入車の中にはモンスター級も珍しくない。そういった意味で今4ドアセダンはSUVのカウンターパートとも言える。サイズが豊富でハイスペックモデルを乱立させるSUVブームの中で実用性を含めそれに対抗できるのは4ドアセダンではないだろうか。
といった背景があるのかどうかわからないが、インサイトは4ドアセダンとなった。4つのドアを持つ実用性を担保しながら、リアにバルクヘッドを持つ高いボディ剛性で気持ちのいい走りを実現する。それにホンダが新開発したi-MMDと呼ばれる2モーターハイブリッドシステムも侮れない。彼らしい走りに振った味付けで、EVモードでもスポーティな走りができる。この辺はIPU(インテリジェント・パワー・ユニット)をリアシート下に置くなどの工夫もきっと関係していることだろう。全体的なパッケージングがいいのだ。1.5リットルエンジンの躾もグッド。充電開始時もいきなりエンジンが唸りだす場面はほぼ感じられなかった。直結時もそうだが、自然な立ち上がりを提供してくれる。
また、エクステリアデザインもインサイトの大きな特徴。冒頭に挙げたハッチバック系エコカーとは異なり大人の雰囲気を醸し出す。ハッチバックではスーツとの相性はあまり良くないが、これならシックにスーツで合わせるなんてのもバッチリ決まりそうだ。いってしまえば、冠婚葬祭すべてに活用できる。
さらにいうとインテリアも悪くない。ここは高級車的という観点ではなく、使い勝手のよさと未来的なデザインワークを感じる部分。センターコンソールのスイッチ類は操作性が高く、P、R、N、Dの切り替えはワンタッチで済む。ドライブモードの操作も慣れれば視線を落とさずにできそうだ。それにステアリングの向こうのデジタルメーターの視認性も高い。
◆トヨタ カムリ
そんなインサイトだが、セダンの新たな潮流といえば、2017年にリリースされたトヨタ『カムリ』を忘れるわけにはいかない。保守王道的な国産セダンの代名詞がその姿をガラリと変えたのだからニュースにならないわけがない。
スペックは堂々とした全長4910mmというミッドサイズに、ガソリン4気筒エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを積む。しかもプラットフォームはTNGAという新世代トヨタ車の象徴だから新たらしさ満載だ。エクステリアデザインもそれを表していて、ちょっとやり過ぎ感はなきにしもあらずだが、新鮮さは十分。今回はおよそ一年半ぶりの試乗であったが、新鮮さは薄れていなかった。
個人的にこのクルマの秀逸ポイントは内装だと思っている。その中心はダッシュボードのデザイン。高級感のあるそれはまるでレクサスかと思わせるほど。素材に安っぽさはなく、操作類の肌触りもいい。クラス2つ分くらいスキップしたような仕上がりだ。
そして走りもなかなかのもの。スポーティでハンドリングの良さが際立つ。パワステの設定も軽すぎないのがいい。乗り心地は細かいピッチングはあるものの、ストロークが長いのかバウンシングはしっかり抑え込む。この辺は高速走行で安定した走りを持続するのにメリットがありそうだ。ただ、こうなるとアクセルを踏みたくなるので、カタログ表記の燃費を実現するのは難しいかもしれない。
◆スバル レガシィB4
では最後に、マニアックな4ドアセダン、スバル『レガシィB4』にも少しばかり触れてみよう。現行型は6世代目で、スポーティな走りに上質感を加えたというイメージ。確かにエクステリアはハッチバック系やSUV系のスバル車よりずっと大人の佇まいである。派手さはなく奇をてらっていないつくりがB4ファンから支持を得ているポイントだろう。今回揃えたインサイト、カムリのインパクトある面構えからすると、一歩引いた感じがした。インテリアもそうだ。デザインは質実剛健で、装飾されていない。スイッチ類は見た目よりドライバーから手が届きやすいかどうかを前提にレイアウトされた。そのためか視線を外すセンターコンソールには極端にスイッチが少ない。もっというと、シフトレバーは大きくしっかり握れるものが採用される。
パワートレインは2.5リットル水平対向4気筒の自然吸気が搭載され、それにCVTのリニアトロニックが組み合わされる。駆動方式はAWD。いまどきはターボエンジンが多いがこれは違う。自然吸気の盛り上がりが体感できるのは美点である。
走りは力強くスバルらしいスポーティさもしっかり出ている。ハンドル操作に対するボディの追従感はさすがだ。ただ、CVTのリニアトロニックはやはりトルコン式やダブルクラッチ式とは違う。エンジン回転数や加速に対してのリニアさは少し欠ける。特に今回のように乗り比べると技術的には全く違うが世代の違いを感じてしまうのは免れない。ボディの挙動もそう。個人的にはコーナーでのロールは必要だと思うが、最近のトレンドはそうではないため、正直古さを感じてしまう。この辺をどう進化させるかだが、今年2月のシカゴモーターショーでスバルは新しいレガシィを発表したようなので、そこは時間の問題となるだろう。
それはともかく、ワインディングを長い距離走って楽しいのはこのクルマの最大のセールスポイント。一般道では硬めのサスペンションもここでは長所と化す。スバルイズムに妥協はないのは言わずもがなである。
といった今回の4ドアセダン一気乗り試乗。インサイトの登場もそうだし、今年はBMW『3シリーズ』が新しくなったことで、4ドアセダンが再認識される可能性が高まったのは確かである。その面からもあらためてこの3台に乗れたのはいい機会であった。はたして4ドアセダンはSUVのカウンターパートとなるのであろうか。4ドアセダンカテゴリーから目が離せない。
(レスポンス 九島辰也)
ところが、その潮流に新たな兆しも見え始めた。それがここでスポットを当てるホンダ『インサイト』。3世代目に進化したこのクルマは、これまでハッチバックでモデルチェンジしてきたが、今回は4ドアセダンというパッケージングを選んだ。
そこで今回は、そのインサイト含むミドルクラスセダン、トヨタ『カムリ』、スバル『レガシィ B4』を駆り出し、関東近郊での中距離インプレッションを実行。パワートレイン、走り、乗り心地、デザインなど、各車の個性を探ってみた。
◆ホンダ インサイト
4ドアセダンのメリットはいくつかある。そもそものスタイリングはフォーマルでビジネスシーンに使える。いまも各国の国賓級を迎えるようなイベントは4ドアセダンがデフォルトだ。また、独立したトランクを持つのもそう。荷物と乗員を分け、くつろぎのキャビンを演出できる。それに運動性能の高さもセールスポイント。これまでもハイパフォーマンスな4ドアセダンは歴史上何度も登場した実績がある。特に輸入車の中にはモンスター級も珍しくない。そういった意味で今4ドアセダンはSUVのカウンターパートとも言える。サイズが豊富でハイスペックモデルを乱立させるSUVブームの中で実用性を含めそれに対抗できるのは4ドアセダンではないだろうか。
といった背景があるのかどうかわからないが、インサイトは4ドアセダンとなった。4つのドアを持つ実用性を担保しながら、リアにバルクヘッドを持つ高いボディ剛性で気持ちのいい走りを実現する。それにホンダが新開発したi-MMDと呼ばれる2モーターハイブリッドシステムも侮れない。彼らしい走りに振った味付けで、EVモードでもスポーティな走りができる。この辺はIPU(インテリジェント・パワー・ユニット)をリアシート下に置くなどの工夫もきっと関係していることだろう。全体的なパッケージングがいいのだ。1.5リットルエンジンの躾もグッド。充電開始時もいきなりエンジンが唸りだす場面はほぼ感じられなかった。直結時もそうだが、自然な立ち上がりを提供してくれる。
また、エクステリアデザインもインサイトの大きな特徴。冒頭に挙げたハッチバック系エコカーとは異なり大人の雰囲気を醸し出す。ハッチバックではスーツとの相性はあまり良くないが、これならシックにスーツで合わせるなんてのもバッチリ決まりそうだ。いってしまえば、冠婚葬祭すべてに活用できる。
さらにいうとインテリアも悪くない。ここは高級車的という観点ではなく、使い勝手のよさと未来的なデザインワークを感じる部分。センターコンソールのスイッチ類は操作性が高く、P、R、N、Dの切り替えはワンタッチで済む。ドライブモードの操作も慣れれば視線を落とさずにできそうだ。それにステアリングの向こうのデジタルメーターの視認性も高い。
◆トヨタ カムリ
そんなインサイトだが、セダンの新たな潮流といえば、2017年にリリースされたトヨタ『カムリ』を忘れるわけにはいかない。保守王道的な国産セダンの代名詞がその姿をガラリと変えたのだからニュースにならないわけがない。
スペックは堂々とした全長4910mmというミッドサイズに、ガソリン4気筒エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを積む。しかもプラットフォームはTNGAという新世代トヨタ車の象徴だから新たらしさ満載だ。エクステリアデザインもそれを表していて、ちょっとやり過ぎ感はなきにしもあらずだが、新鮮さは十分。今回はおよそ一年半ぶりの試乗であったが、新鮮さは薄れていなかった。
個人的にこのクルマの秀逸ポイントは内装だと思っている。その中心はダッシュボードのデザイン。高級感のあるそれはまるでレクサスかと思わせるほど。素材に安っぽさはなく、操作類の肌触りもいい。クラス2つ分くらいスキップしたような仕上がりだ。
そして走りもなかなかのもの。スポーティでハンドリングの良さが際立つ。パワステの設定も軽すぎないのがいい。乗り心地は細かいピッチングはあるものの、ストロークが長いのかバウンシングはしっかり抑え込む。この辺は高速走行で安定した走りを持続するのにメリットがありそうだ。ただ、こうなるとアクセルを踏みたくなるので、カタログ表記の燃費を実現するのは難しいかもしれない。
◆スバル レガシィB4
では最後に、マニアックな4ドアセダン、スバル『レガシィB4』にも少しばかり触れてみよう。現行型は6世代目で、スポーティな走りに上質感を加えたというイメージ。確かにエクステリアはハッチバック系やSUV系のスバル車よりずっと大人の佇まいである。派手さはなく奇をてらっていないつくりがB4ファンから支持を得ているポイントだろう。今回揃えたインサイト、カムリのインパクトある面構えからすると、一歩引いた感じがした。インテリアもそうだ。デザインは質実剛健で、装飾されていない。スイッチ類は見た目よりドライバーから手が届きやすいかどうかを前提にレイアウトされた。そのためか視線を外すセンターコンソールには極端にスイッチが少ない。もっというと、シフトレバーは大きくしっかり握れるものが採用される。
パワートレインは2.5リットル水平対向4気筒の自然吸気が搭載され、それにCVTのリニアトロニックが組み合わされる。駆動方式はAWD。いまどきはターボエンジンが多いがこれは違う。自然吸気の盛り上がりが体感できるのは美点である。
走りは力強くスバルらしいスポーティさもしっかり出ている。ハンドル操作に対するボディの追従感はさすがだ。ただ、CVTのリニアトロニックはやはりトルコン式やダブルクラッチ式とは違う。エンジン回転数や加速に対してのリニアさは少し欠ける。特に今回のように乗り比べると技術的には全く違うが世代の違いを感じてしまうのは免れない。ボディの挙動もそう。個人的にはコーナーでのロールは必要だと思うが、最近のトレンドはそうではないため、正直古さを感じてしまう。この辺をどう進化させるかだが、今年2月のシカゴモーターショーでスバルは新しいレガシィを発表したようなので、そこは時間の問題となるだろう。
それはともかく、ワインディングを長い距離走って楽しいのはこのクルマの最大のセールスポイント。一般道では硬めのサスペンションもここでは長所と化す。スバルイズムに妥協はないのは言わずもがなである。
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