【WRC 第7戦】トヨタのオット・タナク、ポルトガル戦を制して2連勝…人車ともに今季3勝目

優勝したトヨタの#8 タナク。
世界ラリー選手権(WRC)第7戦ポルトガルが現地6月2日にフィニッシュし、「トヨタ・ヤリスWRC」を駆るオット・タナクが前戦チリに続く2連勝、自身とトヨタにとってシーズン3つめの勝ち星をあげた。

全14戦の今季WRC、ラウンド数の面では前半終了となる位置づけのイベントが第7戦ラリー・ポルトガルである。トヨタのワークスチーム「TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team」にとって今回のポルトガル戦は、勝ったとはいえ、微妙な心持ちになる展開だったかもしれない。

トヨタ勢は当初、このグラベル(未舗装路)戦を支配的な展開で推移させていた。金曜(5月31日)終了時点では1-2-3を占拠。しかし土曜(6月1日)から、トップは保ちつつも徐々に旗色が芳しくなくなっていく。

土曜はサスペンショントラブルで#10 ヤリ-マティ・ラトバラがデイリタイアを喫し、首位を走る#8 オット・タナクもサス関連とされるトラブルに見舞われる。それでも#8 タナクはトップを守り、#5 クリス・ミークが2番手の1-2態勢でトヨタは最終日(2日、日曜)へ。

そして最終日の最終スペシャルステージ(SS)を迎える時点では#8 タナクが首位キープ、2番手こそ#11 ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペ WRC)にあけわたしたものの#5 ミークも3番手で、タイム差的には1-3フィニッシュでのダブル表彰台がほぼ見えていた。ところが#5 ミークが最終SSでアクシデント、完走ならず。#8 タナクが勝ったとはいえ、金曜1-2-3、土曜1-2という流れから見ると、トヨタ勢としては竜頭蛇尾気味な展開に陥った印象は拭えない。

しかしながら、勝ってもそういう見方をされてしまいそうなくらい期待値の高い位置に今のトヨタはいる、ということにもなるだろう。そしてなにより、エースである#8 タナクの強さと充実ぶりが広く再認識された一戦でもあった。#8 タナクは2連勝で、自身とトヨタにとってのシーズン3勝目をあげている。

優勝した#8 オット・タナク
「表彰台のいちばん高い場所に立ち、とても良い気分だ。今週末は本当に長くタフな戦いが続き、これまでで最も苦労して手に入れた勝利だと断言できる。金曜日は不利な出走順であったにも関わらず、高いパフォーマンスを発揮できた。だが、土曜日はかなり厳しい戦いを強いられた。ただ、今日(日曜)は速さが充分にあり、すべてがうまくいったね。今日の最初のステージは大量のダストで視界が悪かったので少し慎重に走ったけど、そのあとはマージンをとりながらも攻めて、差を大きく拡げることができたよ」

表彰台目前で惜しくもリタイアとなった#5 クリス・ミーク
「右コーナー内側の草の中に隠れていた木の切り株に当たって、タイヤが外側に開いてしまった。完全に自分のミス。それまでは非常に力強くラリーを戦えていたので、チームに申し訳なく思う。ただ、(移籍初年度の)自分にとっては今まででいちばん、マシン(ヤリスWRC)のポテンシャルを引き出せたラリーだった。気持ちを切りかえ、今週末の戦いをポジティブに捉えたいと思っている」

ポルトガル戦の2位は#11 ヌービル、3位には#1 セバスチャン・オジェ(シトロエンC3 WRC)が続いた。ドライバーズチャンピオン争いは#1 オジェが142点で首位、これを#8 タナクが140点、#11 ヌービルが132点で追う3強僅差の形勢となっている。

今回の4~5位は「フォード・フィエスタWRC」勢で、#3 テーム・スニネンが4位、#33 エルフィン・エバンスが5位。最終日に再出走したトヨタの#10 ラトバラが7位。

“最高峰クラス”のWRカー勢に後退やリタイアが少なくなかったこともあり、ポルトガル戦の6位には「WRC2 PRO」クラス優勝者カッレ・ロバンペラ(シュコダ・ファビアR5)の名が見られる。この選手は将来のWRC主役候補と目される有望株だ(カリ・ロバンペラなどと表記されることもある)。WRC2 PROクラスでは前戦に続く2連勝。

カッレ・ロバンペラはラリー大国フィンランドの出身で、父のハリも三菱ワークス等で活躍したWRCトップ選手だった。2000年生まれの若きカッレには“神童”との評価もあるくらいで、おぼえておいて損のない名前だろう。

WRCの次戦第8戦はサルディニア島を舞台とするイタリア戦、今回からさほど間を置かず、6月13~16日に開催される。そのあとは1カ月半ほど実戦間隔が開くので、実質的な意味での前半戦最後のラリーになる。

(レスポンス 遠藤俊幸)

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