【WRC 第6戦】初開催のチリでトヨタのオット・タナクが快勝、今季2勝目…トヨタ育成選手の勝田貴元も「WRC2」で優勝

WRCチリ戦を制したトヨタのタナク(右)。左はコ・ドライバーのM.ヤルヴェオヤ。
世界ラリー選手権(WRC)第6戦チリが現地12日にフィニッシュを迎え、「トヨタ・ヤリスWRC」を操るオット・タナクがシーズン2勝目を達成した。「WRC2」クラスでもトヨタの育成プログラム所属選手、勝田貴元が優勝を飾っている。

南米2連戦の2戦目は、今季がWRC初開催となるチリが舞台。前戦アルゼンチンに続くグラベル(未舗装路)戦である。ここで圧倒的と評してもいい強さを見せて勝ったのが、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamの#8 オット・タナクであった。

金曜(10日)終了時点で#8 タナクは後続に約22秒差をつけてトップ、翌土曜終了時点ではリードが30秒に広がる。決定的大差とまではいえないかもしれないが、最終日の日曜はもう(ラリーの)優勝に向かってコントロールランといえる状況に思えた。だが、タナク本人にその意識はあまりなかったようで(後述のコメント参照)、最終日の最終パワーステージ(PS)でも首位のタイムをマークし、このステージの上位5台に与えられるドライバーズポイントのボーナス(5~1点)もフルに稼ぐこととなった。

#8 タナクはWRCチリ戦のウイナーズリストの最初に、30点満点獲得(優勝25点+PSトップ5点)のパーフェクトウイナーとしてその名を刻している。

今回の2位は昨季まで6年連続WRC個人王座獲得中の#1 セバスチャン・オジェ(シトロエンC3 WRC)で、3位が今季パートタイム参戦中の2004~12年WRC王者 #19 セバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペ WRC)。つまり、タナクは過去15年の王座を独占してきた両王者を従えての表彰台中央というかたちにもなった。タナクもトヨタも今季2勝目。ここ2戦、速さは見せつつも結果という面では表彰台から遠ざかっていた彼らだが、今回の快勝で高らかに復活宣言といえるだろう。

優勝した#8 オット・タナク(トヨタ)のコメント
「WRCチリで最初のウイナーとなり、とても嬉しく思う。本当に難しいラリーで、絶対にミスをしないためには高い集中力が必要だった。今日(最終日の日曜=12日)はふたりのセバスチャンが背後から迫り、それほどタイム差が大きくなかったので、決して簡単ではなかった。ここ数戦は残念な結果が続き後退気味だったので、今回のように完璧な週末を過ごして逆襲できたのは非常にポジティブなことだ」

初開催戦らしくというべきか、上位陣にもアクシデント等が少なくはない展開だった。#8 タナク以外のトヨタ勢、#5 クリス・ミークと#10 ヤリ-マティ・ラトバラも金曜終了時点ではともにトップ5圏内にいたのだが、順調なラリーとはならず、最終結果は#5 ミークが10位、#10 ラトバラは11位。

そして最大の事件は、2連勝中で選手権リーダーとしてここを迎えていた#11 ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペ WRC)の大クラッシュである。ドライバーとコ・ドライバーに大きなケガはなかった模様だが、リタイアとなった#11 ヌービルは今回無得点でドライバーズポイントランキングでは#1 オジェと#8 タナクに抜かれて3番手まで後退。つかんだかと思われたシーズンの流れを手放すこととなってしまった。

6戦を終えてドライバーズタイトル争いは、7連覇を狙う#1 オジェ(シトロエン)が122点でトップ。これを#8 タナク(トヨタ)が112点、#11 ヌービル(ヒュンダイ)が110点で追っている。マニュファクチャラーズタイトル争いではヒュンダイが首位をキープして178点。149点のトヨタと143点のシトロエンが追いかける。

また、「WRC2」クラスで出場したトヨタの若手育成プログラム所属ドライバーの勝田貴元(フォード・フィエスタR5)がクラス優勝を飾った。勝田のWRC2での優勝は昨年のスウェーデン戦以来(WRC2からは今季、ワークス等を対象とした「WRC2 PRO」が新たに“分化”されている。勝田が今回勝ったのはPROではない「WRC2」の方)。

勝田は「ラリーを通してミスのないクリーンな走りを心がけ、その過程で様々な改善方法を学べたことは大きな収穫です。今後も努力を続けていけば、将来はより速く、そして力強く走れるようになると信じています」とコメント。また、豊田章男トヨタ社長は「日本人ドライバーが日本車で世界の道を走る姿を見たい、という私の、そして日本のファンのみなさまの夢が実現する日が一歩一歩近づいてきていると感じます」との談話を公表している。将来につながる一歩であったといえそうだ。

WRCの次戦は5月30日~6月2日、ポルトガルで開催される。

(レスポンス 遠藤俊幸)

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