車格を飛び越え実現した「普及する先進感」とは…新型アクアのチーフエンジニアが語る
新型トヨタ『アクア』の開発を主導したトヨタコンパクトカーカンパニー TC製品企画 ZP チーフエンジニア 鈴木啓友氏に、開発秘話を聞くインタビュー第二弾。前回はフルモデルチェンジの経緯や、内外装のこだわりについて聞いた。
今回は、世界初となるバイポーラ型ニッケル水素電池や、高度駐車支援システムの採用など、クラスを超えた技術、装備の数々を搭載したねらいや、チーフエンジニアとして開発にかけた思いを語ってもらった。
前倒しで採用したバイポーラ型ニッケル水素バッテリー
----:見た目や空間の上質さにこだわった新型アクアですが、乗り味も上質になりました。新技術の採用も大きいと思いますが。
鈴木CE:バイポーラ型ニッケル水素バッテリーは、世界初であり、実は開発の予定より一年ほど早く実用化してもらいました。ヤリスと同じプラットフォームを使いながら、アクアはより上質でなければならないということを実現するには、電気の技術が必要です。新しいバッテリーがあるとの情報が届き、開発と生産をしていただく豊田自動織機へ見学に行き、これならできそうだと感じました。永年の基礎研究があり、シミュレーションが確立しており、生産の手ごたえを得ることができたのです。
----:40km/hまでモーター走行が可能になったことで、ワンペダル操作も実現しました
鈴木CE:初代アクアは燃費が最優先課題で、それには一度速度に乗ったら抵抗なくスゥ~と走ることを追求してきました。そこからプラスαの魅力はないかと考えたとき、回生による減速感ではないかと思いました。その採用については、運転の興味だけでなく、同乗者も心地よいことを重視しました。当然、ペダル踏み替えの回数も減らせる実効性もあります。
----:トヨタ・ハイブリッド・システムが拡張したといえるのではないでしょうか。
鈴木CE:新型アクアは、次の10年を見据えたHVだと思います。いきなりEVという選択ではない方に、HVの領域があり、そこを担えるようにしました。初代からの燃費性能についても、前型に比べ20%改善しており、ここは競合他車に対しても優位性を持ちます。20%の燃費向上は容易ではありません。それでもアクアはトップランナーであることが大切であり、アクアの役割だと考えています。
車格を飛び越えた機能
----:自動駐車機能もヤリスより向上し、前進・後退を含め全自動となりました。
鈴木CE:(採用には)実は、社内で様々な意見がありました。しかし私は、日常的にクルマを利用し、なおかつ高齢であったり運転が苦手であったりする人こそほしい装備だと考え、社内を説得しました。シフト・バイ・ワイヤーを含めこの機能は、高級車であるレクサス『LS』と『MIRAI』でしか採用しておらず、車格を飛び越え新型アクアに採用となりました。自宅の車庫を登録すれば、より正確に駐車できます。
----:後席の居住性もいいですね。
鈴木CE:ヤリスに比べホイールベースが50mm長いこともありますが、外観の造形と居住性のせめぎあいをしながら、開発を進めました。サイドウィンドウの切れ長の造形が新型アクアの一つの特徴で、これで軽快さが表現できます。そのうえで、リアクォーターへ向けて窓ガラスが切れ上がっていく点をどこに置くかで、後席に座った際の視界の開放感を得られます。また、後ろへ切れ上がった窓ガラスの造形により、後ろのドアが屋根に近いところまで開くことになり、乗降性がよくなっています。
ほかに、リアウィンドウをヤリスや前型アクアに比べ前傾させたことによって、ハッチバックドアの開閉ヒンジが屋根の奥側に位置することで、ハッチバックを開けた際に荷物を荷室の奥まで積み込みやすくなっています。
新型アクアの価値は「普及する先進感」
----:国内専用HVとしての作り込みが細部まで行き渡り、新型アクアは大きく進化したと思います。この商品性はどのように発想し、実現されたのでしょう。
鈴木CE:私は1989年に入社し、まず車体設計に配属されました。板金もののドアやフェンダーなどの設計ですが、そのためにはデザイナーとよく話さなければ図面を描くことができません。そこで、デザインとは何かを議論し、勉強する機会を得ました。その後、30歳くらいで製品企画へ異動となり、北米の『アバロン』、ダイハツと共同開発した『パッソ』、2代目の『イスト』、そしてLSの検討を少ししたあと、アジア向けの『ビオス』(アジア版ヤリス)に永く関わり、新型アクアの担当となりました。
企画の経験が永いなかで改めて思うのは、お客様はどこを見ているかということです。新型アクアの開発で時間を掛けたのは、事前の調査や企画内容の検討です。まずはじめが大切だと。
また新型アクアは、トヨタ自動車東日本(TMEJ)で、関わるみんな、仲間で、クルマ作りをしようと、当初から、開発、生産、販売の各部門が同じ部屋に集まり、議論して進めました。5ナンバー車でありながら、上質な外観が出来上がったのも、生産技術要件を超えた造形の要求でも、お客様が喜ぶならと生産技術担当が譲歩してくれるなど、苦労があってもお客様のためという思いで前進することができました。ここが、開発責任者として大事にしたいと思ってきたことです。
----:魅力が盛りだくさんの新型アクアですが、価格は198万円からとかなり手ごろですね。
鈴木CE:安いでしょう!? ぜひ、買ってください。普及してのクルマだと思いますし、手の届くクルマでなければ国民車とは言えません。ある意味で、空気のような存在でも構わないと思っています。しかしそれがないと、生活しにくいという存在。新型アクアの価値は、「普及する先進感」だと思います。
今回は、世界初となるバイポーラ型ニッケル水素電池や、高度駐車支援システムの採用など、クラスを超えた技術、装備の数々を搭載したねらいや、チーフエンジニアとして開発にかけた思いを語ってもらった。
前倒しで採用したバイポーラ型ニッケル水素バッテリー
----:見た目や空間の上質さにこだわった新型アクアですが、乗り味も上質になりました。新技術の採用も大きいと思いますが。
鈴木CE:バイポーラ型ニッケル水素バッテリーは、世界初であり、実は開発の予定より一年ほど早く実用化してもらいました。ヤリスと同じプラットフォームを使いながら、アクアはより上質でなければならないということを実現するには、電気の技術が必要です。新しいバッテリーがあるとの情報が届き、開発と生産をしていただく豊田自動織機へ見学に行き、これならできそうだと感じました。永年の基礎研究があり、シミュレーションが確立しており、生産の手ごたえを得ることができたのです。
----:40km/hまでモーター走行が可能になったことで、ワンペダル操作も実現しました
鈴木CE:初代アクアは燃費が最優先課題で、それには一度速度に乗ったら抵抗なくスゥ~と走ることを追求してきました。そこからプラスαの魅力はないかと考えたとき、回生による減速感ではないかと思いました。その採用については、運転の興味だけでなく、同乗者も心地よいことを重視しました。当然、ペダル踏み替えの回数も減らせる実効性もあります。
----:トヨタ・ハイブリッド・システムが拡張したといえるのではないでしょうか。
鈴木CE:新型アクアは、次の10年を見据えたHVだと思います。いきなりEVという選択ではない方に、HVの領域があり、そこを担えるようにしました。初代からの燃費性能についても、前型に比べ20%改善しており、ここは競合他車に対しても優位性を持ちます。20%の燃費向上は容易ではありません。それでもアクアはトップランナーであることが大切であり、アクアの役割だと考えています。
車格を飛び越えた機能
----:自動駐車機能もヤリスより向上し、前進・後退を含め全自動となりました。
鈴木CE:(採用には)実は、社内で様々な意見がありました。しかし私は、日常的にクルマを利用し、なおかつ高齢であったり運転が苦手であったりする人こそほしい装備だと考え、社内を説得しました。シフト・バイ・ワイヤーを含めこの機能は、高級車であるレクサス『LS』と『MIRAI』でしか採用しておらず、車格を飛び越え新型アクアに採用となりました。自宅の車庫を登録すれば、より正確に駐車できます。
----:後席の居住性もいいですね。
鈴木CE:ヤリスに比べホイールベースが50mm長いこともありますが、外観の造形と居住性のせめぎあいをしながら、開発を進めました。サイドウィンドウの切れ長の造形が新型アクアの一つの特徴で、これで軽快さが表現できます。そのうえで、リアクォーターへ向けて窓ガラスが切れ上がっていく点をどこに置くかで、後席に座った際の視界の開放感を得られます。また、後ろへ切れ上がった窓ガラスの造形により、後ろのドアが屋根に近いところまで開くことになり、乗降性がよくなっています。
ほかに、リアウィンドウをヤリスや前型アクアに比べ前傾させたことによって、ハッチバックドアの開閉ヒンジが屋根の奥側に位置することで、ハッチバックを開けた際に荷物を荷室の奥まで積み込みやすくなっています。
新型アクアの価値は「普及する先進感」
----:国内専用HVとしての作り込みが細部まで行き渡り、新型アクアは大きく進化したと思います。この商品性はどのように発想し、実現されたのでしょう。
鈴木CE:私は1989年に入社し、まず車体設計に配属されました。板金もののドアやフェンダーなどの設計ですが、そのためにはデザイナーとよく話さなければ図面を描くことができません。そこで、デザインとは何かを議論し、勉強する機会を得ました。その後、30歳くらいで製品企画へ異動となり、北米の『アバロン』、ダイハツと共同開発した『パッソ』、2代目の『イスト』、そしてLSの検討を少ししたあと、アジア向けの『ビオス』(アジア版ヤリス)に永く関わり、新型アクアの担当となりました。
企画の経験が永いなかで改めて思うのは、お客様はどこを見ているかということです。新型アクアの開発で時間を掛けたのは、事前の調査や企画内容の検討です。まずはじめが大切だと。
また新型アクアは、トヨタ自動車東日本(TMEJ)で、関わるみんな、仲間で、クルマ作りをしようと、当初から、開発、生産、販売の各部門が同じ部屋に集まり、議論して進めました。5ナンバー車でありながら、上質な外観が出来上がったのも、生産技術要件を超えた造形の要求でも、お客様が喜ぶならと生産技術担当が譲歩してくれるなど、苦労があってもお客様のためという思いで前進することができました。ここが、開発責任者として大事にしたいと思ってきたことです。
----:魅力が盛りだくさんの新型アクアですが、価格は198万円からとかなり手ごろですね。
鈴木CE:安いでしょう!? ぜひ、買ってください。普及してのクルマだと思いますし、手の届くクルマでなければ国民車とは言えません。ある意味で、空気のような存在でも構わないと思っています。しかしそれがないと、生活しにくいという存在。新型アクアの価値は、「普及する先進感」だと思います。
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