ヤリスとの差別化は? 新型アクアに与えられた「使命」とは…チーフエンジニアに聞いた
10年ぶりのフルモデルチェンジとなったトヨタ『アクア』。長らく販売台数トップを独走し、『プリウス』と並んでハイブリッド車(HV)の普及に一役買った国民車として広く知られるアクアだが、それだけにモデルチェンジへのプレッシャーも大きかったという。
世界初となるバイポーラ型ニッケル水素電池や、高度駐車支援システムの採用など、クラスを超えた技術、装備の数々はどのようなねらいで開発され、搭載されていったのか。新型アクアの開発を主導したトヨタコンパクトカーカンパニー TC製品企画 ZP チーフエンジニア 鈴木啓友氏に、開発秘話を聞いた。
ヤリスハイブリッドとの差別化、アクアの使命とは
----:発売からの受注は、販売計画台数(9800台)を超えていますが、これはねらい通りでしょうか?
鈴木啓友チーフエンジニア(以下CE):1万3000台/月くらいですから、悪くありません。ですが、私が考えるアクアは、発売と同時にドカーンと売れるより、永く売れ続けることに価値があると思っています。一定の数が出続け、累計販売台数が多くなることが大事な車種だと思います。初代も累計187万台を超えています。
----:2代目へフルモデルチェンジするまでの経緯は。
鈴木CE:初代アクアは、コンパクトハッチバック車(HB)初のハイブリッド車(HV)として、世界一の燃費が目標でした。お陰様で多くのお客様にご購入いただき、ご愛顧いただいている間は継続するとの考えでした。一方、HVは他社を含め数が増えてきましたので、燃費だけでない魅力も必要とのことから、2代目へモデルチェンジの動きが生まれました。
----:『ヤリス』(従来は『ヴィッツ』)もHVが選択肢となったいま、どのような差別化を考えたのでしょう。
鈴木CE:ヤリスと同じTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)のBプラットフォームを使って何ができるかを考えました。ヤリスは、『ヤリスクロス』を含め欧州で必要な車種です。一方アクアは、国内専用ということを想定し、市場性を面で考えながら企画しました。
いまSUV(スポーツ多目的車)人気が注目されますが、HBも販売台数が多く、商品性をヤリスとどうわけるかが新型アクアの課題でした。実際に運転したり乗ってみたりすれば同じ車格でも違う感触であるはずで、そこを議論しました。同じコンパクトHBだからと、アクアを止める話は出ませんでした。
アクアの使命とは、時代の半歩先、この先10年どうなっていくかを示唆する近未来感覚がありながら、手に届く価格を両立させることです。
----:具体像は、どう描いたのでしょうか。
鈴木CE:初代のお客様は、『プリウス』からダウンサイジングされた方が大変多かった。ほかにも、『エスティマ』や『クラウン』からという方もおられます。ダウンサイジングとは言いますが、予算がないわけではなく、子離れをしたり、生活の質を落とさず取り回しのよいクルマが欲しかったりという声が多かったです。ここがアクアの立ち位置だろうと考えました。
ジャストサイズで寄り添う先進
----:初代は、「プリウスC」の車名で北米での販売がありましたが、新型は国内専用ですか。
鈴木CE:輸出はありません。初代のときは時代背景があり、ガソリン価格が上がったり、HVなら米国のフリーウェイの優先車線を走れたりといった特典がありました。しかしいまは、SUVや大きなクルマが北米で人気です。
新型を開発するに際し改めてアクアに乗ってみると、これならどこへでも行けることを再認識しました。したがって初代の大きさにこだわり、一般に新車へのモデルチェンジでは寸法が大きくなる傾向ですが、このジャストサイズを守りました。そのなかでデザインにも頑張ってもらいました。
----:外観の造形は、新旧を並べてみると明らかに質の高さや美しさが違います
鈴木CE:近年の電動車や、レクサスなども、眼光鋭く、シャープな印象の強い造形が多いです。しかしアクアはそれでいいのかと、ずいぶん議論しました。お客様にも意見を伺いました。それらから出てきた言葉に、たとえばリスのような小動物のようだとの表現があり、ちょっと可愛らしいなかに新しい感じがある。そして人に優しく、人に寄り添う先進感とは何かを突き詰めました。鋭い線は使わず、形で見せていく。意図した柔らかさと強さを表現するため、たとえばリア側面の抑揚と絞り込みという曲面を実現するため、生産技術とも話し合いながら造形を作り込みました。
----:室内には上級車感があります。
鈴木CE:内装のテーマは「ハーモテック」です。これも寄り添う先進に通じます。見栄えとして、デジタルが並ぶのではなく、シンプルでクリーンな、大きな造形にしようと話しました。
そのためには何か策が必要で、たとえばシフト・バイ・ワイヤーです。前型では、シフトレバーとパーキングブレーキのレバーがコンソールにありましたが、シフトをインストゥルメントパネルに設置し、パーキングブレーキはペダル式とすること、そして運転席と助手席をやや外側へ寄せることで、間のコンソール部の幅が広くなっています。隣の人との距離が離れることで、上級車の感じが生まれます。座席の骨格はヤリスと同じですが、クッションや、コンソールの製造方法を工夫して実現しました。
ダッシュボードも、おおらかな造形をシンプルに置いていくことで、より大きなクルマに乗っているような上質さを表せます。素材も、ピアノブラックやソフトパッドを効果的に用い、見えるところ、触れるところ、わかるところにはこだわってお金をかけました。
世界初となるバイポーラ型ニッケル水素電池や、高度駐車支援システムの採用など、クラスを超えた技術、装備の数々はどのようなねらいで開発され、搭載されていったのか。新型アクアの開発を主導したトヨタコンパクトカーカンパニー TC製品企画 ZP チーフエンジニア 鈴木啓友氏に、開発秘話を聞いた。
ヤリスハイブリッドとの差別化、アクアの使命とは
----:発売からの受注は、販売計画台数(9800台)を超えていますが、これはねらい通りでしょうか?
鈴木啓友チーフエンジニア(以下CE):1万3000台/月くらいですから、悪くありません。ですが、私が考えるアクアは、発売と同時にドカーンと売れるより、永く売れ続けることに価値があると思っています。一定の数が出続け、累計販売台数が多くなることが大事な車種だと思います。初代も累計187万台を超えています。
----:2代目へフルモデルチェンジするまでの経緯は。
鈴木CE:初代アクアは、コンパクトハッチバック車(HB)初のハイブリッド車(HV)として、世界一の燃費が目標でした。お陰様で多くのお客様にご購入いただき、ご愛顧いただいている間は継続するとの考えでした。一方、HVは他社を含め数が増えてきましたので、燃費だけでない魅力も必要とのことから、2代目へモデルチェンジの動きが生まれました。
----:『ヤリス』(従来は『ヴィッツ』)もHVが選択肢となったいま、どのような差別化を考えたのでしょう。
鈴木CE:ヤリスと同じTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)のBプラットフォームを使って何ができるかを考えました。ヤリスは、『ヤリスクロス』を含め欧州で必要な車種です。一方アクアは、国内専用ということを想定し、市場性を面で考えながら企画しました。
いまSUV(スポーツ多目的車)人気が注目されますが、HBも販売台数が多く、商品性をヤリスとどうわけるかが新型アクアの課題でした。実際に運転したり乗ってみたりすれば同じ車格でも違う感触であるはずで、そこを議論しました。同じコンパクトHBだからと、アクアを止める話は出ませんでした。
アクアの使命とは、時代の半歩先、この先10年どうなっていくかを示唆する近未来感覚がありながら、手に届く価格を両立させることです。
----:具体像は、どう描いたのでしょうか。
鈴木CE:初代のお客様は、『プリウス』からダウンサイジングされた方が大変多かった。ほかにも、『エスティマ』や『クラウン』からという方もおられます。ダウンサイジングとは言いますが、予算がないわけではなく、子離れをしたり、生活の質を落とさず取り回しのよいクルマが欲しかったりという声が多かったです。ここがアクアの立ち位置だろうと考えました。
ジャストサイズで寄り添う先進
----:初代は、「プリウスC」の車名で北米での販売がありましたが、新型は国内専用ですか。
鈴木CE:輸出はありません。初代のときは時代背景があり、ガソリン価格が上がったり、HVなら米国のフリーウェイの優先車線を走れたりといった特典がありました。しかしいまは、SUVや大きなクルマが北米で人気です。
新型を開発するに際し改めてアクアに乗ってみると、これならどこへでも行けることを再認識しました。したがって初代の大きさにこだわり、一般に新車へのモデルチェンジでは寸法が大きくなる傾向ですが、このジャストサイズを守りました。そのなかでデザインにも頑張ってもらいました。
----:外観の造形は、新旧を並べてみると明らかに質の高さや美しさが違います
鈴木CE:近年の電動車や、レクサスなども、眼光鋭く、シャープな印象の強い造形が多いです。しかしアクアはそれでいいのかと、ずいぶん議論しました。お客様にも意見を伺いました。それらから出てきた言葉に、たとえばリスのような小動物のようだとの表現があり、ちょっと可愛らしいなかに新しい感じがある。そして人に優しく、人に寄り添う先進感とは何かを突き詰めました。鋭い線は使わず、形で見せていく。意図した柔らかさと強さを表現するため、たとえばリア側面の抑揚と絞り込みという曲面を実現するため、生産技術とも話し合いながら造形を作り込みました。
----:室内には上級車感があります。
鈴木CE:内装のテーマは「ハーモテック」です。これも寄り添う先進に通じます。見栄えとして、デジタルが並ぶのではなく、シンプルでクリーンな、大きな造形にしようと話しました。
そのためには何か策が必要で、たとえばシフト・バイ・ワイヤーです。前型では、シフトレバーとパーキングブレーキのレバーがコンソールにありましたが、シフトをインストゥルメントパネルに設置し、パーキングブレーキはペダル式とすること、そして運転席と助手席をやや外側へ寄せることで、間のコンソール部の幅が広くなっています。隣の人との距離が離れることで、上級車の感じが生まれます。座席の骨格はヤリスと同じですが、クッションや、コンソールの製造方法を工夫して実現しました。
ダッシュボードも、おおらかな造形をシンプルに置いていくことで、より大きなクルマに乗っているような上質さを表せます。素材も、ピアノブラックやソフトパッドを効果的に用い、見えるところ、触れるところ、わかるところにはこだわってお金をかけました。
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