キャンピングカーのベース車両、トヨタ「カムロード」ってどんなクルマ?
コロナ禍で人気が拡大したのがキャンプだ。もともとキャンプブームが再燃すると同時に車中泊の人気も高まったところで、コロナ禍になった。他人と接触しにくいレジャーの代表格であるキャンプ人気が一気に爆発したというわけだ。
この夏にキャンプに行った方も多いと思うが、キャンプサイトで多く見かけるのがキャンピングカー。最近は軽キャン(軽自動車をベースにしたモデル)やバンコン(バンをベースに架装したモデル)を見ることが多くなったが、国産キャンピングカーのキングといえばキャブコン。トラックのキャブ部分を使い、本来荷台がある後方部分に居住用のスペースを架装するモデルで、キャンピングカー愛好家が最後にたどり着くモデルともいえる。架装する居住部分はシェルと呼ばれ、架装するメーカー(ビルダー)によってデザインや室内レイアウトが異なり、それぞれに個性がある。
◆国産キャブコンのベース車両といえば「カムロード」
ベースとなるトラックの多くは、トヨタのトラックの『ダイナ』系をベースにした『カムロード』と呼ばれるキャンピングカー専用モデル。ストリップシャシーと呼ばれるもので、キャブ部分とシャシーを自動車メーカーが組み立てて架装メーカーに販売される。もちろん荷台部分はなく、ラダーフレームがあるだけの車両だ。個人販売は行っていないためトヨタのウェブページの車種ラインナップを見ると、ダイナは掲載されているがカムロードはない。架装メーカーのみに卸されているキャンピングカー専用のモデルがカムロードだ。
◆シビアな使用環境に合わせ現行モデルは全車リアダブルタイヤ化
現行モデルは2021年秋ごろからリリースされた。先代モデルは駆動輪のリアタイヤが1本のシングルタイプもあったが、現行型は全グレードがリア片側2本のダブルタイヤを採用しているのが特徴だ。これは安全面を重視したためダブルタイヤに変更された。通常のトラックと違いキャンピングカーはつねにリアタイヤに居室部分の荷重がかかっているわけで、一般的なトラックの使用方法より過酷な状態ともいえる。キャンプでは水を清水タンクに満タンにして重いまま、キャンプグッズも満載して、高速道路を一気に数百km走るユーザーもいる。もちろんカムロードの設計荷重以内に納まるように架装されているが、夏は日射によって熱くなった路面をSAでの休みもなく(停車時にタイヤが冷却される)走り続ける状況はシビアだ。
しかもキャンピングカーだから通常のトラックの荷台部分に人が乗っているわけで、タイヤがバースト(破裂破壊)すると重大事故になりかねない。実際、夏の時期には高速道路でタイヤがバーストするトラブルが多い。これはユーザーがタイヤ空気圧やキズなどの状態を確認していないことに起因する事故が多いが、ダブルタイヤにすることで万が一のとき1本で支え、バーストやパンク時などのリスクを軽減できるというわけだ。また、ベース車よりリヤトレッドを250mm拡大したワイドトレッドを採用し、リーフサスペンションも従来の3枚から4枚に強化したため、コーナリング時の安定性がグッと高まったのも美点。
◆乗用車並みの先進安全装置も搭載
現行型カムロードの特徴はほかにもある。乗用車並みのADAS(先進安全装備)を搭載している点だ。ベースとなったダイナは2021年7月に一部改良され、プリクラッシュセーフティとレーンディパーチャーアラートなどの安全装備を標準化した。そのためカムロードのエクステリアを見ると、フロントバンパー中央部分に黒い四角い部分がある。これはミリ波レーダーが収められているためで、フロントのナンバープレートは右側(運転席側)にオフセットされて取り付けられる。
プリクラッシュセーフティは前方の車両や歩行者(昼夜検知)、自転車など(昼検知)をミリ波レーダーと単眼カメラで検出する。危険な状態になると警報ブザーとディスプレイ表示でドライバーに衝突の可能性を知らせてくれる。それでもブレーキを踏めなかった場合は、プリクラッシュブレーキが作動して衝突回避または被害軽減をサポートする。従来のカムロードにはなかった安全装備で、こうしたADAS機能は、従来一部の輸入キャンピングカーに装備されていただけだが、ついに国産キャブコンにもADASが装備されるようになった。
ちなみにプリクラッシュブレーキは歩行者や自転車に対しては、自車が約12km/hから80km/hの速度域で作動する。車両に対しては自車が約10km/h以上で作動し、停止車両に対し自車の速度が約50km/h以下の場合は、衝突回避または被害軽減をサポートする。明るい昼間のみだが自転車運転も検知するのは、トラックとしては高機能だ。
レーンディパーチャーアラートは、車線逸脱をドライバーに伝える機能。フロントガラスの上部中央に取り付けられた単眼カメラで道路上の白線や黄線によって車線を認識する。ドライバーがウインカー操作を行わずに車線を逸脱した場合、警告ランプの点滅とブザーによって注意を喚起してくれる。アラート機能のみなので注意喚起にとどまり、車線逸脱を防止するためのハンドル操作は行われない。VSC(ビークルスタビリティコントロール=横滑り防止装置)も装備されているが、エンジン出力制御や自動ブレーキによって姿勢をコントロールするが、VSCにも操舵支援機能はない。乗用車のように高性能なEPS(電子制御パワーステアリングシステム)が装備されないと操舵支援の導入は難しいだろう。こうした部分がトラックをベースにしているカムロードの今後の課題だ。
◆今後のライバルはフィアット「デュカト」
現行型のパワートレーンは、2000ccガソリンが2WD、2800ccディーゼルターボは2WDと4WDを設定。新たにシーケンシャルモード付きの6速MTを組み合わせているため、ワインディングロードなどで走りやすく、長い下り坂でも適切なギアを選んでエンジンブレーキが使いやすくなっている。ガソリンはリアダブルタイヤが13インチに小径化されているのも特徴だ。
今後のキャブコンベース車の注目点は、フィアット プロフェッショナルのデュカトが本格的に日本市場に登場することだ。2022年9月にはステランティス ジャパンが専用の販売ネットワーク構築し、キャンピングカーの架装メーカーなど5社と契約を締結したと発表。日本で最大のキャンピングカーショーは、毎年2月に千葉の幕張メッセで開催されるジャパン キャンピングカー ショーだが、来年のこのショーでカムロードとデュカトが鎬を削る姿が見られそうだ。
この夏にキャンプに行った方も多いと思うが、キャンプサイトで多く見かけるのがキャンピングカー。最近は軽キャン(軽自動車をベースにしたモデル)やバンコン(バンをベースに架装したモデル)を見ることが多くなったが、国産キャンピングカーのキングといえばキャブコン。トラックのキャブ部分を使い、本来荷台がある後方部分に居住用のスペースを架装するモデルで、キャンピングカー愛好家が最後にたどり着くモデルともいえる。架装する居住部分はシェルと呼ばれ、架装するメーカー(ビルダー)によってデザインや室内レイアウトが異なり、それぞれに個性がある。
◆国産キャブコンのベース車両といえば「カムロード」
ベースとなるトラックの多くは、トヨタのトラックの『ダイナ』系をベースにした『カムロード』と呼ばれるキャンピングカー専用モデル。ストリップシャシーと呼ばれるもので、キャブ部分とシャシーを自動車メーカーが組み立てて架装メーカーに販売される。もちろん荷台部分はなく、ラダーフレームがあるだけの車両だ。個人販売は行っていないためトヨタのウェブページの車種ラインナップを見ると、ダイナは掲載されているがカムロードはない。架装メーカーのみに卸されているキャンピングカー専用のモデルがカムロードだ。
◆シビアな使用環境に合わせ現行モデルは全車リアダブルタイヤ化
現行モデルは2021年秋ごろからリリースされた。先代モデルは駆動輪のリアタイヤが1本のシングルタイプもあったが、現行型は全グレードがリア片側2本のダブルタイヤを採用しているのが特徴だ。これは安全面を重視したためダブルタイヤに変更された。通常のトラックと違いキャンピングカーはつねにリアタイヤに居室部分の荷重がかかっているわけで、一般的なトラックの使用方法より過酷な状態ともいえる。キャンプでは水を清水タンクに満タンにして重いまま、キャンプグッズも満載して、高速道路を一気に数百km走るユーザーもいる。もちろんカムロードの設計荷重以内に納まるように架装されているが、夏は日射によって熱くなった路面をSAでの休みもなく(停車時にタイヤが冷却される)走り続ける状況はシビアだ。
しかもキャンピングカーだから通常のトラックの荷台部分に人が乗っているわけで、タイヤがバースト(破裂破壊)すると重大事故になりかねない。実際、夏の時期には高速道路でタイヤがバーストするトラブルが多い。これはユーザーがタイヤ空気圧やキズなどの状態を確認していないことに起因する事故が多いが、ダブルタイヤにすることで万が一のとき1本で支え、バーストやパンク時などのリスクを軽減できるというわけだ。また、ベース車よりリヤトレッドを250mm拡大したワイドトレッドを採用し、リーフサスペンションも従来の3枚から4枚に強化したため、コーナリング時の安定性がグッと高まったのも美点。
◆乗用車並みの先進安全装置も搭載
現行型カムロードの特徴はほかにもある。乗用車並みのADAS(先進安全装備)を搭載している点だ。ベースとなったダイナは2021年7月に一部改良され、プリクラッシュセーフティとレーンディパーチャーアラートなどの安全装備を標準化した。そのためカムロードのエクステリアを見ると、フロントバンパー中央部分に黒い四角い部分がある。これはミリ波レーダーが収められているためで、フロントのナンバープレートは右側(運転席側)にオフセットされて取り付けられる。
プリクラッシュセーフティは前方の車両や歩行者(昼夜検知)、自転車など(昼検知)をミリ波レーダーと単眼カメラで検出する。危険な状態になると警報ブザーとディスプレイ表示でドライバーに衝突の可能性を知らせてくれる。それでもブレーキを踏めなかった場合は、プリクラッシュブレーキが作動して衝突回避または被害軽減をサポートする。従来のカムロードにはなかった安全装備で、こうしたADAS機能は、従来一部の輸入キャンピングカーに装備されていただけだが、ついに国産キャブコンにもADASが装備されるようになった。
ちなみにプリクラッシュブレーキは歩行者や自転車に対しては、自車が約12km/hから80km/hの速度域で作動する。車両に対しては自車が約10km/h以上で作動し、停止車両に対し自車の速度が約50km/h以下の場合は、衝突回避または被害軽減をサポートする。明るい昼間のみだが自転車運転も検知するのは、トラックとしては高機能だ。
レーンディパーチャーアラートは、車線逸脱をドライバーに伝える機能。フロントガラスの上部中央に取り付けられた単眼カメラで道路上の白線や黄線によって車線を認識する。ドライバーがウインカー操作を行わずに車線を逸脱した場合、警告ランプの点滅とブザーによって注意を喚起してくれる。アラート機能のみなので注意喚起にとどまり、車線逸脱を防止するためのハンドル操作は行われない。VSC(ビークルスタビリティコントロール=横滑り防止装置)も装備されているが、エンジン出力制御や自動ブレーキによって姿勢をコントロールするが、VSCにも操舵支援機能はない。乗用車のように高性能なEPS(電子制御パワーステアリングシステム)が装備されないと操舵支援の導入は難しいだろう。こうした部分がトラックをベースにしているカムロードの今後の課題だ。
◆今後のライバルはフィアット「デュカト」
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