トヨタ豊田社長父子も参画、「ルーキー・レーシング」がスーパー耐久に参戦…東京オートサロン2020で異例の発表
「東京オートサロン2020」のオープニングデー10日、少々異色な“体制発表”が実施された。それは、モリゾウ(MORIZO)の名で選手活動等も展開する豊田章男トヨタ社長と息子の豊田大輔選手が参画する「ルーキー・レーシング」のそれであった。
近年の東京オートサロンではモータースポーツ関連の新季体制発表等も多く実施されているが、今回の初日午後、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)のブースでは、世界ラリー選手権(WRC)を戦うトヨタワークスチームの“今季出陣式”が行なわれた後、舞台が「新しい取り組みのお知らせ」と銘打たれた謎の(?)プログラムへと移行した。
そこで紹介された内容は、TGR本体としての活動ではなく、スーパー耐久シリーズ(S耐)に参戦する「ルーキー・レーシング」(ROOKIE RACING)の新季体制について。トークショー形式で進められたステージにはモリゾウ選手を含む面々が約10人規模で登壇、そこにはモリゾウ選手の息子である豊田大輔選手の姿も。
ルーキー・レーシングは既にS耐への参戦実績を有しており、その設立・発展の経緯には複雑な面もあるが、積極的なモータースポーツ活動を展開する小倉クラッチの小倉康宏社長、自らもステアリングを握ってレースを戦う同社長の活動及び陣営が原点といえる。そこにプロの佐々木雅弘選手、本業は自動運転に関することという豊田大輔選手が加わるなどして、戦ってきた。
そして大輔選手のレース活動の様子を確認しようと考えたモリゾウ選手が参画、さらにはトヨタと縁の深いトップドライバーや、トヨタ社内で伝説的な評価ドライバーとして知られる成瀬弘さん(故人、豊田社長の運転の師匠)の薫陶を受けた人材やその系譜に属す人材、そういった多彩な面々が様々な立場で順次、ルーキー・レーシングに厚みを増すことになってきている、そんなふうにいえそうだ。壇上には「トヨタイムズ」のテレビCMに出演したトヨタの評価ドライバー、矢吹久さんも上がっている。
今季は2台の『GR』、『GRスープラ』と『GRヤリス』でS耐に参戦するルーキー・レーシング。片岡龍也監督(SUPER GT等では現役。09、14、17年GT300王者)の指揮のもと、GRスープラのAドライバーには蒲生尚弥選手(18年GT300王者)、GRヤリスのAドライバーには井口卓人選手(GT300のスバルBRZでおなじみ)という強豪が就く。
その他の布陣は状況に応じて、ということになるようだが、“大物補欠ドライバー”として石浦宏明選手(15&17年スーパーフォーミュラ王者)や大嶋和也選手(19年GT500王者)もスタンバイ(両選手は今回、トークショー後の撮影にのみ登場)。近年のS耐にはシリーズ最大の山場的イベントして「富士24時間」があるが、昨年(19年)はモリゾウ選手もそこでルーキー・レーシングのマシンをドライブしており、今年も自身の参戦があるかもしれない。
さて、モリゾウ選手がこのチームに参画、支援する理由は主に2つだと思われる。誤解してほしくないが、間違っても単純に子息の庇護をしたいわけではない(それならもっと違うやり方があるだろう)。
まずひとつめの理由は、現在モリゾウ選手が務めている、というかこの場合は豊田社長が務めている、と言うべきかもしれないが、トヨタの最終的な製品確認をする“マスタードライバー”としての自身の立場に関し、「そろそろ後継者を育てないと」ということだ。その「候補である」大輔選手の育成につなげたい、そういう思いである。矢吹さんらも混じることで、トヨタのクルマ開発との融合もさせつつ、という意図も見えてくるところか。
そしてもうひとつの理由は、今や世界的ワークス活動が主軸となったGAZOO Racingの活動では「見えにくくなってきた部分がある」とのモリゾウ選手の実感。自らがあくまでプライベートチームとしての立ち位置を有することで、ジェントルマンレーサーたちと同じ目線でいろいろなものを見つつ、それも反映してトヨタのクルマ(競技車や一般車)やモータースポーツ活動をもっと良くしていきたい、という思いだ。
総じて言うならば、成瀬さんとモリゾウ選手が始めた頃のGAZOO Racingの根幹的な思いの復元、そんな意図をもったルーキー・レーシングの新展開ということができるだろう。モリゾウ選手はイベントの最後に以下のように語っている。
「こういう話をみなさんの前でオープンに話せること自体、私が成瀬と一緒にやっていた頃に比べると隔世の感があります。社業、そして個人としての活動に、みなさまからの後押しをたくさんいただいていると感じております。こういう思いでやっている、ということをみなさんの前でお話ししたわけですが、決して軽い発言はしておりません。ぜひとも、みなさまの温かい理解とさらなる応援をいただきたいと思います。自動車やモータースポーツの分野からもオリンピックイヤーの日本がさらに元気になれるよう、頑張っていきます」
GRスープラとGRヤリスを擁して戦うルーキー・レーシングの今季には、様々な面から熱視線が注がれることになりそうだ。2020年のS耐は3月21~22日に鈴鹿サーキットで開幕する。
(レスポンス 遠藤俊幸)
近年の東京オートサロンではモータースポーツ関連の新季体制発表等も多く実施されているが、今回の初日午後、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)のブースでは、世界ラリー選手権(WRC)を戦うトヨタワークスチームの“今季出陣式”が行なわれた後、舞台が「新しい取り組みのお知らせ」と銘打たれた謎の(?)プログラムへと移行した。
そこで紹介された内容は、TGR本体としての活動ではなく、スーパー耐久シリーズ(S耐)に参戦する「ルーキー・レーシング」(ROOKIE RACING)の新季体制について。トークショー形式で進められたステージにはモリゾウ選手を含む面々が約10人規模で登壇、そこにはモリゾウ選手の息子である豊田大輔選手の姿も。
ルーキー・レーシングは既にS耐への参戦実績を有しており、その設立・発展の経緯には複雑な面もあるが、積極的なモータースポーツ活動を展開する小倉クラッチの小倉康宏社長、自らもステアリングを握ってレースを戦う同社長の活動及び陣営が原点といえる。そこにプロの佐々木雅弘選手、本業は自動運転に関することという豊田大輔選手が加わるなどして、戦ってきた。
そして大輔選手のレース活動の様子を確認しようと考えたモリゾウ選手が参画、さらにはトヨタと縁の深いトップドライバーや、トヨタ社内で伝説的な評価ドライバーとして知られる成瀬弘さん(故人、豊田社長の運転の師匠)の薫陶を受けた人材やその系譜に属す人材、そういった多彩な面々が様々な立場で順次、ルーキー・レーシングに厚みを増すことになってきている、そんなふうにいえそうだ。壇上には「トヨタイムズ」のテレビCMに出演したトヨタの評価ドライバー、矢吹久さんも上がっている。
今季は2台の『GR』、『GRスープラ』と『GRヤリス』でS耐に参戦するルーキー・レーシング。片岡龍也監督(SUPER GT等では現役。09、14、17年GT300王者)の指揮のもと、GRスープラのAドライバーには蒲生尚弥選手(18年GT300王者)、GRヤリスのAドライバーには井口卓人選手(GT300のスバルBRZでおなじみ)という強豪が就く。
その他の布陣は状況に応じて、ということになるようだが、“大物補欠ドライバー”として石浦宏明選手(15&17年スーパーフォーミュラ王者)や大嶋和也選手(19年GT500王者)もスタンバイ(両選手は今回、トークショー後の撮影にのみ登場)。近年のS耐にはシリーズ最大の山場的イベントして「富士24時間」があるが、昨年(19年)はモリゾウ選手もそこでルーキー・レーシングのマシンをドライブしており、今年も自身の参戦があるかもしれない。
さて、モリゾウ選手がこのチームに参画、支援する理由は主に2つだと思われる。誤解してほしくないが、間違っても単純に子息の庇護をしたいわけではない(それならもっと違うやり方があるだろう)。
まずひとつめの理由は、現在モリゾウ選手が務めている、というかこの場合は豊田社長が務めている、と言うべきかもしれないが、トヨタの最終的な製品確認をする“マスタードライバー”としての自身の立場に関し、「そろそろ後継者を育てないと」ということだ。その「候補である」大輔選手の育成につなげたい、そういう思いである。矢吹さんらも混じることで、トヨタのクルマ開発との融合もさせつつ、という意図も見えてくるところか。
そしてもうひとつの理由は、今や世界的ワークス活動が主軸となったGAZOO Racingの活動では「見えにくくなってきた部分がある」とのモリゾウ選手の実感。自らがあくまでプライベートチームとしての立ち位置を有することで、ジェントルマンレーサーたちと同じ目線でいろいろなものを見つつ、それも反映してトヨタのクルマ(競技車や一般車)やモータースポーツ活動をもっと良くしていきたい、という思いだ。
総じて言うならば、成瀬さんとモリゾウ選手が始めた頃のGAZOO Racingの根幹的な思いの復元、そんな意図をもったルーキー・レーシングの新展開ということができるだろう。モリゾウ選手はイベントの最後に以下のように語っている。
「こういう話をみなさんの前でオープンに話せること自体、私が成瀬と一緒にやっていた頃に比べると隔世の感があります。社業、そして個人としての活動に、みなさまからの後押しをたくさんいただいていると感じております。こういう思いでやっている、ということをみなさんの前でお話ししたわけですが、決して軽い発言はしておりません。ぜひとも、みなさまの温かい理解とさらなる応援をいただきたいと思います。自動車やモータースポーツの分野からもオリンピックイヤーの日本がさらに元気になれるよう、頑張っていきます」
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